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失敗★蓮ストール 32-Ⅲ

【 雨宮蓮へのインストールに失敗しました! 】

♯夢小説 ♯ペルソナ5ロイヤル ♯女主 ♯成り代わり ♯微改変
夢主は周回プレイ記憶者です。



 \前回までのあらすじァ!!/

 6/17。
 真の暴走により、ターゲット・金城潤矢本人から3週間で300万円を要求されてしまった一行。
しかし、それはカネシロ・パレスの銀行に入る活路にもなった。
 銀行内で、モニター向こうのシャドウ金城から心ない言葉を浴びせられる真。現れたシャドウたちを捌いていくものの、彼らはキリがなく…。





『対象を足止め中! 応援を回してくれ! 逃すんじゃないぞ! 確実に仕留めるんだ!!』

 さっきからどこからか聞こえる無線らしき声。
 ジュバンッ!!

「もう、3体に増えたしっ!」
「なんだこいつら…キリがねえ…本当に金で買われてるってのか……? このままじゃマズい! 逃げるぞー!」
「フォックス、先輩ヨロシク! じゃ、カルメン!」

ドォォン……!
鍵も何もなく、灼熱が扉を吹き飛ばす。

「火力足りねー、オラッ!よっ!」

扉の焼け残った部分を、スカルの棍棒振り上げが削ぎ落とす。ゾロのガルが飛び散ったガラスや木片を向こうへ吹き飛ばす。

「あぶね!」

スカルが巻き込まれかけている。
第3部隊が動きかけたところを、ガガガッと氷柱が突き上がった。

「足止めだ! 今の内に出るぞ!」

綺麗になくなった扉を皆が踏み越えていく。
ためらう真先輩が出て行くのを見届けて、モニターの方を振り向いた。

「誰が『現役美人生徒会長』だ」

グオオオオオーーッ…!
オニが振り上げかけた薙刀に、シキオウジのエネルギー球が直撃した。

「俺が依頼を受けたのは『新島真』からだ!」

叫んで、しんがりで部屋を飛び出す。


 ……タッタッタッ……


 腕を引かれていた真先輩がふらつきかけ、いったん止まる。ぜえ、ぜえ、と彼女が肩で息をしているなら、足を止めるのもやぶさかではない。

「な、なんで警備員が怪物に!? それに、貴方たちの、あの超能力は…!? もしかしてそれがペルソナ……!?」
「この状況で訊くか!?」
「そうだな、G.H.Q」
「…………Q.E.D?」

証明終了って言いたいのよくわかったな。

「いったん退くぞ! マコト、まだ走れるか? はぐれるなよ!」

フォックスが護る真先輩を中心に、銀行廊下を駆ける。玄関ホールへ繋がる扉を蹴飛ばして、

「急げジョーカー、出口はすぐそこだぞ!」


 ジュバンッ……!!


「キリないっての…!」

 パンサーが迫ってくる警備員たちにムチを振り回して牽制する。フォックスがバリケード様に突き立てた氷柱は、オニに変じた警備員が叩き潰す。

「みんなっ!」

長椅子が並ぶこの場所まで来れば後少し。
その思惑を読むように、正面玄関前に警備員がぞろぞろ集まってくる。
……そして、どすどすかつかつ言う足音がひとり。

『ずいぶんつらそうですねえ…?』
「コソコソしやがって、カネシロぉ……!」

モナが苦しそうに、シャドウ金城に唸る。

『それはこちらのセリフです。しかし、素晴らしい商品を提供してくれたことには礼を言いますよ。…そろそろ消えてもらおうか』

パンパン━━
グチャッ、ジュバンッ!!

