放課後
中学の同級生と会いました。成人式から、不定期に飯を食べる関係が続いていますが、かなり気に入っています。もう2年も経つようで、時の流れは本当に速いなと思うばかりです。
夕飯を終えると、大抵はコンビニへと向かいます。菓子やジュースを携えて、公園で駄弁るのです。ただ、今回は公園へ寄らず、歩いて帰ることになりました。夜は寒いですからね。
電車なら10分ほどの距離を、1時間以上掛けて歩いていく。夜に包まれた街道で、何も考えずに駄弁り、ゆっくりと家路を辿る。この放課後みたいな時間が、本当に好きなのです。
幸せな時間は短いもので、気付けば解散場所が近付いてきました。終わりは確実に迫っている。見慣れた道は、何となく距離が分かってしまって、少し嫌だなと思いました。もっと余韻に浸りたくて、まだ幸福を味わっていたくて、現実と反発するような感情が、じんわりと溢れてきました。
「ずっと続けばいいのに」
「この放課後みたいな時間が、ずっと続いたらな」
気付けば、そんなことを口走っていました。寂しい終末に向けた、小さな抵抗。半ば愚痴のように吐いた言葉を、友人たちは丁寧に拾ってくれました。
改札で解散するのは寂しいとか、段々こんな機会も減っているとか、やっぱり歩いて駄弁るのが楽しいとか、そんなことを話しました。友人の共感を得て、少し肩の力が抜けました。みんな同じことを思っていたのだと、それを共有できて良かったと。薄緑色の電灯が、少し明るく見えました。その後、本当に少しだけ遠回りをしました。
遠回りの先で、アイスの自動販売機がありました。友人を呼び掛けて、薄暗い自販機に集まる。値段を眺めると、思わず驚嘆しました。記憶よりも、ずっと高い。当時は100円台前半だったような気がしますが、今では180円になっていました。これは流石に買えないねと、学生時代へ戻ったように苦笑する。そうして、また帰路に戻りました。
環境も関係も、何もかも変わっていく。変化は悪ではなく、必要な前進だと思います。けれど、この時間だけは、この放課後のような帰路だけは、ずっと手放したくないなと思ったりします。