失敗★蓮ストール 23-Ⅱ
【 雨宮蓮へのインストールに失敗しました! 】
♯夢小説 ♯ペルソナ5ロイヤル ♯女主 ♯成り代わり
夢主は周回プレイ記憶者です。
\前回までのあらすじァ!!/
「オタカラルートは確保済みだ」
「うし、多少不安はあるが…やるしかねえ」
「斑目のオタカラ… いったい、どんな代物なのか…」
「今回もバッチリ盗んでやろう? とりあえず、今日はお疲れ様!」
パレスを出る。
夕焼けが底冷えしてきている。
「そうだ、蓮。今日ウチでお風呂入らない?」
「それはありがたい。また服を借りて返すことになるが、いいか?」
「なん…だと……!?」
「……あー、祐介。これには複雑な事情があって、説明するからこっちにごにょごにょ」
自然と男子と女子(と猫)に別れて帰路につく。
明日会うのも当たり前の様子で。
「ただいま帰りました」
「…………」
「…あれ、ただいま」
「……あのな、前から何度言おうか迷ってたんだが、放課後帰りに女のニオイプンプンさせて帰ってくる坊主を出迎えるこっちの身にもなれってんだ」
「…………(目逸らし)(黙秘権)」
「盛り場に入ってんじゃねえだろうな? トラブル起こしたら叩き出すぞ」
ぴぴぴぴ。
「…自分の責任で勝手にしろ」
よいしょっと……。
言うことを忘れない内に、アンタッチャブルで換金してきたお金を、封筒の中に入れ直している。
人員が増えたことにより、分け前も少し減った。
例えば、強力なシャドウ『シキオウジ』を倒すと得られるのは約1300円。怪盗団経費として管理する分を分けて650円を、以前は4人で、今回の探索からは5人で分ける。一回シャドウと戦うごとに割り算をしているわけではないが、とにかく。
前回中庭に辿り着くまでの集金は、今回の集金と一緒にしないように気を付けないといけないし。
電卓を何度も叩く。計算間違いがあってはいけない。
スマホの電卓機能ではちょっと『違う』のである。
「ハァー、お札にコゼニがいっぱい」
「にゃーす」
わる5もすると大量に小銭が発生するのだ。
正直1円や十円をどう扱うか悩んだこともあったが…。
今度聞こうかと思うが、意見が割れそうだな……。
5月24日
モルガナにめっちゃ起こされた。
「フニャアアアア!!レン!レン!!」
「ううーん……」
「血のニオイがするー!!」
「は……? 血…………?」
頬までねこパンチされて起きないわけにはいかない。もそもそと体を起こして、
「それは生理中なんだから当たり前……」
……あ。
かけ布団をめくる。
「血ダマリ!!」
「……あー、しまったなー…敷く方のシーツは洗う手間かかるのに…とりあえず、応急処置しないと。あ、パンツとズボンが先か」
「おいレン、こんなに出て大丈夫なのか!?」
まだ少ない方なのだが。
わっしゃわっしゃとモルガナを揉んで落ち着かせる。
「夜用から戻すの早かったか。とりあえず、今から下一式全部脱ぐからモルガナあっち向いて」
履き替える間、
「ウニャア! 血のニオイ! ワガハイ! 何も見てない!!」
と飛び上がるモルガナが面白かった。
朝のホームルーム。
「━━都内の美化に協力するために、清掃活動をすることになりました」
エーッ。
「静かにー。清掃活動は来週の30日に行ないます」
あのイベントか。
……あ。
芳沢ちゃんコープ…。
はたして、当日は大丈夫なのか……?
放課後。
「ちょっとだけただいま! すぐ出る!」
「お、おう…」
「明日のお弁当… 1、2、3…… よし、OK。行ってきます!」
ドタバタ… カランカラン!
