【夏の終わりに中村先生と海に行く話】

※二次創作
※中村先生夢(夢主の名前の登場なし)


「あっづーーーーい! もう9月なのですが!?」
 窓を全開にして、途端吹きこんできた熱風に向かって叫ぶ。口の中まで湿った空気でぶわっといっぱいになる。
「そんでこの車は冷房の効き悪すぎなのですが!?」
 次は右隣を向いて、風とロードノイズの音に負けないよう叫ぶ。実際のとこそんなに叫ばなくても聞こえることは承知しているので、ただの八つ当たりだ。
「すまん……毎年夏になると買いかえようかなと思ってはいるんだが……」
「別にいいよーう、暑さに対するこのやり場のない怒りを何かにぶつけたいだけ!」
 ドアポケットに差してあったうちわ――ローマ字でオイカワサマーなんとかと書いてある――で顔を仰ぎながらぼすんと乱暴にシートの背もたれへ身を預けると、中村さんは少しほっとしたような表情をした。以前からなんとなく察してはいたが、彼はこの古いボルボにそこそこの思いいれがあるらしい。それをわかっていながら「夏暑いから新しい車に乗りかえろ」などと鬼畜なことは言わないので、せめて文句のひとつくらい言わせてほしい。
 中村さんのほうの窓も全開で、やや癖のある黒髪が風でなびいている。ウェリントン型の濃い目の色のサングラスが骨ばった輪郭によく似合っていると思う。ダッシュボードにいつも入れてある中村さん夏の愛用品だ。わたしも運転はしないものの、この日差しのなか助手席に座っていると目がやられるので、ボストンタイプの薄いブルーのサングラスを掛けてきた。
 さっきコンビニで買ったばかりなのに、ドリンクホルダーに差したペットボトルの水がもう滴るほど結露している。
 今日は海に行く日だ。

「あーーようやくちょっとエアコン効いてきたかも」
「そうだな」
 数センチだけ隙間を残すようにしてほとんど窓を閉める。中村さんは風で目が乾くのか、ぴっちり最後まで窓を閉めきった。そうすると今度は外の音ではなく、エアコンのフル稼働する音がごうごうとよく聞こえるようになる。古い車はエンジンだけでなくエアコンの音もうるさい。
「よし、お弁当食べようお弁当」
 遠足気分で茶色い紙袋をがさごそと漁る。先ほど高速に乗る前に寄った、ボリュームたっぷりと噂のハンバーガーショップのバーガーセット2人分だ。国産牛肉100%のパテと自家製バンズが売りで、そのうち行きたいねと言っていたところのやつ。
「えーっと……これが中村さんの普通のやつで、これがわたしのハニーマスタード。はい」
「なんか普通のやつとか言われると面白みないって言われてるみたいだな」
「やだ被害妄想~。あ、ちょっと待って、包み開けるね」
「助かる」
「で、こっちがアイスティーで、中村さんのアイスコーヒー。はい」
「待て、持てない」
「あ、そうでした~はいはいはい」
 ストローを差して無事コーヒーを渡したあと、包み紙を開けて自分のバーガーにかぶりついた。ひとくちでは足らないほどの厚みで、口のなかがいっぱいになる。
「むん、むまい!」
「うまいな」
 中村さんもハンドルを握りながら片手で器用にハンバーガーを食べている。ひとくちがわたしよりも大きいので割と余裕そうだ。
「肉厚〜。レタスしゃきしゃき~。トマトも完熟で甘いね!」
「この暑さのおかげでバンズもまだあったかいな」
 がつがつとハンバーガーを胃に納めながら、ポテトにもぬかりなく手を伸ばす。たまに中村さんの口にも数本放りこんであげたが、ほとんどわたしが食べてしまった。
「ふう~おいしかった~~」
 ハニーマスタードソースでべたついた口元をペーパーで拭いてから、ほぼ氷の溶けかけたアイスティーを啜ってひと心地ついた。
「これはまた行こうな」
 いつの間にか中村さんも食べおわっていて、口の端にわずかについた茶色いソースを親指でぐいっとぬぐう。妙に色気のある仕草で、「あ、普通のソースのやつもひとくち食べたかったな」などと思いながらぼうっと眺めてしまった。なんというか、サングラス装備の横顔がいけない気がする。色気効果2倍! みたいなバフがかかってると思う。
「(というか運転中なのに、わたしとほぼ変わらない速度で、わたしよりきれいにハンバーガーって食べるってどういう才能なの?? 育ちの良さ? バレエやってる人は食べ方まできれいなの???)」
 ハンバーガーなんて口元汚してなんぼでしょうが、とカーオーディオの音量ボタンを無駄に強く押して音量をひとつ上げた。今日は少し古いアメリカのロックバンドのアルバムを流している。
「あ、コーヒーうま」
 アイスコーヒーを飲んだ中村さんがなんとなしに呟いて、また両手をハンドルに戻した。


