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失敗★蓮ストール 32-Ⅱ

【 雨宮蓮へのインストールに失敗しました! 】

♯夢小説 ♯ペルソナ5ロイヤル ♯女主 ♯成り代わり
夢主は周回プレイ記憶者です。

オリ展開回だよ!



 \前回までのあらすじァ!!/

 5/29、みんなで楽しみ、次の日の学校行事に備える。
 5/30は井の頭公園で清掃活動だ。
当日朝、男に絡まれていた後輩の少女・芳澤を助ける。その甲斐あってか、誤解を解くことができ、清掃活動終了後に互いに自己紹介もする。
彼女…“芳澤かすみ”の新体操の軽やかな体捌きを見て、悩みを聞くことと引き換えに、トレーニングを頼む。取引成立だ。





「あ、連絡先交換しませんか? あれ、電源落ちてる…すみません、最近スマホの調子が悪くて……」

 俺もスマホを取り出した。なんやかんや、起動音…

「あ、つきました! 時間ある時にでも連絡させてください!」

ぴぴぴぴ。交換完了。

『━━秀尽学園の生徒は、間もなく清掃活動終了です。食べた後のゴミは捨てずに、所定の場所に集めてください。今日はそのまま解散になります。お疲れ様でした』

今何時かな、と時計を見ると2時前だ。お腹も空く。残りの豚汁を、咳き込まないように一気に飲み込む。

「清掃活動、終わりみたいですね。ちょうどジャージだし、少しだけ基礎練やって帰りますか? まずは体幹からです! 基盤の体作りは大切ですから」
「押忍、よろしくお願いします」
「お、押忍!」

立ち上がって、パッと頭を下げた俺に芳澤ちゃんが慌てて同じ返事をして、2人で吹き出した。

 彼女に説明を受けながら、トレーニングに取り組む。
日頃から少し体作りに取り組んでいるのもあってか「おおっ、なかなかやりますね」と褒められた。
真似してみてください、と本格的かつ簡単なストレッチや、その後の体の動きを教わる。彼女のしなやかな動きに比べたら、俺のなんてまだまだ体が固いなぁと思わされる。でも、この動きを日頃のトレーニングに組み込んだら成果が出そうと思えるところ、さすが雨宮蓮。

「いいですよー、雨宮先輩!」

ぱちぱちと拍手してくれる。

「そうだ。プロテインとか飲んでたら、オススメ教えてくれないか? 運動選手の知り合いはもう1人いるんだけど、色んな意見が聞きたいんだ」
「やっぱりそうなんですね。服の上からでも、軽く鍛えてるってわかりますよ」
「軽く…」
「いやいや! 先輩の努力を軽んじたつもりはありません!」
「ははは、いいんだ。俺も忙しくて毎日やれてるわけじゃない。今のところ、部活に入る気も…いや、これも芳澤ちゃんの部活動を軽んじたつもりじゃない」

お互い様ですね?と彼女もいたずらっぽく笑う。さっきのベンチに座って、給水する。

「いいんですよ。そうですね、あと、わかったことと言えば…」

ウーン、と芳澤ちゃんが悩ましい顔をする。
ベンチから彼女を見上げていると、芳澤ちゃんが、腕を組んで、むっ!と真剣な顔をして、

「…………雨宮先輩って、もしかして女の方ですか?」

 な ぜ バ レ た し
い や バ レ そ う

「よくわかったな」

照れ笑い。頭をかく。

「そうなんです… ………… ……ええええええええ!?」

〜 君の言及した物語だ 〜
自分で言っておいて飛び退る芳澤ちゃんを、困った顔で見つめる。

「どどどどうして男なんですか!? だって、男だし、男だし、男だし…! でも体つきとか、動きとか絶対私の見立てでは、お、おん、おおおお……」

語彙力! 彼女の百面相に赤い顔があったのは、学内での恥ずかしい想像をしたのだろうか。そして、バッと詰め寄られる。

「ナゾです、雨宮先輩! どうしてそんなことに!?」
「各方面から、圧をかけられてな…男として過ごすことを半ば強制されているんだ…」
「…そうなんですか…。一応、その、前歴…と、関係アリ…?」
「そんなところかな…。それに、見ての通りの体だろう? そんなハンデを課せられても仕方がない。今のところ、上手くやっている。理解者もできてな」
「す、すごいです…先輩」
「芳澤ちゃんも、今理解してくれたし」
「私が……」

