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離婚道#27 第3章「父がトンボになった時」

第3章 離婚前

父がトンボになった時

 父が他界して2週間後の11月11日。私と雪之丞は出張で京都のマンションに来ていた。
 行きつけの京料理店の予約がとれなかった。いつもなら、雪之丞から「とろいヤツだ。なんでもっと早く予約しておかないんだ」と責められるところだが、さすがの雪之丞も父を亡くしたばかりの私にはキツくあたれないのだろう。この時は叱責されず、ホッとした。結局、鴨川沿いのホテル最上階にある鉄板焼き店「秋津」での食事になった。
 父にもう会えない――と思うと、まだ涙が出てくる。そのうえ、3億の借金を抱えたアキバ電工のことなど、問題山積である。
 私の沈鬱な気持ちとは対照的に、寺尾家のことに無関心な雪之丞の機嫌は良かった。
「寺尾さんはいい人だった。まどかが完成させた個人史を葬式で配ることができて、寺尾さんも喜んでいたと思うよ」
 そう言って、雪之丞はビール、私は赤ワインで献杯した。
 嵐の中でたまに訪れる穏やかな夜だった。
 すると、なにやらおごそかに雪之丞が話しはじめた。
「先週、ゴルフ場の18番ホールでのグリーン上にトンボがあらわれたんだよ。こんな時期にトンボがいるのは珍しいと思って見ていると、トンボは私の周囲をずっと飛んでいるんだ。まどか、私はすぐに寺尾さんだとわかったよ」
「へぇ~、父親がトンボになって出てきたの?」
「そうだ。私にはすぐわかった」
「ふ~ん。そうなんだ。先生にはよくそういうことあるからね」
 雪之丞はその手の話をよくする。
 数年前に古武術の師匠が亡くなった後も、雪花堂の窓から見たこともないようなキレイな鳥が舞い込んできて、能舞台にとまったという。その時も「師匠が鳥になってきてくれた。私に『がんばってるね。伝授した古武術をよろしく頼む』と言いに来たんだね」と話していた。
 私には本当に師匠が鳥になったのか、わからない。あるいは師匠の魂が鳥に宿ったことを意味しているのかもしず、それもよくわからない。ただ、雪之丞がそう感じて、気持ちよく毎日を過ごしてくれれば、それでいい話だった。
 ゴルフ場のトンボも本当に父の進なのかわからないので、「そうなんだ」としか言えずにいると、雪之丞はその話を続けた。
「トンボの寺尾さんが、私の頭にとまったんだ。かなり長い時間とまっていたよ。そこで私は、『まどかとは籍を抜きますけど、まどかが一生困らないようにちゃんとしますから、安心してください』と伝えた。すると、トンボの寺尾さんは、安心して飛んでいったよ」
「え? 先生、私と離婚するの?」
「あぁ、籍を抜く。まどか、私は誰の生まれ変わりか知っているか?」
「世阿弥でしょ」
「そうだ」
 雪之丞は、仕事に奮起しようと意気込む際、以前から「世阿弥の生まれ変わり」と言うから、私は話を合わせてきた。
 心から雪之丞を尊敬していた時は、それを信じた。いまは、雪之丞への尊敬の念が失せ、舞台革命の実現も怪しいと思っているので、「世阿弥の生まれ変わり」と言われても「そうですか」としか思わなくなった。
 雪之丞の話は続いた。
「世阿弥が遺した芸術論を私が今生で深化するには、それに専念しなければならない。私はもう69歳だからね。あと10年が勝負だと思う。私にはわかるのだが、ひとりにならないと、高い世界に行けないんだ」
「結婚してると、高い世界に行けないんだ」
「そうだ。高い精神性が求められる世界なんだ。世阿弥も晩年は佐渡に流され、悲運の人生だった。大きな仕事をする人は皆、最後は孤独だ。だから、私はまどかと籍を抜く。しかし、トンボの寺尾さんと約束したように、まどかの生活は困らないように私がするから大丈夫だ。まどか、理解してくれるね」
「・・・・・」
 この時の私の感情はどうだったか。
 ――雪之丞は、藤田と結婚するつもりなのか? 私が父親のことに追われている間に、ふたりはそこまで進展したのか? 着物の手入れや半衿の付け替え、食事のサポートなど、藤田に私の代わりができるのだろうか。藤田は、おじいちゃんのような年齢の雪之丞と結婚してもいいと思っているのだろうか?
