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【ニンジャスレイヤーTRPG第二版ファンメイドプラグイン準備記事】ニンジャソウルをつくろう!ヒュドラ・ニンジャクラン編・前編


はじめに

 この記事は、ニンジャスレイヤーに登場するニンジャクランである「ヒュドラ・ニンジャクラン」をTRPG第二版に登場させるためのファンメイドプラグイン、その制作過程の中途までのレポート記事である。

 主に、強いにしても弱いにしても、何を考えてデザインしたのかを共有したいという思いのもとに作られている。

 なお、ヒュドラ・ニンジャクランには初版対応のファンメイドプラグインが複数存在するため、恐らくはこの記事の後半とプラグインの完成を待つよりも、そちらをコンバートして使用する方がよかろうと思われる。
 

1.クランを知ってジツリストを決めよう

 まず、ソウル制作にあたり、ニンジャスレイヤーに出てきたヒュドラ・ニンジャクランについて考察したりイマジナリを深め、どのようなジツがあるのが自然かを考えてみよう。

1.1.原作の登場憑依者・リアルニンジャから性能を考えよう

04/13/2024現在、ニンジャスレイヤーに登場したヒュドラ・ニンジャクランの憑依者は2忍いる:

イヴォルヴァー:ヒュドラ・ニンジャクランのグレーターソウル憑依者。ニンジャとなってから修行を重ねていた。使用したジツは他者を強化し、自我を蝕んでミニオンに変えるイヴォルーション・ジツとそれを自身に適用するセルフ・イヴォルーション・ジツ(仮称)だ。

 セルフ・イヴォルーション・ジツは耐久力と攻撃力の増加をもたらし、さらに、巨大化・強酸による攻撃・体組織の増加・自我の変質などを伴う第二段階目が存在するようだ。

ディクテイター:ヒュドラ・ニンジャクランのレッサーソウル憑依者。ジツは持たないようで、古代ローマカラテとモーゼル銃で戦っていた。しかし、潔癖症めいてガスマスク様メンポを装着していたのはなんらかのヒントにならないだろうか。

 ここから、どうもヒュドラ・ニンジャクランは、ジツによって自他の肉体を変容させるイヴォルーション・ジツをクランの特性とするニンジャクランであったらしい。ここに関して、自他にカラテを注ぎ込み使役または強化するソル・ニンジャクランのバリキ・ジツ系統を、カラテによる肉体の変成を躊躇わないゴダ・ニンジャクラン系列のクランが再現した結果ではないか?と仮説を立ててみよう。

 また、ディクテイターの潔癖症が、ソウルの特性によって強化されたものであるならば、クランはドク・ジツに関する何らかの要素を持つと考えてもいいかもしれない。少なくともイヴォルヴァーの強酸は毒属性に分類して良さそうだ。

 さらに、ディクテイターからはまだ設定に関する材料を抽出できそうだ。まず、ディクテイターがジツを持たなかったということは、レッサーニンジャの段階で使用できるようなジツを持たないクランだったからだと考えることもできるだろう。

 したがって、☆は常時強化系にする案が俎上に上る。次に、ディクテイターが優れたニンジャ耐久力を示していたことにも注目したい。多分に彼の古代ローマカラテが堅牢な獅子の構えでその身を守ったとしても、凡百のニンジャではアナイアレイターの暴威に耐えることは難しいからだ。

 以上から、この段階で☆の性能を決定してみよう。

☆ヒュドラの肉体

ジツLV1で●頑強なる肉体を得る
ジツLV2で毒属性ダメージ軽減1を得る
ジツLV3で近接攻撃時出目【4,4】で毒属性ダメージボーナス1を得る

 また、それぞれ★、★★、★★★として、イヴォルーション・ジツ、セルフ・イヴォルーション・ジツ、重点セルフ・イヴォルーション・ジツを考えられそうだ。細かい性能は後で詰めるとして、イヴォルーション・ジツはモータル敵、危険生物敵を対象とするバリキ・ジツ互換に、セルフ・イヴォルーション・ジツはヘンゲヨーカイ系を参考にした変身系に、『重点』はビッグ・ニンジャクランの★★★巨大化かヘンゲヨーカイ系の★★★を参考にした調整で再現できそうだ。

 原作の登場要素をGREPしたところで、次はヒュドラ概念についてニンジャスレイヤーと現実の文化的文脈からアタックしていこう。

1.2.ヒュドラについて知ろう

 ヒュドラ・ニンジャクランというからには、ヒュドラに関わるニンジャクラン、あるいはヒュドラ・ニンジャが興したニンジャクランだと考えられるが、まずヒュドラとはなんだろうか。

 考えられる候補は二つある:

1.ギリシャ神話に登場する、レルネーのヒュドラーヘーラーによって養われ、ヘーラクレースに倒された怪物で、文献上の初出はヘーシオドスの神統記に遡ることができる(Hes.Theog.313)。

