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失敗★蓮ストール 28-Ⅱ

【 雨宮蓮へのインストールに失敗しました! 】

♯夢小説 ♯ペルソナ5ロイヤル ♯女主 ♯成り代わり
夢主は周回プレイ記憶者です。



 \前回までのあらすじァ!!/

 5/25の斑目への予告状と、オタカラ奪還に成功した怪盗団一行。
ひとときの平和な日常を過ごし始めるのだった。
蓮も、夜の東京で大人たちと関わっていく。





 5/26 個展終了まで10日
 杏、それと吉田先生と話をした1日だった。
特に吉田先生は、新しくコープ関係を結んだ人物である。
やばい(感動)
祐介とメメントスの話をする…次にメメントス潜入するのはいつにしようか?いくつか依頼がある。今はレベリングは安定しているので、花集めで道具収集に向かいたいのが目的である。
この生えた永久キーピック、活用しなくては。


「ウーーーッン!」
「…………。何やってるんだ…?」

宿題をやってる裏で、ウンウン言っているから、予習復習に進みそうにない。

「ダ イ エ ッ ト……!!」
「なおさら何故。モナはいつだってスマートだろう」
「だ っ て…蓮 の ご は ん…食 べ 過 ぎ る… 明 日 か ら ネ コ 缶 で…い い……」

…………。

「よし、次のボーナス入ったらトレーニングマット買おう」

前からやってなかったわけじゃないが。竜司じゃないけど、道具は揃えないとな。新島先輩が入ったら、2人で武術を習うのもいいかもしれない。(ネタバレ)

「こ れ 以 上 男 ら し く な ん の!」

モルガナのために冷たい水を汲んでくることにした。宿題が終わったら俺もストレッチするか。
……怪チャンは大嵐から大盛り上がりへと移りつつある。どうやらマスコミが本格的に、斑目の予告状について聞き込みを始めたようだ。






 5月27日


「やあ、君か」
「おはよう、祐介」

声をかけてきた祐介が、ふっと暗い顔になる。どうした?

「実は、斑目が部屋に伏せってしまって…」
「それは……!」
「ああ…君たちが言った鴨志田の話と同じだ。個展自体は、相変わらず盛況のようだがな。もう、あの男を師と慕うことはできん。だが、目標がなくなるのも…やりきれんな」
「相談なら、乗るぞ」
「相談…? 君にか? …そういえば、そんな相手、今までいなかったかもしれん。時間があれば、話を聞いてもらうかもな。そのときはよろしく頼む」

落ち込んでいた顔がふっとほほえむ。『興味深い』時の顔だ。



 昼休みのこと。
今日は何をしようかと連絡帳を開いていたところに、「おっ、いたいた!」と駆け込んでくるキンパツがあった。

「ちょっとさぁ、頼みがあんだけド…」

きょろきょろ…

「うちのポストに入ってたんだョッ」

※完全に声色が変わっている竜司の声をお送りしています。
四つ折りにされたそれを開くと、満面ピンク色のチラシが出てきた。大きく『ヴィクトリア』と書かれた下にネコミミメイドコスプレの女性のイラストが描かれている。

「『家事代行サービス』! 『かわいいメイドがあなたの為に何でも致します』…って!! メイドだぜ! メ・イ・ド! あなたの! 為に! 何でも!! なぁ? …なぁ!?」

今一番かわいいのはお前だ(邪念)。

「頼みっていうのは?」
「…オトコならわかんだろ!?」

ニヤニヤする竜司の口からアヤシイ笑い声がだだ漏れている。
こいつたまに俺が女ってこと忘れるよな。俺も竜司といると自分が女ってこと忘れるけど。楽しいからいいけど。

「試してみようぜ。な? なぁ!? 俺んちのアパート、ちょうど同じ階のヤツが引っ越したばっかで、空き部屋あんだョ。ポストの裏に鍵あっから、入り放題。大家が適当なんだよな、そこんとこ。場所なら、準備できてっから」
「話は聞かせてもらった!」

 バ カ が 増 え た
アオレンジャイ(暫定)、三島由樹である━━!