 だが、そんなどうでもいい話はすぐに頭から消え、
 ――いい話だ。これでやっと解放される。
 と安堵していた。
 だって、そうだ。私は十分がんばった。雪之丞に十二分に尽くした。
 振り返ると、最初の12年は、病気が続いた雪之丞を見捨てることはできなかったし、自分で選んだ脇役人生だから、雪之丞が世の中に評価される仕事をして舞台革命を成し遂げるまでは途中で自分の役割を投げ出すことはできなかった。
 5年前からの2年間は、私に浮気や覚せい剤、窃盗などの各種容疑がかけられ、雪之丞の脳が正常かどうか心配しながら、必死で潔白を訴え、おぞましいような執着と追及にひたすら耐えてきた。
 藤田奈緒の登場によって、雪之丞から私に対する執着が消え、ある意味解放されたものの、さらにひどい暴言を浴びせられ続け、時に暴力的な被害も受けた。しかしそれと並行して父親のがんが悪化し、夫婦関係を維持するしかなかったのだ。
 そうこうしているうちに、私は49歳。もう自分から離婚を切り出すこともできなかった。生活の不安があったからだ。
 ところが、どうだ。雪之丞はいま、自分から離婚を切り出し、私が生活できるようにするとまで言った。
 京都のマンションをくれるというのか。7年前に現金一括購入し、年に数回しか利用しない物件だから、それを手放したところで、雪之丞の懐にはこたえないはずだ。
 あと、雪花堂に貸した500万円は絶対に返してもらわなければならない。そうすれば、なにか書く仕事を再開して、生きていける。・・・・・
 そんなことをあれこれ考え、私は口を開いた。
「先生、わかりました。離婚することで先生の仕事がうまくいくなら、離婚します。私は今後ひとりで書く仕事をがんばっていきます。籍を抜くというのは、いつ?」
「それは私が決める。そう遠くない時期に、まどかとは籍を抜く」
「わかりました。住むところや仕事の準備があるから、籍を抜く時期については、前もって言ってください」
「わかった。じゃあ、もう一度、トンボの寺尾さんに献杯しよう」
「献杯!」
 ――トンボの父ちゃん、ありがとう! と、私は心の中で父に感謝した。

 出張から帰り、京都土産の「阿闍梨餅」を手に、私はすぐに実家に向かった。
「ただいま~」
 家に入ると、仏壇に直行し、菓子を供え、父親の遺影に手を合わせた。父は本当にいい顔をして笑っている。
 父の次は母に報告である。
「ママ、あのね。ゴルフ場にトンボになってお父さんが出てきてね、先生の頭にとまったんだって。それで、先生はすぐにそれがお父さんだとわかってね、『まどかと籍を抜きますが、まどかが一生困らないようにするから安心してください』と伝えたら、トンボが安心して飛んでいったんだって。だから、先生と離婚することになった。お父さんのお陰だね。借金を遺して死んでいったけど、トンボになって、私を救ってくれた。先生の都合で離婚するんだから、きっと財産分与もちゃんとしてくれるよ」
「なにそれ? 先生の頭、やっぱりおかしいけど、まーちゃんもそんな話、信じてんの?」
「父親が本当にトンボになって出てきたかはわからないけど、先生がそう思い込んで、『まどかが一生困らないようにするから、籍を抜く』ってトンボと約束したのは、いい話じゃん」
「そんな話、お母さんは信じてないよ。まーちゃんはまだ先生が立派な人だと思ってるの?」