 ヒュドラー(ὕδρα)の名があからさまにギリシャ語(今後特に注釈なくギリシャ語という場合古典ギリシャ語を指す)の水(ὕδωρ)に由来し、水蛇ともしばしば訳されるように、水と関わる存在であったようだ。その住処であるレルネーは沼がちな土地であり、その存在するアルゴリス地方の中でも「湿った」アルゴリスを象徴する土地であるようだ。

 また、ヒュドラーは毒を持ち(Apollonius.Argonautica, 4.1404)など)、その毒を矢に塗り付けて殺傷力を高めることが可能なうえ、首を切り落とされる端から再生させた(Plat.Euthyd.297cなど)が、ヘーラクレースは切り落とした傷口を焼くことでこれに打ち勝ったという(Eur.Her.419)。

 時代が下ると、ヒュドラーの真ん中の首が不死だったりとか(Apollodorus.biblio.2.5など)、冥府の怪物として現れたりとか(Vergil.Aeneid.6.287)するようだが、これはあくまで副次的な要素と考えるか、後述するようなニンジャ史と関連付けて考えるくらいでいいだろう。

2.生物種としてのヒュドラ。1.に因んで名づけられた刺胞動物の一種で、高い再生能力をもつほか寿命で死なず、出芽と有性生殖いずれでも生殖するという。発見・命名は1785年のリンネによるもののようだ。

 これらから、ソウルのジツやジツスキルに採用できるものはないかと考えてみたい。

 毒を武器とし、またその毒を武器に塗布して使えるという性質から、★ポイズンブレス・ジツLV3、★ドク・エンハンスメント、★ドク・スリケン、★チドク・ジツ、★◉毒液塗布、★◉毒手、★◉ヒサツ・ワザ:ポイズンブレス注ぎ込みなどをそのまま持ってこれそうだ。

 しかし、あくまで作中で使用されたのは酸であるから、アシッド・ジツのようにリネームしてみるのがよいだろう。カナシバリ系統と違い精神攻撃の択を持たせる余地がないため、やや迂遠な★◉毒液塗布、★◉毒手は☆◉とするか、他者の武器・素手も付与できる仕様にしてみたい。

 また、高い再生能力をもつと言われることから、★★異常再生を調整したジツも持たせたい。調整の具体例としては、変身中のみの再生を常時再生とし、★★グレーターヘンゲヨーカイ中の再生値ボーナスを★★セルフ・イヴォルーション・ジツ及び★★★重点セルフ・イヴォルーション・ジツ発動中とする代わり、火炎ダメージを受けた時の効果中断と、効果持続中の脆弱性(火炎1)を付与しよう。

 これで、ここまで☆、☆◉あるいは★◉1-2個、★5個、★★2個、★★★1個ができた。しかし、このままでは★★がやや少なく、逆に★が多いように感じる。これに調整を加えるために、ニンジャ史の中でのヒュドラ・ニンジャクランの位置づけを妄想、ではなく推理してみよう。

 まず、前項で見たように、ヒュドラ・ニンジャクランのジツは、「ソル・ニンジャクランのバリキ・ジツ系統を、カラテによる肉体の変成を躊躇わないゴダ・ニンジャクラン系列のクランが再現した」ように感じられる。ここで、ギリシャに勢力を持っていたと思しいゴダ・ニンジャクラン系列のクランがティターン・ニンジャクランであることが思い出されるだろう。

 ちょうどティターン・ニンジャクランは肉体の変成や四肢の増強を専門としていたこともあり、インストラクションの流れが掴みやすい。神話のヒュドラーにしてからが、テュポーンエキドナの子とされる(Hes.Theog.300-)ので、恐らくはティターン系列のエキドナ・ニンジャ(仮称)とタルタロスの憑依ソウルであったティフォン・ニンジャのインストラクションを受けたのだろう。

 しかし、ティフォンはフージン・ジツの使い手であり、ギリシャ語の文献でしばしばティフォンと呼ばれる(Plut.de Iside et Osirideなど)セトもアルファ・フージン・ジツの使い手であったが、ヒュドラ・ニンジャクランにはそういったカゼ系列のジツはありそうにない。それはなぜかを考えるに、神話においてヒュドラーがヘーラーに養われたという点から推理してみよう。

 ニンジャ間のインストラクションがしばしば神話における血縁や養育に表されることは本編中でメフィストフェレスが言った通りだ。そして、それを汲むならば、ヒュドラ・ニンジャ(仮称)はティターン・ニンジャクランがオリュンポス十二忍の前に敗れ去った後の世代のティターン系列のニンジャであり、僅かなティフォンとエキドナによるインストラクションを受けた後、コブラ・ニンジャクランの流れを汲むか、スイトン・ジツに長けたニンジャであったヘーラーのインストラクションによってカイデンしたと考えることで辻褄が合う。

 なお、スイトン・ジツが酸の扱いに派生しえたことは、ヴィトリオールが流体の操作を専門としたと思しいナガレ・ニンジャクランの憑依者であるところから推理できる。ヘーラーとコブラ・ニンジャクランの関連性については、嫉妬深いヘーラーの性質について、感情の操作に長けるコブラ・ニンジャクランの要素が神話中に反映されたものである可能性があると考えられるほか、カナートスの泉で水浴し毎年若さを取り戻すヘーラーは、コブラ・ニンジャクランの再生の秘法を思わせる。