「着ーいたあ! 運転お疲れさまあ」
「まあ実家帰るときいつも使ってる道だからそんなに」
 車から降りて胸を広げて伸びをしていると、中村さんも荷物のボディバッグを持って降りてきた。わたしは日傘を差すけれど、中村さんの日除けはサングラスと帽子だけだ。しかも今はその帽子すらかぶらず手に持っている。曰く、顔周りによく汗をかくので帽子が汗を吸うし、かえって暑苦しく感じるそうだ。やっぱり日傘にすればいいのに。今度買ってあげよう。
 さすがに日焼け止めは子供のころから使っているだけあって習慣で塗っているらしい。学生のとき、特にコンクール前は体育の授業のたびにこっそり塗りなおしていたとかいないとか。中村さんが学生時分の話なのだから、男子が日焼け止めを使うのはなかなか肩身の狭い思いだっただろう。
「さ、行こう行こう」
 あいた片手で中村さんの手を引いて、なるべく日陰を選びながら海を目指した。

 浜辺まで大した距離ではなかったが、途中でいい感じのカフェがあったのでレモネードを2つテイクアウトして、2人で飲みながら歩いた。照りかえす日差しに炭酸の粒がしゅわしゅわと透明なプラスチックカップのなかで光って美しい飲み物だ。わたしが自分のカップを持っているので、日傘はいま中村さんが差しかけてくれている。日傘の取っ手に帽子を引っかけて、レモネードはまた片手で飲んでいる。
「もっと日傘入ればいいのに」
 横を見上げて言うが、
「角度的に頭は入ってるし」
と中村さん的には満足らしい。
 さあっと風が吹いて、「ああ暑いけど風があってよかった」と思った。そしてその風のなかに潮の匂いを嗅ぎとった。
「海の匂いだ!」
「音もそろそろ聞こえるんじゃないか」
 少しだけ早足で道を急ぐと潮の匂いが強くなり、ざざ、と遠くに音も聞こえてきた。
「見えた!」
 道路より一段低くなった砂浜と波打ち際が見えて、足が一層早まった。
「わーーー海だねえ」
 とうとう砂浜に降り、立ちどまって振りかえると、中村さんが日傘を掲げたまま小走りで追いついてくるところだった。いつの間にか日傘の陰から抜けだしてしまったらしい。
「久しぶりだなあ」
 サングラス越しの目を細めて海を見た中村さんが言う。こめかみには既に一筋の汗が流れはじめている。
 風があるぶんやや波もあり、先ほどまで遠かった波音が、いまはざざあんと大きな音で絶え間なく体に響いてくる。
「少し歩くか」
「うん」
 9月に入ったといえど浜辺にはまだぽつぽつと人がいて、海に入る人、なにかの道具を使って遊んでいる人、座って海を眺める人、犬と一緒に散歩している人、思いおもいのやり方で海を満喫していた。わたしたちも特に目的もなく、ただ波打ち際に沿ってまっすぐ砂浜を歩いた。2人とも、履きものが波にさらわれないよう、ビーチサンダルではなくマジックテープで留めるタイプのスポーツサンダルを履いてきた。中村さんのアドバイスである。
 足が水に浸かる気持ちよさとサンダルに砂が入ってじゃりじゃりする不快感を味わいつつ、しばらくゆっくりと歩いてから、
「そろそろどっか座るか」
と中村さんが言った。
「うん、あそこ、ちょっと奥にベンチがあるよ。ちょうど木陰だし」
 わたしが指さして、砂浜からコンクリートの歩道へ向かった。

