潮感ex-ガンダムX全話感想31話~最終話


■第31話 飛べ、ガロード!

 アバンは前回のラストから宇宙船内のティファへ。基本的にティファは拉致られてもあんまり抵抗しないね。達観してる感じ。攫われ慣れし過ぎちゃってるねえ。

 宇宙革命軍への対応に追われる連邦。フリーデンは九死に一生を得るが、ティファはもう空の上。放心して座り込んでいるガロードがもう可哀そ過ぎ……。

 ニコラが語る「我々はNTを正しく理解している」って台詞が空々しい。お前等も同じ穴の狢だから。それに対するティファの返事が毅然としている。「私は帰ります。私が想う人の所です。私を想う人のところです!」あの内気なティファが、これほど強い言葉を紡ぐようになったなんて……!

 なんてゆーかね、今現在のガロードは大変なんだけどね、なんか安心感があったよ。ああもう、この二人は大丈夫だ、ってサ。

 放心したガロードにテクス先生が渡したティファの絵……。ガロードを描いた絵なのに、ティファが描き足されてるって、すっごい良い演出だと思うの。ガロードも気づいたはず。ティファも、ガロードとずっと一緒にいたい、と思ってくれていたってこと。これまでも傷ついたり悩んだりして、凹んだり半ベソになったりしてたガロードだけど、マジ泣きしたのは今回だけ……。

 すっごい切ないシーンなんだけど、ちょっとだけ安心したような気持ちがある。このシーン、ずっと一人で生きて来て、人に弱みを見せない、弱みを作るようなことをしてこなかったガロードに、人前で泣いちゃうほど大切なものができた、目の前で泣いても構わないと思えるような仲間ができた、ってことでもあるんじゃないかな。なんかね、ガロードはこのシーンでようやく歳相応の子供に戻れたんじゃないかって思う。

 ここでエニル=エル仲間フラグが遂に回収。エニルはGXの中でも最も長く、激しくガロード達とすれ違い続けてきたキャラクターなので、和解に至ったことには物凄い達成感的なものがあった。ここに至るまでの経緯を疎かにせずにしっかり描いてくれたからこその達成感であることは言うまでもない。小刻みに挟まれてきたエニルのエピソードがここにきてガロードが宇宙へ飛び立つ伏線になっていたことも構成の見事さを感じさせられる。

 エニルとガロードが二人きりで対話するのは「あの子、許さない!」以降20話ぶりくらい。ようやくエニルの口からガロードへの執着が語られる。まあ、写真見ただけでああいう想いに至ったというわけではないだろうから、最初は「カワイイ子」くらいの興味だったのが、GX売るエピソードで直接会って本気で気に入り、拒絶され、そして……という流れなんだろうな、と、僕の中では思っている。「私の想い出は、もうあんただけなの」「女の子が本当に幸せになるのって、戦争に勝つよりも難しいんだから」 怨念から解放された女の人って、ホント魅力的だわ……。ガロードを撫でるエニルはすっかり好いお姉さんになっていました。

 ジャミルの口から出てきた新(物語的には過去の因縁の)キャラ。物語は新たな局面に移行しつつあります。

 状況の混乱に乗じてまた悪いことを企んでるフロスト兄弟。兄弟の暗躍が割とトントン拍子に進んでいく過程も、現場の状況や混乱を巧みに利用している、という理由付けがきちんと描かれているので、視聴者的に唐突感がない。劇的な場面で裏切って視聴者の度肝を抜くのも一つの手法だとは思うけど、僕は悪役にしてもこういうふうにきちんと描写を積み重ねていく方が好きだなあ。

 ガロードをコロニーに亡命させる、という名分は巧いなあ、と思った。DXをみやげに、と条件付けをするのも納得感。ジャミルは何でもできる男だけど、交渉や取引の巧さを特に評価したい僕なのです。ぶっちゃけそれを表現してるシーンは少ないけど、ヴァルチャー仲間にも信頼されてる描写があるし、誠実でありながら相手に損をさせない商売をしてきた人なんだなーって思うのね。

 ガロードを乗せたシャトルを守るため、フリーデンクルーが一丸となって新連邦軍と戦うシーンはスピード感のある映像も相まって感動的。これまでずっとみんなの家だったフリーデンが突撃で失われてしまったけど、そうまでしてもガロードを宇宙に上げたいという気持ちが凄く嬉しい。トニヤが、ロアビィが、ウィッツが、ジャミルが、「飛べ」「飛べ、ガロード!」と叫ぶシーンはベタっちゃベタだけどやっぱり凄く燃える。

 ま、もっとも宇宙に出た後のことは割と何も考えてなくて出たとこ勝負なんですけどねwwwww

 そんなこんなで次回からは宇宙編。短縮のせいとはいえ、怒涛の展開が続くなあ。


■第32話 あれはGファルコン!

