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夢小説・雨宮蓮
【 雨宮蓮へのインストールに失敗しました! 】
#夢小説 ♯ペルソナ5ロイヤル ♯女主 ♯成り代わり
夢主は周回プレイヤー記憶者です。
『城』が、どうしたって?
「━━鴨志田━━テメェが━━」
………… …………
「呑気だな、陸上の━━」
「とにかく来なさい━━」
「━━……例の転校生ってのは、お前だな?」
はっ。「あ━━はい」
ええと、朝の。
ええと、 …………、 そうか…今日は…
……問題を起こしたら退学だからな」
あ……、返事。
「わかりました」
「まあいい、早く職員━━」
嫌な奴からの言及には、シンプルで正直な返答をして退くのが得策だ━━、
“変態教師”から逃げるように━━俺は玄関を抜けたと見るや、脇目も振らずそそっかしくさと廊下を走る。体中を走る違和感。
うん。
あれ。
あれあれ。
トイレに入る。もちろん男子トイレだ。
昼休み中ということで用足しの男子がいたが迷わず大の扉を閉めた。ガチャリ。
カバンの中身をひっくり返━━せはしないので、自分の主たる道具を確かめていく。
生徒手帳━━雨宮蓮、2年生。男子生徒。
保険証━━男性。
男子。男性。男。
いや、おかしい。
俺には○んちんはない。
今脱いでいるから一目瞭然である。
脱いでいるズボンは男子の制服だが。
トランスジェンダーが学校に周知である、とかならまだわかるが、日本政府の役所からも女性であることを否定されている。鴨志田もカモシダも男として見ている(重要)。ついでに下着も男物トランクス。何より自分がさっきまで自分が男でないと思いもしなかった。謎に項垂れた。
そして俺はしばらく考え込む━━女性用品がないかカバンを探りながら。
雨宮蓮、女性。
ペルソナ5の主人公に女性ルートはない。
なるほど、そういうことな。
俺は謎の納得をしてカバンのジッパーをジャーッと閉めた。
つまり、ペルソナ5ロイヤルの知識をある程度持っている誰かもとい、俺を『P5主人公』にインストールする際に何か不手際が起きたらしい。思い出せる過去と言えば、獅d…酔っ払いのオッサンに冤罪を被せられた高1の3学期が最後なのだから。(知識記憶は、過去記憶とは別カウントである)
もしかしたら看守やアルセーヌらが困惑していたのも事故事情を読み取っていたからかもしれない。
この先待ち構えているショッキングな展開についても、さほど憂うことはなかった━━遅効性かもしれないが。
よし。
俺は夢主だー。
トイレの便器から立ち上がる。
『雨宮蓮(男)』として、高校×怪盗生活を始めよう。
あ、でもせっかくだからコープイベントとか全部見たいな。デートもといお出かけイベントも見たい。周回効率プレイヤーの頭にはパレス攻略が遅れると見れないイベントのカレンダーが入っている。
あ、怪盗団相手とかコープの恋愛はどうしよう。そこは女だと白状しないと妙なことになりかねないな。指摘されたらでいいか。
それに。
誰に軽蔑されてもいい。誰を侮辱することになってもいい。改変できるなら変えたい展開もある。
イゴールがそう言ってくれたしな。
物語の展開に抗う物語。
やってやろうじゃないか、雨宮蓮(女)。
ガジッ (擬音)
…………。
社会の窓が引っ掛かった。
ついでに女性用品もなかった。
かなしいね、屋根裏に住んでるゴミ。
……しかし、
悲しくなってばかりもいられない。物語に反逆している場合でもない。川上先生…、あの本当に良い、川上先生に今の段階でご迷惑をかけるわけにはいかない。
さすがにダッシュはせず、2階の、職員室…、
「ハァ…君ねぇ……」
……日曜にも見た顔である。
川上貞代。
いかにも跳ねたままのような、襟元まで膨らんだ髪。黄色の服。笑えば愛嬌と快活を見せる顔は、今はシンプルなメイクで沈んでいる。
【節制】コープの相手だ。
ごめんなさいと即行で言いそうになる。耳は適当に話を流していく。
教室は2-Dである。
生徒数は多いのか少ないのか。