「……っ!」
『銀行経営は大変でね。迷惑な客は殺すことにしている。生意気なガキひとり消えるだけであっちの世界じゃ良い見せしめになる』
「やめて!」

……真先輩が、フォックスを押しのけて前に出た。
たらふく膨れた男が、少女を見下ろす。
フォックスの動きかけたのを、すっと止める。

『消すのは商品以外、だ。心配するな。姉さんは美人だからな。俺の奴隷にしてやろう。飽きたら、売ればいいし。ああかわいそうなおねえちゃん。妹がこんな馬鹿じゃなけりゃ、出世できたのにねえ』
「お姉ちゃんは関係ないじゃない!」
『なら明日から客を取れよ。我慢して言いなりになってればいいの』
「我慢……」
『お前なら、300万くらいすぐに稼げるよ。その頃には、お前の人生も何もかもめちゃくちゃになってるけどな! ギャハハハハ!』
「……言いなり…………」

うつむいて、押し黙る。
震える手で、胸を鷲掴む。

「新島真! ━━真!」

パッと彼女が呼びかけに顔を上げる。
手は落ちたが、
震えは全身に伝播している。

「そうだ……、『依頼を受けたのは「新島真」から』……」
「へ?」

グッと拳が握り直される。
震えは『恐怖』ではない。

「さっきから黙って聞いてりゃ… うぜえんだよ、この成り金が!!」

異世界の歪みが曲がる━━


『戦う…覚悟は出来ましたか……?』

「いいわ…来て」

『それなら、速やかに契約に移りましょう。

我は汝、汝は我

せっかく見つけたあなたの正義…
どうかもう、見失わないで。
今日は偽りの自分からの卒業記念日です…』

「ああっ…あううっ! うっ、うっ、うう…うーっ、うーっ、」

仁王立ちの真先輩が、“答えた”、その一瞬ののち、頭を掴み悲鳴を上げる。頭を割ろうとするモノを抑えるように、ふらつきながら、しかし、決して膝をつかない。

「うああああ!!」

━━ドカッ!!
振り下ろした足が床を割った。彼女が頭を抑えるのをやめた。息を大きく荒らげながら、もう一歩進む。青い炎が光のように閃く。彼女の片手が顔に宛てがわれ、そして両手━━

「アアアアアアーーーッ!!!」

『鉄の仮面』が引き剥がされる……!


 青い炎で編まれた鎖。
 機械の轟音を立てて揺れる体。
 背に少女を乗せる親身一体、
 正面に穏やかな顔を貼った“賊”。

「伝わってくる…。これが『私』……」

 真っ黒な布を鉄釦で留め、
 全身を覆うスーツを更に鎧う。
 首に巻いたマフラーが揺れる。
 肩と膝当ては刺々しい。
 握るのは白い手袋。


「ペルソナ…?」
「いやアレ……バイクだろ?」
「いけっ!!」

━━ギュイイイイン!!

車輪が床の上で一瞬渦巻いたのが見えた次の瞬間、白い轍を残して乗り主ごと飛び出したペルソナが警備員らに豪快に衝突し…そのまま急カーブして戻って来る!

「す、凄い……!」
「なんだありゃ!? あんなの初めてだぜ……」

目の前で人が轢き飛ばされ、顔を青くしていたシャドウ金城が、慌てて襟を直す。

『ギャラ泥棒は処刑ですよっ!!』
「もう、絶対に弱音なんて吐かない。飛ばすだけ、飛ばすから!」

覚醒の炎に跨り、彼女は前を向く。
唸り声を上げ、膨れ上がっていく“核熱”。

「いいよね、ヨハンナっ!!」


 バイク。 しかも乗れる。
 そんなペルソナ、ヨハンナ。
 まだトランスフォーマーではない。

「普段、おとなしいからって…調子に乗るな! もう、ネコ被るのやめたのっ! 行くよ、ヨハンナ! フル・スロットル!!」
「敵が動揺してるぞ! 蹴散らして隙を作ってくれ!」

敵はオニ2体に、激水に遊ぶ怪童…スイキ。
パンサーがこちらに頷いて、フォックスと共に別方向のシャドウにペルソナと共に構える。
百と零の花火がぶち上がった。
バイk…ヨハンナから降りた真先輩はぐっと拳に現れたナックルを握り締めて構える。それは合気道の構えなのだろうか。鉄仮面越しに、真先輩がこちらを見る。

「信じてる━━任せるぞ!」

頷いた彼女がトンと跳んだと思ったらもう乗車している。

「マハフレイ!」

ヨハンナが勢いよくエンジンを蒸かす━━エネルギー球体がオニたちに降りかかる!
WEAK…ワンモア!

