絵の描き始めのうまくいかないしんどさ、どうやって乗り越える?
絵の描きはじめの頃って、『描いたけどどうしてもうまくいかない…』『こんなの自分の好きな○○(キャラクタ名)じゃない、正視できない!』これってあるあるだと思うんです。自分も未だにそうです。
この有様。
ぶっちゃけ、この気持ちって、人によっては一生ついてまわるものなんですが(詳しくは後述)、それってつまりは絵の描きはじめにいきなりラスボスに出くわしたようなもので。そりゃもうしんどい。当然ですよね。
これはそういう気持ちに折り合いをつけつつ、『これなら自分、頑張ったかも』『ここはちょっと好きかも』ってなれるところまで、なる早で駆け抜けるための方法です(ただし私含めてn=5ぐらい)。
最初にまとめ:閾値を下げて、なるはやで数こなそう!
内容ざっくりまとめるとこんな感じ。ある程度数をこなして、技量と自分の自信と両方育てて行くとある程度踏みとどまれるようになるんですが、そこまでがなかなか大変ですよね。
以下、自分が実践していたり、よく友人に話している具体的な方法です。モチベーションやメンタルのコントロールが必要なので最終的には自分との戦いになっちゃうところアレなんですが、なるべく実際に出来る方法で書きました。
○や棒よりお胸好きならそれ描こう
これ実際に小説家の二宮酒匂先生にお伝えした内容です。○や棒が描きたいものじゃないよね、おっぱい描こうぜ!みたいなこと言ったと思う。線を上手く描けるように丸とか棒とか練習してらしたので、どうせなら好きなもの、描きたいもので練習しようぜと。○とか棒とかでの練習はやりたいと思った時にやるのは良いと思います。
その後先生は漫画家としてもデビューされました(なお先生の努力と研鑽の結果で、私は最初の頃に『おっぱい描こうぜ!』とかお伝えしたほかは、絵を見せていただいて喜んでただけ)。上記の会話、まさに0スタート1年で神絵師目指す作家さんが主人公の小説『オイスター先生と俺。』でネタにして頂いてます。
*追記:『オイスター先生と俺。』カクヨムコン9プロ作家部門特別賞受賞とのことです。おめでとうございます!!!
表題と関係あるようなないような話ですが、『○○するためには✕✕しないといけない』みたいな変な縛りをよく聞くんですが、少なくとも最初、絵を描くことが好きになるまでは、そういうの全部ナシ!忘れてください。
好きなものを描こう
『このキャラだけはうまく描けないの悔しい、諦められない』『この部位好き!うまく描けるようになりたい』という好きポイントを絞りこんで、それいっぱい描いてください。描いてるとあっこれ好きかも、っていうところって掘り下げられていっぱい見つかってくるんですが、描かないと見つからないので、一番ハードル低かったり、一番諦められないものからまず描き始めちゃう。
手が好きとか、上に書いたお胸とか、パーツ一つからでいいです。それをより良く表現するために、だんだん周りのパーツにも欲はってくるので。
好きなもの描いてる方の、好きなとこって絵の中でだいたい輝いてるんですよ、これ好きそう!ここいい感じ!って見てて思う。技術の巧拙問わずそこ好きって嘘偽りも誇張もなくお伝えできます。褒められポイントを自分で育てられるんですね。
あと逆に、好きなものは割と素直に向き合えるんですけど、嫌いなものと向き合うときって、結構自分の認知って曲がるんですよ。辛いのでそのものをうまく捉えられない。なので、嫌いなもの克服しようとアクションを起こしても、けっきょく解決しない、ということが往々にしてあります。なので、自分は、好きな事に向かって物事進めるのをおすすめしています。『嫌いなもの』も解体してみると、『ここは好きだな』ってこと結構見つかるもので、最終的に好きな事だけで解決できちゃったりします。
褒めてくれる人に見せよう
