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Mrs. GREEN APPLEという鬱バンド

フェーズ2を通して見る彼らの変化と不変

2023年7月5日、4年ぶり5thアルバム『ANTENNA』がリリースされた。
2022年3月18日のフェーズ2開始から1年以上が経過し、彼らの変化と成長、そして、不変の部分が形になった一作である。
『TWELVE』
『Mrs. GREEN APPLE』
『ENSEMBLE』
『Attitude』
に続く5作目のアルバムは、『ANTENNA』。
これまでのタイトルとは毛色が異なるように感じる。
無機質なもの。
色合いやにおいを感じさせないもの。
そういう風に感じる。
ただ、収録曲を紐解いていくと、このタイトルが持つはかり知れないパワーが浮かび上がってくる。

1.「ANTENNA」
アルバム名を背負った一曲目。
平たい言い方をすれば、”ミセスらしい”と言える。
明るい・テンポが良い・高い・音数が多い。
ただ、これがミセスの真髄。
一見ポップに聞こえる音楽もそこには、寂しさが必ず隠れている。
キャッチ―なメロディーに隠れるは、そう、偶像だ。
開始40秒で訪れるサビ、「愛してるよ、ホープレス」(hopeless:絶望)
そうだ、これだ、ミセスはこれをずっと歌ってきたのだ。
生きることは、忙しなくて、つらくて、苦しくて、悲しくて、切なくて、退屈で、大切なものを忘れてしまうことだけど、でも、それをも愛していこうと歌ってきたのだ。
これは、フェーズ1から、変わっていない。
私に寄り添って、救ってくれた彼らのAttitudeだ。
ただ、言葉のシャープさが違う。鋭さの次元が違う。
フェーズ1なら、このサビを言うために、一曲すべてを使い切っていた。
ただフェーズ2になってからは、出し惜しみをせずに、一気にその次元まで到達する。単語もシンプルに収める。
スマートになったというのが適切か。
とにかく、言葉のシャープさが段違いだ。

フェーズ1は、形あるものはいずれ無くなってしまうかもしれないけど、
それでも私は信じていたい、手を取っていたい、諦めたくないと歌っていた。
フェーズ2は、形ある物はいずれ無くなる。もうそれは、分かった。
それでも生きようと歌っている。良いも悪いも、そういうものだと、過去の失敗も敗北も、そういうものだと受け止めて、前を向こう、向くしかないのだと歌う。だからこそ、ケセラセラなのだ。なるようになる。それは、良くも悪くも。だから大丈夫とかではない。
そういうもんだっていう話だ。
それらを受け止めて前に進めるようになるほどの経験をしたし、家族もいる。そういう変化だと思う。
言い換えると、

フェーズ1は、「願いからの肯定」
フェーズ2は、「諦めからの肯定」


だろう。

「永遠はないけど、信じていたい」
が、
実際に自分の身に降りかかることで、永遠はないことを知ったのだ。
でも、それでも、そうやって生きてきたし、生きていくことが私だと、
「永遠はないから、生きてみよう、大事にね。」
になったのだ。

今までの歌詞に、矛盾はない。
「生きづらいこの日々たちが続けばな」月とアネモネ
「永遠はないんだと云フ、それもまたイイねと笑ってみる」インフェルノ
ただ、目線が違う。
「形あるもの孰れ消え去って、殻になりどこかでまた咲いて、
悲しみが繰り返されるのは、もう存じてます。」Doodle
「形あるすべては、いつかは必ずなくなるみたい」Part of me

知った上で、肯定できる力がある。
無常を嘆く次元にいないといったところか。

「諦められるようになってきたような、正常すぎる危険サインを感じてるよ。」Feeling
最も注目すべき曲だと思う。
諦める事が正常。
つまり、今までは、諦めたくなかった。諦めてたまるかと思っていたはずだ。でも、そうじゃない。諦められるようになってしまったのだ。きっと。
それが危険だと。
ただ、Feelingだ。
それでいいじゃないか。ということだと思う。
諦めがつくようになってきたけど、それに任せてみれば?背負わせてみれば?ってこと。自分の感性に従ってしまえばいいだろう。感性、それは、アンテナ。アルバムの意味はきっとそういうことだ。
自分のアンテナの向く方に従ってしまえばいい。
今の僕は、それをも肯定できる自負がある。
そういうことだ。そんなFeeling でANTENNAが締められるにはこれだけの意味がある。

なぜか。
なぜこれだけの変化があるのか。
年齢とかもきっとあるけど、そうじゃなくて、ここまで読んでくれた方は分かるだろう。

若井と藤澤のおかげだ。
BFFは二人に向けた曲だ。おそらく。
「僕には君がいる」
「大丈夫、僕らなら、あの日の僕らが言う。」

どんな悲しみも二人がいたから受け止められた。
この先もきっと一緒だ。一緒にいてほしい。そんな願いが、フェーズ1では叶わなかった願いが、彼の原動力とまたなっている。

「愛すように愛されるような、救うように救われてみたいな 寂しいな」L.P
「愛し愛されて死にたいの」Attitude
「心を見せられないけど、誰かに愛されたい」Part of me
愛されたいと歌ってきた彼。
「私はきっと愛されてる」Feeling
愛されている自覚を持てるようになった。
持ち切ったとまでは、いかないだろう、彼のことだから。
でも、これは、とてつもない変化じゃないか。

最後までは言わない。そういうことだ。でとどめておく。
というかまだ私にはこれ以上言語化できない。

最後にタイトルに戻る。
Mrs. GREEN APPLEという鬱バンド
青春、恋愛、キラキラを歌っているとでも思っていたのか、世間よ。
エンジンは彼の中の寂しさだった。
いつかなくなるんじゃ、愛せないんじゃ、愛されないんじゃないか、そんな寂しさが、憂鬱が彼を突き動かしていた。

ただ、フェーズ2になって、
「私はきっと愛されてる」と歌えた彼が次に見る景色は何だろうか。
寂しさが無くなることはないであろうが、この『ANTENNA』を通して、1つ新たなエンジンを積んだ気がする。
次は、どこまで連れて行ってくれるか。

Mrs. GREEN APPLEという爽快なバンド


に私は一生ついていく。
もし、ついていかなくなっても大丈夫、そういう道だったと受け止める姿勢彼らがを教えてくれたから。

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