敵は本能寺に在り(てきはほんのうじにあり)

戦国時代の日本、各地で争いが続く中、織田信長は天下統一に向けて突き進んでいた。彼の軍勢は強力で、数々の敵を打ち倒し、その名声はますます高まっていた。しかし、信長の腹心である明智光秀は、その成功の陰で次第に不満を募らせていた。

光秀は賢明で忠実な家臣であったが、信長の冷酷な振る舞いや度重なる屈辱的な扱いに心を痛めていた。彼の心には徐々に不信と反発の念が芽生え、それはやがて大きな決意へと変わっていった。

ある日、信長は光秀に重要な任務を命じた。「明智、我々は本能寺に泊まる。敵はすぐそこにいる。用心せよ。」

光秀は信長の言葉に静かに頷き、深い考えに沈んだ。「敵は本能寺に在り…」その言葉は光秀の心に重く響いた。彼の心には、ついに反旗を翻す時が来たという決意が固まっていた。

本能寺の夜、信長は疲れを癒すために深い眠りに落ちていた。一方、光秀は密かに軍勢を集結させ、信長を討つ計画を練っていた。「このままでは、信長の暴虐は止まらない。今こそ、我が手で新しい時代を切り開く時だ。」

夜が更けると共に、光秀は静かに軍を進め、本能寺へと向かった。彼の心は冷静でありながらも、その胸には決意が燃え上がっていた。「敵は本能寺に在り。今こそ、その敵を討つ時だ。」

光秀の軍勢は本能寺を包囲し、火を放った。火の手が上がる中、信長は目を覚まし、事態の異変に気付いた。「これは…反乱か?」彼は刀を手に取り、外に飛び出した。

しかし、すでに遅かった。光秀の軍勢は圧倒的な力で本能寺を制圧し、信長は逃げ場を失った。炎が本能寺を包む中、信長は最後の力を振り絞り、戦い続けた。

「光秀…貴様か…」信長は炎の中で光秀の姿を見つけ、その目に怒りと悲しみを宿した。

「信長様、これが私の選んだ道です。天下は、もうあなたのものではない。」光秀の言葉は冷たくも決意に満ちていた。

最後の瞬間、信長は静かに目を閉じ、炎の中に身を投じた。その姿はまるで、歴史の一ページに刻まれるかのように壮絶であった。

その後、光秀は信長を討ったことによって新しい時代を迎えると思っていた。しかし、彼の行動は逆に多くの敵を生み、彼自身もまた短命に終わった。歴史は再び動き出し、天下統一の夢は新たな英雄たちの手に託された。

「敵は本能寺に在り。」その言葉は、光秀の決意と悲劇を象徴するものであり、歴史の中で語り継がれることとなった。

ことわざから小説を執筆 #田記正規 #読み方

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