潮感ex-ガンダムX全話感想21~30話

■第21話 死んだ女房の口癖だ

 アバン。新連邦のメンバーは如何にも老害って感じのヒトばっか。DXの名前が初めて読み上げられ、OPアタマのシルエットもDXに変更。うーん、悪っぽいデザインだぜ!

 Aパート。ティファは少しずつ変わりつつある。甲板でガロードと話すティファの表情は、かつて心を閉ざしていた頃の無機質な表情でも、強張った表情でもない。自然な笑顔が凄く可愛い。

 新連邦の面々のおっしゃることはごもっとも……って感じでアイムザットさん立場なし。

 ゾンダーエプタ編のキーパーソン、カトック=アルザミール登場。ちょっと漁師の演技はわざとらしいw 魚風呂に入って万全の潜入工作だったが、残念、その意図は筒抜けだったのだあ。

 敵の目的を感知してトニヤとサラに労われるティファが可愛い可愛い可愛い! どんどんクルーとの距離が縮まっていて、凄く良い関係ができている。序盤のディスコミュニケーションを丁寧に丁寧に描いてきたことが、今の関係の良好さを際立たせてるよね。

 戦闘開始直後は組織だった敵の動きに翻弄されるガロードだが、すぐに状況に対応して次々に新型のバリエントを撃ち落としていく。この辺りの殺陣はなかなか格好良かったぞ!

 アイムザットを切るか否かの悪だくみをしていたフロスト兄弟。今回はアシュタロンが新装備のビームボウガンを持っての出撃である。なんだかんだで新兵器とか出てくるとなんか燃えるよね。ってヴァサーゴもなんかハンドバルカン的なもん持ってたわ。味方撃つときにしか使わなかったけどな! 相変わらず誤射(故意)率の高い兄弟である。

 一方、カトックは船に残って万事休す。手榴弾で自爆しようとするが、そこへティファがやってきて……。「何故俺を死なせない?」「あなたは優しい人だから……」

 打ち解けて来てはいるものの、ティファの言葉はまだ少ないな。ティファがカトックを救った理由は、ただ優しいから、というだけではないのではないかな。彼が自分達の未来に標をたてる導き手であることを予知していた、ということなんじゃないかなあ。などと思ったり思ったり。

 ちなみに、タイトルコールは2回連続でカトック。


■22話 15年目の亡霊

 アバンでエニルが偶然DXを発見するというシーンは顔見せとしてもうまい演出だなあ。エニルについてもこのゾンダーエプタ編で大きな心境の変化があるわけだし。

 ジャミルとカトック。「あの戦争でトラウマ背負ったのは、NTだけじゃないのと違うか?」これはまさにその通り……。「情報も必要だが、解り合うことも大切にしたいのだ……」 NTの保護は、名目や道義的な目的以上にジャミル自身のトラウマを克服する為のステップなのだよなあ。

 ……というのをきちんと次のシーンで語っていた。「あんた、意外に弱い男なんだな」「気づいてくれる人が少なくてな」「死んだ女房が言っていた。他人の前で弱みを見せられる男は、本当は強い男だってな」このくだり凄くいいよね。ジャミルはいつも堂々としていて戦えば強い。だけど、一貫してジャミルは重い過去へのトラウマから逃れようと足掻いている。そういう弱さがあるから、ジャミルって格好良いと思うんだな。

 すっげえ話逸れるんだけど、昔共作?みたいな感じで書いてた小説の主人公達が「完成した」キャラクターとして描かれていたんだよね。トラブルも敵も力と知恵で捩じ伏せて、自身の根幹が一切ブレることがない、って感じの。物語の主人公って、それじゃあダメだと思うんだよね。色々な出来事で心を動かされたり、迷ったりしながら、それでも乗り越えていく、というところが絶対に必要だと思うの。でもって、主人公達の完璧さを引き立たせるためにわざと敵が都合良く迂闊でノータリンに描かれたりしてて。結局、そういうキャラクターを書かされることが苦痛で、私は小説の完成を投げちゃった。昔のことである。

 閑話休題。

 エニルを追うフロスト兄弟。アシュタロンからブースターがパージされるのとかが芸コマだよね。

 ちょうど良くGXとエアマスターが登場するが、兄弟はエニルを撃墜して離脱。とどめさす→邪魔が入るのパターンが多いと言われるGXだが、まあ、否定はできないかな……。でもその時々で状況全然違うし、バンク使ってるワケでもないので、勘弁してあげて。

 フリーデンに救われたエニル。トニヤとの再会で表情は柔らかくてなんとなく嬉しい。

 ガロードがウィッツとロアビィに対バリエントのシミュレーションをぶつシーンも良いよね。当初は馬鹿にしていたキッドが「プロになってきたんだろ、アイツも」と認めるのが象徴的。キッドはテクスに並んでクルーのプロ精神を象徴するキャラクターであるからして。

 そしていよいよDXが登場。サテライトキャノンの脅しに屈し、降伏するジャミル。ハッタリにしても一発撃って欲しかったな、てのはあるかなあ。ま、でも後にガロードがまさにそういう使い方してるし、ここはまだ未完成だからってことで。

 カトックがNTを認めない理由は、まさにジャミルのトラウマそのもの。コロニーに住んでいた妻子を殺したジャミルに同じ苦しみを味あわせる。それが今のカトックの目的。

 ティファが描いた、幸せそうに微笑むかつての妻子の絵は、カトックにどうとらえられたのか……?


