【毎週ショートショートnote】スナイパーの意外な使い方

人殺しなど、うんざりだ。
今の日常をつづけられるのが、最上であり、最高である。
この相方とともに、旅行中の家に無断で宿泊しつづける日々が。

「うっわ、汚なっ❗」
「そうじしてねえんだろうな」

今日、泊まるのは、ほぼゴミ屋敷の家だった。床の上には物が散乱し、足の踏み場がない。部屋の中で、くつろげるのはベッドがある寝室ぐらいだ。

「ゲームするより、片づけたいな」
「片づけたら、俺たちのことがバレるからだめだ」
「わかってるよ。けど、どこになにがあるか、わからないよ、これ」
「なにが、ほしいんだ?」
「コップかな。水が飲みたい」

俺は台所に行く。流し台のなかに積み上げられて、汚れた塔を建築している食器類のなかから、塔を崩して目当てのコップを見つけ、壊滅状態になっていない風呂場でコップを洗い、水を注いで相方にわたした。

「あの中から、よく見つけたね」
「見つけるのが、仕事だったからな」

元スナイパーだった俺は、人だけではなく物を探すのも得意だ。