これめちゃくちゃ大事で、周りにほめてくれる人が居たら『描けたら見てもらっていい?』ってお願いしてその人に、居なかったら誰かに『見て好きなところ教えてほしい、いいところだけでいい』ってお願いして好きなところ教えてもらったり、めっちゃ褒めてもらってください。友達のために友達の好きなキャラ描いてもいいとおもう(自分と好きなキャラが一緒で、喜んでくれるタイプなら)。
何しろ『見せて喜んでくれる人に絵を見せる』。
(そういう人が見つからない場合の手札、もちろんあります。後述)
自分で自分の『ここよく出来たかも』が褒められるタイプの方なら必ずしも必要ではないんですが(そしてそういう人は最初の3000枚、特に労なくクリアできるはず)、私のような、どうしても自分と解釈違いを頻繁に起こすような人や、自分で自分を褒められない人は、ここチョット頑張ってたくさんほめてもらって心の栄養を蓄えてあげてください。
私に褒めさせろーって挙手したいぐらいですが、時間に限りがあり、かつハードル下げると悪用する人があらわれるのでおいそれとは挙げられず…。時々skebさんで窓口あけてたり、ごく稀に専門学校の授業で希望者の方の作品のレビューさせて頂いたりしていますので、そういう時に聞いてみてください。
目標は小さく
すぐ達成出来る目標を立てて、次々こなしていくようにします。これは自分をうまく褒められない人や、褒めてくれる人が見つからない人への代替案として使えます。自分を褒めるのが難しいなら、褒められる理由を自分に作ってあげるんです。絵の内容ではなく、自分の行動に。
絵がうまく描けなくて悔しい、みたいな状態って、見方を変えると1日2日では超えられないような大目標しかない状態、なんですよね。なので、『今使える最小限の時間で達成できる課題』を作って自分に課して、必ず超えます(超えられなかったらもっとハードル下げる)。もう最初は『机に向かった!えらい!』『棒人間描いた、すごい!』とかでいい。最初のうちは、すぐに達成でき、ちょっとの達成感がある目標がいいと思います。『今日は朝ごはん食べた!』(ウィダーでもいい)ぐらいの難易度。ある程度こなせていけそうって思えたら、少しだけハードル上げてみてください。達成できない時は必ずすぐに下げてください。下げたら『自分に適したレベルに設定できたぞえらい!』て自分を褒めてあげてください。
出来たら自分を褒める
必ず一つでも2つでも、頑張ったところ、好きなところ見つけてほめてください。目標を立てて達成した人は、そのことをよく褒めてあげてください。毎日小さい目標を積んで、毎日理由を作って自分をほめて、褒め慣れてください。自分を褒められるようになるには褒める練習が要ります。
絵については、正直言って自分を卑下するほうが楽なところ、あるなって思います。絵を発表するときって自分に評価がついてまわるし、自分がその表現の責任を取るものだし、自分の決断でそれをやるので、卑下してそれを理由にしたら、それ全部しないで済みますからね。こわいのは当然。でもそのままだと絵は公開されないままで死んじゃう。
私は絵が死ぬの嫌なので、自分をちゃんとほめて全力で正気をぶん投げて絵を公開してます。
投稿したらよくやったって褒めます恥ずかしさで床に落ちてますけども(なので、絵の投稿前の文章整えてる時、割と毎回スマートウォッチから『ストレスが上がってます』通知が来ます。何なら異常心拍数アラートが鳴る)。仕事の絵はこういうこと全然ないけど、趣味の一次創作の絵だと自分もこんなもんです…。この卑下する気持ちは早いうちにとっ捕まえてコントロール下においたほうがいいです。
なお自分を卑下する事自体にも、対応策あります。
当座の目標は3000枚(個人差アリ
これ、前に書いたんですがこれ。
自分がだいたいラフ込み3000枚描いたところであっ好きかもって自信ついてきたので、n=1の数字です。一枚の大きさや密度は問わない(B5のルーズリーフやノートに内容はまちまちだった)。
人によって個人差あると思いますが、ある程度枚数が必要になることを前もって分かっておくと気が楽かもと思って。楽しんで描いていれば、1年も経たずにクリア出来る枚数です。大丈夫!