 当然、ヒュドラ・ニンジャ(仮称)の立場はあまり高位のものとならず、ヘーラクレースに相当するニンジャ(恐らくはゼウスの高弟)の狩りの獲物として、彼女は(ヒュドラーは女性名詞だ)いわば当て馬的な扱いを受けたのではないだろうか。そうなれば、素直に襲い掛かる★ポイズンブレス・ジツLV3、★ドク・エンハンスメント、★ドク・スリケンのインストラクションは早期に受けていたとしても、★チドク・ジツのような守りのジツは彼女本人が過去のエキドナからのインストラクションを思い出し編み出したと考えるほうが自然ではないだろうか。したがって★★ヒュドラ・チドク・ジツとし、やや強力なジツに調整するのがよさそうだ。

2.形にするために要素を整理したり追加してみよう

2.1クランの分析から作ったジツを整理してみよう

ここまでで作ったジツを整理すると以下の通り:

☆ヒュドラの肉体-性能既出

☆◉ヒュドラ毒塗布-毒手&毒液塗布をまとめた性能

★◉ヒサツ・ワザ:ヒュドラ毒注ぎ込み-★◉ヒサツ・ワザ:ポイズンブレス注ぎ込み互換

★イヴォルーション・ジツ-生成モブを「鬼人」に変えた★バリキ・ジツ

★アシッド・エンハンスメント‐★ドク・エンハンスメント互換

★アシッドブレス・ジツ‐☆ポイズンブレス・ジツLV3互換

★アシッド・スリケン‐★ドク・スリケン互換

★★ヒュドラ・リジェネレーション・ジツ‐非変身時でも有効な代わり火炎への脆弱性を付与する★★異常再生

★★セルフ・イヴォルーション・ジツ‐性能未定

★★ヒュドラ・チドク・ジツ‐性能未定

★★★重点セルフ・イヴォルーション・ジツ‐性能未定

この時点で、ひとまず形にするために次のタスクが残っているとわかる。

・鬼人モブの性能決定
・イヴォルーション・ジツの性能決定
・ヒュドラ・チドク・ジツの性能決定
・重点セルフ・イヴォルーション・ジツの性能決定

2.2ゲーム的に追加・削減したい要素を挙げてみよう

 前項までの作業は、原作で登場した情報や、世界設定からヒュドラ・ニンジャクランにありそうなジツをリストアップし、1系統を成すために必要十分な数を揃える作業だった。しかし、これはTRPGで使われるソウルの性能決定作業である以上、ゲーム的な面から追加したい要素、あるいは削ったほうがいい要素があってもおかしくないはずだ。

 現状のリストを見れば、このクランは

・火炎に弱く
・毒に強く
・ミニオンを現地調達できて
・タフで
・自己強化を中心に戦い
・変身中でも(性能決定時に特別縛りを入れなければ)ヒサツ・ワザが使える

ことが特色のクランになっている。やや強すぎる気もするが、あまり猛威を振るうようなら火炎属性持ちの敵を増やす、ミニオンにできそうな敵を出さない等で対策すること自体は容易そうだ。

 なので、もう少しだけ要素を盛ることができるとしたら、やはりイヴォルーション・ジツを味方に使用するバッファーとしてのロールもこなせるようにすればフレーバー的にも性能的にもタノシイだろう。

 そこで★★イヴォルーション・ジツ(強化)のようなジツを考えてみたい。幸い、トランスペアレントクィリンのデータ重箱に、遺伝子的な突然変異で強化される状況のゲーム的な処理が書いてあるので、それを援用すれば味方を異形にして強化するジツを作れるだろう。

★★イヴォルーション・ジツ(強化):【カラテ】【ワザマエ】【ニューロン】のいずれかが+D6され、【精神力】が-3される

ギャンブル性が高いがそれだけに楽しそうだ。これは入れたい。

 逆に、削られうる要素を考えてみよう。上の特色リストのうち、フレーバー的な必然性を持たないのは「・変身中でも(性能決定時に特別縛りを入れなければ)ヒサツ・ワザが使える」部分だ。ジツによるヒサツ・ワザはコストが重い代わりにタツジンを前提としないというスキル枠的に大きな強みがある。★★以上のヘンゲヨーカイもヒサツ・ワザが使えるのだが、それらは全てタツジンを前提とするものばかりなので、3枠ギミックを1枠で使えるようにするというのはいささかズルいように思える。

 この時点で、少なくとも★★★重点セルフ・イヴォルーション・ジツ中はヒサツ・ワザを使えないようにしたほうがよさそうだ。

 すでにそこそこ長くなってしまったので、いったんここで筆をおく。後半部である次回、性能未定ジツのデザインを完了し、ソウル自体をファンメイドプラグインとして公開したい。なお、ほかにやりたいこととして、ソロリプレイの続き、逆噴射が並行して存在するため、それらのうちどれが最初に投稿されても暖かくお許しいただきたい。

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