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世界中がいそぎすぎたらどうなるか――『チキチキチキチキ いそいでいそいで』(絵/荒川良二、文/角野栄子)

2015年1月

 私が絵本というものにいちばん期待しているのは、「ページをめくった瞬間の爆発的な感動」です。たのしくても悲しくてもやさしくても怖くてもほほえ ましくても悪趣味でも狂ってても静かでも、その感動の種類はなんでもよいのですが、とにかくこのページからあのページへと移動した瞬間にびっくり仰天した い。それは映画とか小説とか漫画とかでびっくり仰天するのとはまた違った、絵本ならではの素敵な体験です。

 前回紹介した長新太さんや今回の荒井良二さんの作品はその点、いつもかなり素敵。なかでも私のお気に入りの1冊、『チキチキチキチキ いそいでいそいで』を紹介しましょう。

 いま気づいたのですが、前回紹介した長新太さんの『サラダでげんき』もこの『チキチキチキチキ いそいでいそいで』も、おはなしは角野栄子さんの作なのですね。「お気に入り」とか言っておきながら、今日の今日まで意識してませんでした。この2冊、たしかに小さな出来事がリズミカルに世界中を巻き込んでいく展開がよく似ています。どちらもそれぞれの絵が角野さんのおはなしのセンスにピッタリ。それではちょっと中身を見てみましょう。

▲ コウくんが物置で古い腕時計を見つける
ところから、物語が始まります。

▲ 「ギリル、ギリル」というネジを巻く音といい、
「コッチリ、ポッチリ」という時を刻む音といい、
実に読み聞かせがいのあるオノマトペです。

▲ 時計が「チキチキチキチキ」鳴り出して、
なぜかいそぎ始める世界。

▲ みんないくらなんでも、いそぎすぎ。

 世界中がいそぎすぎた結果、なにがどうなったか。それはもちろん秘密にしておきますが、個人的にはかなり爆発的な感動に包まれました。

▲ ぜんぜんバスにのれない『バスにのって』も、すてき。


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