■第23話 私の夢は現実です

 新連邦の捕虜になったジャミル達。

 不安でガロードの手を握るティファ。絶対的な危機なんだけど、さりげなく二人の仲を進展させちゃう演出が心憎い。安心させようと励ますガロードだが、そんなガロードの想い虚しく、ティファとは離れ離れに。

 怒りをカトックにぶつけるものの、カトックの鉄拳には敵うべくもない。ボコられて、首を吊られて、ボロボロにされても悪態をつくことを、睨みつけるのをやめない・。ガロードが負けん気を出すと大抵ロクな目に合わないんだけど、それでも言わずにいられないところがガロードの魅力。でも今はその無力感が凄く切ない。

 アイムザットさんは中間管理職……っと。

 前回の最後、ジャミルが弱音吐いたなあ、と思ったらそれはシークレットコードだったのだと。凝ってるな。

 カトックの態度が、ティファに対してのそれとガロードに対してのそれで大きく違っているのは、彼自身も迷いがあるからなのかもしれん。それはともかく、カトックに変てこなたとえ話されたり、コーヒー呑まれたりしてきょとんとするティファは可愛いなあ。こんなときだけど。

 ガロードのサバイバリティが役立つ日がキター。何気にトニヤにモーションかけてるウィッツが可愛い。キッドはさすがにシビアキャラ。このシーン、ガロードが間に立って調停役してるのがすげー成長したなーって感じするんだよね。

 エニルに交渉を持ちかけられたアイムザットさんてば悪役顔ー。

 ティファに自らの心情を吐露するカトック。カトックもまた、前の戦争のトラウマを象徴するキャラクターである。

 脱出作戦決行! バレバレなんですけどねーってこのパターン3回目やん。GXは割とこのパターン多いのよ。一方、バラしたエニルも裏切られて銃を突きつけられてたり。銃を持ってるときのガロードはなんかクールだよね。カリスのときといい今回といい。

 「お前さん、未来を変える気、あるか?」「未来なんか見えてたまるか。NTの鼻を明かしてやりたい。それだけだ」

 ……うん。カトック絡みで一番好きなシーンはここだ。ジャミルが過去の自分を克服しようとしているように、カトックが過去の戦争と、NTへの想いを乗り越えるために選択した手段。それは、確実にガロードに受け継がれることになる。カトックについてはもう少し書きたいことがあるが、それは次回にとっておこう。

 ガロード達の張り付いたコンテナを切り離して沈めるアイムザットさん。なんだ、案外デキる人じゃないですかー。それでもなんとか生き残り、虎の子のダブルエックスを奪うぞ、と心に決めたところで次回へコンテニュー。


■第24話 ダブルエックス、起動!

 アバン。「新型はあの船だ!」「そうと決まれば……行くぜ!」って泳いでいくのかよ!? 船には追いつけねえだろ!? とか思ってしまうのは野暮ってものなのかしら?

 「いざとなったら女は強ぇーや。……子供だってね!」うん、やっぱキッドの台詞と演技は素晴らしいや。

 裏切って裏切られたエニル。テクスへの罪滅ぼしにまさかのストリップ……嘘ですごめんなさい。でも何気にGXはお色気シーンとかそっち系の誤解を敢えて誘ってるシーンあるよね? 蹴り技だけで兵士二人をノしちゃうエニルさんさすがです。

 ハイキックで見張りを倒すジャミル。……は良いとして、あんだけ撃って当たらんってどんだけヘボなのこの見張り。

 「投げるのが、早いぜ!」手榴弾を蹴り返す。暗視スコープを使う狙撃兵に対し、シャッターが開いた瞬間の光量変化に併せて飛び込むなど、白兵戦描写もなかなか凝ってる。

 弾丸切れガロックをジャミルが救助。煙幕の中とはいえ、結構な数の敵を白兵戦でバシバシ落としていく。案外肉体派である。そう言えば、ジャミルってMS戦でも基本無敵なんだけど、実は直接撃墜したりSATUGAIしたりって描写は少ない。戦争によるトラウマで人を殺すことを躊躇しているのかも? まあ、これは勝手な思い込み。

 再会したガロード達を身を挺してかばうカトック・スローモーションで次々に体に穴が空いていく。生々しい……。

 そしてとうとう起動したDX。重厚な外観はどちらかというとボス敵っぽい雰囲気で、スマートなGXとは対照的。続くバリエント部隊との交戦は、射撃武器を持つ相手に対してパンチとビームソードのみで挑むという無茶な戦い。しかし、圧倒的な運動性で次々に撃破! 後期OPにも使われて、評価も高い戦闘シーンだけあってスピード感溢れる良い殺陣であった。

 新連邦の援軍に、サテライトキャノンを起動するガロード。しかし、かつての戦争の光景とカトックの言葉がフラッシュバックし、直接敵に砲を向けることはせず、島を吹き飛ばすことで力を誇示。敵を撤退させる。

 この間、フロスト兄弟はアイムザットを亡きものにして「新たなステージ」へと飛躍する。ここで遂に「カテゴリーF」という単語が出てくる。常に淡々としているシャギアが憎々しげに顔を歪めるのが印象的。