「こっちに回せ!」
「了解!」

アメノウズメのマハガルでまとめて吹き飛ばす…旋風!次の番、もう一度マハガル!
オニ2体は瀕死…
スイキが棍棒を地面に叩きつける。ガシャン━━

 …………
「ぶはっ!」
「ちょ、大丈夫か、人の氷像とか初めて見たぞ!?」

軽い衝撃で目が覚める。スカルがひんやりした顔で俺の脳天に拳を宛てがっていた。…氷属性攻撃、ブフの追加効果を露骨に食らってたらしい。恐らく力技で割ったんだろう。まだ凍りついたままの衣服のせいで動きにくいっ……

「こいつで最後!」

青いエネルギーがスイキを焼き払う。

「今だ! 逃げるぞぉー!」

スカルが俺をおぶってくれる。ごめん。
マジですまないすぎる。
 パンッ…… ドンッ!

「こっちもオーケー!」「ジョーカー!」

解凍中の俺を、察したスカルがフォックスの肩に乗せ直してくれる。

「侵入方法はわかったんだ。目的は達してる!」
「どうやって出んの?」
「出口はひとつでしょ?」

真先輩がバ…ヨハンナのハンドルを握り直す。

「あ、世紀末覇者先輩ちーっす」
「叩かれたいの?」

スカルお前……。

「先行くから、ついてきて!」

ブオン!!と唸り声と共に前輪が浮いた。

 ギーーッ……
 ……ドガァァァン!!!

銀行の内側から疾走するバイク。
吹き飛ぶ警備員。
警備員を散らして突っ走るバイク。
バイクに突っ込まれる正面玄関。
当然破砕する正面玄関扉。
そしてその衝撃に耐えきる人体。
……これは、世紀末だ。

「す、すげえ……」

語彙力バイバイだ。モナが「よし、いける!」とポージングを取って宙返りする。ドカッ、とモルガナカーが着地した。

「乗れっ!」
「誰か…運転頼む……」

解凍なう。
な、情けない……!




 ━━本物の、渋谷駅、に戻ってきた。

モルガナカーを出てすぐに、例の仕込みステッキを出した俺を真先輩が不審げに見て、
パンッ!

「ぶえーっくしょい!!」

猫に戻ったモルガナがでっかいくしゃみをする。
飛び出すように傘が大きく開く。“こちら”に戻って思い出したように脱力した真先輩を、竜司が抱える。杏が2人に藍色傘を差し出し、アルセーヌの傘の柄を裕介が取ってしまったので、杏が慌てて自分の傘を差してモルガナを招き入れた。
ビニール傘とレインコートは消耗品である。
…俺たちはずいぶん長いこと、何かしていたように思えて、全て放課後のことで、
朝から、真先輩が飛び出した時も、イセカイに入る時も雨天で、戻ってきてもまだ雨模様だったのである。

「……その傘って……」

真先輩が、ちょっと疲れ気味な俺に代わって裕介が持つ傘を見上げる。

「あの『イセカイ』で作ったナイフが変じた物だ」「…………!?!?!?」

ただでさえだるそうな頭を抱えて、

「やめましょう…」

そうだな。俺もわからない。真先輩に例えわかったとしても、証明しようがないのだ。
 閑話休題。
アジトに、俺たちがいつもお弁当時に敷いているシートが役に立った。雨模様でも、床に座り込むことができる。肩を貸していた竜司が彼女をそこに降ろしてくれた。

「いやーーー…。すげえのが出たなーー……、合気道とかそんなもんじゃねえ、超武闘派じゃねえか」

竜司がため息のように呟く。温かい缶コーヒー2本を、俺と真先輩に渡してくれる。杏がモルガナの体をタオルでわしわしと拭いている。

「絶対、怒らせないようにしよう。腕とか、もってかれそう」
「やりかねんオーラはある……」
「やめて!」
「やめたげてよお…」

本気か冗談かわかり辛い、真剣な2人の同意に真先輩がぶんぶん首を振る。缶コーヒーが雨で冷えた指先にじんわりと温かい。

「ここ何年かで、一番疲れた……」

真先輩が缶を頬に宛てがって、ふうっと息をついて、

「……だけど、結構、良かった」
「ペルソナは自分の『本音』だからな」

隣の彼女に笑いかける。

「追いかけてた怪盗団に、自分がなっちゃうなんてね。お姉ちゃんが知ったら失神しちゃうかも」

時々思うんだけど、反逆のペルソナに覚醒したから必ず怪盗団に属すべきというルールはないはずなんだが。彼らのモチーフが一様にして『義賊』ではある、という共通点はあるものの(メタ視点)。
そんなことを考えているところに裕介が膝をつく。

