『Lighter』

 おはようございます。こんにちは。こんばんは。林 荘太です。

 今回は初めてつくったフォトブック、『Lighter』のことをかきます。

 lightは主に名詞、動詞などとして多くの意味をもち、用いられる英単語のようですが、僕は「灯」という日本語に関連する意味を特に当てはめています。

僕の作品は全て、この「灯」を表そうとしています。作品によって違う角度から表そうとしているので、無理があるだろ!と感じる方もいらっしゃると想像しますが、必ず、なんです。この観念をして僕の作品を見ていただければ、それはシンプルなものになるはずです(恐らく)。「灯」の意味はすごくたくさんあるので、お好みのものを頭にセットしていただければ。無責任か。

 当然そうなるので、僕が「灯」に託す意味として重宝しているものを短く挙げた後に、それにまつわるエピソードを長々かこうと考えています。お読みになりたいという方は、是非お願いします。では、まず意味です。

①弱くて強い矛盾を抱えていること
②大部分を闇が占めていること。しかし、大き 
 さや数でそれを覆せること
③ものの見え方をシンプルにすること
④渡すことができること
⑤総じて人だと思うから

 2022年12月25日のクリスマスの日に、色々なあかりが見られる展示会がやっているということだったので、東京ガスミュージアムに行きました。「1時間に1度くらいで、展示している器具の点火式が行われます。」と学芸員さんに言われ、ホクホクして会場に向かいました。そこで『裸火のガス灯』に会いました。マッチで「灯」して、つまみでガスの量を調節し、火の大きさを自在に変えられます。一通り終わって、火を小さくして、学芸員さんがふっと吹き、それは一瞬で消えました。ただ、10分足らずの時間に『裸火のガス灯』のあかりは絶対に忘れることのない画になりました。カメラを買って2ヶ月、撮っては、まとめ、見て、考えてを繰り返していましたが、自分の核にあるもの、他の人と共有したいものを初めてくっきりと認識しました。
 また、過去のがい灯に関する書籍の展示も印象的でした。昔はがい灯もガス灯だったため、日暮れ前にあかりをつけて歩く、あかり屋さんがいたようです。ここで僕の生涯大事にしたい名前、「Lighter」の構想が芽吹きました。lightに人を表すerをつけてlighter。無茶苦茶だけど、結構良い名前だと思いました。

 ある日、授業の課題として、とある映画を見ました。チャールズ・スペンサー・チャップリンの『City Lights(街の灯)』です。この時の僕になんて映画を紹介してくれたんだ!!と感激しました。教官のY.T.先生は僕に文字通り「灯」を灯してくださいました。内容は控えますが、このお話はとてもシンプルで、素直です。途方に暮れても、手探りの中で、見つけた「灯」を追いかけています(主人公が)。ひたすらに人の幸せを願う、本当に素敵な物語です。僕の背中にもそっと手をあててくれました。ここで、僕の核がさらに凝縮しました。

 大学2年生の春休み、母方の祖母の家に泊まりに行きました。自分は写真を撮っていて、こういう思いで作品をつくっているんだ、と話すと、祖母はたのしそうに僕の話しを聴いてくれました。そして、戸棚の奥から、自身の使っていたフィルムカメラを出し、僕に是非使ってくれと譲ってくれました。また「灯」を灯されました。祖母は「いいことに気がついているね。その眼でいろんな人を見て、一緒に過ごしてごらんなさい。きっと良い時間をつくるわ。」とつけ加えました。自分が「灯」したい、とよく思うようになりました。そして、どうすればいいのかも少し教えてもらったと思いました。

 大学2年生の10月?学園祭で初めて、大学の写真研究部の活動に参加しました。その頃はカメラも持ってなく、また飛び入りだったので、作品も出展していませんでした。展示設営の手伝いです。そこで1つ上のK.G.先輩と会いました。彼は非常に良くしてくれました。そして、何よりすごくたのしそうに作品を、展示をつくり上げていく方でした。初対面なのに、「この人を指針にしよう。」と思ったのを、よく覚えています。写真に興味はあったものの、カメラを持ってみようとはあまり考えていなかったのですが、この方のおかげで撮ろうと思ったのです。K.G.先輩は、僕に最も大きな「灯」を灯してくださいました。
 そして作品づくりや展示会を通して、多くの個性溢れる「灯」に会うことができました。その度に僕の「灯」はすがたかたちを変え、毎回自分でもかなり新鮮だ、と思えるほどに灯っています。

 僕が『Lighter』にうつしたものは、中々一口には説明できません。言葉の埒外にあるものが複雑に絡み合っているからです。もしかしたら、この文章もほんの一部しか表現できていないかもしれません。拙いものながら、もし、ここまで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、御礼申し上げます。

 次は、あまり言及しなかった「大部分を闇が占めていること」について、Felix Vallotton氏にまつわるエピソードを交えて、かこうと考えています。

では、いったんこのへんで。ありがとうございました。さようなら。

                 林 荘太

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