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夜にジャズが溶けていく

 夕食後、どこか物足りなさを感じて菓子類を漁るときがある。今日もそんな日でした。塩味を求めて探索するも、本当に何もなかった。そのまま諦めてもよかったのですが、今日は偶々元気が残っていた。そうして、散歩がてら業務スーパーへと向かいました。

 夜の業務スーパーでは、ジャズが流れている。昼間はポップな音楽が流れているので、何だか別の店へ来た気持ちになる。この何とも言えない非日常感が好きで、いつも足が弾んでしまいます。閑散とした店内を歩き、お菓子コーナーを眺める。目当ては、勿論じゃがりこ。しかし、棚にはチーズとサラダ味しかなく、じゃがバター味がありませんでした。チーズとサラダは最近食べたので、今日はじゃがバター味が食べたい。仕方ないので、購入は保留にしてコンビニへ向かうことにしました。

 見慣れた電飾、無機質な店内。コンビニにやってきました。コンビニの電飾は明るすぎて、あまり好きではないです。夜は、光を探すくらいが丁度いい。そうして店内を散策すると、あっさりとじゃがバター味が見つかりました。ただ、業務スーパーの倍以上の値段がする。数百円とは言え、流石に悩みます。衝動に任せて買ってもいいですが、給料日前で節約をしないといけませんから、限度がある。葛藤の末、業務スーパーへと戻り、チーズとサラダ味を買いました。レジを通り、千円札を機械へと挿入する。財布から現金を抜き取ると、うっすらとした喪失感に駆られます。ただの紙切れなのに、この感覚は避けられない。やっぱりじゃがバターも買おうかと一瞬迷いましたが、液晶に表示された790円という釣銭の数字を見て、再度諦めました。これ以上散財するのは耐えられなかった。

 帰り道、スマホでジャズを流しました。ジャズを聴きながら歩く夜は、いつもより上品で、夜が彩られていくようでした。いつも浴びてる夜が無彩色であるようにも感じて、今後はジャズを聴いて散歩しようかとも思いました。ただ、じゃがバターを食べれなかった無念が、数百円を我慢しなければならなかったという悲しみが、軽快なジャズと共に染み渡り、しんみりとした夜になってしまったのも、また事実です。