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チョコレートブラウンの板塀のある家

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記憶の中の人達 愛理の思い通りには動いてくれません。
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2024年5月の記事一覧

チョコレートブラウンの板塀のある家 5

前の記事 突如現れた板塀 遠い昔に思いを馳せながら、雄介は獣道かと思われる坂を草を掻き分けながら登って行った。 突然視界が開けた先には、アスファルトで舗装された広い道の向こう側に、チョコレートブラウンの板塀に囲まれた大きな白い家が建っていた。 雄介は頭の中に幾つものクエスチョンマークを散らばせねばならなかった。四駆を乗り捨てた辺りには(大きな道らしきものは無かった筈だが?)と、辺りを見回しても他に家はない。道に迷ったのだろうか? 雄介が幼いころの赤木家は、生け垣に囲ま

チョコレートブラウンの板塀のある家 4

前の記事 長子他所の子になる 長女の長子は、読書が好きでいつも本を読んでいた。愛理や雄介が遊びに誘っても、歳が離れているせいもあり殆ど相手にしてもらえなかった。 父の明夫は、長子に野山を駆け回るような活動的な子になって欲しいからか、外に誘おうと模索していた。 長子が、小学校に上がる前くらいまで、父親の弟の宗次が一緒に暮らしていた。宗次も書物を読み漁り、殆ど一日中離れに籠っていた。叔父を慕っていた長子は、多分にその影響を受けて育ったと言う。 愛理は、父の葬儀の時に、金バ

チョコレートブラウンの板塀のある家 3

前の記事 愛理の家族構成 父 明夫(愛理が年長組の時他界) 母 アキヨ 長女 長子 次女 愛理 長男 雄介 捨て猫と湿った布団 愛理は、授業が終わると自宅の方に帰る友達(雪)と一緒にいた。 雪は徒歩通学なので、バス通学だった愛理が乗るバスの運転手さんに見つかるはずはないと思った。 ランドセルを並べて懐かしい道を、久々に雪と大声で戯れながら帰った。 雪の家の前で別れを告げた後、愛理は誰もいない自宅へと、興奮気味に駆け出していた。 ミャーオ!ミューン〜 子猫の鳴き声が