少し暗いような、複雑な顔の芳澤ちゃんが、胸の前できゅっと手を握る。そして、頷いてくれる。

「…私が言えたことじゃ、ないかもしれないですけど。無理しないでくださいね、雨宮先輩。今、私も先輩の悩みとか聞きたい、って思いました。力になりたいです」

健気……!

「本当にありがとう。頼らせてもらおうかな」
「えへへ! なんだか…友達みたいですね!」

かわいい。

「……って、先輩に対して急に友達は失礼ですよねっ」
「いいよいいよ、俺はそういうの気にしないクチなんだ」
「……! う、嬉しい……」

呟いて照れる。芳澤ちゃんはかわいいなあ!

「先輩で、教え合いっこで、友達…えへへへ……」

飛びそう


 ━━ピピピピ、ピピピピ━━!


「あ、先輩のスマホ…」

はっ、戻ってきた
こんな時に電話の着信…?

「すまない、ちょっと離れる」「はい」

近くの木にもたれかかって、着信を見る。……『喜多川祐介』? このタイミングで、電話…? チャットじゃなくて…? とにかく、切れる前に応答しよう。

「もしもし」
『もしもし…蓮か』
「…声が暗いぞ。何かあったのか」

少し息を呑む。祐介から返事が返ってこない。

『ない、と言えば…ない。あると言えば……』
「あるのか?」

少し声を潜めるための呼吸をする。

『斑目先生は変わらずだ』

それは…改心以降という意味だよな。祐介が重苦しい声で言い出す。

『……周囲にモルガナはいるか? あと、皆も』
「モルガナ?」

モルガナはカバンの中に入っている。…と、思うのだが。

「『モルガナや、みんなに聞かれると、不都合な話なのか?』」
『……うむ……。蓮にしか、相談できない…』

あえて強調する。モナはこういう時、空気を読んでくれる男だ。
スピーカーモードにもなっていないのを確認して、

「…大丈夫だ。話してくれ」
『……わかった。蓮、一緒に寝てくれないか』

   ?
 ゴッ
 ………… ザーーーッ …………
 ━━…………。
「 … せ、せんぱーい? … 」

「えっ、 痛っ! え?」
『最近…不眠なんだ』

?????

『こんなことは蓮にしか相談できない…!』
「な…え……? なんで……?」

待っ……額が痛い……じゃなくて、じゃなくて、ええと、もう、その

『熱を出した時に蓮が寝かしつけてくれたのを思い出してな。力を、借りたいと…』

出血してないけど額も熱いし頭も痛い
とりあえず木の方を向いておこう
あと色々話飛んでる
祐介は真剣に話してる、うん。

「…ふみんなのか。うん」
『時間も場所も確保している。今ならいつでも一緒に寝れる』
「えっ…と……」

大事なところが飛んでるんだよ祐介!あと言い方! なぜこの男はコープ0で恋愛イベントをコンプしようという勢いなんだ。やっぱり祐介×夢主なのか、この世界は?
むしゃくしゃと頭をかく…。

「その…、事情はわかった(わからない)。一度どこかに集まって話をしよう…俺も…仲間が困っているなら……。大丈夫、1人、と、1人で…な?」
『ありがたい! 本当ならば、直接来てもらいたいが…』

祐介の明るい声。どこに!?

