壺中の天地(こちゅうのてんち)
村上(むらかみ)は仕事に追われる都会の生活に嫌気がさし、家と会社を往復するだけの日々に疲れ果てていた。目まぐるしい日常を逃れたいと思っても、すぐにどこかへ行ける余裕などない。ある夜、ふと立ち寄った古びた骨董品店で、一つの小さな壺に目を留めた。その壺には見慣れない模様が刻まれており、手に取ると何故か心が和らぐような気がした。
店主に「これはどんな壺ですか?」と尋ねると、店主は微笑みながら答えた。「これは『壺中の天地』。中に不思議な空間が広がっていて、時がゆっくり流れるのですよ