【対談インタビュー】ミツカン“味ぽん”×ホロライブコラボ「味ぽん×ホロぽん飯テロ部」が大盛況! SNSを中心としながら、テレビやイベントで大盛り上がり!
幅広い年代から愛される調味料“味ぽん”を販売する株式会社Mizkan(以下、ミツカン)は、1804年創業の老舗企業です。そんなミツカンが、昨今若年層をターゲットにした味ぽんのマーケティングを開始し、大成功を収めています。
その施策中でも特にリアル・SNS両面で反響が大きかったのが、ホロライブとのコラボ「味ぽん×ホロぽん飯テロ部」です。
その成功のカギはどこにあったのか探るため、今回のコラボを手掛けた株式会社ClaN Entertainmentのビジネスプロデュース部・古林碧と、株式会社Mizkanのマーケティング本部主任・吉岡真優氏、カバー株式会社(以下、カバー)の営業企画本部・スタッフN氏による対談を実施!
VTuberコラボマーケティングのポイントに迫っていきます。
VTuberファンの爆発力に驚き。ライブ感と熱量が桁違い
古林(ClaN):お2人とはミツカンとカバーがコラボした企画“ホロぽん飯テロ部”でご一緒させていただきましたが、普段は社内でどういったお仕事をされているんでしょうか?
吉岡(ミツカン):私は普段、ミツカンの商品の広告宣伝を行っております。今は味ぽんを含めた“ぽん酢”カテゴリーの担当です。
スタッフN(カバー):私はカバーの営業企画本部に所属しておりまして、普段は主に国内の企業様とのやり取りを担当しています。
古林(ClaN):ミツカンさんはこれまでに様々なマーケティングに取り組んできたと思いますが、VTuberという、少し特殊な領域に足を踏み入れ、企画を実施しようと思ったキッカケや理由は何だったんでしょうか?
吉岡(ミツカン):テレビCMなどの企業側からお客様への一方的な広告、というのが従来のやり方だったわけですが、そのやり方が変わりつつある、というのがまず前提のお話としてあります。もう企業からの一方的なメッセージは届きにくい、という意見は社内でも出ているんですよ。
そこで、お客様の立場に近い第三者の方に商品の良さを噛み砕いて、お客様目線で説明してもらう、という形のプロモーションをいくつか試すようになりました。YouTube、TikTok、X、Instagramなどのツールを用いて、インフルエンサーやYouTuberの方々に商品を紹介していただく中で、昨年、VTuberさんとの企画を行ってみたんです。それがこちらの予想以上に反響があり、「VTuber界隈、熱いぞ!」と実感する形になりました。
古林(ClaN):社内で反対の意見などはなかったのでしょうか? VTuberはバーチャルの存在ですので、その独特の世界観を懸念する声もありそうですが。
吉岡(ミツカン):初めてVTuberさんの力をお借りして企画を行ったときは、様々な意見がありました。味ぽんのマーケティングとして、なぜバーチャルの存在が必要なのか、その理由を説明するのは大変だったこともありますが……初回の企画が成功したので、それ以降は特に反対意見などはありませんでしたね。
古林(ClaN):“推し活”文化もありますし、ファンの方々は熱心にSNSでハッシュタグをつけて宣伝してくれるので、マーケティングの観点から見ても効果は大きそうです。
吉岡(ミツカン):そうなんですよ。ただ初回の企画の反響が大きかったこともあり、次の企画を出すなら更に成功させないと! というプレッシャーもありました。その点、“ホロライブ”という大きな箱を持ったカバーさんにご協力いただけるというのは、安心できましたね。
古林(ClaN):吉岡さんから見て、インフルエンサーやYouTuberの方々のファンと、VTuberファンの反応の違いなど感じられた部分はありますか?
吉岡(ミツカン):個人的な意見になってしまうのですが、求心力と爆発力がすごいなと思いました。推し活と一口に言っても様々な形がありますが、一体感とでも言うのでしょうか……ライブ配信のチャットが流れるスピードもすごいし、ライブ感と熱量が凄まじいなと感じましたね。
古林(ClaN):カバーさんとしてはいかがでしょうか。現在の、企業コラボを行う際の立ち位置などありましたら教えてください。
スタッフN(カバー):弊社はライブ配信と相性が良いということもあって、これまでゲームのPRがメインでした。これから日用品や食品など、日常生活で使うような商品のPRもやっていきたいと考えていたところに、ミツカンさんという大きな企業の、しかもメイン商品とも言える味ぽんを任せていただけるというのは、光栄なことだと思いました。
しかも今回、SNSキャンペーンなども使いながら配信に繋げていく大きな施策で、単なるPR配信にとどまらない試みができたのはすごく良かったのかなと思います。今までコラボカフェやレストランなど、店舗さんとコラボすることはあったのですが、こういったスーパーで手に取れるような食品はほぼ初めてで、反響も大きかったです。とくにXですごく盛り上がっていた印象があります。
タレントと商品の文脈・親和性が成功のカギ!