「…………まったく、うるさくしやがって」
「今のは?」
「ツテで世話してるモンだよ。まったく…意味のわからんところが多いやつだ。正直かと思えば、さっぱり喋らねえこともあるし、べらべら喋りだすこともある…」
「不思議な人ですね。興味深い」
「今は『店をうるさくすんな』ってのが一番だ。兄ちゃん、コーヒーのおかわりは?」
「いただきます」
杏に祐介を呼んでもらい、駅通路に集まった。
俺はもろもろの資料を抱えている。
全員が通路の手すりに横並びになる。
「これで奴に引導が渡せるんだな?」
「マダラメは人が変わったようになる。元に戻す方法はない。オマエは、それでいいんだな?」
「奴は芸術だけでなく、多くの才能を食い物にした。精算なしには、未来など考えられない。心配するな、冷静に考えて決めたことだ。…お前たちの力を貸してほしい」
「気負いすぎるな」
少し上にある祐介の顔を見上げる。その中の物を考えようとして、やめた。俺には到底考えは及ばないだろう。
「無理を言ってすまないな…」
「ううん。ただ、祐介が望んでないのに、やっちゃいけないって思っただけ。そこまで覚悟決めてんなら、言うことないよ」
杏が安心した様子で笑う。祐介への心配が解かれた、ほっとした様子で。
「確か次は、『予告状』を出すんだったな」
「ただカッコつけたい訳じゃないぜ? これも『認知の変化』を起こす手段だ」
「認知の変化…そういえば、苦労があったらしいな」
「中庭のセキュリティをコジ開けた話か」
「パレスは認知の世界だから、本人の認知が変われば、地形も変わったりする! …だっけ!」
「さすがはアン殿、その通りだぜ! あれは今後も使える手段だ」
「というか、ひとつ根本的な質問をいいか? 認知、認知と普通に言ってるが…そもそも『人の認知が具現化した異世界』なんてものが、どうしてあるんだ? まさか…ずっと前からあって、俺たちが気付かずに暮らしていたのか?」
祐介は巻き込まれて、そのまま頭が理解する前にペルソナに覚醒して、説明される間もなく戦いの場に馴染んだからな。…これもテンポの違いだろうか。
「そこは正直、ワガハイもわからん。少なくともカモシダの事件より前からあったのは間違いないが…情報はそのくらいだ」
「そうか……」
「やべえ…俺そんなん、全然考えたことなかったわ…。ノーガードだったわ… …お前、考えたことあった?」
…………。
2年(半)前。
そこで、『人間』に何が起きたのか?
「……。考えたことはある」
「別に、不安がる必要はない。オマエらだって、街の全部を知って暮らしてるわけじゃないだろ? 歩き方や、利用の仕方だけ、わかってりゃいいんだ」
予告状の前に、細々したことをすませる。
祐介に紙を見せ、読んでいる間に封筒を渡す。
「あんがとな! これで作戦前の準備が捗るわっ!」
「私も手伝えたらいいんだけど、ムリ。こういうの、得意な人とかいてくれたらいいんだけどな… …なんて、高望みか」
「ワガハイは貯めて出すタイプだ!」
「クッションはいい買い物だった。あれだけでフォトアルバム作ってある」
「撮るなー!?」
・どんな状況、どんな悪人でも、説得を諦めないこと。『現実の自分』に還してやること。
・公私混同は控える。心の怪盗団は、俺たちとは無関係の団体である。メンバーは数も素顔も謎であり、その活躍は、俺たちとは無関係である。
・高校生としての本分をおろそかにしてはいけない。
・怪盗団は第一に他者のために行動する。人々に勇気を与える。弱者や被害者を助ける。その行動が、誰かの勇気に繋がることを期待するが、目的になってはならない。見返りを求める心ばかり大きくなってはいけない。功名は善行に後からついてくるものである。
「ふむ…」
「普段からこんなに小難しく考える必要はないよ。わからないところがあれば聞いてくれ。ほら、祐介のがんばった分」
紙が帰ってきて、封筒を渡す。
「『説得』『現実の世界に帰す』か……」
「……あー、それは」
当然、今回の『担当』は祐介ということになる。
「…オタカラを盗られたパレスは崩れちまう。欲望の城が壊れるんだ。今のところ、廃人化リスクを一番軽減するのは、それだと推測してる。崩壊に本人のシャドウ…『心』が巻きこまれちまったら、な……」「…どうすればシャドウは本人の元に帰る? 弊害はないのか?」
「鴨志田の時は…うーん、何だったろうね。『改心』の後、自宅謹慎になっちゃったけど、自白の時はへにょへにょでも顔出せたし。あの時パレスで話したのは…志帆の怖い思いをお前も知ったか!罪を償えー! ……って感じだったかな」
「後はアレだな。あん時のシャドウカモシダは、完全に俺たちに心折られてた。つっても、ぶん殴って止めた面も大きいんだけど…あ、でも、心の世界で、心の力で戦ってんだから、ぶん殴るってのはちょっと違うー……のか?」