 ブラッドマンの新連邦政府樹立宣言をバックにカトックを水葬するフリーデンクルー達。ブラッドマンの口から出る「過ちは繰り返さない」の言葉があまりにも空々しい。

 ……さて、GXの名脇役の一人、カトック=アルザミールである。過去から現在に生きるガロードに、未来を託して消えていくカトックは、GXを語る上で欠かすことができない。

 カトックは、過去の戦争の当事者世代の象徴である。ジャミルが当時子供だったのに対し、カトックは当時から大人で、言わばジャミル達に銃爪を引かせた大人の世代である。ジャミルがNTだったことも、多くの人が死んだことも経過と結果の一要素でしかなく、「戦争を止められなかった世代」が等しく罪を背負わねばならない。

 だが、カトックは一兵士であるが故にその責任から目をそむけ、直接の引金を引いたジャミルを恨むことで生きてきた。一方で、それが欺瞞であることは自分でもとうの昔に気づいていた。

 ティファに出会ったことで、カトックは自らの欺瞞を認め、ガロードの言葉を深く受け止めて「未来を変える」ために動く。

 カトックにとってそれは、かつて「未来を変える」ことが、できなかったことに対する代償行為だったのかも知れない。「未来なんか見えてたまるか」という台詞は凄く象徴的。同時に、それはNTが完璧な存在などではない、という最終的なテーマへと帰結していく。その意味でもやはりカトックの存在は大きい。

 だけど、私個人としては、カトックというキャラクターがそこまで好きではない。何故か?

 ……それは、死んでしまったから。

 ずっと死に場所を探していて、最後にガロードやティファと出会い、彼等を守るため、未来を守るために死んだ。「これなら悪くねえな……」とカトックは言ったけれど、いいや、悪いよ! 死んじゃ駄目だよ! カリスが絶望の底にいて猶生きることを選択したように、過去の呪縛から逃れたカトックにも生きていて欲しかった! 未来を見守るために、見届けるために、生き抜いて欲しかったよ! それが、絶望の中から希望を見出し、前を向いて歩いていくというGXという物語に相応しいカトックの未来だったと思うんだよ!

 ……いや、まあ、もちろん、作劇上カトックの死は必要だったと思うし、軽々しく描かれたと言うつもりは全然無い。そもそもGXの主要キャラクター、特にガロードと心を通わせたキャラクターで死亡したのはカトックくらい(強いて言えばリー将軍?)だけだし、非常に重要な役回りだと思うんだけど。

 そう理解していてもなお、カトックには、生き残ってガロード達がつくる未来を見守っていて欲しかったという想いが残ってしまうのである。

 ……好きではないと言ったものの、結局キャラクターが、ではなく、その退場の仕方につらみを感じてるだけだよな、これ。結局思い入れの深さが迸ってしまってる感じのゾンダーエプタ編でした。


■第25話 君達は希望の星だ

 アバン。地球圏が大きく変わりつつある。今までフリーダムに暮らしてきたフリーデンも、新連邦の樹立による世界の変化に否応なく巻き込まれていく。ガロードはカトックの最期の言葉がまだ胸に重くのしかかっている。フリーデンクルーとガロードにとっては、己の立場を見直さねばならないエスタルド編の開幕である。

 「悪いことするんだね」「……そうだ。悪いことだ」

 ひでぇw やっぱフロスト兄弟好きだなあ。

 フロスト兄弟については、フォートセバーン編の時点で既にGX&ガロードに対し、個人レベルでの戦闘能力においては遅れをとっており、ローレライの海編からはより陰謀家として、新連邦という組織の中での地盤を固めることに注力しているように見える。新連邦との敵対関係が明らかになるゾンダーエプタ編では4話中、正面からGX&ガロードと対峙したのはサテライトキャノンでハッタリをきかせる直前の21話だけ。戦闘能力では主人公に劣るにも関わらず、政治的、陰謀的に主人公達を追いこんでいく、というのは今までのガンダムシリーズに無かったライバルキャラの造形だったのではないだろうか。……てかその後もいないかな?

 エスタルド編のキーパーソン、ウィリス、ルクス、リー将軍。あとハト派の親父(クレジットではグラントってなってたけど、劇中で名前呼ばれてない奴はおっさんで充分じゃい)が登場してフリーデンに協力を要請。

 ウィリスのことを思ってはいるのだろうが、いちいち言動にトゲがある頑固者のリー将軍。何事も穏便かつ弱腰で進めようとするハト派の親父。如何にも腹に一物抱えてそうなルクス。そして状況と立場に振りまわされるウィリス。

 彼等は新連邦という巨大な歴史のうねりに対し、どう対応するかという諸国が置かれた立場を代表するキャラクターで、誰が正しくて誰が間違っているというものでもない。

 空襲に巻き込まれ、エスタルドの要請を受けることを決意するガロード。リー将軍の言ではないが、フリーデン、そしてガロードには力がある。それをどう使うべきなのかは、彼等自身が考えなければならない。それは、本作の重要なテーマの一つである「NT」という特別な「力」についても同じなのではなかろうか。

 カトックの言葉の影響もあり、戦わねばならない、と意志を固めるガロード。ガロードはこのエスタルド編で大いに迷い、ティファはそんなガロードの変化にどう関わっていくのか思い悩む。この点もエスタルド編での重要な見所。

