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夢の欠片

 夢を見てると、必要以上に感情を揺さぶられることがある。もう時が止まっている友人に出会えたりすると、別の選択肢や彼らの現在について想いを馳せて、心が沈んでいくことがあります。互いの人生が交わる瞬間は、あまりにも短い。インターネットに浸っていると感覚が麻痺してしまいますが、学生時代の友人ともなれば、これも必然なのですね。ただ、何もかも超越して再会できる点においては、夢の利点であるなと思ったりもします。

 夢の中を彷徨っていると、思わぬ収穫を得ることもある。本当に偶然が重なって、誰も知らない場所に辿り着くことがあります。それは記憶の再上映ではなく、幻想の最果てに近いような気もする。特に印象深かったのは、無数のキャンドルが灯るレストランです。暖色の光に包まれて、夜空が反射するスープと黄金のジュースを眺める。蒼と紫が混ざり合った世界に、星々が悠然と佇んでいた。あそこまで幻想的な虚構を、私は他に知りません。

 そんな景色に出会った日は、必ずメモを取るようにしています。記憶が零れてしまう前に、そのままのサイズで現実に貼り付ける。夢からコピーした言葉は大抵破損していますが、何が創作の糧になるか分かりませんから、必ずメモを取るようにしています。

 今日も夢で収穫を得たので、急いでメモに書き綴りました。加速度的に零れていく記憶に焦りながら、何度も夢を反芻して書き綴る。生活音に辟易する中で何とか書き終え、そこで夢が覚めました。そう、二重に夢を見ていたのですね。やや口内が渇いていて、喉奥が水分を欲する。その感覚が現実への帰還を知らせ、小さな絶望へと貶めました。もう夢の記憶は切り取られ、再びメモをすることは叶いませんでした。あのメモは、夢の世界に置いてきてしまったのですね。

 夢は記憶を整理すると言いますが、あの光景は、私の中に散りばめられているのでしょうか。いつか、夢の欠片と再会できたらいいなと思います。

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