古村猫海

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伊藤若冲「白象群獣図」格子画

佐藤康宏氏著『絵は語り始めるだろうか 日本美術史を創る』 驚いたのは、プライスコレクション「鳥獣花木図」が伊藤若冲作ではないこと。え~~っ、NHKで散々若冲作と喧伝され、被災地へ貸し出し美談まで報道されていたのに。 「白象群獣図」が真作、「樹下鳥獣図」が工房作、「鳥獣花木図」は作者不明模倣作と。 ところで本書表紙にはその真作「白象群獣図」(部分)が印刷されている。実物は方眼の1辺が9mmということだが、印刷では5mmなので約56%に縮小されている。 この900頁以上の大部を読

    • 芦雪贋物にひっかかる

      佐藤康宏氏著『絵は語り始めるだろうか 日本美術史を創る』第9章 真贋を見分ける 三節 真贋の区分 では、浦上玉堂・伊藤若冲・曽我蕭白らについて本物と贋物の比較を記したうえで、「最後にひとつの試験をしよう。」と、長澤芦雪の「海老図」左側のページに図13と図14(いずれもモノクロ図版)が並べられ、どちらが本物でどちらが贋物かを問うている。正解はめくったページにある。 伊勢海老の体は図13のほうが濃く塗られている。 尾は、図14のほうがプリプリとしている。 ムッ、図14の海老の目が

      • 入善町下山芸術の森 発電所美術館「寺林武洋展LIFE」

        入善町 下山芸術の森 発電所美術館「寺林武洋展LIFE」行ってきた。 館内に入ると作家さんが公開制作されている。発電所跡の館内を描かれているようだ。 展示の作品を見ていくと、道路標識の丸ゴシック文字が印刷のようにきれいに描かれている。これはちょっと、文字に着目して拝見することになるかも。 広島市安佐南区の風景。自分なら肉眼でこう遠くまで細かくは見えない。デジカメを使えば、普段見えないものも見えるようになるが、作者はよほど視力が良いのだろうか。 入館者の方と作家さんが談笑をされ

        • 「海と生きる 記憶をたどる物語」展〈追補〉

          〈追補〉いえいえ、小学校舎が斜めになっているのは、画面枠がずれているのでもなく、超現実でもない。作者たちが制作前に東日本大震災(大津波)のレクチャーを受けていたとすれば、その凄まじい力が巨大な小学校舎をも傾ける脅威として表現されたのではないか。そういえば、作品の一つには、斜めになった校舎の下に津波で流されてきた家屋とも思えるものが描かれていた。

        伊藤若冲「白象群獣図」格子画

          黒部市美術館「海と生きる 記憶をたどる物語」展

          黒部市美術館「海と生きる 記憶をたどる物語」展行ってきた。 昨年秋に黒部市民等対象に当展への作品募集のチラシをもらっていた。(2023年9月25日締切) 生地小校舎を描いた作品が2点あったが、いずれも用紙に対して校舎が右肩上がり、つまり水平線が斜め右上になっている。写真を撮る時にカメラ右側を下げるとこうなるが、絵でこの発想はなかった。どういう意図があったのだろうか。今年の地震を踏まえてなら分からないこともないけれど、昨年描かれたはず。 その生地(黒部市生地地区)について、11

          黒部市美術館「海と生きる 記憶をたどる物語」展

          西田美術館「ART BOX 画家中坪弓子 肩に雨降り 日は背を照らす」展

          西田美術館「ART BOX 画家中坪弓子 肩に雨降り 日は背を照らす」展行ってきた。 まず1階通路で松本昌子さん人形展。作家紹介のお顔はどこかで拝見? その下にCHICOさんのコンサートチラシが。 はいはい。以前にお二人の対談動画を見たはず。 「試着をご希望の方は受付へ」 ? 人形を試着? 違います。その左にアクセサリーがあった。 壁のディスプレイは、百貨店のショウウインドーを思い出す感じ。 奥の展示室に入ると、暗い。左奥には人形?  「こんにちは」 作家さんのようだ。お

          西田美術館「ART BOX 画家中坪弓子 肩に雨降り 日は背を照らす」展

          第41回富山県高校生の平和作品展

          2月10日、第41回富山県高校生の平和作品展に行ってきた。(筆記用具=鉛筆を持ち込まなかったのでメモせず。以下一部不正確かも) 会場に入るとまず、新湊高校1年生の作品がまとまって展示。作品の下に制作意図などを記した紙が貼られているが、字がきれい。帰宅してから新湊高校って、書道教育に力を入れているのかと検索してみたが特に何も出ず。(注:書道コースのある高校もある) 高校生の字は汚いという、自分に寄せた先入観がそもそもおかしいのか。 富山北部高校の作品群。情デ(情報デザイン科

          第41回富山県高校生の平和作品展

          「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容

          『「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造・阿部展也・大辻誠司・牛腸茂雄』千葉市美術館 富山県美術館 新潟市美術館 渋谷区松涛美術館編 赤々舎 2023年 「ヴァルター・ベンヤミンは~アジェがそれまでの写真から「アウラ」を剥ぎ取り、」「一方、アジェの写真に対象そのものの「一種の物のけ」を感じた瀧口は」「瀧口がベンヤミンと同時期にほぼ同じことを感じ取っていたことは驚きである。」 アウラを剥ぎ取ったら一種の物のけも剥ぎ取られるのでは? いえ、まずアウラって何? ア

          「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容

          『高松次郎 リアリティ/アクチュアリティの美学』より、高松次郎《題名》

          大澤慶久氏著『高松次郎 リアリティ/アクチュアリティの美学』水声社、2023年 高松次郎《題名》という題名の作品。第一印象は、やっちゃったな。塗料を床にこぼして、こりゃ拭くのが大変だ。ウエスウエス、溶剤溶剤。 1斗缶から赤ペンキがあふれ出て、結構な範囲で木の床にこぼれている。本書にはカラー図版で1971年の初回バージョンが載っている。が、再制作に伴いいくつかのバージョンがある。このカラー図版のバージョンをver.1.1とする。 その構想時に描かれたものと思われる《ドローイング

          『高松次郎 リアリティ/アクチュアリティの美学』より、高松次郎《題名》