ただより高いものは無い(ただよりたかいものはない)

大学生の高橋健太は、勉強やアルバイトで忙しい毎日を送っていた。彼はとても倹約家で、できるだけお金を使わずに済む方法をいつも探していた。ある日、彼の友人である田中裕樹が面白そうな話を持ちかけてきた。


「健太、この新しいカフェ、オープン記念でドリンクが無料なんだよ。行ってみない?」


健太は無料という言葉にすぐに飛びついた。「本当に無料なのか?それなら行ってみよう!」


カフェに到着すると、確かにオープン記念でドリンクが無料と大きな看板が掲げられていた。健太と裕樹はさっそくカウンターに向かい、無料のドリンクを注文した。カフェの雰囲気はおしゃれで、ドリンクも美味しかった。


「これはラッキーだな」と健太は満足げに言った。


その後、健太はそのカフェに何度も通うようになった。無料ドリンクのキャンペーンは終了していたが、彼はお店のポイントカードを作り、スタンプを集めていった。ある日、店員が笑顔で話しかけてきた。


「高橋さん、いつもご来店ありがとうございます。実は、当店では常連のお客様向けに特別なイベントを開催するんです。参加費は無料で、美味しいディナーとドリンクが楽しめますよ。」


健太は無料という言葉に再び心を動かされた。「ぜひ参加します!」


イベント当日、健太は期待に胸を膨らませてカフェに向かった。カフェは豪華なディナーセットが用意されており、美味しい料理が次々と運ばれてきた。健太は大満足で食事を楽しんだ。


しかし、ディナーの終盤に差し掛かったとき、店員が特別なサービスを提案してきた。「高橋さん、今日のイベントをさらに楽しんでいただくために、特別なメンバーシッププランをご案内させていただきます。このプランに加入すると、毎月特別なイベントや割引が受けられます。」


健太は一瞬戸惑ったが、店員の巧みなセールストークに次第に引き込まれていった。「加入金は少し高いですが、長い目で見ればとてもお得です」と言われ、健太はついにそのプランに加入してしまった。


数週間後、健太はそのプランの詳細を見て驚いた。毎月の会費が思った以上に高く、結局それが家計に大きな負担となってしまったのだ。彼は悔しさを感じながらも、自分の判断ミスを反省するしかなかった。


「ただより高いものは無い」ということわざが健太の頭に浮かんだ。無料に飛びつくあまり、結局は大きな代償を払うことになったのだ。


その後、健太は友人の裕樹にこの出来事を話した。裕樹は笑いながらも「確かに、ただほど怖いものはないな。でも、いい教訓になったじゃないか」と言った。


健太はうなずき、「そうだな。今後はもっと慎重に考えるよ」と誓った。


それ以来、健太は「無料」という言葉に惑わされず、物事の本質を見極めるようになった。そして、無駄な出費を避けることで、倹約生活をさらに充実させることができた。





ことわざから小説を執筆 #田記正規 #読み方

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