「浮気を疑われてからは、立派な人だとは思ってないよ。それに40歳も若い弟子に夢中になってる様子を見て、先生もただの男なんだってわかったから。でもね、修行僧みたいに真面目だし、毎日神仏に手を合わせて信心深い人だから、死んだ父親と約束すれば、さすがにその通りにしてくれるよ」「まーちゃん、バカじゃないの⁈ なんで『ボケ』とか『気持ち悪い』とかさんざん言われて懲りないの? 先生はまーちゃんが思っているより、ずっと俗人だとお母さんは思うね。浮気を疑った時だって、相手がヤクザだ、風俗の男だ、黒人だ、実の父親だ、それに覚せい剤をやってるとか、妄想の内容が欲まみれの俗人そのものじゃない。人格者なら、そんな妄想はしないよ。すぐ人をドロボー扱いするのも、お金に汚い人間だからだよ。別れて縁を切ろうとするまーちゃんに、先生はまともに財産分与なんかしないと思うよ」
「そんなことないよ。前の離婚の時、先生は『全財産を妻に渡した』って言ってたし、養育費も毎月20万円ずつ、下の子供が成人するまできちんと振り込んでたよ」
「それは子供には払うよ。でも、妻に全財産渡したっていうのも、本当じゃないと思うよ。先生はそんなことする人間じゃないよ」
 母とそんな会話をしてからひと月半後の年の暮れ、雪之丞はいまだかつてないほど不機嫌になった。たいてい藤田が帰省すると、不機嫌になるのだが、この時の荒れ方は酷かった。
 夕食時、向かい合っている間も終始無言。黙食は日常的となっていたが、不機嫌と私への嫌悪感が丸出しである。箸で食べ物をつまんで口に運んだ途端に目をつぶる。顔を正面に向けたまま、目の前の私が視界に入らないよう、咀嚼そしゃくする間はずっと目を閉じている。次に箸を動かく時にやっと目を開くのである。
 口を開けば「ボケ!」「ド汚い!」と私を罵倒する。
 年末年始は都内のホテルに2泊3日で宿泊するのが恒例行事だ。この年もいつも通りホテルに泊まったのだが、雪之丞は31日の大みそかの格闘技を見て、ますます私に攻撃的になっていた。
 元日夜はホテルのイタリアレストランでの食事だった。
「先生、お正月だから乾杯しますか?」
 高級店という場所にも気を遣い、雪之丞には腫れ物に触るように接しながら、自宅から持参してきた雪之丞用の銀製ビールグラスとロブマイヤーの携帯用ワイングラスの2種を素早く取り出した。前述したように、雪之丞は洗剤で洗った店のグラスを使わない。そのためイタリア料理店では、乾杯ビール用とボトルで頼む赤ワイン用の2種のグラスを用意しなければならないのである。
 店員に瓶ビールを銀製グラスに注いでもらい、私はシャンパンをグラスで注文し、夫婦バラバラのグラスを合わせた。さっさと食事して部屋に戻ろうと思い、ナイフとフォークを持つと、
「まどか、私は節分で籍を抜く」
 雪之丞はピシャリと言い放った。
 節分の2月3日まで、あと1カ月しかない。早々に離婚の準備をしないといけない。これは忙しくなった、と思いながら、
「わかりました。急いで、住む場所を見つけます」
 すると雪之丞が一瞬、苦虫をかみつぶしたような顔を見せ、不機嫌な口調のまま続けた。
「節分に籍を抜く。まどかには一銭もやらない。ただし、今まで通り、同居して食事を作って、雪花堂の仕事をすれば、毎月の給料は支払う。いいね」
「え⁈ それ、話が違う。先生、京都の『秋津』で話したトンボの約束と違う」
「何をくだらんこと言ってる! まどか、自分がしたことを、よくよく考えてみるんだね。私はまどかがやってきたことをずっと知っていながら、我慢して暮らしていたんだ。まどかが自分のしたことを悔い改めて、これまで通り食事を作って、私を支えてくれたら、私はこの世を去る時、まどかに財産を遺す。しかし、節分に籍を抜く時は一銭もやらない。そういうことだ」
「先生、私が何をしたの?」
 高級店である場所を考え、私は小声で訴えた。
「私は浮気もしてない。覚せい剤もしてない。窃盗も殺人未遂もしてないよ。財産分与もなく離婚して、そのうえ同居して3食作って給料をもらうなんて、ただの家政婦じゃん。なんで、離婚して先生の家政婦にならないといけないの?」
