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失敗★蓮ストール 29-Ⅱ

【 雨宮蓮へのインストールに失敗しました! 】

♯夢小説 ♯ペルソナ5ロイヤル ♯女主 ♯成り代わり
夢主は周回プレイ記憶者です。



 \前回までのあらすじァ!!/

 5/25の斑目への予告状と、オタカラ奪還に成功した怪盗団一行。
ひとときの平和な日常を過ごし始めるのだった。
蓮も、夜の東京で大人たちと関わっていく。

しばらく変わらないあらすじ





 ピピピピ。

『おつかれ! 遅くまで付き合ってくれて、サンキュな! しっかし…クッソ! 山内!! もう思い出すだけでムカつくぜ! このままじゃ陸上部の連中がヤベえ、山内のいいように利用されちまう!』

(耳キーン)

『でもよ、俺の時みたく大ごとにしてせっかくの復活をダメにはしたくねーし…。それに、あいつら…俺が何言ったって、耳貸さねーかも……』
「やってみよう、竜司」
『そうだな。信じるしかねーか、あいつらのこと。とにかく、これで話がハッキリしたから、あとはどうすっか…だな。山内の野郎、いい気にもんじゃ食いやがって。ぜってーに許さねえかんな! とにかく、今日はアシストまじ助かったぜ! またなー!』

ピッ。
ふわぁ……緊張した。
スルスルと店の屋根からモルガナが降りてくる。

「リュージとの作戦はうまくいったのか?」
「ああ、大収穫だ。後は情報戦だな」
「情報戦と言えば、怪チャンはどうなってるかな…」「俺は杏から化粧を習おうと思う」
「なんで?????」
「アルセーヌ・ルパンの変装技術にはメイクもあったらしいからな」
「うん、多分違うよな?」

 怪チャンを覗くと、斑目の現状実況報告になっている。荒れていた斑目シンパのメンツはどうやら他の板に行ったらしい。彼が伏せったことは既に鴨志田の時と照らし合わせて話題になっている。
少し気になったのは、祐介(名前は出ていない)のこともセットで語っている者がいることだ。
ある者は彼を被害者と、ある者は擁護者と、これも意見が分かれている。
斑目関係者のものだ、というリンクを踏む。某チャンネル形式の掲示板には、他者の書き込みを気にしない自分語りが、淡々と綴られていた。

『現役保育士の者です
斑目氏のところから追い出されてしまった者ですが、私が悪かったと思っています
『保育士生活をエンジョイしていますし、ここなら多少上手い絵を描いても先生にバレません
『斑目氏が非常に厳しい人物であったことは確かです。私からそれ以上のことは言えません
こうして書き込んでいるのは、今回の騒ぎを発端に、みんなでの苦しくも楽しかった生活を思い出したからです』

多かった同門と、絵について語り合ったり、同じ机で食事をしたり、家事の持ち回りの担当を話し合ったりした思い出。
ただ、自分は自分の絵を描くよりも、他の弟子のことが気にかかって、面倒見に回ってしまい、なかなか絵を完成させられなかったこと。 弟子の間でグループのような物ができていたり、それによって共有されない秘密などがあったとしても、同じ目標のために皆が結束していたこと。 毎日が合宿のようで、楽しかった、と。
笑い話になったトラブル。斑目画伯が外では見せなかった一面。

 俺は黙って、更新が続いている板を閉じた。






 5月28日


 放課後、武見先生から連絡があり、武見内科医院に来ていた。

「ちょうど、試したいことがあったんだ。ここまで完成度が上がったのも貴方のおかげ。もう安心して飲めるでしょ?」

クスクスと武見先生が笑う。
俺も笑って、診察室に入る。


「……はい、じゃ今日は終わり。ねえ、もう帰る? ヒマならリンゴ食べてかない?」
「リンゴ……?」
「患者のおばあちゃんの差し入れ。死ぬほど余ってるんだけど」
「それ、カバンに入れて持って帰ったらダメですかね」
「ダーメ。ここで食べて」