 並んでベンチへ腰かけると、本当にちょうどよく、木陰が日差しから全身を守ってくれた。このベンチは絶対にこの木陰ありきで置かれたに違いない。中村さんから日傘を受けとり、畳んで脇に置いた。
 昼過ぎ、というには夕方に近い時間になっていて、日の角度もついているため陰も伸びて広くなっている。海の照りかえしがあるのに、中村さんはサングラスまで外してしまった。
「はあ。暑いけどなんか爽やかで気持ちいいね」
「俺が中学のころの9月のここなんて、もうちょっと秋の海って感じしたけどな」
「いまじゃもう、9月初めはまだまだ真夏だね」
 「というわけで、」と、わけもなにもないが、中身の減ったレモネードのカップを高く持ち、中村さんに向かって傾けた。
「今年もサマークラスお疲れさまでした~~!」
「おーーありがとうございます」
 中村さんもプラスチックのカップを持ちあげて軽くぶつけあわせると、中に入ったレモンスライスが揺れた。
「今年はどうだった? 有望な子はいた?」
 同時にずずっと残りのレモネードを啜りながら、横目で中村さんを見た。
「有望なやつは毎年いるよ。その中から生川で伸びる、いや、俺がちゃんと伸ばしてやれる生徒を選ぶのは大変だけどな……」
「中村先生だねえ……」
「まあ向こうだって人生懸けてるようなやつもいるんだし。元から生川本校通ってる生徒も来るけど、それ以外のやつは本当に本校の生川の環境が合うのか、生川の、俺の指導が合うのか本気で見極めてやらないと将来が変わるからな」
 組んだ指のなかにはまったプラスチックカップに目を落とす。常温になりつつある中身をもう一度吸いあげると、買ったときよりも苦味を感じた。時間とともにレモンスライスの果皮から苦味が溶けでてきているのだ。
「……それは、自分の経験から?」
「……どうだろう。俺は、こんなこと言っといて自分の環境と師が合っていたのかわからなくなるときがある」
 遥か地平線を眺めるようにして、中村さんは言った。
「今では父にも感謝してる。でも俺は、父のやり方では教えない」
 きっぱりとした物言いだった。
 そして、視線をこちらに戻して、
「ここの海もさ、ある日いつものランニングコースから外れてとにかく走りまくって……そのとき来たんだよ。コンクールの後だったし、全てが無性に悔しくて、嫌で、情けなくてさあ」
と恥ずかしそうに笑う中村さんの向こうに、中学時代の彼を見た気がした。爪が立つほど強く握った両のこぶしに肩で息をして、今にもこぼれそうな涙を必死にこらえて海を睨んでいる、まだ筋肉がつきはじめたばかりの時期の、痩せっぽっちの少年。それともその後、海に溶かして紛れさせるように涙を落としたのかもしれない。
「なかむらさん」
 言葉ではどうしようもできないと感じて、隣の中村さんの体にぎゅっと腕をまわした。
「ちょ、ここ外っ、人っ」
 中村さんが体を固くして小さく肘から先の両手を上げた。
「誰もこっちなんか見てないよ! 見てたとしても夏だしっ、海だし……っ」
 中村さんの背中は広いので、私の腕はまわりきらない。それでも更に力を込めた。
「え、なんか泣いて……る? もしもし?」
「……」
 中村さんの肩辺りに顔を埋めているわたしの背中をおずおずと彼がさすった。
「だいじょうぶ」
 それは今の彼に向けて言ったのか過去の彼に向けて言ったのかわからない呟きだったが、それとなく意図は伝わったようだ。
「そう言って泣いてもらえるなら、あんときの俺も救われるよ」
 はは、と彼の笑った振動が骨を通して伝わってきた。

