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迷子

小さい頃の記憶なので曖昧なところもあるのですが、
迷子になった私が、交番の窓越から薄暗い外の通りを見ていると、母親たちが慌てて迎えに来る。気が付けばすっかり夜になっていた。
という迷子の体験を覚えています。
その部分の画だけはっきり覚えていて、そこまでの過程などは全然覚えていないという断片的なものです。
大きくなってから母から聞いた話によると、これは私が2歳ぐらいの時の事だったとか。

小津安二郎監督の「東京暮色」を始めて観たとき、何故かこの時の事が思い出されました。
それ以来、無意識に記憶の関連付けが出来てしまった様で、これを観るたびにその場面が脳裏に浮かんできます。

物語の中に薄暗い警察署でのシーンも出てくるので
その場面がシンクロしたのでしょうか。
小さい頃の記憶というものはだいたいがモノクロ映像ですから、それも関係していると思いますが。


「東京暮色」
そもそもは、小津作品にのめり込んだ事でこの作品を知り、
淡い記憶に関連付いたことで好きな映画の一つになりました。
以降、何度も観返すことになります。

これは小津作品全般に言えることかも知れませんが。
飽きずに何度も観れる依存性があって、
その一つの要素として、構図やファッションがいちいちお洒落で格好良いところが挙げられます。
実に巧みに仕込まれているので、観るたびに新しい視点が拾えて楽しいのです。

それにしても、、、
有馬稲子さんのツィードのコートとスカーフの姿は素敵です。
現代でもイケると思うし、恰好良すぎると思います。

それと、
主演が誰なのか良く解からなかったりもします。
だから「キャストの人数分だけ違う視点で楽しめる」という。
このあたりも「東京暮色」のあざとい面白さなのだと思います。

オープニングのクレジットを見ることで解るのは、役者序列の位置づけくらいで、そこからは主演が誰なのかは読み取れません。
しかし物語的には全員の視点でお話が進行するので、みんなが主役かな。

笠智衆、山田五十鈴、原節子、有馬稲子、杉村春子….
とにかくキャストが凄過ぎるので、
観ていて役者のインフレ状態が起きがちなのも小津映画の特徴。
この映画もそうです。


ところで、
昨日は久しぶりに親戚のおばちゃんに会いまして。
そうなると、
いつも出てく話題は半世紀以上も前の私が「迷子」になった前述の話。
私としては会うたびに同じ話を何度もされるので「またかよ」という感じなのですが。。。
しかしこの話をしている時のおばちゃんは、いつも瞳を輝かせてくれます。なんだか楽しそう。
私もそれが少し嬉しかったりして、つい初めて聞いたような素振りで聞いてしまいます(笑)
だからかな、会うたびに何度も同じ話をされるのは。


原節子さんのセーターが可愛い。という新たな発見(笑)

そういう訳で、
迷子の記憶を思い出すとやっぱり観たくなりますね「東京暮色」を。
昨夜もまた同じ映画を観たのですが、
原節子さんがこんな可愛いセーターを着ていた事に今まで気が付きませんでした(笑)
今回も新しい発見があったりして、結局一気に最後まで観てしまいました。


ストーリーに入り込んで観ていても、
視覚から入る映像と脳裏の映像は同じではない、人の脳は不思議です。
私が迷子になった場所を瞑想しながら観ていると、
妙に今のあの場所(交番)が気になりだします。

しかし、
それがあった通りの名前も、
当時の「細横町」から今は「晩翠通り」に変わりました。
残念ながら交番もその場所にはもうありませんから、
あの場所はある訳がない、なにしろ半世紀以上前のお話です。

寝る前に頭を過ったので、
ちょっと昭和40年代の古地図で調べたら交番がありました。
たぶんここだよね!
地図上ですが迷子の場所を見つける事ができてスッキリ(笑)
寝る前の少しの時間でしたが、とても良いひとときでした。

迷子の記憶と東京暮色のお話しでした。



最後まで見てくださりありがとうございました!


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