失敗★蓮ストール 5-Ⅲ-if
【 雨宮蓮へのインストールに失敗しました! 】
♯夢小説 ♯ペルソナ5ロイヤル ♯女主 ♯成り代わり ♯微改変✕ ♯オリジナル混合中!
夢主は周回プレイ記憶者です。
\これまでのあらすじァ!!/
ふと思い返す。
イセカイでペルソナも使えない俺は何なのかと、とも言える言葉。美術館で十数分、祐介はペルソナを伴わない一般人として歩いた。
そしてルブランのあの日、そしてこの先美術館で再度自分に突きつける、絵の描けない自分は何者かという自問自答。
絵が描けない、
ペルソナも使えない、
その祐介に「何者だ」と言ってやれるのか……。
「お前たちが身と心を削り、戦い、知恵を絞っている間、じっとしていられないというのもある。仲間が傷つく姿、声、目と耳と体で触れることが叶わないのは、むしろ俺が、己を許しがたい。俺が行けばただの人間として負担になるかもしれない、だが、それがどうした。お前たちは許す。お前は許す。どうせ許す。だからそれに甘えてやる」
「…………ゆ、ゆうすけ。すごい大胆な…」
「俺が何者であろうと認めてくれると信じる。お前たちの実力を信じる。人ひとりふたり背負って動けなくなるような、生半可な者たちではない、と、信じる。それとも信じられないか? お前は? 自分たちが?」
あ……
アルカナ、皇帝仕草━━!
絶大な信頼から寄せられる、横暴で強硬な、『甘える』発言……!
しかも最後に、ふっとポジティブで挑戦的な笑い顔つきで、こ、こんなの、ここまで言われたら……。
「連れて行くしかない……!」
「そうか!」
ああ、野暮だったか。何者だと言葉にするのは、もはや不要か。『行動』ができなくても、共にいるだけで心強い、それが喜多川祐介、でいいか。
「むしろ、よく、そこまで振り切って言った」
「ふっ……わがままを言っただけだ」
本当それだ。普通の人はここまで言わないが、祐介にはそれを言ってのける豪胆がある。そのわがままを通させる風格が……ある、と思う。
……ここまで言ったこと、むしろ、他メンには言わないでほしい。
ぽんと彼の両肩に手を置く。
「着いて来てくれ。そしてお前の思ったこと、全てぶつけてやれ。いや、ぶつけさせる。俺がそこまでお前を連れていく」
「ありがたい!」
ものすごく綺麗で純粋な表情と言葉の中にあるどぶ黒い感情。まったく恐ろしい男だ。
祐介も俺の肩に手を置く。
「あの時の熱情は、最終的に絵に描き起こして落ち着いた。ふふ、俺は運動家でも、洒落者でも、知恵者でもない。絵描きだ。やはり絵を描くのが俺だ。筆を折らぬ限り、俺だ。また見てくれ、そしてパレス攻略したら、またもう一度見てくれ、俺の絵と、それを描く俺を」
深く何度も頷く。
一度は、筆を折られてもいいとまで言った祐介は、きっと今は、最期は己の指と血を筆にしてでも描くだろう。
「もちろん、期待している。祐介も、フォックスも。いくらでも、その華麗な技を見せてくれ」
がばっと、祐介が俺を腕の中に収めた。
よっ、と、楽しげに踊りそうに揺らいだ足取りが、俺の体をしっかりと抱く。
「蓮が一番大切だ。蓮のために、何でもしたい。…ああ、でも今は、蓮が悲しむことは、したくない」
「そんな、よほどのことは?」
「例え蓮のためでも、俺は倒れないぞ」
くすくすと柔らかく喉を鳴らして。
「誰かが身を呈することになど、させるものか。斑目相手へのような、愚かな献身はもうやめると決めたんだ」
「……ふふ。強くなったな。わがままになったなぁ」
【トレーニング付き合えー!】と、竜司からチャットが来ていた。
ぼんやり画面を見つめ、深呼吸する俺に、ナンだ?とモルガナが首を傾げる。緊張しているのだ。
ああ、
ここまでやってきたのだな……、と。
サードアイはメニュー画面からコーポレーションを検索し、その中から【坂本竜司】の項目を見つけ出す。
ARCANA 戦車 RANK9
★━━━━━━━━☆
LE・CHARIOT
COOP 10
☆━━━━━━━━★
モルガナにカバンの留守番を頼み、ジャージをカバンから引っ張り出す。これを持って男子トイレに行くのも、もう慣れたもので。
竜司も陸上部抜けてからはしばらくそうだったとか、
俺が着替える時気遣って門番やってくれたりとか、
球技大会の時はそんなこと気にしてなかったとか、
彼とのジムトレ用のパンツが入りっぱなしだとか、
荻窪のラーメン屋が、竜司一番のお気に入りだ。
麺固めで、と頼んで、カウンター席で、んーッと伸びをする。
「トレーニングで使い切った分、補給しねぇとな」
トレーニングをきっちりこなした彼の体は、はっきり言って汗臭い。そしてこれから追加で汗をかく。ほんと、男臭いやつ━━かく言う俺も、同じくらい汗をかいている。
俺が来るまで、運動でも、ラーメンでも、彼は汗をかくことはなかった。
傷が抉れて滲みるから。
竜司はラーメンを待つ間に、待ち切れない様子で話し始める。
「陸上部だけど、復活早々、山内のヤツ、降ろされたって。武石の親がPTA会長だって知ってるっけ? アイツが親に色々吹き込んでな。『スカウト選手なんて許しません』と他の親御さんと直談判したそうだ。山内、どんな顔してたんだろ? 学校側もPTA会長は無視できないってわけ」
クスクスニヤニヤと、愉快そうに竜司は笑いながら話す。
「結果、陸上部は復活。顧問は臨時で前の監督になったって話」
「良かったなぁ!」
「うおぅっ、いい気味だ! スカッとしたぜ!」
ニシシ、と悪童2人で顔を合わせて笑い合う。ソイツらの活躍で、陸上部は鴨志田以前の栄華を取り戻すことができそうだ。祝え!
