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メタルギアソリッド前夜:SFアドベンチャーの傑作『ポリスノーツ』...の爆弾解体ミッション

ゲームとことば Advent Calendar 2023 に参加させていただいています。
https://adventar.org/calendars/9479
今年のテーマは「○○な人にオススメしたいゲーム」です。
ということで、ちょっと懐かしいゲームを紹介したいと思います。

突然ですが小島監督が好きです。
多くの人、特に若い世代にとっては小島秀夫=メタルギアソリッドの人だと思うのですが、ファミコン~スーファミ世代ぐらいだと、それよりも前のタイトルに思い入れがある人も多いのではないかと思う。

MGSの前身である「メタルギア」シリーズは国産ステルスゲームの元祖として特筆するべき点があるタイトルではある。ストーリーも当時から作り込まれていて良いゲームではあるが、当時の印象としては数ある良作ゲームのひとつ、といった感じだった。
ただ、やはりMGS前の小島作品で推したいのは「スナッチャー」と「ポリスノーツ」の2作品だ。

「サイバーパンク アドベンチャー」の肩書は伊達じゃなかった
スナッチャーの精神的続編とでも言えばよいだろうか

この2つのタイトルはどちらもいわゆる「コマンド選択式アドベンチャー」だ。昔はポピュラーなジャンルだったが、最近はメジャーな作品ではほとんどなくなってしまった。ただ、インディーゲームの隆盛と共に昔の雰囲気のアドベンチャーも色々と作られるようになったので、「サイバーパンク/レトロフューチャーADV好きな人」にオススメだ。
MGSの魅力と言えば「映画的演出」というかほぼ「映画のようなゲーム」なのだが、これはスナッチャーとポリスノーツの制作過程で成熟していき、ハードの進化と共にMGSで一気にブレイクした。この2作なくしてMGSは生まれなかったと言ってもいいかもしれない。
スナッチャーは一言で言えば「ブレードランナー×ターミネーター」な世界、というか元ネタというにはかなり際どいくらい主に設定面で影響を受けている。世界的なパンデミックにより荒廃した世界で、殺した人間にすり替わり(Snatch)人間社会に紛れて生活する「スナッチャー」を狩るJUNKERという組織に属するギリアン・シードがスナッチャーの謎に迫っていくという、ゴリゴリのサイバーパンクである。

ブレードランナーの影響が強いが
ギリアン・シードのモデルはハリソン・フォードではなく
メル・ギブソンらしい
MGS4にも登場するメタルギアMk=2はスナッチャーが初出

ポリスノーツは宇宙がメインの舞台なので、よりSF感の強い世界観のゲーム。「POLICENAUTS」とは、宇宙に移住する人類が住むコロニーの治安を守るため結成された、宇宙飛行士としての訓練を受けた警官(Police+Astronautsの造語)で、世界初の5人のポリスノーツ「オリジナルコップ」の一人であるジョナサン・イングラムがある事故で宇宙に放り出さる所から始まる。宇宙を数十年さまよい、若さを保ったままコールドスリープ状態で発見されたジョナサンは地球で私立探偵を営むが、そこに20歳年上になった元妻が訪れ、ある頼み事を…みたいなお話。

コンソール版のアニメーションはクオリティがかなり高い
カーチェイス、銃撃戦、バディ物…すごく…リーサル・ウェポンです…

まあとにかく、どちらも面白い。ストーリーはまとまっていて非常によくできているし、雰囲気づくりも素晴らしく、小島作品らしい小ネタやギャグも満載でまったく退屈しない。メタルギアとクロスオーバーしているキャラや設定もあるのでいろんな楽しみ方ができるゲームだ。

昔の作品らしいというか、下ネタも。スナッチャーで有名な『見せる』からの「男の証明」。
もちろん変態呼ばわりされる。
MGS4の雷電のバイザーには「TOKUGAWA HEAVY INDUSTRIES」の文字が
トクガワ重工はポリスノーツに登場する企業の名前
ポリスノーツに登場するパワードスーツなどの
メカニックデザインはカトキハジメ氏