「場所は…どうしよう。目立つ場所や、誰か仲間に見つかる場所は避けたいな」
『ジュースを売っている地下通路はどうだ。あそこは柱も多い』
「……そうしよう」

祐介のペースに流されているが、大きく深呼吸する。
こんなのだが、俺は女の子だし、男は思春期で狼だぞ。気を付け…いや、どうやって気を付ければいいんだ。

『うん、いいな…』

どこが???

『今日は午後から休みを取っている。今から通路に向かおうと思うが、時間は構わないか?』

睡眠に対して必死すぎるだろ!

『秀尽学園の方は、井の頭公園での学校行事で早めに終わるとも聞いて、こんな巡り合わせはないと思ったんだ』
「……誰から聞いた?」
『竜司の愚痴だ』

お、おのれ……!?

「……話はそれでいいが、必ずしも協力できるとは限らないぞ」
『待っている』

 ……切れてしまった。
くたっと木にもたれかかる。一気に疲れた。
とりあえず…………戻らないと。

「だ、大丈夫ですか、先輩? すごくごっつんこ…というか、顔色大丈夫ですか!?」
「う、うーーん……」

わあい。いっそ真っ赤になってるとかだったら青春あじがあった。モルガナのカバンが揺れる。

「友人に呼ばれてな、悩んでるみたいだから…すぐ行こうと思う。個人的に一対一で話したいらしい…」「そうですか…。では、今日はここまでですね。あ、終わりのストレッチを最後に教えさせてください。筋肉痛とか残っちゃいますから」
「ありがとう…」
「……本当に大丈夫ですか?」

本当に心配そうに芳澤ちゃんが見上げてくる。

「雨宮先輩…今朝みたいに、困っている人の助けに、本当に、なる人なんですよね。でも、それでカラダや気持ちを壊したらダメですよ…?」
「……ふふ、そうだな。本当に…ありがとう」
「少し体を動かしたら、心もリフレッシュしますっ! さあ、最後に仕上げて帰りましょうっ!」

満面の笑顔と共にガッツポーズを取る。
体を動かしたら、なるほど、少し冷静になれた。大切なことは細部まで確認しよう、と。
また今度会いましょうね、と挨拶をして別れる。
 …緊張の深呼吸。

「誰からだ?」

俺は歩き出す。飛び出したモナが俺の肩を強く踏む。

「まぁ……、…その… ……祐介」

モルガナは、隠してもベッドの中まで追及して来そうだから仕方なく答える。

「問題か!?」
「斑目は大丈夫らしい。本当に個人的な相談だ。…少しは話を聞いていただろう? モルガナ、離席していてくれないか? 渋谷駅。必ず拾う」
「……そうか。仕方ないな」

聞こえたミュウという声。不安げだ。

「今更祐介が裏切ったりもしないだろう」
「そりゃ、9割方ねーよっ… けど…いいか? 拾ってくれないと、ワガハイ、恨むからな? 門限までには帰ってこいよ?」
「はは。モナの渋谷駅での門限っていつだよ」


 ……移動……


 ……駅前広場で、モナと解散……


 …………。


 ぱん、と頬を叩き直した。時間は3時半を迎えようとしている。地下通路に向かう。


「…………蓮!」

 祐介は本当に柱に隠れて待っていた。パッと飛び出してきたからかくれんぼとしてはアウトだ。

「説明不足!」
「うっ……」

手をかけようとしたのを軽くはたき返す。
即座にカウンターしてしまったものの、確かに祐介の顔色は目元を主に悪い。ぼんやりした目が相俟って普段の色男が損じている。嬉しそうに出てきた彼には悪いが、矢継ぎ早に訊く。

「元々、俺たちを告訴と言っていた斑目が、あばら家で伏せっているんだろう。そんな状態でどこで寝ようと言うんだ」
「……きょ、今日は別…なんだ。斑目は、出ている……」
「別?」
「だから、寝れる…」
「また飛んでる」
「あ、ああ。申し訳ない」

