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自分を育てるカリキュラムを作る


 「考える先生」を育てるプロジェクトのこれからの課題について、T君が見学に通う中学校のS校長、マツミナさん、そしてT君を交えて話し合いました。
 
 4月から始まったこのプロジェクトはこれまでに例のない試みです。
・週1回、中学校に行って生徒の登校時間から下校時間まで、学校で行われる教育活動の様子を自由に見学する(見るだけ)
・見学する対象や方法は学生の希望を尊重する(自由に見てよし)
・学生ボランティアのような役割は課さない(手伝い要員として使わない)
・教職員は直接指導しない。1日の見学後、S校長が学生から今日した事の内容や感想、疑問等についてヒアリングをする。
 こうした曖昧かつ緩やかな枠組みの中で、学校で見たり聞いたりしたことを基にT君自身が自分で問題や課題を見つけ、S校長とのやりとりを通して考えを深めていくことを期待していました。かっちりとした計画があるわけではないので、はたで見ていたらかなり無謀で無責任な取り組みのように見えたかもしれません。
 踏み込んだ指導をしたわけではありませんが、私はT君の変容に手応えを感じています。リフレクションシートに書かれた内容から、自問自答しながら考えを深めようとする芽生えを見ることができるからです。とはいうものの「学生に教えない、自分で考えろというのはキツくないか」「考えさせるような働き掛けや方向付けをしてやる必要があるのではないか」という指摘もありました。
 
 T君を一番身近に見てきたS校長からは問題意識が提示されました。
 「これまでの取り組みを通して、教師を目指す学生としての変化や成長を感じるまでには至っていない」
 「学生本人の自由意志に任せ、参観し、気づき、変容していくことは理想であるが、週1回程度の見学を、意図も計画もなしに続けても年度末に変容を期待することは難しい」
「養成プログラムのプロトタイプの構築を目指すなら、学生の時間的な効率と効果を考慮し、ある程度の枠組みを設定する必要がある」
 
 話し合いの結果、今月からは「見るだけ」でなく、「質問」もできるようにしました。授業や生徒への対応を見て疑問に思ったことを教員にぶつけられるようにしたのです。調べればわかる程度の「閉じた質問」ではなく、「開いた質問」を1回1問だけ、やりとりは10分以内という条件付きです。教員との対話を通してT君にどんな変容が見られるか楽しみです。その先には「理想の教師像」を自分で描き、具現化するために何をしたらいいか考えなくてはいけません。自分を育てるカリキュラムを作るT君が見えてくることを期待しています。(イデちゃん)

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