ということで「MGS以外の小島作品をプレイしたことがない人」にもオススメである。

…のだが、この2作品、困ったことに最近は入手難易度が高めとなっている。特にスナッチャーに関してはかなり厳しい。PS版(とSS版)は小島監督が関わっておらず、望まない改変が多く施されているため、監督本人が「プレイしてほしくない」と言っている。最も完全に近いものをプレイするならPCエンジン版という敷居の高さ(2020年に発売されたPCエンジンminiに収録されているのでそれが一番手っ取り早い)…
ポリスノーツはオリジナルのPC9821版はほぼ不可能で、PS1版かアーカイブス(PS3かPSP、Vitaがあればプレイ可能)ならまだギリいけるが、現行機ではもう入手はできない(3DOとSS版もあるが、まあ厳しい)。

だがそれでも、まだプレイしたことがない人にはこれらのゲームを推したい。プレイ環境を用意できる人は、ぜひチャレンジしてみて欲しい。(文字を読まされるゲームや、古さを感じるゲームが嫌いという人には、正直オススメできないのであしからず)
というわけで、少しでも背中を押せるよう、最後に私が熱中したポリスノーツ内に登場するミニゲーム「爆弾解体ミッション」について紹介しよう。

画面はPS版のもの

ポリスノーツは基本的には前述の通りコマンド選択型ADVではあるが、さまざまなミニゲーム的要素が含まれている。メインとなるのはガンシューティングミッションによる戦闘だが、個人的に一番面白いのがこの爆弾解体ミッションだ。当時自分はこのミッションの直前でセーブして、ここだけ繰り返し遊んでいた。
で、このミニゲームなのだが、ぶっちゃけ死ぬほど難しい。いや、死ぬほどではなく初見ではほぼ確実に死ぬ。
制限時間内に「光センサー解除」「振動センサー解除」「起爆装置のネジを外す」「起爆装置のコード切断」「タイマーのコード切断」「最後の2択のコード切断」を行う必要があるのだが、一つでも失敗すると容赦なくドゴオォォォン!という音と共に爆発し、ゲームオーバーになる。

しかも序盤の「振動センサー解除」これがむちゃくちゃシビアで、小さいセンサーをつまんで迷路の外に出すというやつ。

振動センサー
もともとPC用に開発されたゲームなのでマウス使用推奨

こいつが凶悪な仕掛けで、1ピクセルでも壁に触ると即座にドゴオォォォン!である。
こいつを突破した後のネジ外しもタイミングよくネジを外さないとドゴオォォォン!なので、気が抜けない。当然失敗すると最初からやり直し。
そして最後は爆弾解体といえばのお約束で、「赤か青のコードのどちらかを選んで切断」というロマン溢れる選択を迫られる。一応ヒントはあるが、注意していないと気づかないぐらいのものなので、大抵のプレイヤーは一か八かで切断していると思う。
というわけで、とにかく制作側の「プレイヤーを絶対に殺す」という意思を強烈に感じる難易度のミニゲームではあるが、安心して欲しい。
この爆弾解体は何度も死ぬことを前提としているためだ。

死ねば死ぬほどメタい発言がエスカレートしていく

死ぬたびにセリフが変化していき、メタな発言でプレイヤーを楽しませてくれる。一発でクリアするのが正直もったいないぐらいのボリュームで漫才のような二人の掛け合いが繰り広げられるので、結構な回数を失敗してもコントローラーを投げたりすることはせずに済むはず。もちろん救済措置もある。
このミッションはストーリーが一気に動き始める中盤に発生するのだが、ミッションをクリアした達成感に浸りつつも、大きく物語が動いていく後半へのワクワク感を盛り上げてくれる、絶妙なアクセントとなっている。

※ちなみに爆弾解体と言えば「鈴木爆発」という爆弾解体に特化した伝説のゲームがあるので、興味のある人はそちらも調べてみるといいだろう。

もちろんこのミニゲームはゲーム内に散りばめられたさまざまな要素の一つに過ぎない。機会があればぜひ実際にプレイして、これらが名作と言われる理由を体感してみて欲しい。
ともすればただのつまらない作業ゲーになりがちなコマンド式ADVをここまで遊べるものにした小島監督の手腕は、さすがとしか言いようがない。

できればリメイクして欲しい…が、まあ頭の片隅で期待せずに待とうと思う。

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