失敗★蓮ストール 34-Ⅱ
【 雨宮蓮へのインストールに失敗しました! 】
♯夢小説 ♯ペルソナ5ロイヤル ♯女主 ♯成り代わり
夢主は周回プレイ記憶者です。
\前回までのあらすじァ!!/
5月31日
━━ピピピピ、ピピピピ━━!
うわーーっ!! (内心)
ガタッ、と机が跳ねた。
「ん……? 誰ですか、授業中はスマートフォンの電源は切るものですよ」
乾先生がゆったりと教室内を見回す。
午後授業で眠くなっていた目が一気に覚める。前の席の杏が体を起こす。ポケットに手を入れて手探りで電話を切る。数度画面に触れてやっと着信音が切れた。
モナが机の中で、耳を立てて目をぱっちり開いてこちらを凝視している。言われなくても、ドクドクと動悸がひどい。
特に生徒を責めることなく授業を再開した乾先生には申し訳ないが、スマホを確認する。
『喜多川祐介』━━?
「きの……」
昨日の今日でどうした。言いかけたモルガナが口を噤む。祐介はいくら何でも、授業中に電話をかけてくるほど非常識ではないと思う。どうする…スマホをこっそり確認するのに高さからしてモナの目線は避けられない。
心臓のバクバクが緊張に変わる。
…仕方ない、怪盗団チャットを使おう…。チャットなら、着信音はオフにできる。
杏への説明も兼ねてだ。杏が髪を肩からどけて、ポケットに手を入れる。
…………は?
斑目の改心が失敗した? そんなはずは…。いや、『還る』ところは見届けていない。一方で、枯れ木のようになった斑目を俺は見ている。
何が起きた? 何が起きてる?
しばらく間があった。
………… …………。
や、やだ……。
……こんな弱気な祐介、どこでも初めて見る。
祐介の個人チャットへ切り替える。がんばってモルガナにチャットが見えないようにする。
「レン。すげえ顔になってんぞ」
「(ごめん)」
顔ニヤけてたかもしれない。寝たフリを続けながらチャットを打ち続けている。
あっ おやすみって言っちゃった …とか考えながら、モナの入っている机にスマホを突っ込み、今度こそ机の上に顔を乗せて突っ伏した。
━━放課後。
気付いたら寝過ごしていた。教室を出たところで、階段脇の竜司、杏と目が合った。
当たり前の沈黙が流れる。
「待ってた」
と、竜司が言う。2人とも、険しい顔だ。
「告訴するなら、個展が終わってから、なんだよね…?」
「そうするはずだ」
「改心の…告白は?」
「…………わからん」
モルガナがカバンから飛び出て、俺の肩に乗っかる。
「耐え続けられるものなのかもしれん。…でもな、『期限』の前に耐えきれなくなることもあるんじゃないか?」
「そ、そーゆー可能性だってあるよな!」
苦しい笑いをする竜司。だが今回、鴨志田の時よりもダイレクトに現状が伝えられている。
「は、はは……」
「一番辛いのは祐介だよね…。チャットとはいえ、あんな風に取り乱すなんて……」
頷く。裏で個人チャットも回していた。
「…でも、最終的に、自分も俺たちのことも信じるって言ってたよな。つれー祐介がそう言ってるんだ。俺たちも、祐介と俺たちのやってきたこと信じようぜ」
「ふーん。今日の竜司、カッコいいね。チャットだからかと思ってたけどー」
へへへ、と竜司が照れ笑いする。少し祐介に連絡してみる、と2人に伝える。
「会えないって言ってたのにか? まあ、でも、最初に電話かけ間違えたのも蓮だって話だし、蓮のこと、信頼してんだな」
「会うわけじゃない。電話だ。ちょっと相談してたんだ」
「爆睡してたはずなのに、いつの間に…」
「やっぱユースケと話し合ってたのか」
「…ムリすんなよ? アイツあれで、重い男だから。ガチ悩みの時はガチで重石かけてくるから」
背を廊下に預けて、竜司がじっ、と俺を見つめてくる。知ってる。というか、時間が噛み合ったの、お前の愚痴のせいでもあるんだけどな、とは黙っておく。
杏がスマホを少し触って、ため息をつく。
「……やっぱり、告訴は怖いな。その気持ちにウソはつけないよ。されたら、どんな罪になるのかな…私」
「んー、わかんねえ。俺と蓮もされんのかな、告訴。いや、されなくても、杏が連れて行かれたら、俺も出るね。な、蓮もそうするだろ?」
「……そうだな。そうすると思う」
「はは……震えてきたわ」
「……みんな行くのか? ワガハイはどうすればいいのかな…」
みんながモルガナを見る。