 ロアビィは序盤から「ポリシーもって戦うのは嫌」という態度を貫いており、今回はそれが色濃く出た感。一方のウィッツは家族を守る、というのが根源的な活動理由のため、民間に被害の出るやり方をする新連邦への戦意は高い。この辺りのポリシーの違いも、これまでしっかりキャラクターを描いてきたお陰で納得できる。エアマスターvsガディールは、同じカットを2回使った点w以外は、スピード感もあってなかなか良い殺陣でした。エアマスターさんぼっこぼこ。

 フロスト兄弟は今回、遂に二人がかりでガロードに後れをとってしまう。アシュタロンがハサミで捕まえてヴァサーゴがとどめ、という戦法はパターンではあるが、今回はDXのパワーでハサミを引きちぎって脱出、と最早力の差は明らかである。それでもめげずにあの手この手で迫って来るところが兄弟の良いところ。

 しかしまあ、前回、今回と戦略的にツインサテライトキャノンを使ったワケであるが、ぶっちゃけ両方とも人的被害はそーとーなものだよね? ゾンダーエプタ編だって撤退は完了したとかゆってたけど、フリーデンメンバーを拘束したり反撃したりしてた奴はいることだし。今回は数百人単位で吹き飛ばしたことだろう。もちろん、やらなきゃそれ以上の民間人が犠牲になったのだから、やむなしってところもあるわけだけど。カリスのときと言い、今回と言い、ガロードは思い、悩みはするけれど、必要と思えばやっちゃうのである。

 直接関わりのない人の生き死にをあまりウェッティに描いてないんだよなー、ガンダムXって。こういう言い方はアレだが、自分と関わりない人の死なんて、そこまで重いものじゃあなかろう、と思う。特にAWみたいに殺伐とした世界じゃ。世界のどこかで今日も何人もの子供が飢えに苦しんでいる、と頭で解り、心で同情しても、そのために自らの身命生活を投げ出すことができるかと言ったら、やっぱできない。今の安全を捨ててまでやらねば、と思い込むことができるのはやっぱり身近な人、知っている人が苦労しているときなんじゃないかなあ。

 まあ、それはともかく、ぶっちゃけ、DXが存在するってだけでフリーデンは否応なく新連邦に狙われる立場になっちゃってるから、エスタルドでなくてもいずれは反連邦の組織と共闘することになったのだろうなあ。

 初見のときはちょっと中ダレしたなあ、と思ったエスタルド編なのだが、見直してみると自然な流れで、必要な構成だったのだと思える。GXは主要なエピソードは2~5話使って長いので、インパクトが薄く、明朗さにもかけるきらいがある。毎週観ていた人が退屈に思ったのもやむなし、という部分なのだが、こうして腰を落ち着けてじっくり連続で観てみると全てのエピソードがきちんと繋がり、必然性を持っていてどんどん面白くなる。スルメのよーな構成なのである。

 さりげなくエニルのエピソードも挟みつつ、次回へコンティニュー。ウィッツ氏、唯一のサブタイなのにコール無し演出。合掌。


■第26話 何も喋るな

 今回も冒頭から悪いことしちゃってるフロスト兄弟。トンデモMSコルレルとデマーさんが顔見せ。

 Aパート始まって喧々諤々のエスタルド首脳陣。つっても表立った意見は二つだけなんだけど。双方思惑があって、絶対に正しいワケでも絶対に間違っているワケでもない、というのが今回も強調される。

 ジャミルの「未来はあるのか?」という問いは深刻。

 リー将軍とウィッツはウマが合ってる。ウィリスとガロードは立場は違うがそれぞれに対し共感する部分がある。ガロードは立場的にはフリーデンで一番下っ端、ティファには完全に尻に敷かれているwので、案外腹を割って話せる対等な立場の友人っていなかった気がする。なので、ウィリスとの交流は何だか心が温まる。一方で、そんなガロードとなんとなく距離が空いてしまって寂しがるティファ。可哀そうなんだけどやっぱり可愛いな。

 それにしても、序盤あれだけガロードとティファに可愛い可愛いを連発していた僕であるが、このあたりになると何だか可愛いって言葉だけじゃ物足りなくなってきている。年齢的にもテクス先生の立ち位置で、二人を見守って、応援したい、という気持ちが先に立って、愛でたいっていうのとはどこか違った感じになっている。ボーイ・ミーツ・ガールの作品は数あれど、ガロードとティファほど、お互いに成長していく物語というのはなかなか無いよね。

 そんなティファに声をかけるトニヤ。「ティファ、あたしとおんなじオーラ出してるもん。寂しいよーって」思えば「不愉快だわ」のときから、トニヤは一貫してティファの理解者だったな。……ところで、この台詞、「無責任艦長タイラー」でキムが同じようなこと言ってたな。あれも川崎脚本で三石キャラだよな。(※ググッたら該当回の脚本家は別の人だった)

 「自由を勝ち取るために戦うのは悪い事じゃねえ」

 ウィッツが連邦に敵意を抱き、リー将軍に肩入れする一方で、ロアビィは冷めて離脱。元々反骨心旺盛なウィッツはともかく、ロアビィが享楽主義的性格と状況の乖離をどうケリをつけていくのか、というのも興味深い点。

