岡田将生研究⑦憧れの人を追いかけて

 昨年の某テレビ番組で岡田将生が「生き方に憧れる人」として名前を挙げたのが、俳優阿部サダヲ。ファンの間でも意外だという声が聞かれた。その少し前に放送された別のトーク番組では、尊敬する親しい先輩として、小栗旬、生田斗真、藤原竜也などの名が挙がっており、こちらの方がしっくりくる人が多いのではないかと思う。岡田将生とこの3人、阿部に共通するのは、テレビ、映画、舞台の3つのフィールドで主演を張れる俳優であること。

 「芝居中についその演技に見入ってしまう」阿部との共演は3度。阿部主演の映画「謝罪の王様」と舞台「ゴーゴーボーイズゴーゴーヘブン」「ニンゲン御破算」。特に舞台2作品は、どちらも阿部から惚れられる役柄というのも面白いし、後者は、以前に阿部が演じた役を再演で岡田が引き継いだという縁もある。岡田の舞台出演は2022年現在で8作品。そのうち6作で主演を務め、残りの2つが阿部主演のこの2作。いずれも岡田は2番手で出演している。つまり初舞台から座長を務め、舞台の座長としては阿部しかお手本がいないことにも注目したい。(「ウーマン・イン・ブラック」は2人芝居だが岡田がファーストクレジット)裏方のスタッフや共演者への気配り、座組のまとめ役など、主演俳優には演技以外にも負担が大きい舞台で、座長としての多くを阿部の姿から学んだことは想像に難くない。

 もう一つ、岡田と阿部の共通点を挙げるとすれば、出演作品の多さと役の振り幅の大きさだ。主演も助演もゲスト出演もやるし、シリアスもコメディもできる。現在までの出演作、阿部(ドラマ93,映画55,舞台59)岡田(ドラマ48,映画41、舞台8)※ウィキペディアより。この3つのフィールドで、バランスよくこれだけの作品数をこなしている主演クラスの俳優は多くない。だが、一口に振り幅と言っても振れる方向には2人の間に若干の違いがある。阿部は殺陣や歌の入った芝居を得意とするが、岡田は違う。逆に阿部は岡田の得意分野である翻訳物の舞台は演ったことがない。「ニンゲン御破算」の共演で、間近に阿部の素晴らしい殺陣、歌、シリアス、コメディを見て素直に憧れるというのは大いにうなづける。

 「ニンゲン御破算」における岡田の殺陣は、少々野暮ったかった。侍になりたいマタギという設定上、本物の侍のようなキレのある殺陣が求められていなかったのかもしれない。だがその1年後の舞台「ハムレット」でのフェンシングは、軽やかで素早い身のこなしが出色であった。「なつぞら」では歌とタップダンスを披露、「大豆田とわ子と三人の元夫」のエンディングで曲がりなりにCDデビューもした。紅白にも出場した阿部とは段違いではあるが、撮影の合間にレッスンを受けたり、挑戦し続けている。憧れの人の背中を着実に追いかけている・・・かどうかはわからないが、前を走るその姿に勇気をもらっているに違いない。

 カメレオン俳優という言葉が生まれ、どんな役でも上手に演じるのが良いと誤解されがちだが、役者の魅力を最後の最後に支えるのは個性。役者自身の魅力と個性を役に融合させ、いかに観客を引き込むかが肝要。阿部も岡田もそのバランスが絶妙な魅力のある俳優である。「悩んだときは相談する」身近に憧れるような存在がいてくれることは、俳優岡田将生にとって何物にも代えがたい大きな財産であると思う。

【おまけ】(2022年までに岡田将生が演じた多彩な役柄)
・中学生(生徒諸君、天然コケッコーなど)
・高校生(太陽と海の教室、オトメン、花ざかりの君たちへなど)
・大学生(何者、悪人など)
・フリーター(ホノカアボーイ、CUBEなど)
・医者(ヤングブラックジャック、聖なる怪物たち、ドクターX)
・エリート公務員(黄金の豚、プリンセス・トヨトミ)
・エリート警察官(ST、小さな巨人、秘密)
・法廷弁護士(リーガルハイ、北風と太陽の法廷)
・離婚弁護士(離婚なふたり)
・顧問弁護士(大豆田とわ子と三人の元夫)
・検事(リーガルハイ)
・革職人見習い(アイシテル絆)
・遺品整理(アントキノイノチ)
・宇宙飛行士(宇宙兄弟)
・看護師(チキンレース)
・魔法使い見習い(魔法遣いに大切なこと)
・日系ブラジル人(四十九日のレシピ)
・超能力者(偉大なるしゅららぼん、ストレイヤーズクロニクル)
・馬飼い(絆走れ奇跡の子馬)
・羊飼い(そらのレストラン)
・救急隊員(エイプリールフールズ)
・バンドマン(家族のはなし)
・会社員(ゆとりですがなにか、ひみつのアッコちゃん)
・教師(告白、星の子など)
・クイズ作家(名刺ゲーム)
・除霊士(さんかく窓の外側は夜)
・会社経営者(なつぞら)
・詐欺師(タリオ)
・落語家(昭和元禄落語心中)
・元やくざ(大誘拐)
・脚本家(不便な便利屋)
・俳優(書けない、ドライブマイカー、物語なきこの世界など)
・殿(雷桜)
・王子(ハムレット)
・詩人(皆既食)
・ゴーゴーボーイ(ゴーゴーボーイズゴーゴーヘブン)
・天才科学者(arc)
・またぎ(ニンゲン御破算)
・スキー場パトロール隊員(白銀ジャック)
※掟上今日子の備忘録では、警備員、会社員、学校の清掃員、書店員などを演じている。

・殺人犯(重力ピエロ、CUBE、ドライブマイカー)
・狂言誘拐犯(交渉人、大誘拐)
・病死、事故死(僕の初恋をキミに捧ぐ、雷桜、瞬、絆など)
・デスゲーム(未来日記、名刺ゲーム)
・自分だけ生き残る(潔く柔く、想いのこし、落語心中)
・吃音持ち(アントキノイノチ)
・加害者家族(アイシテル絆)

・本人役(バイプレイヤーズ)

☆劇中に披露したスポーツなど
・バスケットボール(ハルフウェイ)
・水泳(太陽と海の教室)
・ポールダンス(想いのこし)
・柔道(秘密)
・剣道(オトメン)
・陸上(花ざかりの君たちへ)
・乗馬(雷桜、絆、平清盛)
・タップダンス(なつぞら)
・ラップ(銀魂2、書けない)
・歌(花ざかりの君たちへ、なつぞら)

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