「んだよ!?」
「なあ、俺も、えっと… えっと… そのイベント…混ぜてもらえない?」
「ほっほー。お前、こういうの興味あんだ? ふーん。へー」
「ち、違うって! 調査だよ、調査! 何でもしますの『何でも』ってドコまで? 派遣されるメイドの水準は? ちゃんと広告通り? 家事代行をうたう怪しいサービス…その実態を俺たちの目で見極めるんだよ!」

早 口 の オ タ ク
あ〜、ダメだ。俺もニヤニヤしてきた。この場合、メイドじゃなくて目の前のバカたちにだけど。

「それなら、仕方ないな━━!」

(伊達メガネ光度マックス)

「でしょ!? もし詐欺なら、成敗しないとっ!」
「だよなぁ。真相はやっぱ俺たちの目で確かめねぇと。ちゃんとスミからスミまで、余すことなくな。ムフフフ…」

男同士の間で交わされるアツい約束。

「そんじゃ、夜だな。都合のいい時にでも声かけろよ」
「計画のコードネーム、何がいいかな? えーっと…メイド鑑賞会…つまり、『メイドルッキンパーティ』!」
「やべぇ!かっけぇ!!」

カッ
今最後の方の発音『ry』だったな。

 ………… …………閑話休題。
ワシャワシャワシャワシャ……

「急に何すんだよおま!?笑顔がこえぇよ!?」
「良かったな、竜司。三島が俺が女だって知らなくて」
「あ!」
「この燃え立つ火…俺にはもう消せないから、やめるんじゃねえぞ……」
「ふあん!」
「フッ…心配するな。俺も俺の技術を総動員して臨む…!」
「ありがとうございます雨宮センセイ!」




【例のチラシの件なんだけど決行は夜なんだよね?】?
【俺、夜はだいたい渋谷にいることが多いから行く時は声かけてくれ】
【絶対に抜け駆けすんなよ?】?
【そんなことしたら一生恨むからな?】?
【また、夜に連絡する】

 放課後。チャットが来ている。おバカ…放課後にやることが終わったら…気合い入れるか。思い出せ、ビュッフェ会で大人の男にコーディネートされた時を。今の俺ならできる気がする。


 ……というわけで、俺は保健室を訪れていた。
丸喜先生が快く中に招き入れてくれる。「最近どう?」という話題から始まって、家事や、小遣いが入ったら買いたいもの…勉強の進捗…。彼と話すのは、正直楽しい。

「ここに来てから、スクールカウンセラーとして色んな生徒から相談を受けてるんだけどさ。実は、少しだけ安心してるんだ」
「安心?」
「僕がこの学校に呼ばれた理由でもあるんだけど …鴨志田先生の事件のことでさ。事件に関係してる子も少なくないって聞いてたから不安を抱えている生徒たちも多いと思ってたんだ。けど、実際に話してみたら驚いたよ。寄せられる悩みのほとんどは、受験のことだったり、恋愛のことだったり…学生らしい悩みや相談がほとんどで、深刻なものはそれほど多くなかったんだ」

なんだか、それは俺も安心してしまう。
それに、そうだよな。思春期の年頃に、対等な立場で話していいという頼れて信頼できる大人が現れたら、そういう気軽な(?)悩みも話したくなるものだと思う。

「あの事件で負った傷が癒えてない生徒も確かにいるけど…僕の所に来てくれている生徒を見る限りでは、大事に至らなさそうでホッとしているよ」
「きっと先生のおかげですよ」
「お、嬉しいこと言ってくれるね。大したことはできてないけど、少しでも力になれてるなら光栄だよ。頼りにならないかもしれないけど差、何か困った事があったら相談してよ。一応カウンセラーって立場だからね。話くらいなら聞いてあげられると思う」

先生が入れてくれたアップルジュースを飲む。先生の手元にあるのは紙パックだが、先日見たものと違うし、今飲んでいる物も別社のりんごジュースだ。どんだけ好きなんだろう。

「えっと…なんて言ったそばから、君に頼ることになって、あれなんだけど……。僕の研究を手伝ってもらうって話だけど、覚えてくれてるかな?」
「そういう取引でしたね」

飲んだグラスの縁を指で拭う。

「研究の手伝いって言っても、そんなに難しいことじゃないから安心して。ただ僕のする話を聞いてもらって、一緒に考えてみてほしいんだ」

 丸喜先生がソファの背にゆったりと体を預ける。

「けど…そうだな。まずはその研究についてちゃんと話していかないとね。僕が今、考えているのは、精神…心が感じる『痛み』について。具体的に言うと、ひどい言葉を投げられたり大切な存在との別れだったりで感じる苦しさ…。トラウマとか、ストレスみたいなものって言った方がわかりやすいかな?」

…………。
心理療法の極地点みたいな話。
彼が辿り着こうとしているのは、『完全な癌の治療薬』のようなもの。

「身体の痛みであれば、怪我や病気の症状として必要なものだと考えることはできる。でも、心の痛みって何なんだろうって。別に身体の調子が悪いことで苦痛を感じているわけじゃないのに…不思議だよね。心っていうのはさ、こんな風にまだ解明されてないこともたくさんあるんだ。僕はね…そんな心の痛みについて、もっと知りたいって思ってる。それでさ、質問なんだけど…雨宮君はどういう時に心に痛みを感じる?」