 腕をほどいた後もなんとなく肩と肩をくっつけて座っていた。服越しでも、2人の密着した皮膚の間に、じわじわとどちらのものかわからない汗がにじんでくるのがわかった。
「でもさ、中学の中村くんには申し訳ないんだけどさ」
「うん?」
 ざざーんという音が相変わらず絶え間なく聞こえていたが、小さい声でも振動が伝わるので互いに聞きとりやすい。
「中村くんがそういう中村くんでよかったよ」
 空が赤くなりはじめた。もうすぐ日が暮れるのだ。
「もしめちゃくちゃ才能があってお父さんとも相性ばっちりな中村くんだったらさ、わたしはこうやって中村さんの故郷の海を一緒に眺めることもなかったんだからさ」
「そうだな」
 風が止んで少し小さくなった波音を聞きながら、更に薄暗くなるまでしばらくそうして座っていた。

 日が傾くにつれて人が減り、ついに誰もいなくなった砂浜で、中村さんはボディバッグから今日の目的のブツを取りだした。
「ついに! 花火だー!」
「すげえ久々だなあ」
 大人になって花火をする機会はそうそうない。そもそも都会の公園はどこも火気厳禁なので、花火がしたくてもする場所がない。こんなに毎年花火は売りだされているのに、みんなどこで消費しているのだろう。ともかく、夏が終わる前に花火がしたい! ということで今日仕事が一段落した中村さんに海へ連れてきてもらったのだった。
「最近は人の多いビーチは花火禁止なとこが増えてるけど、ここはどうなんでしょ? まだセーフな地域?」
「さあ? まあ監視員がいるようなビーチでもないしバレなきゃいいだろ」
 普段は割と四角四面な彼が、火種に火をつけながら、いたずらしている男の子のように笑う。
「じゃ、遠慮なく。わたしこれにしよ。中村さんはこっち」
 各々違う柄の花火を持ち、着火する。
 わたしの花火からは青い炎が、中村さんの花火からは白い炎が噴きだした。白い炎は途中からオレンジへと変わっていく。
「俺も次それにしよ」
「わたしはそのぱちぱちしそうなやつにしよ」
 がさがさと薄暗がりで花火セットを漁る。
「ぱちぱち系ってつけなくても見た目でわかるよな」
「ね。えっ見てこれ、SNS映え用だって! 今どきこんなのあるの!?」
「まあ確かに花火は映えるか。そうだ、写真撮るか?」
「撮る! 撮ってー! で、次中村さん撮る!」
 やいのやいの言いながら次々と花火に火をつけつづけ、写真を撮りあったりしていると、薄紫色だった景色がいよいよ見えづらいほど暗くなってきた。
「さて、締めはやはり線香花火ですな」
「な」
「勝負する?」
「そりゃするだろ」
「よしきた」
 じりじりと線香花火の穂先に火をつける。わたしのほうが先に火がついたが、すぐに中村さんの穂先にも火がついて先端が丸まりはじめた。どちらも落ちることなく上手く丸まって、じじじじと火花を散らしはじめる。ばちばちと大きな火花に変わっていってクライマックス、というところでわたしの線香花火の火玉は落ちてしまった。砂の上に落ちた玉はあっという間にしゅん、と赤みを失くす。1秒前までクライマックスってたのが嘘のようだ。対して中村さんの線香花火はクライマックスを終え、徐々に雨だれのように流線形に落ちる火花へと変わっていく。じじ……と火薬の玉がしぼんでいき、最後にすうっと煙だけが一筋残った。
「すごい。中村さんのやつ、天寿全うしてるじゃん」
「そっちはいいところで終わったな」
「やっぱ手の震えの違い? 腕の筋力? 体幹?」
「火薬の微妙な差とかにもよるんじゃないか? あと風向きとか」
「あーあ、負けちゃった。次は2本撚ってやろう」
「火薬倍量だと重くて余計落ちるぞ」
「知ってる。でも火花もすごいんだよね。太く短く的な」
「じゃあ俺3本でやろう」
「小学生かよ」
 最後に中村さんが作った4本どりの特大線香花火がそれは大きな火花を散らしてぽとりと落ちると、持ってきた花火は全て終了した。
 今は便利なもので、水を入れると花火を固めてくれる消火剤があるので、わざわざバケツを持ちあるかなくてもいい。海水を少し入れて凝固させた消火剤と花火入りのビニール袋を中村さんが持って、砂浜を後にした。
 遊歩道から街へ向かう道のちょうど手前辺りに水道があったので、そこで砂にまみれた脚を洗った。たぶんそのために設置された水道なのだろう。持ってきていたタオルで拭こうかと思ったが、歩いていればすぐ乾きそうだと思って、2人ともそのままにした。
 最後、ざぶんという波音に振りかえって目を凝らしたけれども、海があるのはわかりこそすれ全貌が見えず、距離感も測れなくなって、まるですぐそこまで迫っている波に飲みこまれてしまいそうな恐怖を感じた。
「夜の海って怖いね」
 海があるはずの方角を向いたまま、思わず中村さんの服を掴んだ。
「帰ろう」
 中村さんはそっとわたしの手を取った。
 車までの帰り道は、都内よりずっと街灯が少なく、しかしどの家からも明かりが漏れていてあまり暗いとは感じなかった。


