今更、のM1グランプリ2021 感想
初投稿です。音楽や映画、小説など、狭く浅く愛好してます。さて、M1グランプリ2022がいよいよ目前に迫って来た。僕はお笑いに特別明るい訳ではないが、M1グランプリは何故か復活後の2015年大会から毎回追いかけている。復活以前(2010年大会まで)のものにも興味を持ち、一応全大会見た。スーパーマラドーナ武智さんではないが、僕も決勝の順位や各審査員がつけた点数ぐらいは頭にこびりつくぐらいは、見た。そこでnote初投稿となる今回は、僕の狭い見識と偏見から、M1グランプリ2021の各組感想や個人的採点を載せていきたい。
はじめに云っておくが、『お笑いは素人が分析したり採点するものではない』という言説には反対だ。この言説は特に芸人が自ら口にするという印象が強い(お見送り芸人しんいちやウエストランド等)が、21年前に「芸人のネタに点数をつける」という画期的(?)なシステムの番組が誕生し、それが最早年末の風物詩とも云われる行事と化した以上、素人にお笑いを論じられることは避けられないはずだ。そういう風潮にお笑いファンが反発するならいざ知らず、まだ賞レースに出場する芸人自身が「素人が採点すんな」と言ってしまうのは、どうなんだろう・・・。勿論、誹謗中傷との区別はつけるべきだが。それでは始めよう。ちなみに画像は(これを見ずに『M-1グランプリ』は終われない!どこよりも早くM-1新王者やファイナリストが大集結する『M-1グランプリ 2021 世界最速大反省会』の無料独占生配信が「GYAO!」で決定!|Z Entertainment株式会社のプレスリリース (prtimes.jp))より引用しました。
1st ROUND 個人的各組採点
①モグライダー:83点
ともしげさんは素人目から見ても上手くはないと思う。が、芝さんの的確かつ無駄のないツッコミが冴え渡り、大いにウケをとった。キャラクターなどがアンタッチャブル・柴田さんとダブる気もするが、柴田さんは「~すんなよ馬鹿」という口癖があったりやたら眼鏡を触る癖がある為見る側の気が散るのに対し、芝さんのツッコミは手数も少なく、然るべきタイミングでジャストな言葉を発するので、スマートだ。良いと思う。だがともしげさんの緊張が伝わり、また、噛むといったミスも目立った為この点数となった。美輪明宏云々のネタよりも、二人のやり取りが面白い。
②ランジャタイ:80点
この辺りから実際の審査員による採点のインフレを感じた。志らくさんの96点は頷けるが、富澤・塙さんは点数が高すぎじゃなかろうか?個人的には、決して全く笑えない程ではないもののあまり乗れず、前評判程には心動かされなかった。「ギャグ漫画に影響された」だけあってアクションは冴えておりパントマイムとしては上出来だが、オチの「将棋ロボ」のくだりは意味不明で、舞台から捌けるタイミングも滑り気味だった。会場のウケはまずまずといった所か。
③ゆにばーす:82点
3年前の決勝進出時に「いっそしゃべくりでいったらどうか」と提案を受けたそうだが、そのアドバイスは的確だったと云える。巨人さんは「力が入り過ぎていた」と指摘したが、そうは感じなかった。川瀬名人もはらちゃんも終始いたって冷静だった。が、ネタの中身はというとかなり際どい。『相方に性的視線を注ぐ』くだりは2017年の初進出時にもあったので本人達が気に入っているようだが、あるあるではあるものの、リアルでダークすぎて笑えない。特にはらちゃんには格段の成長を感じたが危うさもあり、様子見でモグライダーより1点下とした。
④ハライチ:73点