耳を傾けていた俺は、質問されているのに気付くのに少しかかって…それから、質問に答えるまで少しかかった。

「…………嘘をついたとき、とかでしょうか」

日頃から、嘘はつきまくっているんだけども。世界に。でも、それは世界が“俺”にさせている必要経費みたいなものだ。それでも不要な嘘が必要になる時があったら…。

「…そうだね。嘘をついてしまった罪悪感も、心の痛みのひとつだ。心に痛みを感じるのって、やっぱり、つらく苦しいものだよね。けどさ…例えば失恋の痛みなんてどうかな」

失恋。それは俺に話を合わせているのだろうか…? 彼は、少し身を乗り出す。

「これって、人を好きになる気持ちがあるからこそ生まれる痛みだよね。今度は、この痛みについて、雨宮君はどう思う?」

ふと俺は、茶髪の先輩について想いを馳せる。ほんの少しの間━━俺は彼にどんな感情を抱く?女だったら何かが変わる?俺の方が?彼の方が?

「必要な痛みなんじゃないかな、と思います」

…ほんの少し、嘘をついた。
そんな痛み、ない方がいい。失恋なんてしない方がいい。

「たしかに…相手を想っていた証でもあるからね。雨宮君らしい答えだと思う。心の痛みは辛いものだけど、それだけじゃない何かがある…っていう意見もあるよね。もちろん、それも正しいことだと思う」

丸喜先生が俺から一瞥を外す。

「僕としては、避けられるならどんな痛みもない方がいい…なんて思ったりするんだけどね」

……それが、彼が究極に求める答え。

「…うん。心の傷は実際には目に見えなくて、ある意味では身体の傷よりも複雑だ。そんな、心が負ってしまう『痛み』に苦しんでいる人を助ける為に僕の研究がある…あらためて、そう感じることができたよ。ありがとう」
「役に立てましたか?」
「もちろん! 今日は筆が乗りそうだよ」

笑顔で丸喜先生はりんごジュースを吸う。
ズズッ。 あー。
2人で笑い合った。

「…うん、今日はこのくらいかな。……おや? なにか忘れてるような…」

 きょと、と首を傾げる先生にまた笑ってしまう。

「あっ…! メンタルトレーニング! い、いやいや! 約束を忘れてたわけじゃないよ? 僕の研究に協力してくれるお礼としてメンタルトレーニングを教える! うん、ばっちり覚えてる! 今日は…そうだな、こんなのはどう?」

 今日は自信の付け方について教えようかな。ちょっと言い方は変だけど、ほら、テストとか、一大告白とか、そういう大きな壁に臨む時に強気に出られるような心構え。大事なのは芯の持ちようと今までの自分を信じること。友達に信じてもらうこととかもね。自分の中にこれだけは絶対ってものはあるかな?それを拠り所にして、そうだね、雨宮君の場合は…


 …ピピピピ。
自室床に服を並べていたところに電話が鳴る。

『あ、丸喜だけど…今って大丈夫? こっちは、今日のカウンセリングが終わって一息ついたところでね。今のうちに、改めてさっきのお礼を…と思ったんだけど』
「お疲れ様です」
『ありがとう。今日も色んな子が相談に来てくれてね。少しは力になれたらいいんだけど。…と、格好つけてはみたけれど仕事と研究の両立って結構ハードなんだよね。改めて、協力してくれて感謝するよ』

大学教授みたいなことやってるなあ。

『これから頼ることも多くなると思うけど、力を貸してくれると嬉しいな。それじゃあ、またね』
「がんばってくださいね、先生」

ありがとう、と彼は照れ臭そうに笑って電話を切った。




 ━━夜。

「よし、服のセットはこれでいいな」
「すげえ、髪型もキメてどう見ても渋谷を歩いてる大人のオニーサンにしか見えねえぜ…老けて見えるって意味で」
「ちょっとくたびれたくらいが雰囲気出てるだろう?」
「ああ、今なら30歳くらいに詐称できるな…。でもリュージらのソレのためにそんな全力出す必要ある?」
「健全な男子高校生生活のためだ」
「女子」
「認知は男子高校生だ」
「あのなー……」

ぴぴぴぴ…。

「ん……?」

俺はチャットを受信したスマホを持ち上げる。

【今から、山内のヤツ
 例のもんじゃ屋に
 飲みに行くってよ!】!
【潜入調査、いってくれるよなぁ!?】!?