 前回の熱いヒキからAパートへ。ザイデル総統初お目見え。ノアの方舟を引き合いに出して地球侵攻の時が来たことを表現するオサレな男である。

 一方のガロード。無事に宇宙に出て、無邪気な子供のフリして船内を観察。「たっぷり見せてもらったから」と、こーゆーとこ強かで良いよねー。

 ザイデルの薫陶を受けた者の代表であるニコラは、自身のNT主義を信じていないザイデルや、自己の権力欲に忠実なだけの新連邦首脳よりも、ある意味で性質が悪い。「NTは選ばれた民」「OTは地球を滅ぼす」「君のようなNTは地球にいるべきではない」など、選民思想台詞が溢れまくり。オ●ムの思想に共感してしまったボンクラが、まさにこういう連中だったのだろうなあ。そんなボンクラのニコラがティファと出会って変化していくところは、宇宙編の非常に大事なエピソードなので注視していきたい。

 クラウド9に向かわないことが解ったガロード、脱走を図るがちょっと無謀だった気も? ともあれ艦長を人質に航路データを奪い、慣れない宇宙戦闘でもなんとか2機を撃墜。しばしの機動で宇宙戦闘のコツを体得。いやはや、ガロードの順応性は天才的ってゆう設定、役に立ちまくりwww

 それにしてもエスタルド編あたりからMS戦闘の映像が気合入りまくり、動きまくりで観ていて気持ち良い。悔しいけど序盤の戦闘シーンはやっぱ地味だったよなあ。くそー、もっと予算と制作期間があればなあ! 放送短縮しなければなあ!

 この段に至ってエースパイロット・ランスロー=ダーウェルが出撃! 回想シーンには新規映像が幾つか追加されていてちょっと新鮮。

 一方、ザイデルのNT主義に沿わないティファの存在が黙殺されることとなり、ニコラの心境に変化が生まれる。

 そしてティファはランスローを、そしてガロードの存在を感じていた。

 再び宇宙戦闘の続き。さすがのガロードもランスローには歯が立たず、縦横無尽の機動で手玉にとられ、絶体絶命のピンチ! しかも、これまでと違って止めの一撃も命中して完全に沈黙してしまう。

 そこへ登場! テコ入れメカ&ヒロインのGファルコン&パーラ! 「どきな!このザコメカども!」「いただき!そしてさらば!」とか、この台詞というか、キャラづけはすっばらしいね!

 前回と今回は舞台が一新され、これまた色々な情報が怒涛のように突っ込まれてくるので大変である。新しいキャラクター、新しい舞台の紹介がメインになって、それらの詳しい描写は次以降って感じなので、語ることはまだ少ない。

 どんどん加速する物語を堪能しつつ、次回へコンティニュー。


■第33話 どうして俺を知っている

 アバンは前回の終わり。OPは地味にレオDとGファルが追加。

 サテリコンの紹介、クラウド9でのテロ=宇宙も一枚岩ではないことが説明される。ティファの能力は本物であり、ザイデルもその事実は認めざるを得ないのだが、認めるからこそ遠ざける。彼の唱えるNT主義とティファは相容れない存在だからだ。

 ところで、サテリコンのテロはもちょっと殺陣が欲しかったな。地雷だけじゃなくて、総統の車に吶喊する奴とか居た方がよりテロ側の必死さが伝わった気がする。

 そのサテリコンに保護されたガロードは、パーラと交流。パーラは明け透けな性格でガロードとウマが合いそう。パーラの述懐でクラウド9以外の宇宙の状況が説明されるなど、ここ数話はとにかく状況説明の嵐って感じ。

 ランスローとザイデルの会話はまったく噛み合ってない。なんでランスローはザイデルに付き従ってるのん? Zのアムロ同様飼い殺しにされているということなのだろうけど。ティファとの会話は詳しく語られないのね。

 そうこうしてるうち、サテリコンへの総攻撃。ボコボコだったDXの修理が終わってるってことは、それなりの時間が過ぎているようだが、この辺りも短縮が無ければもちょっと合間のエピソードがとれたんだろうなあ。サテリコンのジェニスでは全然クラウダの相手にならない。

 ここでもガロードの超絶射撃力が発揮される。前面のバーニアが弱点っつったっておめー、動いてる目標ですよ? ライフル持つと隠されるし、針の穴通すようなもんじゃないのよ。正対してないとダメだし。パーラが数発のビームで体勢を崩してから射撃を成功させたのと比較するとやっぱトンデモ過ぎですわ。常に苦戦してる印象のガロードだけど、終盤の戦闘技術はマジヤバい。MSの性能がどうのってレベルじゃない正確さ。……なんだけど、あんまり凄く感じないのは描写が地味だからかなぁ。ランスロー達に「バーニアを狙い撃った、だと!?」みたいな説明台詞を吐かせたりして欲しかったかもかも。

 ランスローの懊悩は、ガロードと対話したことでより深くなった感。かつてライバルだったジャミルと、その薫陶を受けたガロードの戦いを知り、人として最低限のルールを破ろうとしているザイデルに従う自分の滑稽さを知った、というところだろうか。

 結局、サテリコンは圧倒的戦力差の前に壊滅。登場話数たったの1話。パーラの「だっせぇよなあ……」は、いつもの口ぶりだけど、だからこそ切ない……。ともあれ、かくて後顧の憂いを断った革命軍は、コロニーレーザーで地球制圧するダリア作戦を推し進めるのだった。


■第34話 月が見えた!