 新連邦の作戦が変化していく過程も興味深い、オペレーション・サクリファイスは非常に理に適った作戦でかなりえげつない。GXで描かれる戦争は、前線で戦う兵隊の物語ではなく、国家戦略としての側面が強い。ガロード達には戦況を変える力があるが、あくまで一兵士、一兵器としての力でしかなく、国家レベル、組織レベルで追い詰める新連邦及びフロスト兄弟の脅威を僕は凄く強く感じるのだが、世間一般ではGXは戦争しないからツマラン、ということになっちょったりする。ある意味、一番リアルに戦争を描いているのはGXだと思うんだがなあ。結果としての悲惨さも含めて。

 まあ、こういう点も含めて、Xはこれまでのガンダムシリーズのキーとなるポイントをことごとく外している。主人公がOTだったり、人工NTが死ななかったり、大人が子供をきちんと導いたり。Xはガンダムじゃなければ面白かったとか言う意見を目にすることもあるが、僕はこの意見には反対で、Xはガンダムシリーズだから良かったと思う。Xは、これまでのガンダムシリーズが描いてきたストーリーやブランドを大いにオマージュしており、これまでのガンダムで描かれなかったこと、触れなかったことに敢えて挑戦し、きちんと描き切っている。僕は狂信的GX信者であるが、それを抜きにしても、GXは35年に渡って続くガンダムシリーズが開拓していなかった分野に取り組んだ、「意欲的なガンダム」だったと思うのである。

 ノーザンベル救援の要請を受けるフリーデンだが、船の修理は終わっていない。そんな中、ウィッツは自らの意志で救援に向かうことを決める。ガロードは何も言わないが、心は決まっているのだろう。何かを言いかけてやめるティファの表情が切ない。

 エアマスターバーストの初陣。ガディールをバリバリ落としつつアシュタロンとも対等にやりあい、オルバに「長い間足止めはできないよ」と言わしめる程。一方、トリッキーな動きのコルレルに翻弄されるDX。コルレルvsDXの殺陣はかなり気合が入っていてワクワクする。悔しいが、このレベルの殺陣を毎回やれていたら、という思いは拭えないなあ。

 「当たらなければどうということはない!」を地で行くコルレルだが、ビームライフルの誘爆で吹っ飛ばされたところをバルカンの斉射でハチの巣に。超軽量級故の弱点という感じが出ていて、良い殺陣でした! 普通に狂ってるデマーさんのキャラづけも良かったとよ。

 しかし、DXとAMBの善戦も虚しく、連邦の戦略目標であるノーザンベル首都の陥落は成り、ガロードとウィッツは無力感に臍を噛む。……このシーン、何気に首脳と思われる人がドートレスの足元に転がっていて戦慄する。

 一方その頃、フリーデンを抜けだしたロアビィは一人の美女と出会っていた……色々と波瀾を含みつつ次回へー。


■第27話 おさらばで御座います

 アバン。前回であった美女=ユリナのうちに転がりこんでるロアビィ。エプロン姿がやけに似合う。ロアビィってホント、女のコに関してはマメ。

 OPがResolusionに。バリエント戦は24話の使い回しだが、OPが動きまくるとやっぱり良いね。アバンがあるからあんまり気にならなかったとはいえ、やっぱ単体で観ると初期OPは動き無さ過ぎw

 ユリナたんは銃を隠し持ってたり、ロアビィに新連邦への敵意を語ったり、あからさまにレジスタンス(視聴者的に)。

 ノーザンベルが陥落し、エスタルド-ガスタール間の対立が再燃し始めるというアチャーな状況。エスタルド編は戦闘では勝利しながら、状況は悪化の一途を辿るというストレスMAXな展開のため、初見やじっくり観れない人にとっては面白くないエピソード。ただ、序盤のディスコミュニケーションとすれ違いという、やはりストレスの溜まるエピソードをしっかり描いたから今のフリーデンクルーの結束があるように、後の展開のためにはどうしても必要なプロセスなのである。我慢してじっくり観てもらいたいものだ。

 トニヤとティファが並んで食堂にやってくる。前回の件もあって、この二人の距離が縮まっているのも何だか嬉しい。ティファがガロードだけじゃなく、他の人にもきちんと心を開いているんだなあ、成長してるんだなあ、って思える。

 サラとトニヤのシーン。サラも寂しさを感じている一人。古いって言われるかもだけど、戦争で割を食うのはやっぱり女だと僕は思うのね。

 セインズアイランドに帰ったエニル。マイルズの死は、個人的に物凄く衝撃を受けた。悲惨な処刑シーンを流されるのではなく、淡々と語られる程度の事実として。たった一話、しかもエニルに袖にされる損で間抜けな役回りの普通の人。

 でも、その普通の人と、その生活や幸せを踏みにじるのが戦争なんだよね。誰もが戦う力を持っているワケじゃない。自分の幸せのために、ごく当たり前の生活を送っている人の方が世界の中には多いはず。そんな普通の人の普通の幸せが壊されるから、戦争なんざしちゃならん、と僕は思うワケであり、逆に、それを守るためには戦わねばならん、とも思うワケである。

 復讐に燃えるエニルの表情は憎悪に歪んでいたけれど、序盤の狂気に満ちたそれでは無かったように思う。トニヤとの友誼、フリーデンでの生活を経たことがエニルの心に変化をもたらしたのだろう。かつては理解しがたかった彼女の憎悪と怒りに、今は深く共感することができる。