なんだ、調理に使おうと思ったのに。それともここの台所で焼きリンゴでも…、

「 やあ、武見君 」

 ━━━!!
聞き覚え…ある声……?
コツコツ、と診察室に、大柄な男が入ってくる。
武見先生が、目を見開いて、一歩引く。

「大山田医局長…」
「近くで学会があったんだ。ついでに顔でも見てやろうかと思ってね。…誰だ? 患者ではないようだが」

男がベッドに座っている、俺を見下ろす。思えば、真正面から会うのは初めてだ。

「雑用のバイトをしてもらってるんです。ところで、何か御用ですか?」
「…私の患者をとったそうだな? 気管支炎の女の子だよ、父親と来たはずだ」

……!
医者を選んだのは、患者の方だ。そんな言葉が、喉でぐっと詰まる。あの親子は、他を勧められても、悪評を暴露されても、武見先生の元に通い続けることを選んだ!

「…『気管支炎』ね。とったつもりはありませんよ。別に、通院も勧めてませんし」

武見先生の方も、顔をきつく渋くする。

「だが、噂が流れている。大学病院が町医者より劣っているとな! 何がオリジナルの薬だ。貴様のやっていることは、非常識も甚だしい!」
「…そうですね」
「場末で腐っているだけなら、見逃してやったものを…。いいか、最後の忠告だぞ。こんなところさっさと畳んで、医者を辞めるんだ」

先生が沈黙する。
 この怒りは、俺の…“俺”のものだ。社会的地位立場が上だからと、力量もわきまえず傲慢に振る舞う者への怒り。理不尽への怒り!

「武見先生は良い医者です!」

声を上げて、立ち上がる。

「…何だと?」

踏み出した足で、先生の前に出る。「ふ、」と武見先生が笑う。何を……。

「やめましょ。こんなの相手にしても、時間の無駄」
「…………っ」

それでも、俺の本性が男を睨み続けている。

「ふん、ずいぶんと懐いているが…この女の正体、教えてやろうか。出来の悪い新薬を作って、患者を苦しめた、最低の医師だ!」

そんなことは聞かされている! 睨まれても、男はへらりと笑って、言葉を続ける…。

「かわいそうになあ? 笑顔の絶えない気丈な女の子だったのに……」
「…『だった』?」

俺の背中で武見先生が呟くのが聞こえた。

「死んだよ、あの患者は」
「なっ……!?」
「君も殺されてしまうかもしれないぞ? ハハハ! なんせこの女は疫病神だからなあ」
「先生を笑っ……」

俺を押しのけて、武見先生が男に詰め寄る。

「嘘だ……っ! 美和ちゃんには、まだ時間は残されているはず! 副作用による危篤からは回復したし、病状もそこまで進行していなかった!」
「進行していたんだよ。君の読みが甘かったんだろ。そんな事より、いいか。二度と私の患者を掠め取るような真似するな。…私を本気にさせるなよ」

『そんなことより』? 人の命を、『そんなことより』!? それに患者の病状や、現状を、そんなに軽く…!!
ふらっ、と武見先生がデスクに手をつく。彼女と、彼女に手を差し出した俺を見て、見下ろして、
 男は、病室を飄々と去った。
 ばさっ。
武見先生が、俺の腕を離れてその場に座り込む。