 アバン。ザイデルを睨みつけるティファ。強くなったなあ。

 対コロニーレーザーの作戦を練るガロードとパーラ。この二人のやり取りは早くも相棒って感じで心地良い。

 ティファはランスロー、ニコラ、そして三度ザイデルと対話。元NTであり、偶像として生きる他ないランスロー、NT主義を盲信していたニコラ、NT主義という思想を定義することで革命軍の首魁たりえているザイデル。三人はそれぞれ地球生まれのNT、ティファと接することで自身の立場と内面に向き合うことになった。

 ランスローはかつて同じNTだったものとしてティファと共鳴し、ニコラは実在のNTをティファによって見せつけられて自身の盲信に疑念を抱き、ザイデルは自身のNTの定義から外れるティファを激しく拒絶する。

 ティファがDOMEの存在を感知して倒れる。

 ザイデルの自己批判と言う言葉が物凄くカルトっぽくて嫌。

 ガロードとパーラの作戦は結構大雑把。ザイデルも迂闊な男である。無論、ティファなんかいらんわ、って言う気持ちが元々あったにしても。ぶっちゃけ超長距離狙撃可能ポイントを抑えられた時点でコロニーレーザーは詰んでるんだけど、それにしてもあっさりティファ返し過ぎだよねー。ここらへんの駆け引きはもうちょっと緊迫した感じが欲しかったなーって気もするし、うまいことやりやがってこんちくしょう的なカタルシスがあるからこれはこれでいっかって気もする。

 サテリコンの亡霊とか炎のMS乗りとか、センスが安っぽいところが歳相応で良いね。それ聞かされたときのティファの表情が可愛いのー。ティファって表情の変化がすっげえ細かいけど、変化に気づくと幸せになれるぞ。

 散々言われてることだけど、ン万kmも離れてると思われる地点からの超長距離射撃を成功させるガロードの射撃能力はマジやばい。これまでもビット落としたり、ムチの先端撃ったり、クラウダのバーニアを正確に撃ちぬいたり、射撃技術が超絶すげえええってシーンはいっぱいあったんですが、今回はその集大成ってゆーかピークってゆーか。NTOT抜きにしてガロードの射撃力やべぇっす。

 月をバックにくるくる回るガロードとティファを見ているともうなんか幸せな気持ちになれるね。F91のラストシーンのオマージュかな。あのシーンも大好きだ。ちぇーって言いながら笑ってるパーラも好い奴だよ。

 目的を達し、帰還するガロード達だったが、そこへ現れる新連邦軍。無論フロスト兄弟が先頭。ヴァサーゴとアシュタロンはシルエットが禍々しくて絵になるのう。

 そんなこんなで最初の宇宙行はたったの3話で終了。色々詰め込みまくった3話だったが、そんな中でもきちんとランスローやニコラやザイデルといった主要キャラクターの性格や行動指針は描かれていて良かったと思いま。

 あと、ようやく本来の運用思想通りの使い方をされたDXも良かったですね。接近戦もできるけど、やっぱ本来の使い方は戦略兵器で恫喝に使うのがベストですわ。


■第35話 希望の灯は消さない

 のっけから前回の続きで連邦軍とDX+Gファルコン戦。ジャミル達が拘束されたことを知って動揺するガロードは、パーラがアシュタロンに捕まったこともあって投降せざるを得なくなる。

 一方のジャミル達は強制収容所に送られる道程。GX、AM、LPの三機はジャミル達から引き離されて別途輸送されていく。それを上空から見守る一機の輸送船……バレバレだけど、口元だけを映し出す演出が心憎い。

 ブラッドマンにお呼ばれしたガロード。ダリア作戦阻止を労われるのが皮肉ってゆーかなんとゆーか。まあ、確かに結果的に連邦軍に利がある行為だったワケであるが、ぶっちゃけ新連邦も革命軍も同じ穴の狢っちゅーか。

 ティファがブラッドマンから感じ取ったのはまたしてもDOMEという言葉。存在。いよいよ物語が収束しつつある。

 荒野の真ん中に降ろされたフリーデン一行。既に墓穴が掘られてるあたりがなんとも厭らしい。しかし、そこに「希望の灯は消さない!」とやってきたのはカリスinベルティゴ! いやもうなんてゆーかベッタベタなんだけどカリスの登場はやっぱり嬉しいなあ。表情も明るく穏やかになって、憑きものがとれた感じ。序盤、あれだけ時間をかけてじっくりじっくり続けてきたフリーデンの旅が本当に無駄ではなかったな、ここで全てが結実したんだなあ、って感じです。

 軟禁されてるガロード達だったが、ガロードが鍵を開け、ティファが気配を読みとって脱出成功。はじめはティファがガロードに守られるばかりの関係だったのに、今ではきちんと支え合っているって凄く良い関係。こんなときなのにティファのうなじが気になっちゃうガロードは可愛い奴ですよ。

 ブラッドマンとザイデル。ブラッドマンについては、個人的にはまだ理解できるっちゅーか、権力欲の強い普通の政治家だと思うのである。フロスト兄弟に焚きつけられなければ、互いの戦力比を確かめた上で一時的な和平を結ぶことも選択肢に入れられる人間だったかも知れない。一方のザイデル。こいつはマジやばい。何がやばいかって、イデオロギーで戦争しようって奴は止め時を知らんから、どっちかが殲滅するまで止まらんのよね。互いにゆずれないところはあっても、話し合って、妥協点を探すのが外交、交渉って奴だろうが、このタイプはそういうのが通じないからおっそろしい。ブラッドマンのダメダメなところは、そういうノータリンなザイデルに引き摺られて、自らもカウンターイデオロギーというイデオロギーに固執してしまっている点なのではなかろうか。

 パーラを助けてDXのもとへ。「怖くないか?」「みんなと一緒だから」「みんな、じゃなくて、ガロード、だろ」パーラじゃないけど、からかいたくなるわい、こんなラブラブカップル前にしたらな! 図星をつかれて目を丸くして、顔を赤くして目を伏せちゃうティファが可愛過ぎて死にそう。

