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特集1 人気漫画『デスノート』の死因の一つ、"心臓麻痺"について考える

<はじめに・・・言葉の正しい使い方をおさえましょう>

心臓が止まった患者さんの担当医師は、カルテに『心臓麻痺』とは記載しませんし、『心臓麻痺を起こしました』とも説明しません。『心停止(または心肺停止)しました』と説明します。

『心臓麻痺』は正式な医学用語ではありません。しかし一般には『心臓麻痺』=『心臓が止まった状態』として認識されることと思います。



<デスノートの心臓麻痺とは?>

デスノートとは、ノートに名前を書かれた犯罪者が次々に殺されていくお話です。
デスノートにおける心臓麻痺が何を指しているのかについて医学的に考察することはちょっと難しいですが、医師をはじめ、他の情報サイトなどで考察していらっしゃる方もたくさん見受けられますのでそちらも参考にして下さい。

私の場合、考察して文章を下書きしてみたらめっちゃ長くなってしまいました( ;  ; )。読者の皆様の読む気が失せてしまう懸念がありましたので、要点だけ書くことにします。


私の説はこうです

デスノートによる心臓麻痺="冠攣縮性狭心症"→"急性心筋梗塞"→"心室細動"→"死亡"

まずは言葉を一つ一つ説明します。

急性心筋梗塞は一般に動脈硬化の強い中高年に多く、心臓を養っている冠動脈と呼ばれる血管が物理的に詰まり、心筋細胞が死んでしまう病気です?言い方が悪いですが、ゴミカスが心臓の血管に詰まるイメージです。

・一方、冠攣性狭心症はゴミカスはないけど、血管が痙攣して縮んで細くなり血流が制限されたり、ひどい人は遮断されたりします。重度の人は心筋細胞は死んでしまいます。一応これも心筋梗塞に該当します。原因は喫煙が代表的ですが、その他ストレス脂質異常も原因の一つと言われています。

・そしていずれも心室細動(心室が痙攣する)になることがあり、ポンプとしてはダメダメなので、全身への血流が途絶え、放置すると死に至ります。

参考画像 慶應義塾大学病院 KOMPASより



一般的に急性心筋梗塞は胸痛で発症し、心室細動になりうる心疾患の代表格です。

デスノートでは心臓麻痺で死ぬ人が、死ぬ前に胸を抑えながら息絶える描写が多いようです。つまり、胸の痛みがあったと思われます。

以上のことを踏まえると、"デスノートの心臓麻痺"とはデスノートの呪いにより冠動脈が攣縮し、胸痛を前兆として発症。血流がほぼ遮断され、急性心筋梗塞となり心室細動に至ったものと推察されます

ちなみに私の説では「デスノートの呪い」も冠攣縮性狭心症の原因の一つとなりますね!喫煙よりもたちが悪いです。


死亡診断書に診断名をつけるのであれば「デスノート起因性冠攣縮性狭心症による心室細動」でしょうか。

死亡診断書 例



<デスノートによる心臓麻痺は救命処置で復活するのか?>

○結論
多分しません。なぜならデスノートの呪いは絶対だからです。

一般的に、もしシャバで心停止になった人を目の前で見た場合は、医療関係者だろうが非医療関係者だろうが、一次救命処置(BLS=Basic Life Support)を行うことを努力義務としています。

自動車免許講習でやった、、、そう、あれです!AEDを使ったりするやつ!

一次救命処置

デスノートは呪いの力が強すぎて、冠動脈は強烈に縮みっぱなしですから、一次救命処置をしても復活はしないと思います。



<最後に皆さんにお伝えしたいこと>

私が確認した限りでは、デスノートの物語の中で心臓麻痺になった人が目の前にいても、周囲の人は誰も一次救命処置をしていません(T ^ T)。

しかし!!

皆さんには是非この一次救命処置(BLS)ができるようになっていただきたいのです!!

デスノートの呪いにやられたら、BLSが適切にできていてもまず助かりませんが、現実世界では適切なBLSで助かる人が実際にいるんです!!



私たち病院に従事するスタッフは心肺停止で運ばれてくる患者さんをどうにか助けたい一心で全力を尽くしています。これまで私も救命に成功し、無事退院された患者さんからは「ありがとう」と感謝のお言葉をたくさんいただいてきました。

しかし、本当に感謝すべきなのは倒れた現場で迅速に一次救命処置をしてくれた人たち(もしかしたら家族かも)だと私は思っています

なぜなら、現場での彼らの絶え間ない心臓マッサージやAEDによる電気ショックがなければ、私たち医療者がどんなに頑張っても助からないからです。

「あなたが倒れた時に助けてくれた通りすがりの人がいたんです!彼らが頑張らなかったらあなたの命はなかったと思います!そしてその人への感謝の気持ちを忘れないで下さい!」
私は必ずそれを退院される患者さんにお伝えして病院から送り出します。


少しお金はかかりますが、一般の方でも受講ができるアメリカ心臓病学会のBLS講習プログラムがあります。世界中どこでも通用する蘇生処置の能力を養えます。資格がなくてもBLSは実施できますが、このプログラムを受けているか受けていないかで、自信が大きく変わってきます。少しトレーニングすれば誰にでも取得できますので興味があれば是非検討してみて下さい!
そして目の前で人が倒れた時、是非立ち上がって私たちと一緒に戦いましょう!



予防医Haruくんでした!

引き続きCase Conferenceや特集記事をよろしくお願いします!


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