「まどか、家政婦になれと誰が言った? 籍は抜くが、これまで通りの生活をするだけだ。まどかの行動次第では、この先、私はまどかと再婚するかもしれないし、まどかがこれまで通り、一生懸命私を支えてくれれば、財産を遺す。それは約束する」
「先生、無理です。籍を抜いて他人になれば、財産を遺すなんでできないはずです。私は新聞記者をやめて17年間、先生を支え続けました。この前、『秋津』では、先生が高いところにひとりで行きたい、そのかわり離婚する時は私の生活が困らないようにすると言ったから、離婚に応じましたけど、いきなり話が変わって一銭もやらないというのは納得できない。私は離婚したら、自分の人生を生きていきたい。先生の家政婦で人生を終わりたくないから、離婚する時は家を出ます」
 雪之丞はとたんに鬼の形相になった。
「わかった。家を出るというのなら、節分を待たずにすぐに出て行け!」
 さすがの雪之丞も高級店という場所柄、声のトーンを下げていたが、特有の太い声とその声に乗せた不穏な言葉に反応して、周囲の家族連れがこちらをチラチラ見た。
「まどか、これ以上、店に迷惑をかけるな。この話は終わり!」
 店に迷惑をかけているのはどっちだ。
 その後、元旦スペシャルのフルコース料理を黙食し、ホテルの部屋に戻ってもほとんど口をきかず、帰宅した。

 平成31(2019)年の正月休みが終わった。
 藤田が上京すると、期待通り、雪之丞の機嫌は良くなった。そうして節分で籍を抜く話は自然消滅したのだ。
 あれはいったい、何だったのだろう・・・・・。
 下手に出ると、失敗しそうだったので、様子を伺うしかない。
「籍を抜くが一銭もやらない」という身勝手な発言は、雪之丞の不機嫌が言わせたもので、どうやらその考えに一貫性はないようだった。
 ところが、節分を過ぎると、再び雪之丞の不機嫌がはじまった。今度の不機嫌の波は非常に荒々しい。「ボケ」「気持ち悪い」の暴言を受けない日がないくらいで、私はこの荒波を必死に耐えた。
 2月下旬、富田に話をきいてみると、なんと藤田奈緒が節分後の2月4日から北海道に帰ったまま、戻ってこないという。藤田の帰省が長引いているのは「伯母の病気」が理由という。なんとも不可解な話だ。
 その後、雪花堂の給与支出をチェックし続けたところ、2月の藤田への給与支給額は2日分だけだった。やはり節分以降、出勤していない。3月はゼロ、4月もゼロ。藤田の帰省は長引いているようで、誰も生活していない17万円のマンションの賃貸料だけが雪花堂の口座から引き落とされている状況が続いた。そして雪之丞の不機嫌も続いていた。
 5月上旬、3カ月ぶりに藤田が上京したようだ。富田が教えてくれた。
 これで機嫌が直ると思ってホッとしていると、意外にも、雪之丞の不機嫌が改善しない。
 そして5月13日夜、「話があるから座れ」という。
「まどかとはすぐに籍を抜く。金はやらないが、同居して食事を作れば、給料は出す」
 内容としては前回と同じなので、私が「離婚したら家を出る」と同じ対応をすると、雪之丞がいう。
「まどかは勘違いしている。私とまどかは共同経営者なんだ。私が舞台革命をして雪花堂を大きくするための、共同経営者なんだよ」
 舞台革命? もう、その手には乗らない。私が「籍を抜く時は家を出る」という従前からの考えを伝え、また話は終わった。
 雪之丞の真意は何なのだろうか、と私は考えていた。
 藤田奈緒と再婚などあり得ない感じもする。富田も同じように言っている。
 だとすると、仕事の影響だろうか。独善性を増している雪之丞の仕事があまり順調ではないように思うからだ。
