甘き桃の香気を湛えし神秘の花姿に官能す。そは夜風にそよぐ絹糸の精。我が頬をそっと撫でておくれ

胸のときめき」「夢想」「安らぎ」「歓喜」「創造力」

という花言葉を持つ夏の樹木、『ネムノキ』
合歓の木の、合歓Nemuはおじぎ草やミモザの葉に似た、羽状複葉Ujyoufukuyouが夜になるに従い、左右の葉が合わさるように閉じる様に、夫婦和合、なかむつまじさ、円満の様子を見てとったからと、古くより中国に伝わるらしい。このように葉っぱの特徴からこの樹木の名前が浸透しているのは、少し残念である。
なぜなら、合歓の木の最大の特徴は葉っぱ以上に可憐でユニークなお花の形状により魅力を感じるからだ。
枝先に20個程の蕾が纏まって着き、夜になるに従いヒュルリとした糸状の花が一斉に伸び、その形状は化粧筆か刷毛Hakeの如くパヤパヤした柔らかい気品に満ちた姿を晒す。花の基部は銀白色で先端に移行するに従い淡紅色を際立たせる。白から紅へとなだらかなグラデーションの淡い美しさは、その甘き香りと共に優雅さの極みであろう。
ただ、このお花、実は、花びらではなく雄しべが糸状に伸びた集合体なのだ。

古くより、この神秘的花姿と香気に魅了されてか、俳句や短歌に読み継がれている。
合歓の花は夜に咲き誇り、その葉は逆に夜眠りに就くという正反対の矛盾を宿した不可思議な植物なのだ。


ウィキペディアより転載

昼は咲き 夜は恋ひ寝る 合歓(ねむ)の花
君のみ見めや 戯奴(わけ)さへに見よ― 紀郎女(きのいらつめ)

【現代訳】
昼は咲いて夜は恋いつつ眠る合歓の花を私だけが見て楽しんでいてよいものだろうか。
あなたも一緒に見なさいな。

▶万葉集に詠まれた紀郎女(年上)が、大伴家持(年下)に宛てて詠みし歌。

象潟や雨に西施がねぶの花
Sakikataya Ameni Seishiga Nebunohana 

▶松尾芭蕉『奥の細道』より。東の松島(宮城)、西の象潟(秋田)と言われる絶景地を訪問した芭蕉が詠んだ句。
西施は中国四大美女のひとり。
合歓の花が雨に濡れしなだれる様子を憐れんだであろう句。国王も絶世の美女に溺れ、国を滅ぼす羽目に陥った嘆きとも詠める。

その他、数々の俳人、歌人の皆さんが合歓の花を詠んでいる。
小林一茶、与謝蕪村、若山牧水、斎藤茂吉等々。


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