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チョコレートブラウンの板塀のある家

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記憶の中の人達 愛理の思い通りには動いてくれません。
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2024年4月の記事一覧

チョコレートブラウンの板塀のある家 2

前の記事 叔父(赤木)の家の家族構成 叔父さん 啓介 おばさん 美津子 長男   実 次男   真也 三男   三男 愛理の失踪「実は家にいて!真也と三男は沢の方見て来て!誰かに出会ったらきいてよ!」 雄介は、美津子の悲鳴のような声に飛び起きた。いつの間に寝てしまったのだろう、さっきまで従兄弟達と遊んでいたのに。 雄介がむっくり起き上がりキョトンとしていると、「愛ちゃんが帰ってこないのよ。お友達はみんな帰って来たのに」と慌てたおばさんの声が隣の部屋で聞こえた。叔父さん

チョコレートブラウンの板塀のある家 1

雄介山道に苦戦する 山間の新緑の木の葉の間からキラキラと落ちてくる木漏れ日。 雄介は汗ばんだ額に手を当てて目を細めた。 薄緑の幼い葉達はまだ小さすぎて十分に日除けの役割を果たすことができない。隣の常緑樹の葉は、嬉しいことに雄介の日傘となり、そよぐ風は巨木の吐息にも感じられる。 深い緑の4輪駆動は、先細る道に阻まれ、途中で乗り捨てるしか無かった。車2台程かろうじて停められる空地のある沢の所から、すでに40分歩いている。道に迷ったのだろうか。子供の頃はこんなに遠いと感じる