古林(ClaN):ここからより具体的な数字の話に移りたいのですが、今回の施策の成果はいかがだったでしょうか。
吉岡(ミツカン):ライブ配信の同時接続数、Xでの発話数、公式通販での販売数という定量の目標がありましたが、ライブ配信の同時接続数も目標を大きく上回り、公式通販でのノベルティ付き限定デザイン「味ぽん」2000セットについても販売から間も無く完売しました。それから社内でも重要視していたX上での発話量は、22,000件を超えていました。
味ぽんブランドとしてUGC(ユーザー生成コンテンツ)数を上げていくのは大きな目標でした。YouTubeの配信からXに繋げていく、しかも自分でレシピを作って投稿してもらうという能動的なポストも多く、この発話量の多さは大成功だったんじゃないかと思います。
味ぽんは買ってそのまま食べられるわけではないので、味ぽんを使った料理を投稿しなきゃいけないというハードルの高い企画だったんですけれど、それでもこんなに投稿してくれた方がいるというのは本当に嬉しかったです。
古林(ClaN):ものすごく凝った投稿が多かったですよね。大根おろしで団員さん(白銀ノエルさんのマスコットキャラクター)を再現していたり、大空スバルさんに差し入れした牛丼を再現していたり……。
スタッフN(カバー):我々も最初は「どれくらい投稿数あるんだろう」って心配してましたよね。ファンのみなさんの時間も限られているし、手間がかかるものですから。でも結果的にすごい盛り上がって安心しました。
吉岡(ミツカン):10種類のレシピを全品作っていた方とかもいましたよね。以前も別のタイアップで、視聴者に実際料理をして投稿頂くキャンペーンを何度か行ったことがあるのですが、、実際に料理を投稿してもらう難易度は高くてこんなに投稿数はなかったので、やはりVTuberならではの熱量を感じました。
スタッフN(カバー):こういった参加型の企画はファンの方からも好評で、楽しかったというお声をよく聞きます。
古林(ClaN):Xの施策と言えばファンアート部門もありました。こういった企画はVTuberならではかなと思うのですが、吉岡さんはどう思われましたか?
吉岡(ミツカン):こんなイラストを描いていただけるんだとびっくりしました。愛のあるイラストが投稿されて、とても嬉しかったです。
古林(ClaN):施策の中では、タレントとの文脈を大事にしてきましたが、そのあたりカバーさんはどうお考えでしょうか。
スタッフN(カバー):そうですね。タレントと何の関係もない唐突なPRは、ファンの方も不快に感じてしまうので、そのタレントとどれくらい親和性があるか、文脈があるかというのは弊社としても大事にしている部分です。なので、推しである大空スバルさんのイベントに白銀ノエルさんが味ぽんを使った大好物の牛丼を差し入れする、というのは良い流れだったのではないかと思います。見た目のインパクトもありましたしね(笑)。
古林(ClaN):今回の一連の企画ではXやYouTubeだけではなくて、イベントにご協賛いただき、結果的にテレビ番組でも一部紹介され、オンラインとオフラインの両面で広がっていきました。
スタッフN(カバー):そうですよね。タレントの活動の中心であるインターネットの世界を飛び出した施策になり、新鮮な気分でしたね。
古林(ClaN):ミツカンさんとしてはいかがですか? 前年度の企画を超えたいというプレッシャーがあったというお話もさきほどありました。
吉岡(ミツカン):文脈の重要性を痛感したと言いますか、ファンの方に違和感なく、イベントやテレビも絡みながら面白おかしく受け入れていただくやり方は初めてだったかなと思います。弊社もさまざまなイベントに協賛させていただいたことは過去何度もありますが、今回のようにラストのエンドロールで「味ぽん」の文字が出て会場がワッと沸く、なんて経験は今までになかったので驚きました。
古林(ClaN):Xでも取り上げられてましたよね。
吉岡(ミツカン):そうですね。「味ぽんありがとう!」みたいな声が(笑)。
古林(ClaN):そういうファンの皆さんの反応って温かいですよね。文脈に沿うことでファンの方にも楽しんでいただけて良かったなと思います。
吉岡(ミツカン):PRって受け入れられたり、そうでなかったりと、蓋を開けないと分からない部分もありますからね。
スタッフN(カバー):イベントに参加するファンの方々は白銀ノエルさんが牛丼が好きなことをもちろん知っているし、味ぽんが好きなことも知っていて、大空スバルさんが好きなことも知っている。そこでミツカンさんの名前が公式的に出てくるのは、ファンの方々も「良かったね」という気持ちがあったのではないでしょうか。
古林(ClaN):タレントさんのやりたいことと企業の伝えたいことがマッチして、結果的に企業のPRにもなるという形が1番望ましいですよね。
スタッフN:弊社ではタレントへ「企業案件を受けるとしたらどういった製品のPRがしたいか」というアンケートを採ることがあります。なるべくタレント本人がやりたいことを楽しんでやってもらった方が、見ていてファンも気持ちがいいし、購入したい、利用したい、という気持ちになりますからね。
今回の件だと癒月ちょこさんが元々料理好きということもあって、施策が終わった後も個人的に味ぽんを使った料理を投稿してくれていました。もちろん白銀ノエルさんも、今回の施策をすっごく喜んでいました。
古林(ClaN):今回のコラボは、ミツカンさんの手応えとしてはいかがだったでしょうか。
吉岡(ミツカン):「味ぽん」というブランドの世間での認知率は、世代を問わずとても高いのですが、いま市場を支えていただいているのは主に40-60代の女性の方なんです。比較すると若年層の方はまだまだ購入経験率は低い状況にあります。そうした課題がある中のコラボで、普段は味ぽんを手に取らない層に購入していただき、料理も楽しんでいただけたんじゃないかなと思っています。
古林(ClaN): ClaNとして、今後もVTuberと企業がお互いにやりたいことを楽しくやれる企画を考えていきたいです。またミツカンさんとカバーさんとご一緒させていただけたら嬉しいですね。
インタビュアー:古林碧 / ClaN Entertainment ビジネスプロデュース部 マネージャー
編集・撮影:二城利月