「ハイペースは差し有利、スローペースは逃げ有利」は嘘

これだけは言いたい、競馬の嘘。

よく、ハイペースになると後方にいた馬が有利、スローペースになると逃げている馬が有利と言われますが、これは嘘です。もちろん、当てはまることも多いので、正しく見えてしまうのが問題なのですが。

さて、この主張をする人は根拠としてこう言います。

「ハイペースだと前にいた馬がバテて差し馬が有利になって、スローペースだと前にいる馬も余力が残っているので勝つ。」

まあそれなりには正しいです。しかし見逃している点がいくつかあります。

例えば、
ハイペースでレースが進んでいたら、後ろにいた馬もいつもより速いペースで追走を強いられるので余力はあまり無いのでは?
という点

これは、未勝利戦などのレベルの低いレースで特に見られます。ラストの直線でよーいドンする瞬発力は他の馬たち並みにあるが、とにかく足が遅く、レースでいつも最後方になってしまう という馬です。

画像1

↑のレースは「ハイペース」だったのですが、そこまで差し有利になっていません。
このレースのミスカイウラニやグランキティは、ハイペースではそもそも追走出来ないのですが、ミスカイウラニは次走ミドルペースになったため5着に、グランキティも次走ミドルペースで5着に食い込んでいます。(16番人気で馬券買ってたので悔しい…)


また、追走に苦労するかというと微妙なのですが
「スローペースが得意な差し馬」もいます。
例をあげるとすれば、昨年引退したフィエールマンがこのタイプで、瞬発力が重視されるレースで基本勝っています。この馬のことを「長距離が得意」と勘違いしていた人もいるのですが、長距離はスローペースになることが多く(3000mもあって前で飛ばすのは中々勇気がいりますよね。)、ラストスパートのよーいドンになることが多いので長距離で活躍しやすかったのです。


ちなみに長距離レースは瞬発力戦になることが多いので、上がりタイムが速い馬を狙うと勝てることが多いですよ。(目黒記念のような「長く良い脚を使う」のを求められるレースもあるので注意が必要です)
長距離を走ったことがない馬たちが出るようなオープン戦がおすすめです。


昨年の天皇賞・秋でフィエールマンが2着になり、「え、この馬2000m (短い)でもここまで走れるのかよ!」というコメントが見受けられましたが、スローペースになったから2着に食い込んだのです。


また、この逆で「ハイペースが得意な逃げ馬」もいます。最近だとスマイルカナはこの例で、正直強いですね。スマイルカナは昨年6月の米子S 1着で、確か現4歳世代で古馬との対戦を初勝利した馬だったかなと思うんですが、それにふさわしい強さです。年末には見事重賞も勝っています。
レシステンシアも近いですね。この馬も早めのペースで飛ばせば阪急杯のようにレコードタイムを出して勝ってしまうのですが、マイルCSは全然前に出さず批判殺到でした。ペースが遅いと後ろの馬たちも余力を残していて、瞬発力が強みでないこの馬には不向きということです。阪急杯はしっかりと飛ばしてくれて北村友一騎手には感謝です。
ダートだと、メイショウハナモリという馬や、あと地方のサルサディオーネなんかはひたすら飛ばしていくイメージで面白いですね。

このあたりの「ハイペースが得意な逃げ馬」というのは、つまりコースをどれだけのタイムで走れるかというスピード決着ならめっぽう強い、ということで、普通に人間の陸上のように考えたら一番強いですよね。


ということで
「ハイペースは差し馬が有利、スローペースは逃げ馬が有利」というのは、当てはまることもあるのですが常に正しいとは言えず、どちらかというと

「ハイペースはハイペース巧者が有利。スローペースはスローペース巧者が有利」だと僕は思っています。


(スローペースで後方待機する騎手はダメです。ステイヤーズSのような長距離だと結構いるんですが。頭が終わり特別)


少し補足します。
競走馬たちは、この話で大きく分けると4種類ほどに分けられます。
①ハイペースで勝つ逃げ馬
②スローペースで勝つ逃げ馬
③ハイペースで勝つ差し馬
④スローペースで勝つ差し馬

①,④の話はしたので割愛すると、②のタイプには昨年ラジオNIKKEI杯・セントライト記念で勝ったバビットなどがいます。
スタートしてハナを取れる力と、最後直線で粘る力はあるのですが、コースを全力で走ってタイム差決着となると分が悪い という馬です。ラジオNIKKEI杯の日は馬場がバグっていたので参考にならないのですが、セントライト記念などはそういう勝ち方をしています。
スロー逃げじゃなくて飛ばしてみて欲しいと言っている人もいましたが、中山金杯はやはりダメでしたね。
このレースは一応ミドルペースということになっているのですが、1000m通過が57.8秒なんてバリバリのハイペースです。
一般に、後半3Fタイム-前半3Fタイムが1秒以上あるのをハイペースというらしいのですが、前半に飛ばしていればそれはハイペースなので、「早いタイム決着」と言った方がいいんでしょうか?ただタイムについてはあまり詳しくないんですよね。

③のタイプの馬は、速いタイムは出せるけれども、最初に逃げてハナを取るような力は無い という馬ですね。歴代の強い馬は結構ここにはいります。ハイペース巧者=速いタイムで走れるので、強い馬なことが多いです。
ただ②であげたような馬に先頭を取られると、瞬発力戦では負けてしまうかもしれない…という感じです。


競馬は一頭ずつ決められたコースを走って、それぞれの馬が出したタイムで順位をつける競技
ではないので、こういう馬が負けることが多く波乱も起きるのが面白いところなのです。

最近気付いたのですが、つまりスローペースの方がまぐれが起きることが多く、馬の戦績を見返しているときに「スローペースで負けたレースは気にしなくて良い」ということが多いことに気がつきました。
逆にスローペースで大差をつけたから強いかと言われるとそうでもなく、最近だとタイソウという馬のデビュー戦が大変強そうに見えたのですが、その後は良いレースを出来ていないようです。
エフフォーリアの共同通信杯も全く同じことを言われているので心配ですね。今年の共同通信杯は、同日に行われた未勝利戦よりタイムが1秒も遅く、文字通り「遅いタイム決着」でした。

話を戻します。
③のタイプの馬には、広い目で言えばアーモンドアイなども含まれて、「差し馬」でも「ハイペース巧者」でもないかもしれませんがレコードタイムを出すように「速いタイム決着」が得意で「瞬発力勝負だと分が悪い」のでここに入れます。
アーモンドアイの引退となったジャパンカップでは、キセキが大逃げをうった瞬間にアーモンドアイの勝ちを確信してニヤリとしていた人もいるでしょう。この前走の天皇賞・秋(先ほどのフィエールマンも出てた奴)でアーモンドアイの衰えが〜なんて言ってた人もいるのですが、このレースで見かけの着差が少ないのはスローペースだったからです。フィエールマンに展開が向いて、アーモンドアイには不向きな展開なのに、前者が2着で後者が1着。本当に強い馬でした。

また、本当の意味でのハイペースが得意な差し馬もう少ししっかり当てはまる例をあげるとヴァンドギャルドなどがこの例に当てはまります。タフな馬場巧者でもありますね。この話をするとまた話が拗れてしまうので辞めておきます。


結局、ハイペースが得意な馬が速いタイムを出せるし強い感じがしますよね。アメリカのダートレースなんかは、最初から全力で飛ばすのでただただ「早いタイム決着」が得意な馬がどんどん選抜されていって、日本のダート馬が挑戦してもなかなか勝てないというような話を聞きます。


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