「姉というと、前に言っていた?」
「特捜部の検事なの。…怪盗団のことを調べてる」
「いやそれマズくねっ!?」

顔の引きつる竜司に、真先輩がくすくす笑った。
その表情はずいぶん氷解している。カシッと缶コーヒーを開ける。

「大丈夫よ…あんな世界のこと、現実の捜査でわかるはずない。まあ、こうなる運命だったんだろうな…」

そしてコーヒーで喉を鳴らし、唇をハンカチを拭う。

「どういう意味……?」

杏の問い掛けに、真先輩は畳んだ足を伸ばした。

「私は…お姉ちゃんみたいにはなれない。いつか、わかりあえない時が来る…そんな気がしてた。必死で働くお姉ちゃんには感謝してるけど、なんか、哀れだなって思う事もあって」
「根っからのマジメじゃないみたいだな?」
「貴方と…ペルソナの声を聞いて、本音がハッキリわかった。私は大人の言いなりになってただけ」

 俺?
 それはそうか。
…あの時大爆笑かまして、『取引』したのだから。
『新島真』を呼び出したから。

「あの時、色んな人に色々言われたの思い出してたの。自分の本音と本心を、どれだけ覆い隠していたのかって。『私』の意志を自覚することすら、まだ自分の本心を理解するには不足してたんだなって」

新島真を呼んだから?

「認めてくれたでしょ?」
「ん?」
「肩書きや役割に縛られない私を見て取ってくれたのは貴方。ここにいるみんなのことも、そうやって真っ先に認めたから、貴方がリーダーなんじゃない?」
「そうかな……?」

缶を抱いて周囲を見回す。
真先輩はコーヒーを飲んでいる。
竜司、杏、裕介を順番に見て、モナが欠伸をしていて、

「そうかも……」

ちょっと照れ臭い。
体を伸ばしたモナが、タオルから抜け出す。

「蓮、彼女、参謀にいいんじゃないか? 頭は切れるし度胸もある」
「俺?」

(に訊くの?という意味)
竜司がぱっと腕を上げ、杏がウンウンと頷き、ゆらゆらっとモルガナが尻尾を振る。

「いいんじゃね!? ちょうど、そういうの欲しかったし!」
「男でムサ苦しいのが緩まるし、わたし的にも、これでかなり…!」
「役に立てることがあるのなら」

 ━━ピピピピ……

「…金城からよ」

……うわあ。
と、盛り上がった空気が落ちた。

「催促だって。パレスの出来事は、こっちのカネシロにはわからないのね」

戻った。
真剣な方に戻った。

「ああ、だがこっちのカネシロの認知が変わればパレスは影響を受けるぜ…慎重にな」
「余計な接触は避けた方が良さそうね」

モルガナともう自然に話している。

「あと3週間、か…」
「でも、成功すれば絶対イイよね!」
「ああ。あのセキュリティ、必ず突破してくれる」

裕介、その腰元に刀はないぞ。
『全会一致』━━新島真先輩も含めてだ。士気も高潮。きっと、上手くいく…

「叩き潰してやるわよ。私を怒らせたこと、必ず後悔させてやる……」

…………。
怒らせない方が良さそうな拳の握り締め方をしている…

「とにかく、明日から作戦開始だ! いつも通り、まずはオタカラまでのルート確保だな」
「集合の連絡、待ってるわ」

みんなでスマホをかざし合わせて、『IDを登録しました』という証明の画面を見せ合う。そして俺から送信する。『新島真に「怪盗団ルーム」への招待を送りました』。[テスト]とさっそく新しいアイコンがメッセージをくれる。
みんな笑顔で頷く。
真先輩に缶コーヒーを渡した。なぜ?と首を傾げられて、こいつんち喫茶店だしな!と得意げに竜司が笑う。またみんなで行きたい━━真先輩も一緒に。






☆★ To be continued!! ★☆

 

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