大切なお知らせ。「記憶に残る、インターネットの使い方」は今月末で廃刊します
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大切なお知らせ。「記憶に残る、インターネットの使い方」は今月末で廃刊します


2017年12月にスタートした、こちらのマガジン。

当初は「記憶に残る、Webメディアの作り方」としてスタート。Web記事にまつわるノウハウを中心に書いてきました。

そして2018年末には「記憶に残る、インターネットの使い方」にマイナーチェンジして、SNSマーケティングから精神論に至るまで、月に4本お届けしてきました。

あと2ヶ月でようやく、2周年……というところなのですが、すごく突然なのですが、今月末でこのマガジンは終了します。

これまで読んでくださった方、情報を何かしらの形で役立ててくださったり、そのことを報告してくださった方がいて、本当に励みになりました。嬉しかった。 本当に嬉しかったです。

ただ、「あぁ、今キッパリ辞めないと、私の成長が止まるな…」と、ここ数ヶ月はずっと悩みの種にもなっていて。「メディアの閉じどき」を感じたので、そのことを最後から2つめの記事として、書いていければと思います。


そもそもこのマガジンを始めた頃。……といってもほんの2年前なのですが、当時はまだまだ「オウンドメディア」の立ち上げブームでした。どこもかしこも「Webライターが足りない!」「ライターさん紹介してもらえますか?」という、つかの間のWebライターバブル。

私はその頃、THE BAKE MAGAZINEというお菓子屋さんのオウンドメディアの編集長をやらせてもらっていたのですが、時代の追い風に吹かれて事業にポジティブな影響を与えていたこともあり、たくさんの企業から「どうすればいい?」「手を貸して欲しくて……!」と問い合わせをいただいていました。


お話を伺うと、歩んできた歴史や、とても素晴らしい技術などの「誰しもが成し遂げられない」資産を持っている方ほど、SNSの基本的な使い方や、サムネイルの表示方法…といった、ある種「誰でも出来る」部分で躓いてしまい、情報がきちんと広がっていない。一方、世の中には薄っぺらいオウンドメディア、Webメディアがどんどん乱立して、そこで儲けている人もいる。


そのもどかしい現状を前に、何とかしたい……と思いつつも、Webメディア業は細かい仕事が多すぎて。私もそこまで沢山のオウンドメディアを兼任することも出来ず、お仕事として受けられない状況でした。星の数ほどあるインターネットの情報の中でやっとたどり着き、頼ってくださる方をお断りせざるを得ない状況に、不甲斐なさも感じていました。

講演会などで一度レクチャーしても、実際なかなか芽が出るというのは難しくて、もっと細やかなハウツーや、基礎となる思考方法の共有が必要なのかなぁ……とも。

そこで、ある程度汎用性の高いノウハウを中心に、noteのマガジンを始めよう……!とスタートしたのがほぼ2年前。「記憶に残る、Webメディアの作り方」として、私自身の作家性は限りなく出さず、汎用性を……とにかく汎用性を……! と、出来る限りロジカルに伝わるように、感情表現をかなり封印していました(それでも漏れていましたけど……)。


読者の方からは「これは褒め言葉なのですが、塩谷さんのnoteは、たとえ筆者が塩谷さんじゃなくても読む価値があります」というお言葉をいただいたことも。パーソナルな部分ではなく、情報に価値を見出してくださることは、私の狙い通りでもあり、とても嬉しかったです。


ですが、じわじわと、3つの問題が生じてきました。


「何者かになれるかもしれない」という甘い蜜と現実


ノウハウ系の情報というのは「○○すれば、○○になれる」と伝えるがゆえに、読者に具体的な希望を与えやすい側面が大きいです。でも実際、SNSやインターネットの文章表現などで活路を見出していくのは、一部の条件(蓄積した努力、才能、センス、環境etc..)が揃った人だけ。

「○○すれば、○○になれる」というノウハウが誰にでも当てはまるのであれば、みんなが成功者となっていなきゃおかしいのです。

このマガジンを初期から購読してくれていた、いわゆる一流レストランで働くパリ仕込みのシェフがいたのですが、2年前はツイッターのフォロワーも1桁でした。でも持ち前の研究熱心さと、自らの知識やセンスで、爆発的にSNSシンデレラストーリーを駆け上がり、会社を立ち上げ、フォロワーは3万人……となった人がいます。ミスターチーズケーキっていう人なんですけど。



ただ、そんな人はもちろんごく一部で、多くの人が「○○になりたい」という希望を持ったまま現実と闘っている。そんな状況に対して「○○すれば○○になれますよ」とささやくのは、まるで甘い蜜のささやきなのです。

お金を儲けるためには「○○すれば、あなたは必ず○○になれます」を連呼すればいい。そうすれば、ワナビーな人たちが集まってくれます。ただ、私はそれは出来ない。

だから、「個人の名前で仕事してる人たちは、キラキラして見えるけど、現実は暗黒面もある」とか……

「夢を見て課金しても、現実問題、夢はそう簡単には叶わない」だとか……


そういう、すごく現実的な話ばかりするようになっていました。

「塩谷さんに影響されて、公務員を辞めました!」と言われたこともありますが、私はその人生に責任を負えない。夢を見るのも行動するのも自由だけれども、じゃあせめて、一歩先の闇も伝えておかなければ……と。


でも、これ、めちゃ暗くないですか????