「先生!」
「死んだ…? 美和ちゃんが? そんな…それじゃ私は何のために…、あの子を治すことが、私の唯一の……」

その場に膝をつく。先生の顔は真っ青で、そして、震えている。

「嘘だ……」

━━嘘だよ。
そう根拠を持って言えたら、どんなに良いか。

「…詳細を聞いてきます!」

言って立ち上がりかけた俺の、手を彼女が掴んだ。弱い力にだったが、それで俺は止まって、振り返った。黙って、首を振る。生気も、精気もない顔。

「私…何やってたんだろう…私…何のために…、もう……、どうでも……」

すぐに俺を掴んだ手は、ぱたりと床に落ちる。
人を突き放したあいつより…俺を一度掴んだ、この人のためにできることは…。

「武見先生……、今は…ゆっくり、休んでください」
「……ん…、」

もう一度、手を取る。見上げられて、そっと体に手を回そうとして、…その前に彼女が、危なっかしくではあるが、立ち上がった。

「ごめん。ちょっと、落ち着いた。ありがと、モルモットちゃん。治験といい、助けられてばかりだね……」

俺はほほえみかける。彼女は少し顔を逸らす。

「やだな。無様なとこ見せた」
「たまにはいいですよ」

そっとその手を握った。まだ、震えている。きゅっと両手で包む。

「ふふ…そうね、たまには人に甘えるのもいいか。今日は、もう、帰りなさい。……治験は」

握られた手を見下ろしながらの言葉が、詰まる。

「…そのうち、ね」
「はい」

 …………、
俺は彼女の手を握り直して、くいっと引っ張る。「あっ」とこぼした彼女が、ぽすんとベッドに尻をつけた。

「よし」
「何が、よしって…」

ベッドに座らされた武見先生が、驚いた顔で俺を見上げている。「少し座って、待っていてください」と言って、俺は部屋の中を見回して、部屋の中に不自然な段ボール箱を見つける。
大丈夫、簡易台所の位置も知っている。ここは私設の病院。

「何のつもり?」
「雨宮蓮は、武見妙さんの気持ちを少しでも晴らしたいと思っています」
「…どういう意味?」
「モルモットちゃんからのお気持ちではないということです。…よし、これかな。後はまだ生食が向いてる」
「…………、」
「台所お借りしますね?」

武見先生はぼうっとどこかを見つめていて、否とは言わなかった。フライパン、包丁、まな板…調味料。よし。
 おおよそ10分。

「……どうして、私に優しくするの?」

新しくりんごの皮を剥きながら、先生の声に耳を傾ける。

「疫病神だし、人をモルモット扱いするし、誤診して、人を死なせた…それにも気付かなかった、バカ」
「前科は問いません。今を見てる」
「バカよ。美和ちゃんの今を知らなかったことも、貴方をひどく呼ばわった事もね」
「俺は、武見妙さんが好きです」
「…………」

武見先生がりんごを一切れ口に運ぶ。

「頼まれれば患者を診るあなたも、診察外でも気にかけて気にかけられているあなたも、治験後に体調の確認を電話してくるあなたも、俺はまとめて、あなたという人を信じてる」

ゆっくりな咀嚼ではあったが、彼女はりんごを飲み込む。
フォーク片手の手を膝に乗せて、まだ皿に乗っている焼きりんごを見つめている。俺は剥いたりんごをそのまま食べ始める。

「あなたはあなたの大切な人のために、とてもがんばりました」
「……がんばりました、か」
「誰かのために何かをする、というのは、とても難しいことです。どこかで必ず、欲が湧く」
「そんなの、私だって…私だって結局、自分のために……」
「でも、名誉や褒賞のためではないでしょう」
「…………うん」
「あなたが優しい人だから、俺はあなたに優しくします」

ふふ、と武見先生が力なく笑う。そして俺の肩にもたれかかる。

「……ずるい子。貴方が大人の男だったら歯の浮くようなこと、自分が女の子だからって、そんなに次々言っちゃって」
「…少し、恥ずかしいですね…」

そっと目を閉じる。

「私……考える。考えて…貴方は私に、元気になってほしいんでしょうけどね。でも…私、ぜんぶ諦めるかもしれない。それでも貴方は、まだ、武見妙と関わり合うつもり?」
「俺には、あなたの力が必要です。あなたの希望を探し当ててみせる」

ふうっ、とため息が吹きかかる。どうにもならないでしょう、その吐息は言った。俺は答える。

「どんな手を使ってでも」




 シリアス途中のギャグはタイミングを選ばないのである。

【おーい、忘れてないよな!?】!?
【ほら、例のチラシ】
【家事代行サービスの真相を探らなくちゃ】
【俺、今セントラル街
 腹が決まったら声かけてよ】

昨日は竜司も俺も緊急の用事があったが、今日は違う。

「なんで2日連続でオッサンのコスプレしてんだよ…」
「それが男子高校生というものです」
「へいへい」
「…ワガハイ、断じてその辺を散歩してるからな」

行くことを伝えると【抜け駆けはナシね、ゼッタイ!!】と猛烈に必死な返信がきた。


 というわけで、渋谷。


「おっ、雨宮…雨宮のお父さん!?」
「どうもはじめまして、雨宮蓮です」
「あ、はい、よろしくお願いしま……いや違うよ、雨宮くん本人だよね!? 完成度高っ!!」
「フフ、腕のいいコーディネーターがすぐ近くにいるからな」
「と、ということは、やっぱもちろん、『メイドルッキンパーティ』だよな…!?」
「当然だ」