 てなわけで反撃だ! いったるぜえ! ってとこで次回へコンティニュー。


■第36話 僕らが求めた戦争だ

 Aパート。新連邦軍の本拠地を脱出したガロード達。ティファの力で敵に襲われないルートを辿って一路ジャミルの元へ。パワーアップしたフロスト兄弟に追いすがられるも間一髪、ジャミル達の援護が間に合う。

 久々の今だよ兄さん! これで3回目かな。アシュタロン単機で捕獲したのを合わせるともう少し多い。確か最終回までにあと1回はやってたはずだから、パターンと言われても仕方ないかなあ。まあ、GXは戦闘描写より見るべきところが幾らでもあるからここら辺は勘弁してあげようよ。最後まで観て「戦闘ワンパターンやったな」しか感想が出ないような人は、恐らく、キャラクターの性格付けや、しっかりとした行動理念の描写といったGXの良さには気付けなかったか、受け付けなかったということなのだろうから、しょうがない。

 「覚えておけよ、ガロード。次に戦争が起これば、それが僕ら兄弟の勝利だ」「次の戦争は、僕らが求めた戦争だ」 兄弟の暗躍もいよいよ最終段階に入りつつある。

 「あの人は、NTとして見た未来と今の世界のギャップに苦しんでいる」

 ティファは未来を予知することができるけれど、必ずしも確定した未来というわけではない。ガロード達の努力によって変えることができる。

 ところで、ジャミルはかつてどんな未来を見たのだろうか? 連邦軍として戦い、宇宙革命軍を殲滅すれば、幸せな未来になったはずだったのだろうか? 或いは、彼が力を使うことで悲劇を回避できるはずだったのだろうか? 色々と思うところはあるのだが、その辺りのことについては最終話で改めて語ることにする。

 そしてこの段に至って、何気にティファ自身の想いが語られる。

 「私は自分をNTだと思ったことはありません。ただ、この力がもたらす結果が怖くて、ずっと逃げていました」

 ティファの変化は、既に我々視聴者の目には明らかなのだけれど、彼女がどうして心を閉ざしていたのか、という点について言及したセリフは実はここだけかも知れない。

 キッドとパーラが早速じゃれあうシーンは微笑ましい。フリーデンクルーの中では基本的にチーフ、プロのメカニックとしての立場があり、大人な態度をとることの多いキッドが、子供に戻ってじゃれあってるのが何気に珍しいシーン。「また会えたわね……」でガロードとケンカしてたときくらいかな? そのガロードもエスタルド編以降どんどん大人になってきているから、キッドの子供らしさを引き出してくれるキャラクターがいなくなっていたのだなあ。良いコンビになりそう。

 ブラッドマンにアイムザット殺しを打ち明けるフロスト兄弟。ブラッドマンも迂闊な男ってゆうか、そんな危険な奴が本当に自分に心酔してるワケねーじゃんとか思わんのか。まあ、ここに至るまでに側近としてブラッドマンに尽くしまくって戦果もあげてきた結果なんだろうし、ブラッドマン自身がまた、戦争したがってる人物なので、要するにウマが合ったってことなんだろうけどサ。ザイデルにしろブラッドマンにしろ、旧世代の人間が非常にノータリンなのは困ったことだが、逆に言うと、ノータリンがトップでない限り戦争って起こらないんだよなあ。ぶっちゃけ戦争ってもっとも非生産的で損しか生み出さない行為なんだよね。理念が先走ったり目先の利益に目が眩んだりしない限り、現代の政治概念的に、成熟した国家間での戦争って起きようがない。せいぜい、そういうノータリンな連中に対抗するときくらいしか戦争しない損が戦争する利を上回ることってないワケで。そう考えると、主体的に戦争引き起こそうなどと考える連中はアホタレに描くしかないんだよなあ。

 そういう観点で既存のガンダムシリーズを見ると、やはり敵役はノータリンかカウンターノータリン。宇宙世紀作品はほぼスペースノイドとアースノイドの確執に端を発するイデオロギー戦争だし、WやSEEDもほぼ同様。OOの場合はソレスタルビーイングが既存の社会を破壊するカウンターノータリンの立場なので各国の立場はカウンターカウンターノータリン? 最終的にはイノベイターとのイデオロギー戦争になっていった感があるが。AGEのヴェイガンは過酷な環境に追いやった地球人への復讐だからカウンターノータリンなんだが、イゼルカント様の真意はかなりぶっ飛んでいるからノータリンでもある……。

 異質なのはGと1stと∀。

 Gは国家間の主導権争いだが、東方先生の歪んだ地球愛とミカムラ博士の個人的な嫉妬が絡む……がそもそも別に戦争してなかったわ。

 1stと∀は、どちらも戦争に至る過程がかなりしっかり描かれていて、偶発的な事故や衝突から戦争が止まらなくなっていくところに、戦中世代である富野監督の深みがあるよなあ……と思っていたりするのだが。

 まぁ、それにしたってザイデルとブラッドマンは迫力不足だよな~。フロスト兄弟の暗躍ぶりを引き立たせるために仕方ないキャラ付けだったのかもだけどね。

 閑話休題。

 反政府組織に身を寄せたジャミル達。「ここは新連邦に抵抗するだけで完結した組織です」というカリスの台詞が何気に凄い。単に「悪の帝国を倒すぞー」ってだけの組織がこれまでアニメやSFでどれだけ語られてきたか。確かに、圧政を強いる帝国に対抗するのは必要な行為かも知れないが、じゃあ、その後どうするべきなの? ってところまでちゃんと描いている物語って少ない気がする。悪の帝国を倒して、正義の反政府組織がとってかわってめでたしめでたし……になるとは限らないよね? クロムウェルやロベスピエールがそうだったように革命を起こしたは良いけど、その後のビジョンがないor統治のノウハウがないor上が変わっただけでやってることは同じ、なんつー実例は歴史上幾らでもあるワケで。

