泣き面に蜂

タイトル: 『連鎖の不運』

美奈子は30代半ばの会社員で、長年勤めてきた出版社で編集者として働いていました。彼女の職場では、人間関係が複雑でストレスが溜まることも多く、最近では特に上司との衝突が絶えませんでした。

ある日、美奈子は仕事で大きなミスを犯してしまいました。その結果、重要なクライアントを失い、上司から厳しい叱責を受けました。彼女は深く落ち込み、家に帰ると一人涙を流しました。

「泣き面に蜂」とはまさにこのことだと思いながら、美奈子は翌日も会社に向かいました。家を出るとき、玄関先で郵便物を確認すると、そこには突然の家賃の値上げ通知が入っていました。新しい家賃は彼女の予算を大きく超えており、どうやって生活をやりくりすればいいのか途方に暮れました。

それだけではありません。職場に着くと、彼女のデスクには、今度は親友からのメールが届いていました。親友が突然の事故に遭い、入院しているという知らせでした。親友を心配しながらも、仕事を片付けなければならず、美奈子の心は不安と焦りでいっぱいになりました。

「泣き面に蜂」ということわざが彼女の頭をよぎります。ひとつの不運が続くとき、さらに別の不運が重なるという現実が、まさに今の彼女の状況を表していました。美奈子は仕事を早退し、病院に向かいました。親友の元へ駆けつけると、彼女はベッドの上で弱々しい笑顔を見せました。

「ごめんね、心配かけて」と親友が言いました。美奈子は涙を拭き、親友の手を握りしめました。「大丈夫、一緒に乗り越えよう」と、彼女は心からの言葉をかけました。

その夜、美奈子はふと考えました。どんなに厳しい状況でも、友人や家族、そして自分を支えてくれる人たちがいることが、どれほど大切かを。泣き面に蜂のような不運が重なったときでも、支え合うことで乗り越えられる力が湧いてくるのだと。


この物語は、「泣き面に蜂」ということわざを通じて、不運が重なる厳しい現実の中でも、人間の絆や支え合う力が希望をもたらすことを描いています。美奈子の経験を通じて、読者に困難を乗り越えるための勇気と希望を伝えるものとなっています。

 

ことわざから小説を執筆
#田記正規 #読み方

 

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