畳の上の水練(たたみのうえのすいれん)

藤田翔太は、大学の水泳部に所属する一年生だった。彼は泳ぐことが大好きで、小学生の頃からずっとプールに通っていた。しかし、大学の水泳部に入ってみると、レベルの高さに圧倒された。練習は厳しく、上級生たちはみな驚くほど速く泳ぐ。翔太は自分の実力不足を痛感し、もっと努力しなければと強く思った。

そんなある日、部活のキャプテンである斎藤先輩が翔太に声をかけた。「翔太、お前、もっと効果的に練習する方法を考えたほうがいいぞ。闇雲に泳ぐだけじゃなくて、理論を理解して練習しないと上達しないからな。」

斎藤先輩のアドバイスに従い、翔太は水泳の技術や理論について本を読み始めた。泳ぎ方のコツや体の使い方、スタートやターンの技術など、様々な情報が書かれていた。翔太はその知識を頭に叩き込み、イメージトレーニングを重ねた。

しかし、翔太の努力はなかなか実際の泳ぎに結びつかなかった。知識は豊富になったものの、それを実践することができなかったのだ。彼は焦りと苛立ちを感じるようになった。

そんなある日、翔太は部室で練習後の斎藤先輩と話す機会があった。「先輩、僕は本を読んで泳ぎの理論を勉強してるんですけど、なかなか実際の泳ぎに生かせなくて…。どうすればいいんでしょうか?」

斎藤先輩は笑顔で答えた。「翔太、それは『畳の上の水練』だな。本や理論で学ぶことは大切だけど、実際に水の中で練習しないと意味がないんだよ。頭でわかっていても、体で覚えないと上達しないんだ。」

翔太はハッとした。知識だけではなく、実践が必要だということに気づかされたのだ。彼はその日から、理論を実際の練習に取り入れることに専念した。毎日の練習で、少しずつ自分の泳ぎ方を改良し、先輩たちにアドバイスをもらいながら練習を続けた。

数ヶ月後、翔太の泳ぎは目に見えて上達した。理論と実践を組み合わせた練習のおかげで、彼はタイムを大幅に縮めることができた。翔太は自信を取り戻し、さらに努力を重ねた。

そして、大学の水泳大会の日がやってきた。翔太は自分の種目である自由形に出場した。スタートからゴールまで、一心不乱に泳ぎ続けた結果、見事に自己ベストを更新し、初めてのメダルを手に入れた。

表彰台でメダルを受け取る翔太を見て、斎藤先輩は誇らしげに言った。「翔太、おめでとう。お前は本当に頑張ったな。理論と実践をうまく組み合わせることができたからこその成果だよ。」

翔太は感謝の気持ちでいっぱいだった。「先輩、ありがとうございます。これからも『畳の上の水練』にならないように、実践を大切にします。」

こうして、翔太は「畳の上の水練」という教訓を胸に、さらに成長を続けることを誓った。そして、彼の努力と成果は、次の世代の水泳部員たちにも大きな影響を与えることになった。

ことわざから小説を執筆 #田記正規 #読み方

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