近藤正樹

小説を書いています。 マジックリアリズムに憧れて、リアルファンタジー的なものを作ってい…

近藤正樹

小説を書いています。 マジックリアリズムに憧れて、リアルファンタジー的なものを作っています。 好きな作家はフォークナー、ピンチョン、ガルシア=マルケス、フローベール、ドストエフスキーです。 どうぞよろしく。

最近の記事

驟雨(SKOL)

 イサーン  その当時、東京で何者でもない生活を送っていたぼくは、チャオカイ・プラパンポンから一緒にタイに行かないかと誘われた。行きつけにしていたパッガパオガイカイダーオ(バジルと鶏挽肉の炒め物に目玉焼きを乗せたご飯)が名物の、タイ料理屋で知り合ったチャオカイは、ぼくの住んでいた界隈ではちょっとした有名人で、いつでも公園脇の街灯の下にいる立ちんぼだった。いわゆるナシナシ(竿ナシ玉ナシ)のガトゥーイ(レディボーイ)だ。肩甲骨の下まであるストレートヘア、胸のふくらみもしっかりと

    • 東京ポリティカ

       前口上 ここに取りい出したるは東京二十三区、花の大江戸八百八町。寝ても醒めても、起きても寝ても、みながみな飛んで火にいる夏の虫。恋焦がれ、病憑き、御手付き、狐憑き。東宝楽土に傘差してちょいと東京音頭踊ればブギウギ、三つ葉葵の雨が降る。将軍様のお膝元、日光からわざわざ徳川三尊のおでまし。家康、秀忠、家光公。御来光、願ったり叶ったり。江戸旗本退屈男、天下御免の向こう傷。白魚の佃煮、海苔の浮かぶ月島の、恵比寿が鰹に乗って飛び上がる。湯島で孔子が弟子を募れば、七人の弟子が宝船に乗

      • をかしのセカイ

         宇宙刑事ギャバンの生涯  スタンド、バー、居酒屋、スナック、クラブ、キャバレーの犇めく歓楽街を通り抜けて、コインランドリーとカプセルホテルに挟まれた、狭い公園がある。その公園の片隅に石碑が立っていて 「宇宙刑事ギャバン生誕の地」とあった。 古い雑居ビルに囲まれた鬱蒼と茂る雑草に埋もれて、石碑はひっそりと立っていた。  ヘラクレスの誕生 二〇〇七年十二月二十三日、午後十時十分。○田産婦人科病院の分娩室で助産師の励ましと妊婦の大絶叫と共に一万三六〇〇gの赤ん坊が産まれた。

        • プラハ・オリンピック

          序文と挨拶  二〇〇八年五月九日、わたしはプラハ・オリンピックに着手した。 これを読み、新しい世界へと入って頂けたら幸いである。 時は迫っているからでる。 硫黄島の説教師ヤン・フス  M2‐2火焔放射機(ブロートーチ)、携行爆薬(コークスクリュー)、手榴弾(パイナップル)の究極3点セットで武装した米軍海兵隊員が燃料タンクを背負い、島の到る所に開けられた土竜の穴、無数の掩蔽壕の入口に向けて虱潰しに放射機を噴射していく。地下通路網に潜み隠れ棲む土竜、鼠、残留兵は黒焦げになっ

        驟雨(SKOL)

          モナ・リザについて

          事故調査委員会報告書 ケース29 ブリッジマン  本件は被疑者死亡につき解決済み 被疑者フランチェスコ・ブリッジマンは失われた名画「モナ・リザ」(レオナルド・ダ・ヴィンチ作)を手に入れるため、1974・4・20東京・上野ポイントへジャンプした。本件の如く失われたもの・こと・ひとを求める事案、いわゆるマルセル・プルースト症候群はあとを絶たず増加の一途を辿っている。バタフライ効果による歴史改変は予測不能で、われわれの存在を脅かすものだ。この由々しき事態に対処し、模倣犯を抑止・防

          モナ・リザについて