 GXは序盤、未曾有の混乱の中で復興してきた人々、そして未曾有の混乱を引き起こした男の贖罪の物語であるから、単に「連邦倒したぞヤッホウ」で終わるのではこれまで描いてきたことが無駄になってしまう。「連邦を倒した後、また新たな混乱が生まれるであろう。その混乱にはどう対処すべきか?」そこまで考えた上で戦っている点が素晴らしい。無論、明瞭に答えが出るものではないし、ベストな答えがあったらリアルの我々もあらゆる面でもっと平和で幸福な生活を送れているはずなので、答えを出す必要はない。ここではとにかく、「戦ったことへの責任を投げ出さず、戦った後の未来を模索し続ける」、ということがきちんと明示された点が素晴らしいと思うのである。

 一方のクラウド9。ニコラが連邦との和平の道を説くが、ザイデルは聞く耳持たず、反政府思想者としてニコラを拘束してしまう。ティファと出会って、最も大きく変わった革命軍側のキャラクターは、このニコラだろう。NT主義への懐疑を経て、クラウド9全体の未来を考えることができるようになった。もう少しその過程をしっかり描く時間があれば、と思うこともあるが、単なる選民思想者だった登場当初と比べて、凄く人間として、政治家として、魅力的なキャラクターになったと思う。彼についてはもう一度語る場があるだろうから、今回はここまで。

 地球を制圧して権力や経済の基盤を固めるのを優先すべきとする、ある意味現実的な新連邦政府首脳。うむ、革命軍という外敵と戦争するのと、地球圏の支配力を固めるというのではまったく政治的・経済的意義が違うのでこれは正しい。和平に傾く政府首脳だったが、フロスト兄弟が37564にして全ておじゃんに。

 いよいよ戦争が始まってしまう……って、GXの戦争はたったの3話しか語られないエピソードなのねー。


■第37話 フリーデン、発進せよ!

 アバン。前回の続きから連邦軍が宇宙へ侵攻開始。

 「戦争が始まろうとしている……」ガロードを見つめるティファは言葉はないが、憂いを帯びて無茶美人。

 Aパート。重い沈黙に包まれる反政府組織。元気者のパーラが喝を入れようとするが、戦後の地球のひどい環境がサラ、トニヤ、テクスらの口から語られる。エニルの「死ぬのが怖いわけじゃない。……ただ、哀しいだけ。また、あんな時代が来るのかと思うと」という台詞が凄く良い。

 連邦軍も革命軍も首脳がノータリンなせいで戦争が始まろうとしている。全面戦争の回避を模索した結果、政治犯として処刑されるニコラは、目隠しもせず堂々と刑を受け容れる。自身のしてきたことが正しい、という信念が無ければ殉ずることはできない。

 今のニコラは、NTを特別視し、コロニーの正義を信じ、地上からティファを攫ったときのニコラとはもう似ても似つかない。彼の変化は、ティファという本物のNTを目にしたことと、彼女が特別な力を持っていても普通の少女だったこと、そして特別な力を持ってもいないのにNTの優位性を主張するザイデルの空々しさが化学反応を起こした結果と言えよう。ニコラの変化は、地球側、コロニー側に関係なく、自らの過ちに気付き、反省し、歩み寄る努力をすれば、和解することができるということを示している。

 何度も何度も語ってきたことだけど、GXはすれ違いと和解の物語であり、ニコラはコロニーにおけるそれの体現者だった。その彼が、政治犯として処刑されてしまったことは痛恨の極みであり、逆に言えばザイデルやブラッドマンのように「一切和解の余地がないもの」も確かに存在すると言う皮肉でもある。

 果たして、現実世界の、特に政治の世界においてニコラのような人間を期待することは難しい。たとえ我執を捨て去り、和解を求めたとしても、相手がザイデルやブラッドマンでは和解はなされず、引いた方が一方的に損をする。その意味では、GXの結末は作劇上都合の良い、理想的な結末を描いたファンタジーで、いつまでも愚かな戦いを繰り返し、決して解り合えることなどない、と突き放しているかのようである宇宙世紀作品の方がよりドキュメンタリであると言える。

 だが、私は物語としてはそれで良いと思う。現実の世界を見渡せば幾らでも見受けられる愚かしい拒絶を再確認するよりも、ファンタジーでしかないとしても和解の先にある理想の未来を見てみたいと思う。こんなにうまくいくもんじゃない、と悲嘆するよりも、こうなったらいいな、と希望をもっていたい。

 ガンダムの終わりに残るのが虚しさでなくても良いじゃないか。

 ……まあ、ハッピーエンドばっかりでもそれはそれで物足りないだろうから、両方あるのが良いと思うよ?

