桜家 創

曇りとアイスコーヒーが好き

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    • 恋文

      「石丸、俺はかおりちゃんに告白しようと思うんだ」  四限の数学を終えてようやくのお昼休み。林はメロンパンを片手に宣言した。 「ほー。頑張れ。たぶん、無理だから」 「なんでだよ!」  林は飲んでるミルクティーをこぼしそうになりがら必死に抵抗する。 「分かんないだろう? 告白してみなきゃ」 「いや、分かるね。前にかおりと話してた時に言ってたぞ。今は部活が忙しくて恋愛どころじゃないって」 「えっ! お前、いつの間にかおりさんとそんな話を! というか呼び捨て!」  身を乗り出す林に

      • 星のこの野郎!

         まただ、また俺の願いが叶ってしまった。  星に願いを、なんてものはたぶん本当だろう。俺はそれを身にもって感じてきた。それも最悪の形で。最初は、たしか高校受験の時だった。これまで仲良かった友達が一気にお受験モードになって、すごくつまらなかった頃だ。塾の帰り、「あーあ、受験なんかしたくない!」って呟いた時、夜空に一筋の光が流れた。そして、俺は試験日前にインフルエンザにかかった。  最近だと、俺がめでたく二十連勤目を終えた時だった。コンビニで弁当、缶ビール、肴の三点セットを購入し

        • あの一言

           目覚ましのアラームを設定する。 「んー。明日は日直だから、早く起きないとな」  いつもより三十分前にアラームを設定する。日直の朝は先生に連絡事項を聞いたり、教室の窓を開けたりとやることが多い。どうせ一度じゃ起きれないから、スヌーズも設定しておく。  小学生の頃から使っているベットに潜り込む。横向きで膝を曲げたり、仰向けになったりして今日のベストポジションを探す。今日は仰向けに落ち着き、天井のシミをぼんやりと見つめる。そして、布団をきっちりと掛けた状態で目を瞑る。  ……日直

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        記事

          飲み会の隅で度数の低い恋

          「かんぱーい!」  スポーツサークル "スポーツ" の飲み会が始まった。  サークルの名前にまんま、"スポーツ"を付けてしまういい加減なサークルだが、普段の活動はいたって真面目だ。週に一回、集まって運動するサークルで飲み会は新歓と忘年会と今回の夏休み前の飲み会だけという真面目っぷり。私はもう少し飲み会があってもいいのにと思うのだけれど。 「かんぱーい、涼子ちゃん。サラダ分けてもらったんだけど食べるー?」 「かんぱい、はな。サラダはいらない。あんたが苦手なだけでしょ」  はな

          飲み会の隅で度数の低い恋

          自己分析カルタ

          又吉さんの「月と散文」から。そこでは独り言カルタでしたが、少し変更して自分なりに書いてみます。 私が自分を自己分析した結果や普段から考えてることを書いてみました。 あ 天邪鬼 い イギリスで食事がしたい う 生まれ変わるとしても自分がいい え 絵はどうやら上手くないらしい お おにぎりは塩 か 変わり者と思われたい節がある き キリギリス側 く 車の運転はしたくない け 結婚はたぶんできん こ 子どもの感性がだいぶ残っている さ 佐鳴予備校に行ってた し 静かなとこが好き

          自己分析カルタ

          「あなたに花火を」8話:消え口がそろう 最終話

          「あなたに、あなたに花火を送ります。僕は紅音さんが好きです」  ピカっ、鮮やかな赤色で去年の花火よりも一回り大きい、まるで一輪のバラのような花火だ。 「えっ」  反応が遅れる。  ドーン、花火の音と鼓動の音が一瞬重なる。星空さんが真っ直ぐにこちらを見ている。 「もう二度と紅音さんに不安な思いはさせません。だから僕の花火をうけとってくれませんか?」  言葉が詰まる。答えなんて決まっているのに。  嬉しさと驚きで声がかすれて涙がこぼれる。抑えられない、けど答えないと。 「はい。

          「あなたに花火を」8話:消え口がそろう 最終話

          「あなたに花火を」7話:火をつける

           眼鏡を外して汗を拭く。  あついな、汗が滝の如くあふれ出てくる。  眼鏡を戻して、空を見上げる。  今日は雲一つない晴天、日差しが強い。けど、良かった。予定通りに川浪花火大会ができそうだ。 「星空!こっちの方を手伝ってくれ」 「はい!わかりました」  先輩の山口さんからの呼び出しだ。今年はほんとに忙しい。アルバイトで来ている紅音さんもさっきからいろんなところに引っ張りだこだ。会話する暇すらない。去年の約束のことで少し話をしたいんだけどな。  結局、紅音さんと話ができたのはお

          「あなたに花火を」7話:火をつける

          「あなたに花火を」6話:玉の座りが悪い

           梅雨。じめじめ  私。モヤモヤ  星空さんが来ない。喫茶店 "乱歩" で待ち合わせしてたのに。私は就活にアルバイトで忙しい中、時間をつくってたのに。  やだ、私なんか嫌な感じになってる……。陰湿な感じだ。  一時間、また一時間と時は過ぎていく。星空さんからは連絡はない。何か事件に巻き込まれているのかも、不安感が高まる。  カランカラン、お店の扉が開くたび、期待して顔を上げても星空さんは来ない。もうコーヒーは残っていない。  カランカラン、今度こそなんて思いながら顔を上げて