モルガナはただのペット扱い…かもしれない…多分。それに、自分の足でだって十分に逃げて、暮らしていけるだろう。だが、そんな卑劣な真似はモルガナの精神が許さないだろう。
だとしても…彼は、罪を証明できないのだ。
「……生きてほしい…かな」
「れ、レン……」
「メメントスに首突っ込むのも、やめてさ。前みたいにパレスで捕まったり、一人で追い込まれるところとか…今後、俺たちがいない状態で、そうなってほしくない」
俺が捕まったら、どちらにしろ刻限は手遅れになる。それでも、刻限まででも、俺たちを信じて待って、生きてほしい。
「犯罪者のペットとして指名手配されるかもなー」
「…犯罪者のペットってどういう扱いされるのかな」
「や、やめろよお前ら。コワい話すんなって…」
死んでほしくない。
「ホラ! もしもの話したって仕方ねえよ。だったら、明るい未来の方を想像しようぜ! マダラメのやつ、きっとマジで耐えきれなくなったんだぜ。ワガハイたちにできることは終わったし、精いっぱいやったのさ。後は改心してると信じて見守るだけだ、そうだろ? オトシマエつくだろ」
「…そうだね。そうだといいね」
うつむきがちになっていた顔が、少し前を向いた。
「ワガハイらが思ってたよりナンジャクだったってコトでさ。ユースケのお母さんの無念もきっと晴らされるさ!」
「…そうだな! 弟子の作品もよ、どれが誰の作品か、ちゃんと証明されて、再評価されっといいな!」
「おう! その中には、ユースケの作品も絶対にあるぜ」
「私、祐介の個展、見たい!」
「ふ…今は無理かもしれないけど、確かに見たいな、祐介が今まで描き続けた作品だけ集めた絵画展」
「そーだな…あのさ、ちっと不本意?かもしんねーけど、斑目の弟子みんな集まれば、美術展開けんじゃね!? 美術展!美術館!」
「美術館かぁ。金色の建物だけはやめてほしいな!」
あははは、と笑いに包まれる。
後はこの、明るい未来の展望を、祐介に話せば…、
「……斑目の元で弟子として生活して良かったと思ってる人、絶対いる。今は彼のせいで傷ついて、恨んでいる人、その方が多いだろう。命を落とした人もいるんだろう。でも、何年かでもかけて、やってみようと思わないか?」
『弟子の皆との…美術展……』
ぽつりと呟いた祐介の声には、意外さが聞こえた。
『みんなで、また、集まる…。俺が…? 集めるのか……? ……お前たち、俺が思いつきもしないようなことを考えつくのだな……』
「変か?」
『考えたこともなかった。だが…そうか。あの時が楽しかった者が、いるかもしれない…か』
どこか安心した様子は、今までのことを振り返っているのかもしれない。辛い記憶が多かっただろう。その中に埋もれていないはずがない、楽しい記憶。
『モルガナの言うことも、然りだな。俺にとっての精いっぱいが、あの男に全力で怒りをぶつけること、そして手を下さないことだった。ならば、受け入れよう。万一があれば、杏も…杏のことも、俺に出来るならば、擁護しよう。罪が軽くなるように』
「ありがとう」
『フフ…蓮と話していると、やはり心が軽くなる。暗い予測が消えるわけではないが、どうすればもっと良い未来に向かえるか、そう考えられる』
「……どういたしまして」
電話口だが、笑顔になる。
『いつか言ったか。お前たちがいるならば、もう今の俺は筆を折られても生きていける気がする、とな』
「そうだったかな…」
『忘れないでくれ、蓮。我ながら、そんなことを自分が言い出すなんて、驚きだったんだぞ?』
あちらからも小さく笑う声が聞こえる。それだけ元気になってくれるなら、嬉しい。
「じゃあ、また明日な?」
『ああ…………』
なんだその名残惜しそうな声は。
「そんな顔するな、声に書いてあるぞ。彼氏じゃないんだから」
『かれし……? なぜ……? なぜわかった?』
「肝心なところでわかりやすいんだ、お前は」
お前の方が、何でもお見通しなんだ。そう言って、『じゃあ…また明日』と、祐介が電話を切った。
うんと伸びをする。カバンの中から「電話終わったか?」とモゴモゴ声が聞こえる。うん、終わった。
「じゃ、ワガハイたちはいつも通りの放課後を過ごそうぜ!」
ほんとにそれも、その通りだ。
職員室の方に向かう。「川上先生が(英語の)蝶野先生に疑われている件」について、何か手を貸せるかもしれないと思ったからだ。とりあえず、『そっちに向かって用件思い出して振り返る』作戦でいこう。
…おっとタイミングいいな、主人公補正か?
