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デザイナーという仕事の話

もう世の中は進みすぎたので デザインするものなんてほぼないんだよ、という話からはじまった。





昨日先生が 面白かったから見てよ、と後輩たちの授業の録画をいきなり流してきた。


某メーカー大企業のインハウスデザイナーの講義で、まあ先生の後輩なのでクセのある人なんだろうと思ったら 本当にクセのある人だった。


こうして見始めた録画は、冒頭の一文からはじまる。




もうデザインするものなんてない。

一応デザイン学部の授業なのに、こんな夢のない話からはじまるので笑ってしまった。





素直な欲求を解決するもの とか(例えば洗濯機。洗う手間を省く機械)は出尽くしてしまった。


現時点でプロダクト界隈では あくまで今あるデザインの改良をしていくのがほとんどで、マーケティングとして劇的な変化をもたらすことは難しい。

だから大企業は新規事業の開拓に躍起になっているし、手こずっている。




比較的インハウスデザイナーを望む傾向が強いわたしの学部で言うのが面白いし、何より本人がそういうところに20年弱勤めているのだ。

だからこそと言うのもあるかもしれないが。





そうして、仕事がなくなってきている(?)デザイナーとはどういう人間なのかという話になる。

仕事がなくなっているかどうかという話はまたあとで。





「デザイナーは美しいものを複雑にするという奇妙な十字架を背負っている」


まあそんな感じの表現をしていた。でもよくわからなくて3回は読み直した。




デザイナーは 美しいもの=新しいアイデア を人に伝えるには、なにかしらカタチに落とす必要がある。

ということは 元々あった美しいものをより複雑にして 美しいものへと変化させなければならない という。それが仕事であると。



むずかしい。





まあまず、新しいデザインたちは無くてもぶっちゃけこれまで生きてこれたのだ。わたしたちは。


これまでみんな浮かばなかったものだからこそ新しいのであって、すんなり万人の腹に落ちるわけではない。


そこであらゆるプレゼンやプロダクトを駆使し、「これ すごいでしょ?」と広めていく。


このプレゼンにおけるコンセプト立案やモデリングで、アイデアを「複雑」にする。そんな使命を背負っているのだ、と。


そしてこの、アイデアを複雑にすることこそがデザイナーの強みである。


普通の人間は言語化するとか、ビジュアライズするといったことが案外上手くできない。


けどデザインのアウトプットとして何度も繰り返し、訓練しているデザイナーたちはその作業に長けている。


なあんて話だった。




かのスティーブ・ジョブズだって模倣と模倣で新しいものを作ると言うのだ。


今あるものをごちゃごちゃさせて、それを世に放つとき、いかに優れているかをさも当然のように話すのがデザイナーである。





もしかしたら、言葉巧みな、人の欲求に素直に訴求できた製品が生き残ってきたのかもしれない。






だからこそこれからの時代は、デザインを学んだなら 造形がチョーうまい美大生ばかりの古来のデザイン部門になんか飛び込まない方がいいし、かえって総務とか人事とかの方が重宝されると話す。

普通の人のアイデアの具現化とか 当たり前のようにしてきたアウトプットを 普通の人の世界で発揮した方が重宝される のかもしれない。




これを大企業のインハウスデザイナーが話すのだから面白い。後ろに上司はいたらしい。ヒヤヒヤものだろうな、上司は。



こんな話を面白いよな、と言う先生の元で 私は今日もまた教えを請う。

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