「アイツらなら陸上でいいトコまで行けるかもしれねえ」
「ふっ、負けてられないな」
「おう!」
すっと手のひらを上げる。
パン、と気持ちいい音が手のひら同士で鳴る。
お客さん、と声をかけられて、店主が嬉しそうにこちらを見つめ、カウンター向こうに丼ふたつを用意しているのに気付いた。湯気の立つそこに、店主が箸を動かし、しいっと指を立てる。
お待ちどおさん!
「お、ラーメン伸びちまうな。食おうぜ!」
「いただきます!」
ニコッと笑った向こうで満足そうに店主が次のラーメンの調理に向かう。多めのチャーシューに、頬を弛ませた。
………… …………♪
「ふぅ、食った食った……」
カラン、と割り箸の軽い音が丼の中で鳴る。
油入りの湯気まみれになる前にメガネを外して思い切り吸い込んだ。ラーメンを汁まで飲んで火傷をしないコツも竜司に教わった。丼はふたつ、すっかり空っぽだ。
満足そうに丼の底を覗き込んでいた竜司が、浅い椅子の背もたれに体を預けて、チラとこちらを向いて言う。
「本当はさ…ずっと怖かったんだ。あいつらと向き合うの。テメェのバカさ加減、思い出すし、あいつらの軽蔑のまなざしとか…… 何より居場所をなくしたこと、ずっと忘れらんなかったからさ」
「ん、」
「こういうのガラじゃねえし、なんて言っていいかよく分かんねえけど……」
…竜司が、頭の中で、言葉を捏ねるのを待つ。
やがて、竜司が俺の方に、体を向ける。
「……お前がいてくれたから、俺は変われた。ゴタゴタに、巻き込んじまったけど、お前、最後まで、付き合って、くれたよな。……俺を、見捨てなかったよな」
そう、繋いで…穏やかに目を細める。
「……ありがとな」
「どういたしまして」
すっと笑った竜司に、まっすぐに返す。
「……へへ」
照れた様子で、彼は鼻の下を擦った。
「不思議だよな。怪盗団のために、体鍛えるっつー話だったのに。なんで、こうなっちまったんだか」
穏やかで、それでいて、一番の喜びの沁みた言葉。ん、と頷くと、竜司は俺の方に身を乗り出す。
「次は俺の番だ。これから先、何かあったら言えよ。今度は俺がお前を、何があっても助けてやる」
「…………、……ありがとう」
頷き合った。
━━りん。
青い蝶がひとひら、
花びらを散らして飛び立つ。
まばたきが一瞬、そんな景色をうつして……次にひらいた目は、体ならぬ景色を視る。 青い炎、崩れる鎖と楔。 不安定な船を操る“賊”は、 己を包む青い錨を打ち払い━━、
どこまでも飛ぶ雲を従え、
黄衣を閃かせ、驕りの冠を頂き、
恩師を守る長柄を振るう、
天竺の“トリックスター”。
【「 感じるぜ……俺の、新しい力!! 」】
名を“セイテンタイセイ”と言う━━
……心の鬨の声は、瞳の奥に沈んでいった。
「さてと! 吹っ切れたからには、バリバリやるぜ! まずは、怪盗団からだ! 頼りにしてるぜ、リーダー。だから、俺のことも頼れよ!」
「当たり前だ、竜司。もう頼ってる」
「へへん。さあて、充電も完了したことだし、駅まで走るか?」
「おいおい、さすがにそれは“出る”って……!」
お互いにクスクスニヤニヤと笑い合った。
“いたずらっこ”たちの悪巧みは、まだまだ続く。
「『ここは、慎重に言葉を選んだ方が良さそうだ』! ……なあ竜司」
「ん? 何だよ」
「俺たちって恋愛フラグ立つと思う?」
人差し指ビシー。
「れんれんと? ないわー」
(お手々ふりふり)
「ナイよなー。キスまでしたけど、くくく」
「俺が二次元と結婚するくらいナイ」
わはは、と互いに、アホくさー、と笑う。
「おっぱいボインボインの太ももプニプニのミニスカメイドになれば俺相手でも“たつ”かな?」
「往来で猥談するのやめねえ?」
「メガネ返すまでお前のエロ本の中身を順番に叫んでやる」
クラウチングスタートの体勢を取る。おいおい、と竜司が苦笑いして、
「てッめ!いつ漁ったし! メガネは返す!だが追い付かれねえ! 後ろ着いて走れ後輩!」
「待てこら巨乳スク水日焼け跡ーーー!!」
ぴぴぴぴ。
呼べば来てくれるべっきぃ先生。やっぱり、優しい。
掃除始める前にハナシしたいんだけど、と言われて座った。
「あのさ、この前…ちゃんと話、聞いてくれたじゃない? …その、私の個人的にな話。あれから気が楽になったんだ。今まで、誰にも言えなかったから…だから、お礼というか何というか、たまにはしっかり家事代行を… ……ふぁ〜あ…」