祐介がトンでるのは周知だが、眠気で思考も落ちているのかもしれない。一歩踏み出して、祐介を見上げる。

「…なぜ眠れない?」

しばし無言。

「…父だった男と……仇だった男と……、蹴飛ばした男、と…共に、生活している…というのが、緊張、しているのだと思う…。俺は何もかも知っているし、伏せさせたのも俺なのに、素知らぬ顔をしなければならないし、……もうすぐ解放されるとは信じているが、今は『斑目のための絵』を描き続けなければならないのも、集中できなくて…。夜、眠れないままキャンバスに向かっても、筆が動かないんだ……」

……。
…それは、そうだよな。

「……聞き方がキツかった」
「…………」
「苦しい思いしているところに…悪かった」

話す祐介は、本当に辛そうだ。今も、不安げに眉を寄せている。

「でも、説明不足なのは本当に、本当だから」
「すまない…」
「……斑目に見つかったら告訴されると思うと、俺も、戦々恐々なんだ。…それで、どういうことなんだ? 斑目に見つからずに、お前を寝かせる手伝いができるのか?」

 できるだけ柔らかく、祐介に問いかける。
祐介はコクリと小さな子供みたいに頷いて、

「あ…ああ。今日は、斑目は、芸術家協会に呼ばれている。斑目に限らず美術家の巨匠が集まる。…そこにいることが権威を示すようなものだ」
「行ったのか?」
「…行った。斑目でさえ、その場にいない事に圧をかけられるような場だ。ただでさえ個展を開いている今の状態で、欠席はできなかったようだ」

その程度には動けるんだな…。
最後の悪あがきといったところか。それにしてもそんな集会があるとは、やはりゲーム世界に限らないのだな、ここは。彼も接客を受けることもあるだろうし…

「…わかった」

 頷いて手をや

「来てくれるか!大丈夫!夜半まで帰らない!」

手ガシッ!
ビクッと心臓が飛ぶ…情緒不安定ッ!

「ッ……!」
「蓮が頼みの綱なんだ!」
「わ、わ、わかった! わかったから…手荒な真似をしないでくれ!」
「てあらなまね…」

意味通じてるか?
上げた所を掴んだ、その手はおろしてくれたが依然掴んだままだ。

「妙な真似もしないでくれよ…?」
「……何か、…害されると思っているのか? 蓮は」
「その…」
「そんなつもりはない。俺を信じてくれないのか…?」

そんな目するな。
祐介を不安にしたくない。

「とりあえず……現状、この手を放してくれたら……」

あ、と呟いて彼が手をほどいてくれた。
…やっと、当初の予定通り、背中をさすってやれる。

「ごめんな、ごめん…疑うようなこと言って。キツいこと言って。冷たくして。落ち着いて、安心してくれ、そのために来たんだ。俺は逃げないから。…どこかへ行かないから」

きゅっと口を結んだ祐介の肩を、ぽんぽんと叩く。
 今朝の芳澤ちゃんと似たポーズ。“ああいう状況、思ってたより怖くて”。感情のまま身振りが暴走しかけた祐介に、確かに恐怖を感じた。この世界線でペルソナに目覚めている以上、その心の奥に凶暴性を隠し持っている…そのことを、今この身で確認することになるとは思わなかった。
怖いと思う。痛かった。
それでも、他の誰かに任せられない。

「祐介の家で、いいんだな?」
「うん……」

…祐介も疲れてる。隣に立って、ゆっくり歩き出す。掴みはしないが、体が触れる間近で、隣を祐介が歩く。あくびのひとつもしないが、その顔に弱った心が浮かんでいる。
地上に出て、駅前広場から、横断歩道を渡って、セントラル街を過ぎる。何度も「祐介」と声をかける。足を止めて、彼を見上げると、緊張が薄れ、とろんとした顔と目が合うようになる。とことこ着いてくる、という風になる。
俺と一緒にいられることで、少しでも安心できているだろうか?





長引くので次回もオリ展開です。イチャれ。



☆★ To be continued!! ★☆

 

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