「…………」
「祐介次第だと思う」
「ね」
ほんの少しの思い出話。
祐介は眉に力を込めて、思索に沈んでいるようだった。
ちょっとの間を使って、俺の探してきたメメントス候補の話。
「球団の関係者にセクハラが多い野球選手」
「ミニ鴨志田になる前に芽は摘むべき」
「同意!」
「賛否両論発言の多いYouTuberか…」
「メディア露出は?」
「テレビとか雑誌に出るってやつ?まだかな」
「わざと過激発言して人を煽ってる感じ。インタビューとかだとまともな受け答えしてるからどっちかわかんないね」
「メメントスが反応したらクロ?」
「かも」
「『大御所落語家、女子アナを泣かせる』か…」
「関係の人調べたらあの人怖くてキツいって言ってる人多いね。というか、上から目線の発言が多くて困るとか、一般の人でもあの人は傲慢すぎって意見が多いし」
「欲望ありそう」
「調べよう」
会議終了。
「考えはまとまったか?」
「ん……」
祐介から曖昧な返事が返ってくる。
「俺はもう、今日の内に予告状を出す行動に移ろうと思ってみんなを集めたんだ。祐介だってそれはわかっていたと思う」
「・・・!」
「……考えをブレさせること、言ってすまなかった。でも…祐介なら大丈夫だ。きっと、その時になったら、言いたいことを言えると思う。俺は祐介のこと、信じている」
深く頷いた。
背中を曲げるくらいしっかと腕を組んでいた祐介が、それをほどく。ぱちぱちと、祐介のまばたきが俺をじっと見ている。
「決まりだな! 予告状を用意しようぜ」
モルガナが手すりを器用に伝って、俺たちの間から見上げる。
祐介が揺らいだ前髪を整え直した。
「予告状か」
改めて、その単語を繰り返す。
「…本気にするだろうか? 何しろ有名な人だからな…これまでも誹謗中傷の手紙はよく届いていた」「書かれた罪状がマジかどうかは、ヤロウが一番、わかんだろ」
自信ありげに笑う竜司を、心配そうに…別の意味で…モルガナが見上げる。
「というか、またリュージが出すのか? 前回ビミョーだったぜ?」…文面が。
「なら、祐介やってよ! すっごいアートにして、アートに!」
「いや、バレるのがオチだ。俺の絵も文字も、あの人はよく知ってる」
「じゃ、俺が考えたやつをカッコ良くしてくれよ!」
「予告状のデザイン…か。面白いかもな。怪盗団にとっても『本物の証明』になる」
おっしゃと竜司がガッツポーズをする。最近見ていてわかったが祐介が『面白い』…興味深いと思う時は、なんというかわかりやすい表情をしている。
「決まりだな!」
「よおーし! 後はオタカラをいただくだけだ! オマエら、準備を怠んじゃねーぞ!」
━━言われなくとも!
竜司が祐介を引っ張っていく。2人は笑いながら話をしていた。杏と顔を見合わせて、笑顔になる。
ルブラン。ぴぴぴぴ。
日記を書こうと思った。
ただ言葉が浮かんできて、掴む前に沈んでしまう。
むしろぼんやりとしてきて、ベッドに寝転がる。日記ノートを開き、鴨志田に予告状を出す日の日記を探す。
……そこには、ひたすらに不安を訴える言葉が書かれていた。
今の自分を振り返る。不安だろうか? 信頼はある。完全に安心しきっているわけでもない。こんな風に不安であるわけでもない。
凪━━? それも違う。
例えば、今回の色んな接触で、祐介が上手く話せなくなってマダラメが帰れなくなってしまう可能性…とか?
いや。
俺は祐介を信じると言ったんだ。
…言ったのか。
この言い方ではまるで、本心ではないかのようではないか。
…………。
なんか、結局なんだかんだ動揺している気がする。
今考えたことを書き殴るべく、体を起こす。日記である。山無しオチなし意味なし。日記とはそういうものだったか。
斑目の個展終了まで12日。
「━━やめて! やめて! その子を返して!」
「ハハハハハハ……、この子供もよく売れるではないか…! 親子どもども、私のために骨身を削って働いてもらうぞ……!」
「嫌! 行かないで! 気付いて! お母さんはここよ! いやああああーーーッ!!」
………… …………
「うう……、祐介…、祐介…私の愛しい子……、うっ……うっ……」
…………
「……祐介。また会いましょう、その時は……」
…………!
「わああああ!!」
飛び起きた。空はまだ、白んですらいない。定点カメラのように身動きが取れない状態。サユリの絵…小さな祐介…シャドウマダラメ……
「はあ…はあ……、」
布団の上で寝心地悪そうに丸まり直すモルガナ。良かった、夢の内容を尋ねられることにならなくて。
…サユリの表情が忘れられない。
☆★ To be continued!! ★☆
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