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プロミシング・ヤング・ウーマン



今回はプロミシング・ヤング・ウーマンについて。
この映画、大好きですが難しいですね。

1回目観た後は凄い落ち込んでしまって、嫌いじゃないけど2回目観れるかな。という感じでした。
最近やっとこさ2回目を観たのですが、また違う表情をするんだもんなぁ~映画ってこれだからやめられないんだよな~!!とホクホクしました。
何故1回目の鑑賞で落ち込んでしまったのか。どこかで水戸黄門みたいな成敗しておやんなさい!ヤー!
~正義は勝つ~
みたいな展開を望んでいたんですよね。でもそれだと本当に伝えたいメッセージが弱まるんでしょうね。だからこそあのラスト。
大団円に越したことはないですが、現実はそうじゃないですよね。何故か性犯罪者の氏名が公表されなかったりする。許さないよ。

正義感満々ラストではないことに違和感や不満(映画として満足感が低い?)を持つ方もいますよね。
あそこまで整えて追い詰めていく様が容赦なくて、最後のトドメはどうしてくれるんだ!という期待も正直ありましたしね。
あえて、あの終わり方にしたことで観た人にしこりを残すのずるいですね。

この手の題材の映画はいくつもありますが、警察に頼らず自分で何とかしようとするといえば、私の大好き映画「ELLE」ですね。
ELLEの主人公も性被害に遭いますが、その直後も端から見るといつも通りに過ごしているように見えるんです。でもそう見えているだけ。
被害に遭って冷静なのは怒りが勝っているからじゃない?と私は思います。
犯人を見つけたい、どうにか懲らしめてやりたいと思ったら、悲しむより先に武器入手。
結局犯人がご近所夫婦の旦那と分かっても警察には言わない。なんなら事故に遭ってその人に助けを求める。
ただ、こういうのが何故だか「性的に満足したから警察に言わないんだ!」とか「色欲にまみれてるだけじゃん!」みたいな考察を引き出すんですよね。
女性の性的欲求なんて、あるに決まってるでしょ?暴力的な手段でそれを叶える男性と、暴力に頼らない女性、どちらが愚かなのか。
映画の中だろうと、自分の日常を強姦で奪われてるのに、そこに性的な満足の有無を持ち込んでくるのグロくないですか。
私は、彼女の一連の行動は全て報復だと思っています。元旦那・不倫相手にしたことも全て。
男女の関りで、性的な接触が発生するのは珍しくないのに、女性側の態度1つでどうしてこういう意見が出てくるのか。恐ろしいですね。

プロミシング・ヤング・ウーマンでキャシーがしたことに「やりすぎ」という感想を持つ人もいるようです。
寛容ではないけど、寛容である必要があるのか?
なぜそれを被害者・その近しい人間に求めるのか。変だよ。
男性差別ととらえる人もいるようですが、正直そこまでされても仕方ないくらい性犯罪に甘い世界では?と思います。
差別はよろしくないですが、酔った女性を連れ込むのもよくないでしょ。
そこまで酔わなければいい!というのも、被害者になることを恐れて自重を一方に任せるのは違いますよね。まずは加害しないこと。自重ももちろんね。

ELLEのように、1発で仕留める機会をじりじり待ち、穏やかに見せつつ確実な制裁を下すか。
プロミシング・ヤング・ウーマンのように、例え最悪の終わり方でも、広範囲に制裁を下すか。
どちらも性犯罪がなければしなくていいのに。
実行した事を悪い事だよ!と言いたくなる気持ちも分かりますが、それを伝える事で余計に勢いが増すかもしれないですよね。なんにせよ、起こらなければする必要がなかったのに。

警察も大人も、何も守ってくれないなら自衛、自分で復讐するしかないですもんね。やるしかないんですよ、キャシーは。
彼女は追い詰められてると思うんです、進路も絶ち、希望もなく復讐のために生きているようなもんですからね。
一瞬希望が見えたけど、それも裏切られ、そしたらフィナーレに向けて用意するしかないですよ。
性善説を一切信じず、一貫した姿勢で世直しする女性がいたっていいじゃん。

私自身も大人しい性格ではないので、今まで何遍も「女の子らしくしなさい」と言われたことがあります。
その発言による影響がない事はもう分かっていただけているかと思います。
性的魅力や家事能力ではなく、他の部分で1個人として認識され、扱って欲しいだけなのにそれがどうにも難しい世の中で、よくこの映画を作ったなと思います。
性被害に遭ってその場は黙っていても、必ず仕留めようと狙っている個体もいる、というのを深刻に受け止めてほしいですね。
本来であれば、そんな気概は無い方が良いんですから。是非、私にも「女の子らしさ」とやらを発揮させてほしいです。

妙にリアルな性被害シーンがないのも良かったです。
それをまた邪な眼で見る人もいるでしょうから。
この手の映画では、どれだけその層の視聴者をがっかりさせるかだと思います。いるからね、そういうシーンが見たい人。
ここまで辛辣な、粘着質な報復に理解出来ないのも分かるんです。でも理解させない、共感させないのがまたメッセージ性を高めているんですよね。
ただの復讐映画ではなく、性被害の映画でもない。その奥底のメッセージがどれだけ深刻で煮えたぎっているか。見る度に考えさせられます。

1本の映画でも、ここまで感想が枝分かれするのもすごいですね。
どれも合っていて間違っているのかもしれません。考察に正解は無いと思いますし、映画に込められたメッセージを受け取ることが大切なのかも。
いつも心に、プロミシング・ヤング・ウーマンを。

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