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議員研修誌「地方議会人」11月号(議会人の声より)


今月の表紙は北海道美瑛町の青い池(ドローン空撮)です。

地方議会議員の研修誌に拙稿が掲載されました。
議員として、自戒の念を込めて情報を伝えていくことや聞く力について(それらの難しさも含め)編集部の問いに答える形でまとめた拙文です。

Q まず「地方議会人」についての印象をお聞かせください。


美瑛町議会では、少なくとも平成4年(1992)頃より議員全員が購読しているようです(議会図書室には平成4年1月号からのバックナンバーが保管されています)。 平成31年(2019)の選挙で私は初当選しました。初めて議員控室で自分の席に座ったときに、先輩議員と同じように「地方議会人」が机の上に配られており、表紙の文字を見て身が引き締まる思いがしたのを覚えています。 新人議員の時から読み始めたこともあり、最も身近な参考書として、少し大げさに言えば「座右の書」として購読してきました。政府予算と地方財政という大きな論題から、議会広報のことなどとても幅広い内容で、また旬の情報や先進議会の取り組みも掲載されており、いつも参考にしています。時には一般質問のネタ探しにも活用していました。

「地方議会人」11月号より


 Q「地方議会人」に今後、期待する記事はどんなものでしょうか。


かつて自治体の首長は誰もがその区域内の地域社会を充実させるための施策を、できるだけ自前で展開するよう努めてきました。区域内で自治の確立をめざし、自助・自立精神を発揮するという考え方もあるのでしょうが、これからは自治体の広域連携が深化していく可能性があると認識しています。全国で形成された定住自立圏は130圏域550市町村、連携中枢都市圏は38圏域372市町村となっています。これらの広域連携もあり、自治体が公共サービス提供のための施設等を、全て整備し管理運営していくべきだという考え方(フルセット主義)を、多くの自治体が見直し始めているように感じています。本町でも耐用年数が経過し、老朽化したし尿処理施設の延命化が課題となる中で、自前で処理施設を維持管理していくのか、あるいは近郊の自治体との連携で処理をするのか議論がありました。その後、美瑛町を含む8町と中核市の旭川市で構成される「旭川大雪連携中枢都市圏」の連携事業として、令和4年(2022)から隣接している旭川市の処理施設を活用するようになったことも身近な例として挙げられます。 また、ゼロカーボンの取り組みでも、ペットボトルのケミカルリサイクルで世界的に注目されている企業である(株)JEPLAN(今年度中にニューヨーク証券取引所に上場予定)と、美瑛町、東神楽町、東川町が「地域循環共生圏」推進に関する包括連携協定を締結しています。美瑛町のような自治体連携の事例、特に議会間の連携の事例などあればぜひ取り上げていただきたいです。 

 Q 住民への情報発信・地域課題共有のために議員は何をしていくべきだとお考えでしょうか。

A 一般的に議会としての情報発信は議会広報がメインとなっている議会がほとんどだと思います。また、美瑛町議会でもそうですが、YouTubeチャンネルなどを設け、リアルタイムで動画を配信している議会も多くなりました。美瑛町議会の場合、一般質問のある定例会の傍聴人数でも10人くらいですが、YouTubeの閲覧件数は多い時では約1000回にもなっています。 本来、首長と議会がお互いに牽制し合う「二元代表制」の元では、首長と議会は形式的には対等で平等といわれています。しかし、実際には、予算や条例の提出権がある首長の方が力を持っているという見方が一般的ではないでしょうか。このような力学が働く中で、議員として首長に対抗するための力になるのが住民の声だと思っています。私自身、議会でも一般質問や質疑で「住民の声」を背負っている気持ちで臨んでいます。 そのためには、できれば自らのホームページを作って自分の考えを述べ、SNSを通じて(アカウントは議員として実名で)議会活動の様子や、時には議員としての主張も発信していくことが求められている時代になってきていると感じています。特に若い世代に向けての情報発信は、ネットやSN Sを活用しなければ届かないような気もします。活用することで幅広い年齢層から様々な意見や感想が寄せられるようになり、時にスマホを活用しSNSでサクサクと意見交換をしています。また、多くの地方議員とのつながりもでき、遠隔地に住む議員の方ともタイムリーに情報交換ができるというメリットも感じています。 ただし、ネット上では公人だけにリスクもあります。多少の誹謗中傷は覚悟した方が良いのと、時にその発言が炎上することもあるため、投稿に際しては議会での発言以上に注意する必要があります。ちなみに美瑛町議会では、「美瑛町議会議員SNS等情報発信ガイドライン」(令和4年12月施行)が定められています。また、自分で広報を作り発行して住民にお届けし、ホームページに掲載するなどのやり方もありますが、なかなか継続することは難しいものです。私自身も2年ほど毎月発行していましたが、現在はお休みしています。議会で何が議論されているのか?自分が投票した議員は何をしているのか?議会や議員に関心を持つ有権者が多いほど、議会と地域を変える力になると言われています。 また議員にとっても、議員の活動や考え方を伝えるためには、きちんと情報を得て調べなければなりませんから良い勉強になります。

Q 美瑛町議会の取組みで「自慢できる」ものがあれば、ぜひ。

A良い動きだなと感じているのは、議会基本条例や政策サイクルの導入など、今後議論を重ねたいと思っているテーマヘの反応ですね。この春当選した新人議員も含めて議会改革に向けての意識が高まりつつあります。これまでも「開かれた議会」を目指し、昨年は二度議会主催の講演会・町民との意見交換会を開催しています。 また、より読みやすく親しまれる議会広報とするために、「議会報モニター制度」の導入や、こども基本法が施行されたこともあり、「こども・若者議会」の開催について議員間で話題になっています。Q「これからの地方議会」に求めるものとはA令和5年5月8日、地方議会の役割、議員の職務等の明文化等を内容とする地方自治法の一部を改正する法律が施行されました。この法律で、議会は「地方自治体の重要な意思決定を議決する」と規定され、議員も「住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければならない」と定められました。これにより地方議員はあらためてその職責を自覚することと、住民の声に耳を傾け、執行機関に対しての監視機能のみならず、政策提言もできるような議員を目指すことが必要でしょう。また、医療や福祉、教育など多くの公共サービスや観光などの施策においても、生活圏や経済圏を同一にする自治体が連携・協力していく動きがさらに加速していく気がしています。 自治体の連携を円滑化するためには、首長や職員間のみならず、議会・議員同士も日頃から対話を心がけ、信頼関係を構築し連携を後押しする姿勢も大切になってくるはずです。さらには、議会・議員同士が連携して共通する課題を解決していくためにも、ネットやSNSも活用した対外的な発信や日頃のコミュニケーションが大切だと思います。

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