          「あなたに花火を」6話:玉の座りが悪い

          「あなたに花火を」5話:玉貼り

           時は流れ、四月。暖かな風が吹く。  俺は山口、ここ玉鍵煙火店の従業員だ。趣があると言えば聞こえがいいが、普通に古い建物だ。もっと事務所を綺麗にすれば優秀な人材も集まりやすいだろうに……。この前、親方に事務所のリホームを提案したが花火には関係ねぇと断られてしまった。少しは関係ありそうだが。 「おはようございます」 「おっ、おはよう」  まるで忍びのように物音一つ立てず近づき挨拶をしてきたのは今年で四年目の俺の後輩、田中星空だ。うちの花火の仕事に対して真面目に取り組み、親方から

          「あなたに花火を」5話:玉貼り

          「あなたに花火を」 4話:線香花火

          「田中さん!あの手持ち花火しませんか?」 「えぇ、はい。いいですね!僕たちの花火大会ですね」 「はい!私たちの花火大会です」  落ち込んでいる僕を気遣ってくれているのか?  やさしい人だな……  レジで手持ち花火セットとチャッカマンを購入して、コンビニを出る。  どこか花火ができそうな所を鈴木さんがスマホで探してくれた。一旦、玉鍵煙火店に寄り、バケツを用意し二人でそこに向かう。すれ違う人たちは花火大会帰りのカップルばかりだ。傍から見たら僕らもカップルに見えるかな……  って

          「あなたに花火を」 4話:線香花火

          「あなたに花火を」 3話:盆が良くない

          「実はそこの雑木林を抜けていくと子供の頃によく行ったいいスポットがあるんですよ。一緒に行きませんか?」 「えっ、はい!」  咄嗟に返事をしてしまった。  えーっと? もしかして私誘われている?  ど、ど、どうしよう。  そんな私の動揺など気にしない様子で田中さんはどんどん雑木林を進んでいく。  雑木林はしばらく手入れされてないようで、枝や葉っぱをかき分けてなんとか獣道を進んでいく。  田中さんは時折、「ここ段差ありますよ」や「もう少しで到着です」と声をかけてくれたり、私に

          「あなたに花火を」 3話:盆が良くない

          「あなたに花火を」 2話:玉を込める

           ピッピッ ピッピッ  目覚まし時計が鳴る。 「ううん…」  手探りで目覚まし時計を探す。  田中 星空の朝は早い。  たとえ休日だとしても毎朝7時には起きて、ルーティンの家事を始める。  洗濯機を起動し、掃除機をかけ隅々まで丁寧に取り掛かる。  星空は貴重な時間を家事に宛てることができるこの時間が好きだった。  ピー ピー  洗濯物を取りこみ、ベランダに向かう。  ガラガラ  今日は雲一つない晴天だ。ニュースでは熱中症に気を付けるように言われていたな。  意気揚々と

          「あなたに花火を」 2話:玉を込める

          [エッセイ] サイズ音痴

          私は量がわからん。サイズがわからん。 私は昔からサイズや量を見定めるのが苦手だ。 歌が下手な音痴、運動が苦手な運動音痴、方向感覚に乏しい方向音痴。 様々な音痴があるが私は新たに「 サイズ音痴 」を追加したい。 個性?というには弱いが共感してくれる方がいると嬉しい。 私がサイズ音痴をはっきりと自覚したのは実家に住んでる頃だ。 母にシャンプーを詰め替えを頼まれた私はやむなしシャンプーを入れ替え始める。 すると、みるみるうちにシャンプーがあふれ出したのだ。 よく見ると "お得

          [エッセイ] サイズ音痴

          「あなたに花火を」 1話:狼煙があがる

             ミーンミーン 蝉の鳴き声が響き渡る。まだ、7月が始まったばかりなのにこの暑さ。耐えられない。  夏のインターン、エントリーシート講座。まだ、大学3年生が始まったばかりなのに就活。耐えられない。  私が通っている私立大学の図書館に到着した。  冷房が効いていて心地良い。一人用に区分けされている席に着いて文房具を取り出す。  大学で配布している自己分析シートに目を落とす。  まずは名前を記入する。鈴木 紅音。  次は、自己PRか。  "何か学生時代に熱中したことを記入し

          「あなたに花火を」 1話:狼煙があがる

          日常記録:やっぱりアップルパイが好き

          やっぱりアップルパイが好き 最近、アップルパイばかり食べている。 大学が春休みに入り朝に余裕ができたせいか、朝に安物のアイスコーヒーに牛乳を入れたカフェオレとアップルパイの毎日。 それでも、アップルパイは飽きない。 スーパーに行くたびに手が伸びてしまう。 ”アップルパイ野郎” と店員に影で呼ばれるのは時間の問題だろう。 Pascoのアップルパイから一口サイズのアップルパイ、本格的なパン屋のアップルパイなど何種類も買ってしまうことはざるである。 恐るべしアップルパイ。

          日常記録:やっぱりアップルパイが好き