栗本薫『ムーン・リヴァー』

結構自分にとって衝撃的な本を読んでしまった。(Kindle Unlimitedで読めてしまってお得だった。)

 沢田研二の誕生日だというのでちょっと検索していたら、昔主演した『悪魔のようなあいつ』というドラマの主人公が、栗本薫(『グイン・サーガ』で有名な作家)の『真夜中の天使』の世界の主人公今西良の元ネタというのを始めて知り、実はシリーズ全部は読んでいなかったことに今日はじめて気づいて、最後の作品を読んでみました。

 それが、これです。このシリーズ、栗本薫の中でもだいぶ読む人を選ぶ作品だと思うけれど(私にとっては栗本薫の中で一番好きなシリーズのひとつだったりする)、この前の『朝日のあたる家』で、主人公の透をめぐる三角関係(ものすごく簡単に言っちゃえばですが)は三角関係のままハッピーエンドで終わったのだと思っていました。でもそうではありませんでした。これは、主人公を見守る存在だった島津が変貌して透とこれまためちゃくちゃな関係になったあげく死ぬ話で、この話の流れは、すごく納得感がありました。著者はこれを書いて1年もたたないうちに死んでしまったので、続きが読めないのがつらい。生きていたら、三角関係のもうひとりの、今回は(刑務所の中なので)ほとんど出てこなかった良との話を絶対書いたと思うのに。
 これが栗本薫の結論だったのだろうか? とも考えても、そうだったとはとても思えない。透が、良と自分との関係を疑う様子が出てきて、それはそれでとても説得力があるのだけれど、それも、たぶん、次の作品ではがらりとひっくり返るはずだったと、それが栗本薫の書き方だったと思うのです。