決勝で見るのは5年振りなのでどんな気合の入ったネタかと思いきや、残念ながら期待外れだった。はっきり云って何処が笑い所なのかが分からない。岩井さんの理不尽なキレ方を笑えばいいのか、澤部さんの達者なリアクションなのか。どちらにせよ、他のコンビより一段劣ると云わざるを得ない。云うまでもなくM1は単独ライブではなく、普通のネタ番組でもない。自分のやりたい漫才と観客の心を掴む漫才のギリギリの境界線をみんな攻めてくる訳だが、今回のハライチはその線引きが緩すぎた。展開はなくやたらと時間も長い。売れっ子だから何をしても良いということは決してなく、観客や視聴者を置いてけぼりにし過ぎだと思う。
⑤真空ジェシカ:92点
面白い!1つ1つのボケが練られており、ガクのおどおどツッコミがいかにも関東という感じで特色がある。「隣町の地図を踏めるか」「理系のおばあちゃん」「 “Help me” のハンドサイン」のくだりには爆笑したし、ネットの流行やインテリ感を絶妙に取り入れて、観客が“ギリギリ理解できる”ラインを攻めていた。そういう意味では霜降り明星と近いものもあるかも。コメント含め、学生お笑い出身らしい余裕も垣間見え、確かな実力を感じさせる。実際の審査員も強い否定コメントは出さなかったが、そのはずだ。現時点で最高点。
⑥オズワルド:93点
こちらもレベルが高い。勢いでごまかす箇所は微塵もなく、淡々と台詞を積み上げてゆく。「詐欺の話で詐欺に遭ってるじゃん」等、細部も抜かりない。昨年までとは違い畠中さんにサイコパス要素を追加したことで新境地の感も。「サイズの合わないズボン」や最後の伏線回収まで周到で、爆笑というよりも減点すべき要素が見当たらない感じ。強いて不満を挙げるなら、オズワルドはいつも「先輩芸人と食事」「相方の改名」「相方が友達ゼロ」とネタの設定が狭く、興味を惹かれない。ボケが飛躍せず、想像の範囲を超えない。更なる成長の余地あり。
⑦ロングコートダディ:84点
小さな子供には大ウケしそう。シュールに走る寸前でとどまっている印象。コント出身らしく設定のおかしさと個々のワードセンスで勝負をかけたが、その為、漫才“らしくなさ”はやや悪目立ちし、それが巨人さんに引っ掛かったか。僕は面白かったが、やはりベースは天丼なのでハマり切らず。これといって大きな欠点があるとも思えないが、何度見ても新鮮な驚きや笑いを得られるかというと、そうはならない。ややリアクションに頼り過ぎな部分もあり、喋り方を見てもやはりコント向きのコンビなのだなと実感。
⑧錦鯉:89点
2020年よりずっと良い。まさのりさんは特別捻った事を言っている訳ではないし、既視感が全く無いかと問われれば嘘になる。が、やはり面白いのである。まさのりさんの何処か“イッちゃってる”目も面白いし、クールダウンさせるかのような渡辺さんの小気味良いツッコミがいちいち絶妙。であるからに、僕は「頭が良くなる本を買ったよ➡早く読めよ」から爆笑。「50歳は最早お父さん」のボケも冷静に考えればベタ過ぎるが、実際にネタを見ている最中にそこには思い至らない。あの2人がやるからこそ、立派な唯一無二のボケだ。何より悲壮感が無いのが良く、『どんなネタでもそれなりに面白い』安定感を感じた。
⑨インディアンス:85点
相変わらず五月蠅く、中身はない笑。だが2020年より『わざと噛む』といった嫌なあざとさが消えて、好感を持った。中身はないなりによく組み立てられているのは分かる。塙さんの言う通り上手いとは思うし、田渕さんのキャラもそろそろ浸透してきた所だが、いかんせんツッコミがツッコミとして機能していない。僕は元々「しょうもない」ボケが嫌いで、そういう「しょうもない」ボケに対してキムさんは「うわ、しょうもな!」とツッコむのだが、そんなことは観客・視聴者全員が理解しているのであって、考え抜かれたパンチの効いたワードが皆無なのだ。
⑩もも:78点