 サラとジャミル。ウィッツとトニヤ。トニヤとエニル。ロアビィとサラ。戦争を前にして、それぞれがそれぞれの関係に答えを出そうとする。ウィッツは可愛い奴で、トニヤは好い子。お似合いである。そんなトニヤの肩を押すエニルも凄く優しい顔をしてる。想う人と想ってくれる人の間で揺れるサラは佳い女で、そんなサラの気持ちを理解して待ってやれるロアビィも善い男である。

 「卑怯でも良いんじゃない? でも答えははっきりしといた方が良いよ。……死んだら、元も子もないんだからさ」

 月夜の下のガロードとティファ。愚かしい戦争が始まろうとしていて、また哀しい時代になるかもしれない。

 「でも、もう寂しくない。ガロードと一緒だから……」

 このシーンのティファは、絵の気合も入りまくっててすっげえ可愛い。優しく肩を抱くガロードもすっかり男らしくなっちゃって。ホント、もうこの二人は大丈夫だわ。何があっても平気だわ。おめでとうガロード、おめでとうティファ。今まで君達の成長を見続けてさせてくれて本当にありがとう。あ、まだ物語は終わってなかったか。

 「もう一人になるのは嫌だから……」
 「このとき、私は初めて、自分の力がもっと欲しいと思いました」

 前回に引き続き、このシーンではティファが多くを語る。ずっと閉ざされ、物語の始まりから今まで、長い時間をかけて開いてきた結果が、このシーンである。ティファもまた、未来を見るだけではなく、未来を作るために頑張ろうと決めたシーンで、何やら感慨深いものがあるなあ。

 Bパート。

 力を望んだことで、ティファはDOMEの声を感じる。夢の中だけど、宇宙に浮かぶティファは神秘的で可愛えのう。いやそんなこと言ってる場合じゃねえ。

「私を月に連れてって下さい」

 ここはガロードに向かって言って欲しかったな「Fly me to the moon」的に。いや、全然そう言う意図なさげだけどね!

 DOMEに接触しようとするザイデル。戦略目標としてはまあ、間違ってない。でも「何故DOMEは私を受け入れようとしない」ってそらそうやろ。DOMEビットの動きは正確かつランダムかつスピード感あり。如何にも無人って感じもあってなかなか良い殺陣。

 宇宙船をいただいてDOMEへ。

 「だって俺達もともとバルチャーだもん」
 「この船の名称は?」「フリーデンです」
 むふー、なんかエリア88が読みたくなってきたぞw
 「私が居て、私が指揮をする場所だ。エリア88しかあるまい」


■第38話 私はD.O.M.E...
     かつてニュータイプと呼ばれた者


 アバンは前回のあらすじ。

 Aパートでいよいよ新連邦と宇宙革命軍の全面戦争。結局ザイデルはNT(というかコロニー出身者)優性論、ブラッドマンはNT(というかコロニー出身者)劣性論っつー相手を全否定するイデオロギーの持ち主で、それ故に一切の妥協がないとゆーのはまったくもって愚かしい。

 私は戦後左翼思想の色濃い時代の教育を受けたので基本的に平和論者、平等論者であるのだが、結局のところそれは同じ地平に立つ人間同士でしか通用しない理屈であり、世の中は相手が平和的解決を望むのを良いことに戦争をちらつかせて脅したり、相手が平等を理想とするのを良いことにことさらに差別されたと主張することで益をせしめようとする汚い連中が幾らでもいるので、平和や平等を金科玉条のように崇めるのは危険なことだと思っている。GXにおける新連邦と革命軍の愚かしいイデオロギーの対立はある意味現実の地球上で起こっているそれとまったく同じなのである。

 閑話休題。

 新連邦vs革命軍の全面対決はさすがに宇宙世紀さながらの大艦隊戦、MS戦。こういう場面でワクワクしちゃうのはオトコのコだからしかたないよね? 映像的にも派手だし、フロスト兄弟の殺陣など見所充分。

 ランスローがかつて見た未来との乖離に迷う一方、ジャミルは既にその段階をほぼ乗り越えつつある。「死んだら負けだぞ。忘れるな!」という台詞は陳腐ではあるんだけど、ジャミルの口から出たことに重みを感じる。

 「俺は死なねえぞ!」「トニヤのため?」「ば、ば、ばっかやろー!?」
 思わず突っ込んでウィッツに怒鳴られるエニルの顔がすっげえ可愛い! こんな素っ頓狂な顔するんだなあ! いやもうホント、エニル可愛くなったなあ! 大好きだ! 真っ赤になって怒鳴りつけてるウィッツももちろん可愛いけどな!

 「作戦が終わったら、か。……考えてもみなかったな」
 ジャミルの笑顔は久しぶり。サラはすっかり恋する乙女やのう。

 終戦年生まれカルテット。

 「この戦いが終わったら、君達はどうします?」「私はガロードと一緒にいます」「ちぇー。ぬけぬけと言いやがる」の後の「はいっ」がむっちゃ可愛いのう可愛いのう可愛いのう。末永くお幸せに!