 前回の戦闘疲れで寝こけているガロード。その傍らに立って「あなたが遠くにいる気がします」と独白するティファ。寂しげな瞳は、これまでの彼女には考えられないような憂いを帯びている。脱ぎ散らかしたままの服を畳んでたりして、甲斐甲斐しいよなあああああ。切ないよおおおおお。

 トンデモMS第二弾。ブリトヴァ登場。やられ役の新連邦兵士の描写がやけに細かいw 中身のドゥエートさんが二重人格であることを示す台詞をオサレに吐いてるフロスト兄弟はやっぱり変人である。

 作戦通り、和平工作でガスタールが連邦の傘下に入り、エスタルドは完全に孤立。無条件降伏と玉砕の二者択一を迫られてしまう。ウィリスには未だ決断を下すことができず、側近のルクスが強権を発動して無条件降伏を決定。しかし、決断に納得できないリー将軍は少数の賛同者を引き連れて連邦-ガスタール連合軍に向かって出撃してしまう。

 将軍を連れ戻そうと出撃するガロードとウィッツだが、そこへブリトヴァが登場。足止めを食らってしまう。

 リー将軍は、軍部の暴走である旨敵にも伝えた上で、特攻をしかける。この行為が是か非かは簡単に結論できない。どうせ降伏したら軍部の責任者は吊られるだろうから、誇り高く戦って死にたかったという心情も解るし、ルクスが言ったように敵に攻撃の口実を与える迷惑行為であるのも確かである。事前通告していたとしても、難癖つけられる可能性はあるし。一方で、一矢も報いないまま降伏すれば、占領後の立場が弱くなるとも考えられるし、逆に恨みを買ってより強圧にさらされる可能性もある。まさに進退窮まれり、と言ったところで、最終的な是非は全てが終わり、歴史となってから検証することしかできそうにない。

 ブリトヴァとの戦いも前回のコルレル戦に引き続きかなり動きがあって良い殺陣。敵の武器がモノフィラメントワイヤーカッターだと見抜き、エアマスターを囮にしてその先端部分を射撃するという作戦に出るガロード。このシーンのせいでエアマスターさんはエサマスターの渾名を不動のものに……ってちょっと待て! ムチの先端って音速超えるんやで? それを狙い撃つとかマジキチだぞ!? 後に30万kmの狙撃をしちゃうガロードだけど、そのキチガイじみた射撃精度の片鱗をここでも見せているのネ。二重人格のドゥエートはテンプレと言えばテンプレだけど良いキチガイっぷりでした。

 なんとかブリトヴァを撃破したものの、救出には間に合わない。リー将軍の死に涙するガロード。なんともやるせない話の続くエスタルド編。ルクスの裏工作、ロアビィとユリナのエピソードを引きに使いつつ次回にて完結。

 EDが銀色Horizonに変更。この歌も抒情感たっぷりでいいよネ。HumanTouchが神過ぎるんだけど。


■第28話 撃つしかないのか!

 アバン。降伏を受諾することにしたエスタルドだが、フリーデン一行の脱出する時間は確保してくれている。ウィリスはお別れの会食を提案する。

 「他にやらねばならぬことが数多くございます。……ですが、ご命令ならば、意義を唱えるものはございません」と言ってからの「命令という言葉は、使うべきところでお使いなされませ」ルクスさん、自分で命令って言葉を引き出しといてひでえwww

 Aパート。まだユリナんちにいるロアビィ。でも、ベッドの下の銃はきっちり見つけていて「どいつもこいつも」。ユリナがロアビィがフリーデンのパイロットだから近づいたという描写もあって、やはりエスタルド編の人物描写は一筋縄ではない。

 最後の晩餐で、ウィリスとガロードは再び語り合う機会を得る。それぞれ、別の形で無力感に苛まされている二人である。そんな二人の後ろ姿を見つめるティファの表情は硬い。

 トンデモMS第3弾のガブルと死にたがりのミルラさん登場。フロスト兄弟の台詞じゃないが3人目も変てこな奴である。

 力づくでロアビィをレジスタンスに引き込もうとする連中にユリナがきった啖呵は立派。そう、主義主張はどうあれ、「思い通りにならなければ力づく」という態度が視聴者として新連邦を受け容れられない理由。ぶっちゃけ、新連邦が互いに協力して戦後復興を成し遂げましょう的な相互協力的な組織であれば、小国家群も新連邦に与しない理由がない。新連邦は建前は飾っているかもしれないが、融和のプロセスなしに支配下に組み込もうとしているから反発を招く。で、それはやっぱり、個人レベルのすれ違いと対立から和解と相互理解を深めてきたガロード、ティファ、フリーデン、カリス、エニルらのこれまでのエピソードを大切に思う我々にとっては、やはり受け容れることのできない態度なのである。

 と、視聴者の気持ちを代弁してくれたユリナたん。次のシーンで狙撃されてしまう急展開。そういえばユリナの声はシリーズ随一の狂いっぷりを見せたカテジナさんじゃあないですか。キャラで印象全然変わるなあ。

 ハト派のおっちゃんの策謀で、国外脱出を図るウィリス。これもまた歴史の中では幾度も繰り返されてきた行為。身を隠して再起を図るも、生き延びて血統を残すのも、歴史を繋いでいくための選択肢の一つで、リー将軍の行為と同じく、その場で是非を問うことのできる行為ではない。

 迷うウィリスだが、そこへミルラさんとガブルが登場! 超重装甲のガブルにGXとエアマスターの武装では歯が立たない!