ざわざわと良くない噂で騒ぐ生徒たちに、己が心ここにあらずというのは反対にいいことなのか。
「雨宮、蓮です」
「今日はその、体調不良ということで。席はね、ああ…あそこね、空いてるとこ」
そう言われて指された、前の席の生徒にイヤでもなく目が吸い寄せられる。
いらっしゃった。
高巻杏。のちのパンサーだ。
靴が床を踏みしめているのを確認しながら、空いた席に向かう。止まる。
あの時、フードの中から豊かに飛び出した金色のポニーテール。青色の瞳に、真珠のように艶のある頬。こうしてリアルに顔を合わせると、やはり顔が良い。本当に良い。
…………。
しまった、見とれている場合じゃ…、
「嘘」
あ、と慌てて机の方をもぎ取るように座る。クスクスと女子生徒の笑いが聞こえてくる。体調不良は嘘。そうだ。それとして、俺は俺で、どう席に座ったものか……。
「きりつ……」
「あ!」
ガタン。
アハハハハ……、
正直、授業も心ここにあらずで、受けたとは言い難い。確かめたいことが多すぎる。
一瞬廊下の中に見えた城の景色。
竜司の呼び出し。
川上先生には悪いけど、今は坂本くんには関わるなという忠告は袖に振るしかない。
竜司は重要人物だ。
屋上に向かうと、金髪を短く刈った活発そうな男子がパイプ椅子の上に行儀悪く座っている。
「来たな」
そう言う彼の顔は真面目だ。
耳聡いジョーカーなら、ここまで『坂本』『竜司』の名前を聞いているだろう。
ブレザーの下に無遠慮に着た『OMG』のシャツ。年相応の幼さとやんちゃさのわかる顔つき。快活で、欲望に忠実かつ素直。前時代的なヤンキーみたいな仕草も持ち合わせるものの、曲がったことが許せない人一倍激情家の少年。
スカル━━坂本竜司。
「悪かったな、呼び出して。どうせ言われてんだろ?俺に関わるなとかさ」
「いや、知らない」
「へっ…さすがだな」
すっとぼけてみせると、キィ、と、“坂本という少年”は椅子を揺らして少し笑う。椅子を揺らすのをやめ、彼は足を組み直して俺の目を真っすぐ見る。
いい顔してるな。照れる。 (?)
「聞いたぜ、『前歴』あんだって?どうりで肝がふてえワケだぜ」
とうだろう。俺の場合は『前歴』と『肝』はさほど直結していないわけだし。俺も合わせて放置された机に座る。坂本も身を乗り出す。
「何だったんだ、城で殺されそうになったやつ」
……さて、本題だ。
「夢…じゃねえよな?お前も、だよな?」
「そうだな」
なんだろう、困った大型犬のような顔に見える。
「まあ、一緒だから何だって話だけどよ…つか、夢とは言え」夢認定なんだな。「鴨志田から助けてくれたよな。とりあえず、礼言っとくわ。蓮」
それは。
別にいい、けど。
「どういたしまして」
と、答えるのが、“彼に”らしい気がする。あれ?名前どこで聞いたんだろうか……ああ、噂か。
「あそこで見た鴨志田、さぁ━━」
わかっている。元金メダリストのOB。
「ガタイのいいモジャモジャ頭」
……髪がふさふさしてるな。トゲトゲのタイプの。 そんな目で自分が見られているとも知らずに竜司は呟く。
「あの城、また行けんのかな」
行くな。明日辺りに。
竜司は「あーっ」と声を上げて、ぐーっと体を伸ばして立ち上がる。
「付き合わして悪かったな」
合わせて机を立ち、目配せをすると、彼はニカッと笑ってみせる。
「俺ら、似た者同士かもな?問題児同士、気が合いそうだぜ」
どっちもレッテル貼りだけど━━、そんな内心から、ふっと笑みがこぼれてしまう。それも好意的に受け取られたらしい。
「俺、坂本竜司な。見かけたら声かけっから」
「ああ、返事する。━━竜司」
「へへ。んじゃな」
やばい。
やばいな。
俺はパツキン野郎の名前を、彼のために呼べたことを内心猛烈に感動している。さらっと呼ばれたことにも今さら心臓が興奮で高鳴ってきた。何が悪いか全く表情筋は崩れないが、ニヤニヤするタイプでなくて今だけは良かった。
竜司はふらふらと手を振ると、バッグを担ぎ上げて背負って、屋上から出ていく。
最後に、扉を半開きに開けてもう一度こちらを覗き見て、「ニッ」と笑って引っ込んだ。
なんだあのかわいい愛玩動物。
俺は死ぬのか?