出ちゃった
……素人目でも、最近の川上先生は疲れているように見える。授業中にも、ぼーっとしていることが増えた。
「っと、やば…。ごめん、ちょっと休憩してからで……」
「少し休んだらどうですか…?」
「お嬢様のお優しさに、べっきぃカンゲキ… あー、限界。シンドイ━━」
ごほごほっ、と大きく川上先生が咳き込む。埃がどうの、という咳には思えない。思わず立ち上がる。
「先生っ?」
「…あ、あは、参ったな。咳、止まんないんだよね……」
「大丈夫ですか? 病院、行きました…?」
些細なことから、重症に繋がる、見つかるという事例は多くある。
「そうしたいけど… ごほっ!ごほごほっ!」
「先生ってば━━!」
「ひゃっ! ……い、イエスメイド、ノータッチ!」
強く咳き込んだあまり、ふらつきかけた先生の体を支える━━掴んだ肩の中で先生が叫んで、「す、すみませんっ!」と慌てて謝って慎重に手を離す。…『理解』してもらえたからって、すぐには、反応は変えられない、そんなパターンを忘れていた。
「あ…ありがとう、ね、気遣ってくれて。病院…行ければいいんだけど、もしなんかの病気だったら、入院費かかるし……」
…先生が作り笑いに戻る。
「はは、ウソウソ! ちょっとサボりたかっただけ。ホラ、君にはもう隠す部分なんてないし、つい本音がね?」
サボりと休みは違うんですよ。
「メイドのこと…今となってみれば、バレたのが君でよかったかも。君こそ、こんな埃っぽい部屋で大丈夫? それにちゃんと食べてる? お菓子ばっかりとかインスタントの夜食とか。ビタミンとかホント大事! 若いからって脂肪と糖分ナメてると…こうなるよ?」
どうなるんですか。川上先生、かなりイk
「ふわぁ…やっぱ、ちゃんと寝ないとね。さすがに体ダルすぎ……」
「またシフト、増やしたんですか?」
「あー…うん。そうなの。店長に土下座よ、土下座… 鷹瀬君の保護者さんがさ、お金、もっと必要になったって言うから……」
「大丈夫ですか?」
どんな吊り上げ方されてるんだ…? まるで金城の手法だ。
「あ、いいのいいの! 君が気にすることじゃないし。前よりちょっと、気は楽なんだ。事情知ってて、受け入れてくれる人がいるから。……君のこと、だよ」
うわあ。急に真面目に告白するな。
本当に照れる……。
「あ、ヤバ。そろそろ時間… ゲホッ! …ゲホッ!」
……先生…………。
「次…あるから行くね?」
どうしよう?
丸喜先生にでもまた、頼んでみるか?
でも、なんて説明したら…?
どうしたらいい、ただの高校生は…?
ピピピピ…
寝間着に着替えたところに、電話がかかってくる。べっきぃ先生だ。
『あ、お嬢様ですか? 今日も、ご利用ありがとうございましたぁ♡ …あー、ようやく咳止め効いてきた…薬代フンパツした甲斐があるってもんね。あのさ、私が行ってない時も掃除とか、換気とか、ちゃんとしなさいね。そーいうとこから、体調崩したりしちゃうからさ。まあ…君はあんまり必要なさそうだけど』
「……はい、大丈夫」
『ほんとのほんとに大丈夫? ちゃんと気を付けてよ。若いからって、胡座かいてちゃダメだからね。あ、でもお嬢様がダウンした時は看病しますから、よろしくにゃん♡』
何それ頼みたい
『ううう〜…咳が止まったと思ったら、今度はダルさと寒気が……。こんな時は栄養ドリンクの出番ね…グイッと飲んで、いっちょ頑張るか…!』
現代のメイドさんは生々しい。だがそれがいいッ!
でも川上先生は休んで。ほんとに……
夜も遅く━━、
ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ……
「んあ……? なんだ、こんなじかんに……」
着信音と、振動。枕元に置いていたはずのスマホが、手元に移動していた。俺の腹のすぐ傍でぷるぷる身を震わせるモルガナの、耳がくすぐったい。
このチャットは…… あれか。
あれだ!
「リュージかぁ……?」
「かふぁああああ……あうう!」
「つりぼり、さかな、いっぱい……!」
☆★ To be continued!! ★☆
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