【不都合な真実】 生活保護はFIREなのか?


最近生活保護申請者が生活保護を「FIRE」と表現し炎上してるようだ。今回は生活保護とFIREを比較したい。

※FIREと生活保護の説明をしますが「知ってるよ!」って方はスクロールしてください

○FIREとは
 FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取ったもので、「経済的自立」と「早期リタイア」を意味する言葉だ。「早期リタイア」とは定年よりも早く退職することだ。文字通りの意味でわかりやすい。「経済的自立」というのは「資産運用の運用益で暮らす」ことだ。要は「投資収入で不労所得を得よう!」ってコンセプトがFIREだ。

○FIREの達成方法
 では投資収益で生きていくにはどうすればいいのか?「4%ルール」について解説しよう。「4%ルール」とは、生活費を投資で運用するお金の4%以内に抑えることができれば、お金が減ることなく暮らしていくことが可能だというものだ。この「4%ルール」の背後には米国株式市場の成長率が大体4%前後であるという経験則がある。要は生活費の25倍を米国株式にぶち込めば投資収益で生活できるよ!って話だ。

○生活保護とは
 生活保護制度の趣旨とは

『生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。』

ということらしい。要は困窮者に金をやるよって制度だ。

○生活保護の受給要件
生活保護の受給の要件は以下のようになっている。

ー、資産の活用とは
預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等し生活費に充ててください。

ー、能力の活用とは
働くことが可能な方は、その能力に応じて働いてください。

ー、あらゆるものの活用とは
年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用してください。

 ー、扶養義務者の扶養とは
親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受けてください。

そのうえで、世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、保護が適用されます。

 要件を見る限り結構厳しい‥ようにみえる。しかし、実態はそうでもない
。例えば「資産の活用」の要件の土地・家屋等の売却はあくまで「利用されてない」ものだ。逆に言えば「利用している土地・家屋」は売却しなくていい。実際売却価値が2000万円以下の持ち家は売却しなくていい。「能力の活用」も受給自体の妨げにはならない。なぜなら、市役所の役人は働けるかどうか判断できないからだ。だから明らかに健康そうな体をしていてもそれを理由に受給を拒むことはできない。「扶養義務者の扶養」も実は扶養義務者が「養えません」って言えば終わりだ。色々説明したが言いたいことは生活保護の受給のハードルはそこまで高くないよって話だ。

それでは本題に移ろう


生活保護とFIREの比較をいくつかの点で比較したいと思う。

○収入
 生活保護の月収は地域にもよるが11〜13万円くらいだ。また医療費無料、NHK受信料無料、税金免除、国民年金保険料免除等々のさまざまな特典がついてくる。そうすると実質的な生活レベルは年収170万円程度と見込んでいいだろう。ではFIREで年収170万円を得るにはいくら必要か?大体4000万円〜5000万円くらいだ。これ以下だと生活保護以下の生活水準になる。逆にこれ以上の金額を投資すれば生活保護よりも豊かな暮らしが見込める。

○安定性
 FIREは投資で収入を得ているため不安定である。株式は長期的には上がっていくがたまに暴落したりする。下の図は米国株式の株価の推移を表してる。

※米国のS&P500(Standard & Poor’s 500 Stock Index)はマイナス52.6%がワースト1。ITバブル崩壊も下落率こそリーマン・ショックより下だが、元の水準に戻るまでの期間は30年間で最長。△はマイナス

 この図を見て貰えばわかるように酷い暴落だと46.3%と半分近くにまで減る。また回復に3年かかる場合もある。FIREした人はその間の生活費をどう工面するのだろうか?だいぶ不安定である。

 それに対して生活保護は非常に安定してる。株価が下がったからという理由でお金がもらえなくなることはない。常に国が決めた額もらえる。安定性は非常に高い。安定性という観点で言えば生活保護の方が圧倒的にいいだろう。

○世間体
 ご存知の通り生活保護は非常に世間体が悪い。世間では「生活保護受給者=働かない怠け者」というイメージがある程度ある。マスコミや一部の政治家も生活保護受給者を叩いてる。世間体はかなり悪いと言わざるおえない。

 一方FIREは世間体は悪くはない。FIREは基本的に自分の力で行うものだ、という世間のイメージがある。だからFIREしても生活保護みたいに「俺たちの税金で!」みたいな話にはならない。世間体は明らかにFIREの方がいいだろう。

○難易度
 FIREはとても厳しい。生活保護レベルの生活水準を達成するには4000万円〜5000万円必要だ。日本人の平均年収は461万円らしい。

この平均的な日本人がFIREを達成するためにはどうすればいいのか?まずは生活費を削らないといけない。年の生活費は200万円くらいに抑える。そして残った261万円を株式投資に回す。それでシミュレーションしてみる。

シミュレーションしてみた結果、FIREで生活保護レベルの生活水準になるために必要な時間は15年。年収200万円という生活水準を15年続けてようやく生活保護レベルの生活水準。しかもこのシミュレーションは税金を無視してこの結果だ。年収1000万円とかそのレベルの人じゃないとFIREは簡単じゃない。

一方、生活保護は簡単である。受給要件は生活保護の開設の中で書いたがまとめると

ー、月の最低生活費の半分以下の現預金

ー、月の最低生活費以下の収入

これさえあれば基本は問題ない。他にも要件はあるが簡単に回避できたり受給後満たせば問題なかったりする。生活保護受給は非常に簡単だ。FIREよりも生活保護の方が圧倒的簡単だ。

○自由度
 FIREすれば大量の時間が手に入る。生活保護も大量の時間が手に入る、のはその通りなのだがめんどくさいこともある。若い生活保護受給者とかだと役所から「君働けるでしょ?」って言われて就労指導を受けたりする。勿論「働く意思はあるけど働けません!」ってことを証明すればいいだだけなのでハローワークに行く、職に応募するなど就活実績を作れば回避は可能だ。でもめんどくさいちゃめんどくさい。また、ケースワーカーが定期的に訪問してくる。訪問頻度はそこまで高くないけどプライベートがちょっとは侵害されたりするかもしれない。生活保護はかなりの自由はあるが完全な自由はない。

○結論

FIREに向いてる人:FIREできるだけの年収がある人、世間体を気にする人、完全な自由を求める人

生活保護に向いてる人:そこまで年収が高くない人、世間体を気にしない人

こういうふうまとめられる。これってもしかして8割以上の日本人にとってはFIREよりも生活保護の方がいいのでは?と思ってしまう。日本人は世間体をよく気にするとは言え難易度が段違いすぎる。8割以上の日本人はFIREするためのお金を貯められない。生活保護は完全には自由ではないとはいえかなりの自由がある。ここを気にする日本人はあまりいないだろう。

投資本や自己啓発本で「労働からの解放!自由になれる!」ともてはやされてるFIREだが実は生活保護というもっと簡単な方法があったという「不都合な真実」もあるんだなぁ。


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