…………。
アホなこと言ってないで大人しく帰ろう。
……あ、春Changだ。
そういえば数ヶ月ほど使って、屋上が魔改造されるのだった。
帰ると、厳めしい顔の惣治郎に出迎えられることになった。お叱りを受ける。さすがに、改めて認識すると怖い。
佐倉惣治郎。
オールバックより少し後退した髪。紳士らしく整えられた髭。喫茶店のマスターは、ほぼいつもエプロン姿だ。実際女性には紳士だが、男性には厳しいし、客への返事は暖簾に腕押し。
【法王】コープの相手だ。
「…悪かった」
誠意を込めて謝ったつもりだが、ぼうっとしながらなのがばれたのだろう。更に眉間に皺が増える。
「お前な、大人しくしてろ。保護観察の意味わかってるか?人生終わるぞ?」
「わかってる」
わかっているんだ、本当に。だが、「…ならいい」やはり惣治郎は呆れたように首を振る。
……Pi Pi Pi
お、着信音。「おう、どうした…」と声色と表情が変わる。
双葉か。
できれば、通話中に部屋を横切りたいところだが…。
「何ボーッとしてんだ」
あっちから切り出された。今日も閉店準備は、こちらに任じてくれるらしい。
助かった。
惣治郎が引き上げた頃合いを見て、俺は脱ぐことにした。
脱ぐ。
と、わざわざ明確にしたのは、つまり全裸になるという意味合いである。自分の容姿を確認せねばなるまい。
ずっと着っぱなしだった秀尽学園制服を、バタバタと床に落としていく。ブレザー、ズボン、それからベタついたTシャツ、Yシャツ、最後にトランクス。
これですっぱだかになった。
姿見などないから触って確かめるしかない。
すでに問題のひとつにお気付きだが、
首上で跳ねるくせ毛の黒髪。前髪はやや伸ばしがちで、弄くり回したくなる。眼鏡の覆う部分は短めだ。ついでに眼鏡も外す。
2年生のブレザーとズボンを並べて、どうにかこうにか使って身長を調べる。 おおよそ170弱。 女としては大きく男としては並<強か。
腕や脚の筋肉は脂肪が薄く無駄がない。肩幅については男物を不和なく着れていることから推して知るべし。もしかしたらジョーカーの肩幅は以外とないのかもしれないが。腹筋は…割れてはいない、と言ったところ、だ。
さて……、……セクシャルなところだ。
胸だ。
胸だよ。ノーブラだったよ!
祐介が喜びそうな()ポーズで胸に手を宛てがいつつ体を捻じる。腰骨から腿にかけてスルンッといった風で、尻はない。ない!(?)
胸部は胸筋ともおっん゙ッとも言い難く、でも直接見たら女性の物と認識できるサイズ。しかし知ってしまった今“なし”なのは落ち着かない。
……で。
おそるおそる、下腹部に手を伸ばす。
男の物はない。排泄も問題ない しかしだからと言って、
「ッ!」
よし。
確認完了。どうしようか、“来た”ら…。
では。
総評としては、
柔らかさも固さもないスレンダー。
雨宮蓮。(女)。
悲しくなって悪いか。
とりあえず部屋着に着替えた。後で上に巻く布を探してこよう。服の場所がスルスルとわかる辺り、人格が融合したのだろうか。
☆★ To be continued!! ★☆
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