メガネの光━━違った、今ふざけてメガネかけてないんだった。
頷くと三島が俄然目を輝かせる。

「よっしゃ! 待ってました! …俺も制服のままじゃまずいよな…場所は坂本ん家のアパートの隣だよな。ちょっとウチ寄ってから行こうぜ」
「三島の家…?」
「え?」
「えっ、あ、いや」

三島の家の情報を手に入れた!
なんだろう、この当たり前のことに胸が高鳴る現象は。『友達の家に行く』ってこと。
行くまでの間、怪チャンの話をひたすら聞いた。管理人としての仕事は落ち着きが見えているようだ。さすがに今日は玄関までしか上がれなかったが、父母の声と、「友達と遊びに行ってくるね!」という元気な声で、
……寂しくなった。


 すごく…狭い部屋です……

「ほ、ホントにやるんだね? …大丈夫だよね?」

三島が不安そうに俺たちに目を配っている。

「メイドルッキンパーティ!」
「そ、そうだ! メイドルッキンパーティ!!」

竜司のテンションに、三島も身を奮い立たせたらしい。

「なんか、マズげなやつだったとしても、バックレりゃいいんだよ。ここは空き部屋。どうせ誰の住所も割れねえよ」
「天才か……」
「まーな、ひかえおろう」

そういうところ竜司。

「坂本が冴えてるなんて…でも、そういうことなら……」

滑らかに毒を吐いたぞ、三島。

「ってわけで…」
「だね!」

三島と竜司が一瞥を交わす…。 ?

「電話、頼んだ!」

……幻のモナが『いや、言い出しっぺが行けよ』と呟いた。ふむ、ここは…幻のモナが白けた目で俺たちを見上げているが…

「━━任せろ」

(接続音…)

『お電話ありがとうございます! 家事代行サービス「ヴィクトリア」です!』
「かかった!」「シー!」
『サービスのご利用でよろしかったでしょうか?』
「さ、サービス…!」
『ご指名など、ございますか?』
「し、指名!? 指名ってなんだよ!? どうする、蓮!?」

そういうサービスを期待してたんじゃないのか、なんで想定してない顔してるんだよ、天才竜司。

「指名はなしで。フリーの子をお願いします」
(セルフボイスチェンジ)

おおおお、と男子高校生2人が口をぽかんと開けている。まったく…冷静な自分が電話して良かった。

『かしこまりました〜! それではですね…すぐにご案内できる子が…20分ほどですかね? それでは、ご住所いただけますか?』

一度スマホから口を離して「(竜司、住所)」と囁く。少し赤くなった顔の竜司が差し出したメモ用紙を読み上げると、『はい、わかりました! ではお楽しみにお待ちくださ〜い!』という陽気な声が続き、電話が切れた。
 ツッ。
 グッ……。(b)

「やべ… ホントに来ちまうぞ、これ……」
「ついに、メイドさんの『家事』が… あのさ…何してもらう? 俺的には、まず、メイドさんの手料理とか……。もちろんそれ以外のサービスでも、全然……」

動揺を隠し切れない竜司と、赤ら顔でモジモジし始めた三島。くそ、ウブかお前ら。何なのだこれは、どうすればいいのだ。かわ…メイドさんが来る前に俺が壊れる。

「…とりあえず作戦会議でもする?」
「20分っつってたよな… ちょっとトイレ……」

事前にしとけよ。どっちも。

 〜 時間経過 〜



\次回、どうなるメイドルッキンパーティ/


☆★ To be continued!! ★☆

 6/27執筆。なぜわかるかって?noteに編集日記載され…もとい誕生日だったからです

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