 一方のロアビィ。ロアビィを利用しようとして、でも徹しきれなかったユリナ。さっきは強引に仲間に引き入れようとしたリーダーのテッサも、自らを犠牲にして活路を開く。ユリナは勿論だが、テッサの心情もなかなか深いものがある。進退が窮まったというのもあるが、自分達の戦いとは無関係なロアビィを、命をかけて逃がそうというのは潔いと言うべきなのだろうか。人間ってのは、進退窮まったときにかっこつけられるかどうかで価値が決まる、みたいな台詞をどっかで聞いたことがあるようなないような。ぶっちゃけユリナんちが狙われたのお前らのせいだけどな。最期は立派だったよ。南無……。

 久々のジャミル出撃も、ビームの通じないガブル相手にはあまり相手になってない感じ。良く考えると、フリーデンのメンツってレオパルド以外全然実弾積んでねーよな。GXとDXのバルカンは実弾? この世界ビームマシンガンみたいのもあるし、区別が難しい。ともあれ、帰還したロアビィの気迫のゼロ距離一斉射撃でバリア発生装置?が破損。辛くも勝利を収める。ガブルに掴まれたレオパルドの両腕が千切れたりとか、改装の前振りとはいえ、やられ描写が生々しくて迫力のある良い殺陣でした。エスタルド編は戦況は不利になる一方なのに殺陣自体は派手なんだよなあ。まったく一筋縄ではいかないよ……。

 しかし、猶もウィリスを捕縛せんとするガスタール軍が迫り、危機は続く。サテライトキャノンで一掃することは可能だが……ウィリスが戦争責任を押しつけられるのも覚悟の投降を決断する。ウィリスを案じるグラントを退け、「これは命令だ!」と告げるウィリスの姿は立派である。彼もまた、この混迷の中で確かに成長していたキャラクターである。

 だが、エスタルド編の本当のクライマックスはその次に控えている。

 今まで嫌な側近として描かれていたルクスが、自らをエスタルドを壟断していた悪臣とし、全ての汚名をかぶってウィリスの身代わりになるための政治工作をしていたのである。

 ひとことで自己犠牲と言っても、やはりそこには「良く見られたい」「立派な人であると思われたい」という本能的な顕示欲が介在しないはずはないと思う。無論、それで自己犠牲の精神が穢されるわけではまったくないのだが、それだけに、自らを貶めてまで他者を救うということは非常に抵抗がある。想像してみて欲しい。誰かを助けたのに誰も褒めてくれず、寧ろ皆に非難される。こんな理不尽があるだろうか? それでもウィリスの、ひいてはエスタルドの未来の礎になったルクスの覚悟は、凄絶と言って良い。

 ルクスというキャラクターを一貫して「厭な奴」として描いてきた末のこの結末である。我々はまんまと制作者の思惑通りに踊らされていたというワケだ。

 GXの人物描写は本当に緻密だ。登場するほぼすべてのキャラクターの心情、性格にまったく破綻がない。本当に見直すほどに新たな発見があるので驚きである。

 ともあれ、鬱屈した展開の続いたエスタルド編も終了し、次回からは放送の短縮もあって怒涛の展開が待つNT研、そして宇宙編へコンティニュー。


■第29話 私を見て

 アバンでエスタルド編のあらすじを流した後、Aパート。ほわんほわんしててあからさまに夢ですが、この夢の中のティファの表情が物凄くくるくる変わって可愛いんだなあ。走ったり、背中を抱きしめたり、ティファも欲求不満(変な意味じゃないぞ!)を抱える一人の少女なのだ、と改めて思える良シーン。

 ずっと心を閉ざして、言葉も少なくて、でも、サラとのやりとりや、白イルカとのやりとりを通して少しずつ少しずつ心を開いてきたティファ。番組後半となったここへきて、遂にガロードを想う気持ちが行動にも表れるようになってきた。

 ガロードとティファの関係はとっても健全である。物語の中で二人がすれ違う場面もあるけれど、それはあくまで距離的な問題だったり、状況的な問題だったりして、決して互いに蔑ろにしているワケではないところが良いと思うの。

 ウィッツとロアビィはエスタルド編で少し心境の変化が。ロアビィについては、前回の一件で、彼が一番大事にする「個人の自由」を力で抑えつける連邦に対し、戦う理由ができたのではなかろうか。それはユリナの死を通して結実した思いかも知れないが、本質的にはそういうことなんじゃなかろうか、と。

 アベル=バウアー登場。彼個人のキャラづけはそこまで個性的でもないが、彼がセインズアイランド戦線に参加していたことから次のエニルの連邦拠点襲撃シーンに繋がるのは巧いと思った。これからも細切れながらエニルのエピソードはきちんと描かれているので注意したい。

 テクス先生がジャミルにティファの状態を説明してくれるのを蛇足ととるか明朗ととるかは人次第だが、僕は後者。

 ロアビィ、出撃できずに激昂。今までロアビィにこういうシーン無かったからちょっと新鮮。

 アベルinラスヴェート戦。序盤はいつも通りのもっさりな撃ち合いだったが、覚醒してからはビットMSの動きが不規則かつ高速でなかなか良い殺陣。

 真エースのジャミルinGXが参戦するや、フリーデンに攻撃をしかけだすアベルさんマジ鬼畜。

 艦内では、ティファがアベルの力を感知してガロードを救いに。爆風と振動で何度も壁に叩きつけられながら、甲板へと向かうティファの表情は真剣そのもの。こんな表情も初めてだ。