笑える笑えないの問題以前に、色々と不自然さを感じない訳にはいかない。まず声の大きさ。抑揚というものが皆無で終始一本調子な為、4分が4分とは思えず、とても長く感じる。会話も食い気味で、いかにも先走っているのがありありと伝わってしまう。また、初っ端からマックスのテンションでキレ出すのも不自然。彼らの普段の芸風ではあるだろうが、いきなり喧嘩腰で漫才がスタートし、それが4分間続くと分かったらもう入り込めなかった。肝心の「○○顔」のボケも玉石混交の出来だ。「サカナクション」「転売ヤー」「漫画村」のボケは良かったが。志は高くとも技術が追い付いていない印象を受けた。上沼さんが低得点にとどまったのは意外。
FINAL ROUND
①インディアンス:79点
『何か面白そうなことをしている雰囲気』を醸し出すのは上手いが、その波に乗れなければ、実際は何故笑っているのか分からなくなる。CMネタを使い過ぎるのも冷めるし、低レベルで捻りのないボケの連打が続く。『拍手笑い』がやたら連発していたが、これはネタのクオリティとは全く関係がない。田渕さんが喋り出してからも暫く拍手が続くという状況は、観客が二人の言葉に耳を傾けていない証であり、外面の雰囲気だけで笑っていることを観客も分かっているのだ。やすきよの漫才と比べると一目瞭然だが、彼らの漫才では拍手笑いの頻度は少ない。やすしが何を言うか、みんなが耳を傾けているからだ。
②錦鯉:83点
一本目より雑になった感は否めない。錦鯉にはもっと面白いネタがあるので、それと比べると力任せに押し切っている感じが際立ってしまう。特にバナナの罠に引っ掛かるくだりは3回繰り返したが、繰り返す毎に冷めてゆく気がした。にも関わらず5票を集めて優勝出来たのは、ネタのオリジナリティーや力で押し切る運びを含めて錦鯉の『パワー』を審査員が感じたからだろう。志らくさんはTwitterで「馬鹿なだけかと思いきやシュールなオチには唸らされた」とおっしゃっていたし。個人的には、パワーと面白さは別かなと思ったが、そこは考え方の違いだろう。
③オズワルド:87点
一本目よりトーンダウンしたが、ネタの構造が複雑になり過ぎたせいだ。二人のやり取りだけで十分笑わせられる力を持つのに、畠中さんが一人二役を演じるという余計な事をした。一人がコントの役になりきるスーパーマラドーナじゃあるまいし、しゃべくり漫才で一人二役はやはり厳しい。「割り込みされてムカつく」という設定もオーソドックス過ぎて(最近どのコンビも多いが)、正直若干飽きている。そろそろ違う角度からのしゃべくりを見たい。恐らくこの既視感から優勝を逃したのだろう。それでも僕が最終ラウンドで最も高い点数をつけたのは、 “和牛”にも通じる凄味を感じたからだ。勢いに任せず淡々と笑いを積み上げるタイプで、「おじさんは幸せ者」「トマト」のように台詞・伏線回収にも神経が行き届いている。途中で笑えないほど噛んだのは手痛い失点だが、全体的に見れば完成度が最も高いのは明らか。迷った挙句、僕ならオズワルドに投票しただろう。
個人的順位まとめ
1st ROUND
1位:93点→オズワルド
2位:92点→真空ジェシカ
3位:89点→錦鯉
4位:85点→インディアンス
5位:84点→ロングコートダディ
6位:83点→モグライダー
7位:82点→ゆにばーす
8位:80点→ランジャタイ
9位:78点→もも
10位:73点→ハライチ
FINAL ROUND
1位:87点→オズワルド
2位:83点→錦鯉
3位:79点→インディアンス
先週放送された『THE MANZAI』を見た。2021年ファイナリストの中で出演していたのは錦鯉だけだったが、そのネタは非常に面白かった。なんなら、個人的にはM1の2本目のネタよりも笑った。やはり勢いだけでなく実力があるし、これからも面白いネタを書き続けられるコンビだと思った。気になったのは、近年のM1優勝コンビである『とろサーモン』が出演していないことだったが・・・。
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