「━━変装はばっちりだ」
「落ち着け! 落ち着いてくれレン!」

……りゅ、竜司のやつ……!
どうするんだレン、とモルガナに言われて歩き回る足を止める。止めてくれシキオウジ。今俺は親友と瞬殺とメイドルッキンパーティの間で揺れ動いてるんだ。

「作戦名最悪かよ!」

ダンジョン探索に有用な『瞬殺』と、二大コープ攻略重要要素のひとつ『節制』… いや…『節制』の解禁条件1は明日でも満たせるか…。
もういいもん。この場合山内が悪い。

「行くぞシキオウジ!」
「ドタドタ騒いでんなよ坊主!」

おこられた。
 ……モルガナとカバンを背負い、下階に降りる。

「おう、出かけん…………誰だお前」
「俺です俺」
「こっちはオレオレ詐欺には対応してねえぞ」
「その顔わざとですね」
「ハァ…… なんでコイツはオッサンのコスプレしてんだよ……」



 月島。
水辺の街は、水路や運河、水のにおいに包まれている。
都会の中心部から離れた町は、いわゆる『安くて良い店』が多く並んでいるようだ。もんじゃ屋もそのひとつである…。

【連れの教師も俺のことよく知ってるヤツだ】
【わりぃけど、トイレに隠れてる】
【頼む!】!
【通話状態にして、アイツらの会話、こっちに流してくれ】

了解…。

 ………… …………。

「もうバレー部は捨てるしかない。でも我が校としては名誉挽回の策が必要」「鴨志田のシゴキに耐えてきた生徒たちが華麗に復活を遂げる」「事件からの再起の『物語』」「わかりやすい実績があればボーナスの査定も」「『中岡は鴨志田の言いなりだった』とかも言った」「武石ね、親がPTAで金持ちなんだよね」「新生陸上部は『素直』な生徒だけいればいい」

……これでは『演出』だ!

 ………… …………ガラララ……

ドンッ!
「あんの、クソ教師どもが!」

竜司が思い切りテーブルを叩く。落ち着いてとは言えない。客が少しこちらを見たが、暴れる酔っぱらい客などいつものことなのだろう。

「このままじゃ、中岡も武石も、山内の使い捨てだ…クソッ!」
「当事者に話そう」

身を乗り出すために座り直す。

「…そうだな。あいつらの居場所の話だ…あいつらに決めさせないとな」

ぎらぎらと燃える目は、しかめっ面になって、肘をついて、鉄板を見る。

「陸上部ってよ、チームプレーじゃねえんだよ。駅伝とかは違うだろーけど、俺は短距離だったし。ライバルはいても、結局は自分のタイムとの戦い。だから、誰かに助けてもらう、とか、みんなで、とかそーゆう気持ち、なかったんだよ。けど、離れてみたら、やっぱ放っとけねーんだわ」

すん、と竜司が机の上で腕を組む。

「助けるとか、支えるとか、イゾンとか、そーゆうんじゃなくてさ…横で同じように走ってるヤツがいたからなんだ。同じように苦しんで、同じように歯ァ食いしばって吐くまで走ってよ…そーゆうヤツがいたから、俺は走れてた」

そうやって、語って、竜司は顔を上げた。

「だったらさ…俺ばっか不幸みてーな顔してらんねーよ」

決意を決めた…強い笑顔。俺も、自然と同じ表情になる。

「んなの、カッコわりぃだろ。男じゃねえよ」
「竜司はカッコいいよ」
「お? おお…… …マジ?」
「なに真正面から褒められて照れてんだ。そういうところ竜司」
「な、なんだよ『そういうところ竜司』ってッ」
「最後にはカッコつかないところとか」
「だあもう! 真正面から褒めるのはそういうとこ蓮ッ!」

 こうしてワチャワチャしていると、緊張がほぐれる。竜司は失敗もするし、失敗もするし、失敗もするけど、だからこそ立ち直り、自分を見直す機会を、より良い成功のための勢いと動きをくれる。それが…【戦車】なのだと思う。

「つか、せっかく来たんだしもんじゃ食おーぜ。このままじゃ、俺のもんじゃ屋の思い出はトイレだけだからな!」
「あははは。最高の思い出だな!」
「ばっきゃろ! それにしても、そんな完成度高い格好で来てくれるなんて、思いもしなかったな…」

かなり力を込めて頭を揉みほぐした。この野郎。
…竜司のおかげで、『イロモノに見えてうまい』もんじゃ焼きを堪能できた。無謀なチャレンジ精神あってこそだ。
別れ際に、本当に嬉しそうに「今日、ありがとな」と歯を見せて笑ってくれたのが、俺も嬉しかった。






☆★ To be continued!! ★☆

 

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