ちょうど詰問されているところじゃないか。スタスタスタ、と横目でその光景を見ながら通り過ぎて、足を止め
ドンッ!
「きゃっ!」
うわびっくりしたぁ!
……生徒会長!?
「あ…な、なに? 本に夢中で気付かなかったわ」
え?いつから着いてきていた?(尾けてた前提)
背後霊かよ!
新島真先輩は、なぜか『少年チャンプ』の大きな雑誌を顔の前に広げている。俺が急に足を止めたのでぶつかったらしい。彼女の方が背が低く、しかも体をきゅっと縮こめているため、まして小柄に見える。
「そう…ですか。気を付けてくださいね、立ち読み…」
「そ、そうね。…いけない、忘れてた、生徒会の打ち合わせに行かなきゃ。もういいでしょ…それじゃあね」
そそくさ、と先輩が背中を向けて駆けていく。そっちは生徒会室のある3階への階段とは逆方向だぞ。…まあ、いいか。
「川上先生、お取り込み中失礼します。授業の質問があるのですが…」
真っ向から切り込むと、先生2人がこちらを向く。
「…What?」
「えっ…あっ! ま、また質問なの!?」
「…また?」
「そ、そうなんですよー! 雨宮君の質問は入り組んでて、いつも教えるのに時間がー…」
川上先生はフサフサの髪をかきながら、アハハと蝶野先生に笑う。フーム、と蝶野先生は考え込み、
「時間外の個人レッスンなんて… なんて情熱! アナタこそ教師のカガミよ。熱心な教師と生徒…まさに学校のあるべき姿ね。疑うようなマネして悪かったわ。じゃ、2人ともがんばって」
蝶野先生はBye!と手を振ってその場を立ち去っていく。その背をしばらく…十分…見えなくなるまで…見送って、
「…なんか勝手に納得しちゃったけど。まあ、一応、疑いは晴れたし…ありがとう」
一見、素っ気ないようにお礼を言う彼女は「こっち来て」と俺を招いた。
廊下の角。
「校内じゃあんまり話せないから…、…これ、夜の仕事用の電話番号とアドレス」
と、手に握りしめたものを差し出してきた。手を差し出すと、メモがくしゃりと落ちてくる。
「指名ってことで、夜に電話して。履歴とか残らないように注意してよ?」
「履歴…」
「…絶対だからね?」
「大丈夫です。公衆電話からかけます」
「…君んちの近く、結構レトロなのね」
唇を尖らせて俺を睨んだ川上先生は、苦笑い気味にため息をついた。そう、あるのである。居候先ルブランには、あまりにも目立つ、黄色の公衆電話が。
「じゃあ、私行くね」
さて…今日は何をしようか……。
渋谷駅地下モール。相変わらず、商品をごた混ぜに煮込んだ臭いと、人の臭いと呼吸でいっぱいの場所が、彼女にとってお気に入りの場所らしい。
杏には『行く』と伝えてある。遠くから俺を見つけたらしい彼女が、ニッと笑顔になってぱたぱたと両手を振る。
「よっ、蓮」
「うす、杏」
「あんがとね、来てくれて。あのこと抜きにしても、私悩み多き乙女だからさー、来てくれて心強いよ。また話聞いてもらっていい?」
もちろん。
「そうこなくっちゃ! また井の頭公園行こ? それと、前に相談してくれたー…」
「……メイク?」
自分で頼んでおいて、疑問符。
「色々興味持ってくれて嬉しいー! 『取引』のお返し、きっちりするね!」
鬼コーチじゃあ、ありませんように!
☆★ To be continued!! ★☆
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