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心を取り戻す

先日の出張で、大阪から京都まで国道1号線を走ってみました。1時間半。そして京都から近江八幡まで国道1号から8号線を走って見ました。1時間半。先日書いた「都市近郊」という地域と文化がはっきりと見えました。都市から溢れ出した家と道とビルが野を削り山を潰して広がってました。大阪を出て守口、門真、寝屋川、枚方、八幡まで来るとようやく、緑が多く感じられました。京都を出て山科、大津、石山、草津。京都から大津に溢れ、遂には草津まで広がったコンクリートの町並みを見ました。

ヨーロッパの街は昔から城郭に囲まれ、石で作った町に人は住みました。自然は町の外に追いやられました。自然は人の外にありました。日本人、今は多くの人がコンクリートの中に暮らしています。石の塀に囲まれた中で暮らしているようです。日本中どこでも同じものを食べ同じ景色を見て。そして、

郊外の生活は、核家族化の中にありました。家族は一人ひとりが自分の部屋を持ち、自分のプライバシーというものの中で生活をしています。ネットの便利さを通じて世界とつながり、あらゆる文化とつながることができるようになりました。もう5G の時代がすぐそこにきています。

便利さの中で失った人との繋がり。ネットで満足しているようで、実は人との触れ合いに飢えている世代が生まれているようです。

「ここに、複製による芸術経験の特徴を見ることができます。すなわち、複製の経験は個人化し、経験の様式は自閉的なものになります。それは芸術だけのことではなく、われわれの生活様式全般に広く見られる現象です。しかし、とくに芸術の場合には、これを重大な変化と見るべきところがあります。かつて芸術は、公共性を形成するという役割のものであったと言えるからです。」
「人は社会的な存在で、人との交わりを欠くとき、心は病みます。複製に伴う自閉的体験は、その広範な現象の一部であるとともに、その傾向を助長しているに相違ありません。「オリジナル」の持つ長所として、共同体験という面を挙げることができます。この芸術観賞という経験は、社会生活へとフィールバックされて、社会の健康を回復させる力となります。」
    美学への招待 佐々木健一著 中央公論新書刊 より

社会が知らず知らず、人と人の関わりが疎くなるように変化してきています。その社会で芸術やアートが果たす役割がなんとなく掴めたようです。そして、特殊と言われてきた日本の工芸アートが世界に果たす役割は、自然と人との関わりの大切さと素晴らしさを伝えることだと。そして疎外された人の心を癒す力があることを世界に伝えることだと思います。


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