 というのも、長い間、顧問料の入金があった2社の顧問契約が少し前に終わった。雪之丞から定期的に呼吸法と身体操法の指導を受け、雪之丞に尊敬の念を示していた俳優の天草薫風もどういうわけか雪之丞の元を去ったようだ。舞台関係の仕事でも、新しい仕事が思ったように発展していかない。明らかに、ここ数年の雪之丞の不安定さが仕事に影響していると思われた。雪之丞は仕事上の焦りから、妻の私にあたり散らしているのではないだろうか。
 食事や身の回りのこと、雪花堂の経理事務など私に依存した雪之丞の生活は変えられない。しかし、離婚したがっている。悪に手を染めたド汚い私と籍を抜けば、仕事が上手くいくとでも思っているのだろうか・・・・・。

 6月になって、離婚話はさらに一歩進んだ。
 6月3日のこと。食事中、雪之丞は突然「話がある」と前置きし、いきなり言い放った。
「籍を抜く。まどかが家にいるか出ていくかはまどかの好きにすればいい」(え⁈……)
 なんと、雪之丞は同居を求めなくなったのだ。
 私が「家を出る」と従来からの考えを示すと、雪之丞は「わかった。それで終わり」と打ち切ろうとした。
 私が「ちょっと、待って」と再度トンボの約束の話を持ち出し、財産分与を話題にしたが、雪之丞は取り合わなかった。
 とりあえず、私が家を出る準備に1カ月ほどかかることを話し、雪之丞は「出ていく時は私の着物のことがわかるようにしておけ」と具体的な指示をして話は終わった。
 
 雪之丞は離婚を猛烈に急いでいた。
 少し前までは、離婚後も私との同居を強く望んでいたのに、状況が変わった。
 藤田奈緒との関係の変化なのか、さっぱりわからないが、藤田とのことは、もうどうでもよかった。
 日替わりランチのように言うことがコロコロ変わる雪之丞が、どれほど本気で離婚したがっているのかわからない。しかし、何も悪いことをしていない私が、きわめて不利な条件で一方的に離婚を迫られているのは確かだ。将来の不安が重くのしかかり、眠れない。深く息が吸えない。生きている心地がしない。
 雪之丞がもう一度、本気を見せた時が怖い。強引に家を追い出されるかもしれない。もう、いい加減にこちらから行動に起こさないと、私の人生は終わると思った。
 49歳の自分には、執筆で生活できる自信は全くない。一銭も財産を分与されずに離婚したら、どうして生活していけばいいのか・・・・・。一方、雪之丞の虐めを我慢して婚姻生活を続ければ、生活の不安はない。・・・・・いやいや、これでは問題の解決にならない。
 ・・・・・いや、しかし、本当に雪之丞は、私なしで生きていけるのか・・・・・。ダメだ、この考えも、もう排除しなければならない。
 何年も前から断続的に発症していた腹痛や吐き気が一層激しくなり、もう限界だった。
 離婚では絶対に失敗したくない。しかし、雪之丞とは話し合いにならない。
 だが、相談できるのは母親だけ。その母親も、父が死去したばかりで、家のことで精一杯だろう。75歳、高齢の母にあまり負担はかけたくない。
 やはり、第三者に仲介してもらないと解決できないだろう。そうなると、やはり守秘義務のある弁護士か・・・・・。しかし、弁護士に相談すれば、すぐに離婚ということになってしまうかもしれない。本心をいえば、雪之丞と争うことが怖いのだ。・・・・・
「離婚問題 相談 親身なアドバイス……」
 私はGoogle検索で思いつくキーワードをひとつずつ入力した。
 ――グーグル先生、助けてください。
 追い詰められ、もう土俵際。すがる思いで、検索しまくったのである。

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