大疑は大悟の基(たいぎはたいごのもと)
真弓(まゆみ)は幼い頃から疑り深い性格だった。何を見ても、何を聞いても、すぐには信じられなかった。「本当にそうなのか?」と、いつも心の中で自問自答を繰り返していた。
そんな真弓がある日、村の老僧・玄翁(げんおう)に出会った。玄翁は長年山中で修行を積んできた賢者として知られており、多くの人が彼の教えを受けに訪れていた。真弓は、疑り深い性格をどうにかしたいと思い、玄翁に助言を求めた。
「私は何事も疑ってしまい、心が休まらないのです。どうしたらこの性格を直すことができるのでしょうか?」
玄翁は真弓の問いに静かに答えた。「疑いを持つことは悪いことではない。むしろ、真実を見極めるための第一歩である。だが、疑いを持ち続けるだけでは心が迷い続ける。大切なのは、疑いを通じて深く考え、最終的に悟りに至ることじゃ。」
真弓は玄翁の言葉を聞いても、すぐには理解できなかった。しかし、その後も何度も玄翁のもとを訪れ、さまざまな疑問を投げかけ続けた。玄翁は決して答えを急がせず、真弓自身が考える時間を与えた。
ある日、真弓は大きな悩みに直面した。村の重要な決断が迫っており、真弓はその是非を判断しなければならなかった。しかし、どちらの選択が正しいのか、彼女にはわからなかった。悩みに悩んだ末、真弓は再び玄翁のもとを訪れた。
玄翁はいつものように静かに聞いていたが、最後に一言だけ言った。「すべての疑問が、最終的には自分自身の答えを導く道しるべとなる。今はまだわからなくても、深く考えることで答えが見えてくるはずじゃ。」
真弓はその言葉を胸に、さらに考え抜いた。そして、ついにある夜、答えが心の中に浮かび上がってきた。彼女はそれが正しいと確信し、翌朝、村の集まりでその答えを示した。村人たちは彼女の判断に納得し、その決断が村を救う結果となった。
その後、真弓は自分の疑り深さがむしろ大きな悟りに導いてくれたことに気づいた。彼女は「大疑は大悟の基」という言葉の意味を深く理解し、疑問を持つことが新たな真実を見つけるための貴重な過程であることを学んだ。
真弓はそれ以来、疑問を恐れず、それを糧にしてさらに成長していくようになった。そして、彼女の生き方は村の人々にも影響を与え、多くの人が自らの疑問と向き合うようになったのだった。
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