書評②(どうする財源-貨幣論で読み解く税と財政の仕組み)できれば、買って読んでみてください。

前回の続きである。本稿はP83~P115までの要約である。できれば、本書を買って頂き、詳細なデータや論理を読んでみてください。


政府債務を返済するには

本書では、以下の理由から、政府債務について税で賄う必要はないし、日本国政府においては、財政破綻(政府債務の債務不履行)することはあり得ないと主張している。
①政府は、政府債務を返済するために徴税よることはない。国債の償還期限がきたら、新規国債を発行して、同額の費用を借り換えをすればよい。
先進国においては、国家予算において、国債の利払費のみ計上している。これは、政府債務は完済しなければならないものと位置づけられていないということである。なぜか日本は償還費まで含めているが。
②そもそも、通貨発行している政府が、その通貨建ての政府債務を返済できないことはないし、国民から税を徴発して政府債務の返済にあてることはない。

本論は、貨幣循環論をベースとした議論であるが、現代貨幣論(MMT)も同様の議論を行っている。
つまり、政府は貨幣を創造できること及び税は政府支出の財源確保の手段ではないことを前提とした議論である。

あるべき財政論、経済政策とは

政府の財政支出を制約するものは

先ほどの議論から、財源とは公的な需要であり、貨幣を創造できる政府と中央銀行は、資金という点において制約を受けることはない。しかし、本書において、政府の財政支出には制約をうける要素があるとする。それは、実物資源である。政府が事業をする際にヒトとモノがなければ、事業そのものができないのである。

財政支出と経済成長の関係と日本

本書において、1997年~2017年の主要31か国の名目政府支出伸び率の平均と名目GDP及び実質GDPについて、相関関係があると論ずる。その上で、財政支出を伸ばせば、経済成長をすることができると主張している。
また、経済成長したから政府支出が伸びたとの主張に対しては、リーマンショックやコロナショックの事例を出し、経済成長が落ち込んだ際、各国が財政出動をしていたことからすると、前出の主張はかなり無理があるのではないかと反論している。
そして、日本は、名目政府支出伸び率の平均と名目GDP及び実質GDPについてダントツで最下位であり、日本は世界に冠たる緊縮財政の国家と断じている。

機能的財政論vs健全財政論

機能的財政論とは、財政支出を増やすか減らすか、増税するか減税するか、国債を発行するか否かについては、国民経済にどのような影響を与えるかによって判断するという考え方である。つまり、財政赤字や黒字が国民を幸福にするなら善、不幸にするならば悪という考え方である。
その上で、財政支出の判断基準をインフレ率とする。需要が供給を若干上回るマイルドなインフレ(供給を増やせば売れる状況、好景気)を理想の状況とし、高インフレとなるまで、政府支出を拡大すべきとする。
一方、健全財政は、財政赤字を常に悪とし財政黒字を常に善とする立場である。そして、財政支出の判断をプライマリーバランスや政府債務/GDPとする。
本書の立場はもちろん機能的財政論である。そして、健全財政論を資本主義以前の封建主義時代、信用創造が無い時代の財政観と論駁している。加えてプライマリーバランスや政府債務/GDPは国民経済にとって有害無益なものと主張している。
そして、この20年間デフレの日本の状況下においては、国民経済の観点からは財政支出は全く足りないと論じている。
ちなみに、昨今の急激な物価上昇は財政支出によるものでなく、別の理由があるが、それは後程論じている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?