「さて、どうする? ご実家寄っていく?」
 まだ足は少し濡れていたが車に乗り込んで、シートベルトを締めた。右隣の運転席に座る人を見て尋ねる。
「うーーん、今日はいいかなあ」
「そう? 別にわたしは一緒に少しお邪魔するでもいいし、面倒だったらわたしだけファミレスで時間つぶしとくでもいいよ。お腹すいたし」
「……いや、いい。今日はもう一緒に帰ろう。俺も腹減った」
「おっけー」
 日中来た道を、2人の帰る場所に向けてボルボがなめらかに走りだす。陽が落ちて気温が少し下がったとはいえ、車のなかはまだ灼熱の余韻を閉じこめている。わたしはまた窓を全開にした。中村さんは窓を開けない。
「なあ」
「 な に ? 」
 昼間より更に湿度を上げた空気をもろに受けて頬ばりながら、大きな口を開けたままわたしは訊いた。小さいころ扇風機の前で喋ったときの感覚に似ていた。
「今度さ、改めて一緒に実家行ってくれないか。挨拶に」
「 あ い さ つ ? 」
「あの……将来を考えて付き合ってます、的な……、」
「え゛っ」
 開けっぱなしの口が閉じなくなって虫が飛びこんできそうだ。
「え゛っっっ」
 わたしはフリーズしたまま、何も言わない運転席の中村さんを穴が開くほど見つめる。前を見てしっかり両手でハンドルを握って、今はもうサングラスをしていない。素顔は眉間に皺が寄ったいつもの顔だが、心なしかいつもより血色がいい……? 特にでっぱった頬骨の辺り……あっ日焼け!? 暗くてよくわからない。
 そう思ったが、深爪なのに爪が立つほど強く中村さんがハンドルを握りしめているのに気づいて、最前の彼の言葉に対する自分の解釈がおおよそ間違っていないことを知る。
「え゛え゛え゛ーーーーーーー!!!!!!」
 助手席側だけ窓全開のボルボが、ご近所中に叫声を響かせながら、夜道を滑っていった。


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