 ガロードの答えは思った以上にオトナ。「色んな人に行って、色んな人に会って、そして考えたい。自分がどんな未来を求めているのか」

 「未来かぁ。あたしはどんな未来になるのかな」どんな未来になるにしても、パーラはいつでも明るくて楽しくて騒がしいんだろうな。

 「未来は、この世界に生きる人々の数だけあるのかも知れませんね」うんうん。その通りだよカリス。君もすっごくすっごく変わったよな。本当に良い子になったよ。

 「守ってあげたい。みんなの未来を」ティファ……誰かのためになることをする、って、昔の君の口からは絶対出てこなかったよな。今までたくさんの人と交流して、解り合ったからこそ今の君があるんだよな。これって素晴らしいことだよ。

 サテライトキャノンを脅しに使い、DOMEへのルートを開くDX。そこに立ちふさがるフロスト兄弟! 「あの人達から、強い憎しみを感じます! 世界を滅ぼしても、ありあまるほどの憎しみを……!」

 「世界が我々を黙殺するから、我々は世界を滅ぼすのだ!」僕は、兄弟の憎悪に割と共感する。評価されない、黙殺される、ということは本当に本当に辛いものだ。世界を滅ぼしたいと思うのも不思議じゃないとすら思う。

 でも、普通、その憎しみは維持することはできない。世間と自分との間に横たわる溝に絶望し、諦め、納得し、折り合いをつけて再出発するしかない。そう解っているから、僕は凶行に走ることもなければ悲観して自傷することもない。多分人より大分ゆっくりだけど、少しずつ少しずつ、前に進むことができていると思う。

 しかし、兄弟の場合は違う。彼等は一人ではない。自身の憎悪を完全に理解する者がいる。それが兄弟の強さであり、悲劇だったのではないだろうか。「バーテンダー」という漫画で、スランプの小説家が編集者にこんな言葉を捧げる。「たとえまったく世間の評価を得られなかったとしても。たった一人の理解者がいれば、書くことができるんだよ」 兄弟の場合はまさしくそれだったのだろう。理解者がいる故に、社会と折り合いをつける必要がなく、憎悪を維持し続け、自らを省みるチャンスを失い、世界を滅ぼすまでに憎しみを増大させてしまったのではなかろうか? 彼等がもしただ一人の挫折者だったら、これほどの強い意志を持つことはできなかったのではなかろうか?

 先ほど、兄弟の憎しみ共感する、と言ったが、では、世界を滅ぼして良いのか、と言えば、これはまったく別の問題である。たとえきれいごとと言われようと、他人の命や未来を奪ってまで我欲を満たすことが正しいかと言えば、やはり私は否だと思う。ガロード達がそうだったように、たとえ利害が一致しなかったとしても、話し合い、ぶつかり合い、互いにとって最も良い道を模索することが理想である。無論、いつでも理想通りの行動がとれるわけではないけれど、寧ろ私なんぞ人間のクズの部類に入るワケだけど、それでもやはり、理想を理想として持ち続けること、理想と現実が乖離した時、反省し、できるだけ理想に近づけようと努力することを忘れてはならないと思うのである。

 「そんな勝手な理由があるもんか!」「誰だって辛いこと、哀しいことを抱えて生きているんだ! そんな勝手な理由で、世界を滅ぼされてたまるかぁー!」とガロードが断じてくれたのは、ともすれば兄弟に共感しそうになる私や、同じように世間や世界を嫉み、内に閉じこもる人への叱咤のように思える。

 しかし、再び捕えられ(通算5度め)、今だよ兄さん(通算3度め)されるDX。割り込んだジャミルのGXが身を挺してDXをかばうシーンはスローモーションの効果もあって鳥肌が立った。ランスローの援護で何とか窮地を脱する。15年振りに再会した宿敵が、まるで、長年共に戦ってきた仲間のように瞬時に連携をとるところも素晴らしい!

 ……んだけど、このシーンはもちょっとピンチになって欲しかったかもな? トリプルソニック砲が撃たれるんだけど、僅かに逸れて左腕を失う、「馬鹿な!? 外しただと!? なんだ今の衝撃は!?」って感じで、多少GXに傷ついてもらった方が感動的だったかもなあ、とか思ってしまったw

 遂に月に辿り着いたDX。DOMEビットの動きが紳士的でステキ。ティファの呼びかけに応じ、ブラッドマン、ザイデル、フリーデンが月へ。しかし、同じく呼びかけられたフロスト兄弟はDOMEの呼びかけを拒絶する。

 DOMEで初めて直接顔を合わせるジャミルとランスロー。かつて戦い、ともに未来を垣間見、そして同じ若者達と触れあい、新たな未来を見出しつつある二人はごく自然に手を取り合う。この素晴らしい光景のすぐそばで、ノータリン二人は何度も繰り返されたイデオロギーのぶつけ合い。醜いったらもう。とはいえ、二人の言葉の中でDOMEの正体、解体され、システム化したファーストニュータイプという存在だったことが明かされる面もあったりして。

 そして、紡がれる光岡さんの神秘的な声。DOMEとナレーションの声を同じにする、という演出がどの段階で決められていたのかは解らないが、物凄く良い演出である。GXがDOMEの語る物語だった、ということについての考察は他でも散々されているのでここでは割愛。

 ついでに予告しておくと、NT=ガンダムというメタフィクションとしての考察もしないつもり。私はGXを他のガンダムシリーズと比較しつつ、各シリーズの物語(テーマやら描写やら)について論ずることはしてきたが、そんなことは置いといても、GXは物語として完成していると思っているし、僕は物凄く納得し、満足した。メタフィクションとしての視点は「そう考えても良い」と言う以上のものではないと思うのである。

 ちょっと先走ってしまいましたが、いよいよ次回で最終回です。


■最終話 月はいつもそこにある

 DOMEに触れるのを拒絶したフロスト兄弟は、ビットを破壊してMW送信施設を掌握。サテライトランチャーの発射態勢に。

 「ジャミル・ニートはこの銃爪を引いて心に傷を負い、ガロード・ランは銃爪を引こうともしなかった」訂正しておく。たくさんのことを考えた末に引かなかったのだぞ。

 一方、DOMEではファーストニュータイプの意志がその場にいる全員を包み込む。こんなときにナンですが、「どうなってんだこれ?」「俺に聞くなよ!」というやり取りの後にカリスにお願いポーズしとるパーラが可愛いったら。

 DOMEの語る「NTという幻想で繋がった世代」という言葉は、放送当時色々と物議を醸したものだ。僕自身、リアル1st世代のサークルの先輩に「あの最終回はないよなあ。NTは幻想って言われてもねえ」と言われて言葉に窮したことがある。

 ……そもそもニュータイプってなんなんだろう?

