【毎週ショートショートnote】 小判食え


孫が、にこにことオムライスを食べた昼ごはんが終わり、もう15時になった。

「今日のおやつ、なにかな~」
「今日は、チョコレートよ」
「やったあ! チョコレート大好き!」

妻が冷蔵庫から取り出したのは、きらきらと光る金色の小判の形をしたものだった。

「おばあちゃん、これなあに?」
「小判型のチョコレートよ。包み紙をはずして食べるの」
「もらいものかい?」
「買ったのよ。なんでも、もらいものだって、思わないの」

また、妻の機嫌をそこねてしまった。
私は余計な一言が多いらしい。
純粋な疑問を述べただけなのに。

「おいしい! ぶあつい! すごく甘い!」

孫がキャッチコピーになりそうな感想を叫ぶ。

「よかったわ。また買ってこようかしら『小判食え』を」
「おばあちゃん、これ『小判食え』ってお名前なの?」
「そうよ。他にも『真珠食え』と『指輪食え』があったわ」
「じゃあ、また小判買ってきて!」
「あら、いいの?」
「いちばん、食べごたえあるから!」

孫は素直だ。