否定やけなすの絶対ナシ
これすごい大事。『作者なら批判も聞け』という人とは全力で距離取ってください。『褒めてくれる人にばっか見せてたら、その人の望むものしか描かなくなる』そんなの全然オッケー。何よりまず枚数描くのに慣れること、自分の絵と向き合うことに慣れること、描くことが好きになることのが大事。そこに至るまではそれ以外のことは一切かんがえなくていいです。閾値上げるものは全排除で。
あと自分で自分を否定してしまうときって、案外睡眠不足等の不摂生が原因だったりします。しっかり寝て、食べて、運動して、万全で挑んでみてください。
なるはやでたくさんPDCAサイクル回そう
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)
をどんどん繰り返していこうなるはやで、という話です。具体的な方法は繰り返しの貼り付けで恐縮ですが、こちらの中盤以降に。
どんな小さなサムネイルやラフでも、それを描く目標があるはずなので、毎回描く前に2秒で目標設定(練習用のサムネイルやラフならそれぐらいで思いつく目標で足りるはず)、達成できたらレビューとつぎの目標設定をを5秒とかでやっていくといい感じです。
手段は選ぶな(人に迷惑かけない範囲で
割とお話伺っていると、『絵はこうしないといけない』という話を聞くことが多いんです。冒頭の○と棒もそう。線引けるようになるまでずっと○と棒だけ描こうとしておられて。
そういうのはとりあえず置いといて、好きなものめいっぱい描くのおすすめしています。男性/女性/モンスターしか描いてない?尊いですオッケー!トレスが駄目?人に見せずに練習だけならokです!線画補正でも(そういう画材なのでok!)、3D素体でも(資料参考にするの偉い、ok!)、目標に対して使えるものは何でも使っちゃいましょう。『トレスなんて…』『素体写すだけじゃん…』て思うかもしれないけど、やってみると案外これって、ものや人の仕事をじっと間近で観察するもの、どこから絵が成り立つのか探るものだったりします。私も絵を描くのに詰まっていた頃、漫画の単行本一冊まるごと模写して勉強とかやってました。
ただし、一つ絶対に守ってもらいたいことがあって。
『人の作品を大切に扱ってください』。
人の作品を尊重することによって、自分の作品も尊重され成り立ちます。トレスや模写は、あくまで練習として個人での使用に留めてください。上手く描けたからもったいない…という気持ちが生じちゃうこと、あると思うんです。でも、写したそれが人の作品であることは、ご自分がよくご存知だと思います。
自分の作品に写真や素材のトレスを使いたい場合は、ご自分で撮った、肖像権や商標権、著作権など人の権利や撮影場所の利用規約に抵触しない写真や、権利関係がクリアな素材を使って行ってください。素材に使いたい写真や素材を購入・無料配布をDLの際に、使っていい用途や権利関係を必ず確認して、すぐにわかるようにしておくといい感じです。
人と比べるな、自分と競おう
『自分ここ頑張った』は割と手放しに自分を褒めやすいポイントなんですけど、これを曇らせてしまうのが人との比較。『でも、他の人はもっと頑張ってるし、自分なんて…』みたいなことは、今はナシ!ライバルは昨日の自分。当面はそれで。
いつか『あの人すっげ頑張ってるな、おれもがんばろ!』て思える日が来た時に、改めて周りを見てみると励みになります。
最後に:これは、いつまでもついて回る悩み
だいぶ前に、こういう話題を書いていたので、最後に貼っておきます。
悩んだ時は、北斎とローレンツを思い出すことにしています。いつまで経ってもこれはついてくる悩みなんだなと思うと、私は諦めがついて、悩むことを終わりに出来るので。
けっきょく、私は今も毎日何枚も描いては捨て描いては捨てしていて(毎晩寝る前に1ページ8コマぐらいのサムネイルをいくらか埋めながら寝落ちしている、たいがい人にお見せ出来るものではない)、最初に出会った『うまくいかない』『これは理想の○○ではない』っていう辛さって絵を描いている間ずっとついて回るんですけど、それって『こういう絵を描きたい』ということへの真摯さの現れなので、いつかきっと上手く扱えるようになります。
絵を描くことにつきまとうしんどさ、いつまでも自分を悩ませはするんですけど、ラスボスに見えたあいつは、実は厳しくも心強い仲間です。
そう思える日が来ますように。
追記:
あとこれ書き忘れてたんですけど、しんどいのでやっぱむりやめたももちろんアリで、大事な選択だと思います。他のことでノウハウ積んで、いつか戻ってきてもいいとおもうし、別の素敵な物事見つけてそれを楽しんで過ごすのも尊いと思います。
『間が空くと絵が描けなくなるのでは…?』と心配される方もあるかと思いますが、手癖やこうかくとかつて決めていた絵柄が抜けた、強くてニューゲーム状態が始まります。これはこれで楽しいですよ。2年ブランクがある勢より。
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記事長かったのでおまけ。
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