 僕にとってそれは、1stのアムロとシーブックが物語の最後に見せた希望のことだった。カミーユやジュドーは死んでいった人の力を借りて敵を倒すことはできたけれども、何か違うと思っていた。

 1stにおいて、NTは他人と感応する力+凄まじい空間認識能力+有線ビーム砲やビットを動かす念動力、のような描かれ方をしていたように思う。1stを観ていた時の僕にとって、NTは単なる超能力でしかなかった。

 ……しかし、ラスト、混戦の中でホワイトベースクルーや子供達を救うためにアムロがテレパシーで呼び掛ける。物語が始まってからずっとコミュ障で独り善がりだったアムロが、最後の最後でホワイトベースクルー達を守り、彼等の元へ帰っていくという結末に、僕は深い感動を覚えた。

 F91のラスト。ニュータイプ的な順応力を発揮してパイロットとして活躍したシーブックであるが、混戦の中で宇宙の藻屑となりかけたセシリーを見つけるために、NTの力で奇跡を起こす。

 ……NTの力は、「大切の人のために使う」とき、それは良き未来をもたらすものなのではないだろうか。だが、所詮それは結果でしかなく、NTの力を持っているからといって、拒絶し合っていれば、敵を倒すための道具にしかならなくなってしまうのではないか?

 そんな疑念を僕はもともと抱いていた僕にとって、GXで、DOMEの語るNTが生まれ、利用され、新たなる価値感となったという物語は、物凄く合点がいったのである。

 「俺はただティファを守りたいと思っただけで……。特別な力なんてないし……」

 と言うガロードがしかし、NTであるティファの見た未来をことごとく覆してきたという事実。特別な力などなくても未来は作れる、という結論は、平凡以下の人間でしかなかった僕にとって救いにも等しかった。

 そして、ずっと答えを求めて迷い続けてきたジャミルもまた、ガロードとともに未来を変えてきた。未だ答えは出ていない、と言い続けてきたジャミルだけど、それを表す言葉が無かっただけで、本当はもう答えに辿り着いていたのだろう。そうして長かったジャミルの自分探しは終わり、あの戦争と戦後を生き抜いたものとして、悲劇を引き起こした者として、本当の意味での責任と贖罪を果たす日々が始まる。

 DOMEを拒絶したフロスト兄弟は新連邦、革命軍の双方を殲滅しようとしていたが、そこへザイデルとブラッドマンがDOMEから帰還。

 フロスト兄弟の行動で既に再開されていた戦闘に、疑心暗鬼になるザイデルとブラッドマン。君らDOMEで何を聞いていたんだ? そもそも大人しくDOMEの前から引き下がれたことが不思議かもだが。

 フロスト兄弟に真っ先に殺されて御臨終のノータリン二人。再度殲滅行動に移る前にガロードのDXが阻止に向かう! 通算6度めのキャッチ&4度めの今だよ兄さんもジャミル達の援護で阻止される。

 ぶっちゃけ、ザイデルとブラッドマンは生きていても和解の妨げにしかならないので、フロスト兄弟が消してくれたのはすごいGJなんですよねー。ジャミルとランスローに、ザイデルとブラッドマンを排除できるのか、というと割と疑問で、二人とも政治的には正攻法でしか攻められない気がする。まあ、最終的には排除できたと信じたいけどね。ただまあ、汚物の排除は果断をもって良し、という場合もあるねってコトで。

 てか、和解に持って行こうとするか、混乱に乗じて全てを破壊するかもしくは奪おう、っていう到達点に違いはあるけど、旧態依然とした世界を変革しようとした、という点ではジャミル達もフロスト兄弟も変わらんのよね。

 ラストシューティング。マニュアルモードでMWを受けるDX。兄さんじゃないけど何故掌握されていたサテライトシステムをガロードが使えたのかは明らかにされていないけど、僕としてはDOMEさんの最期のお仕事だったのではないか、と思う。いつも冷静な兄さんが初めて焦りを見せ、逆にオルバの方が慌てて戸惑うという珍しい構図だった。

 サテライトキャノンの撃ち合いでDXとヴァサーゴ&アシュタロンは光の中に消えていった――


 ――そして半年後。ガロード。ティファ。フリーデンクルーのそれぞれの未来。色々語りたい気もするのだけど、もう既に全部語りきっているので、敢えて語らない。彼らはきっと幸せな未来を築いていくはずだ。躓いたり悩んだりすることがあっても。一歩ずつ、着実に。

 赤い二連星、お前等生きてたんかよ!って思いっきり声に出してツッコミを入れるのを忘れずに。

 ラストシーン。ガロード達を遠巻きに見つめる車イスのシャギアとそれを押すオルバの姿。兄弟のその後がどうだったのかも諸説あると思うが、僕は彼等とも解り合えたと思いたい。

 ――ガンダムXはすれ違った末の和解の物語なのだから。

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