どんどんダークサイドばかり注目するようになってしまって、私が本来やりたかったことと見事にずれていく。ポジティブなことを伝えたくてやっているのに、ネガティブの渦に飲み込まれてしまっているのです。見事に。

そして悲しいかな、ネガティブな言葉を発していると、ネガティブなものが集まってしまう。あぁ、駄目だ駄目だ駄目だ! そんな状況に身を置いちゃ駄目だ!



汎用性は、あきらめた


2つめの理由は、もう私には、汎用性の高いコンテンツなんて出せない、出したくない、という気持ちが大きすぎたこと。

ネガティブな感情で書いてしまう記事がある一方で、

「あぁ、書けた!あぁ、うれしい!」

そんな文章だってあります。でもそうしたものは、頭の中でぐるぐる巡っている感情たちを、四方八方から寄せ集め、ヒリヒリした気持ちで言語化して、やっと出せた! となる、まぁなんというか、掴みどころのないものばかり。人様のお役に立つかなんて知ったこっちゃないけれど、でも私は、生きているという実感を噛み締められる。

なかでも先月書いたダブリン紀行は、自分の中で大きなかぶをスポーンと抜いたような気持ちよさがあって。もっとそっちの景色を、ちゃんと、見に行きたくなってしまった。


「たとえ筆者が塩谷さんじゃなくても読む価値があります」という褒め言葉からもう脱して。私はわたしの喜ぶものが書きたい。それが何より大切。それを読みたい人がいることは私の支えになる。それが次に大切。

だからノウハウのマガジンを廃刊して、来月から、まったくもって自分中心的なマガジンをあたらしく作ります。


『視点』と名付けました。

"暮らしや営みの中で零れ落ちそうなことを掬い上げたり、心や脳に浮かんだ閃きを忘れないようにするための、思考や思想の直売所のようなものです。役に立つかどうかは、まったくもってわかりません。ですが購読はそのまま、あたたかな支援となります。"  ──「視点」より


これまで800円でしたが、500円になります。正直、購読者の方は離れてしまうのかなぁ、という恐れのようなものも大きいです。有益じゃない私の情報なんて、誰が欲するのだろうか、とも。

でもまずは何より、私が読みたい。書きたい。

「情報」を買いたいというよりも、私の家の中に入るような気持ちで、読んでいただければ嬉しいです。




背水の陣に追い込んで、ちゃんと言葉と向き合いたい


3つめの理由は、背水の陣に立って、ちゃんと言葉と向き合いたいということ。


正直、noteの売上は何よりの生活の支えでした。きっと収入は減ってしまうだろうし、なんならセミナー講師のような(すごく割の良い)仕事も減らしていこうと思っています。あまりにも地価の高い、NYの家賃が払えなくなる気がして怖いです。(契約まだ1年残ってるのに…)


SNSやインターネットのノウハウはあらゆる方が興味を持ってくださる分野だったので、想像以上に収益がありました。そして今でも毎月、売上は伸びていました。ほかは非営利でクリエイター合宿の企画をしたり、milieuを運営したり、さっぱり儲けどころがないことばっかり手を出しているので、どう考えてもnoteが命綱です。もしこれが会社だったら、成長している事業を潰すという馬鹿な決断です。顧客ニーズ、ガン無視っすわ……。

それでも今、ちゃんと自分の帆先を心地よい方向に向けておかなければ、自分の将来に自分が憧れられない。現状維持は後退だ!


──


私はずっと、表現者のサポーターでありたいと自分を鼓舞し続けていました。そして私には文章とインターネットくらいしか特技がないから……と、表現することから身を引いていました。

でも、私自身がまずは表現者でありたい。絵がかけなくても、歌が歌えなくても、楽器を奏でられなくても、自分にだって、世界を描けるじゃないかと。日々他人様に「ことばの力を軽視するな」と説教していたのに、ことばの力を軽視していたのは、他でもない私自身だったんです。


私が尊敬する表現者の方々は、みんな背水の陣で挑んでいます。

一方で私は、ある種これまで、noteの収入で自分の生存スペースを守っていました。「夢が叶わなかったとしても、この仕事があるし大丈夫」という状況は、ある種とても安全でお利口で現実的なのですが、やっぱり挑戦しきれない。挑戦できる環境に、背水の陣に身を置きたいな、と。





──さて。ノウハウでもなく、汎用性も低いかもしれないですが、これからの日々の研鑽にお付き合いいただければ、そんなに幸せなことはありません。




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塩谷舞(mai shiotani)

初の著書『ここじゃない世界に行きたかった』が文藝春秋から発売中です。noteやmilieuには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。

インターネットの中で出会えるってすごい確率ですよね
1988年大阪・千里生まれ。京都市立芸術大学卒業。ニューヨーク、ニュージャージを拠点に活動。大学時代にSHAKE ART!を創刊。会社員を経て、2015年に独立。milieu、noteマガジン『視点』にてエッセイを更新中。著書『ここじゃない世界に行きたかった』が文藝春秋より発売