 ディフェンスプレートは一発で斬られてるのに、本体はズバズバ斬られても何とかなっちゃってるのは突っ込んじゃいけないところかな? ティファの声が届いたとき、ガロードは一瞬目がうつろになってて、どうも意識が混濁していたっぽい描写がある。なので、ここはガロードがNT的な力に目覚めた、というよりは、朦朧とした瞬間に、ティファのこれまでにない強い想いに無理矢理感応させられた、という感じなのではなかろうか。逆シャアのラスト的な。

 ビームソードを投げる演出はなかなかかっけかった! そして夢のバリエーション、DVDXが一瞬だけ登場。

 往生際の悪いアベルの執念を、ガロードが断ち切る。「ティファに手を出すなぁあああ!」やっぱガロードはティファの為に戦うときが一番強いや。

 そしていよいよ本性を表すフロスト兄弟。「それが解らないならば、君も本当のNTじゃない」←この台詞は何気に本質を突いた良台詞だと思う。「軍内部のNTと思しき人物の排除は完了した」と、エスタルド編~今回にかけての行動が「NTの覚醒を促す任務」という軍の目的と「覚醒したNTを排除する」という兄弟の目的の乖離がこの辺りから浮き彫りになってきて面白い。

 「わけ合って面会謝絶だ」テクス先生はやっぱカッコ善い人である。ガロードに手を握られて、眠るその表情は安らかである。

 次回予告のティファの表情。泣いたのも、初めてかもしんない……。

■第30話 もう逢えない気がして

 アバン。連邦軍相手に孤軍奮闘するエニル=エル。その戦いを評して「血は争えない」と評する謎の人物。この人物も登場時と後の展開で大きく印象の変わる人物であるな。「ナーダ=エル少将」の名が出た時点で、察しの良い方はその正体に察しがつくのだろうが。

 カラーが赤くなったレオパルドD。ぶっちゃけ緑の方がアーミーっぽくて好きだったなあ。それはそれとしてはしゃぐキッドを止めるウィッツとロアビィが好いお兄さんになっちゃってまあ。絵のモデルになってドギマギしてるガロードと、距離が戻って嬉しいティファ。久々の笑顔で癒されるぅ。

 カロン所長は典型的な年増喪女キャラなんだが、変態兄を「シャギア君」と君付けで呼んだ瞬間、なにかこう、私の心の中で激しく萌え上がる何かがあったのだが気の所為に違いない。うん。気のせいだ。

 それにしても、カロン所長はカテゴリーFを連発していて死亡フラグびんっびんである。

 そして、この場面での兄弟の暗躍はかなりぞわっとくる。カロン所長に芝居を打ってもらうよう提案する一方で、軍にNT研の謀反を進言。互いの交渉の進行具合がリアルタイムかつ完全秘匿で伝えられる兄弟ならではの謀略っぷり。既に何度か書いているが、中盤以降の兄弟は、MS戦よりもその陰謀家としての側面で凄味を出していると思うのね。

 ティファがガロードの部屋を訪ねてくるシーンはGXきってのニヤニヤシーンですね! ガロードのすれて無さってゆーか、不器用さってゆーか、もうすっげえ可愛いの! 心の中で何度「今だッ! そこだッ! 抱きつけッ! 押し倒せッ!」と叫んだことか。「それとさ」って呼びとめた後のティファがちょっと浮かない顔してたのは完全にOKだったってことだろ! そーなんだろ!? 部屋に帰るティファを見送ってドアを一度閉めたものの、気になっても一度その後ろ姿を見送るガロードも、ぴょこっと顔を出して「また明日ね」と言うティファ。ああもう、二人とも可愛い過ぎでしょ! そーいやタンクトップ姿のガロードも新鮮で可愛いな!

 ジャミルとカロン所長のやり取りもなかなか面白い。あくまでNTを利用するべき力とするカロン所長の言も、ある意味正論である。ジャミルの反論に理があるとすれば、彼自身がかつて利用された立場であるということ。しかし、「戦争がNTを生むというのか」「だから」「だからこの研究所にはNTがいないのか」というジャミルの斬り返しはお見事。まあ罠と知りつつ単身乗り込んだのは無謀だったのか、相応の覚悟あってのことだったのか。

 フロスト兄弟の本心が遂に明かされ、恨み連なるNT研を徹底的に破壊!

 兄弟については散々語り尽くされている感が無くもないのだが、敢えて語ることにする。世間では「迫力不足」「小悪党」「中ボスがせいぜい」と、彼等の器の小ささに拒否感を覚え、評価を下げている人もいる。

 だがしかし、思い返してみれば初代ライバルのシャアからしてその戦う理由は「ザビ家への復讐」という個人的なものであった。シャアの場合はジオン・ダイクンの遺児という言わば貴種流離譚の要素もあるため、なるほどライバルとしての資質は充分だったと言えるけど。Z以降、ライバルと敵の首魁が一致するようになると何やら壮大なことを言い始める奴も出てきたけど……。

 思うに、「迫力不足」等の評価は、直前に発表されたガンダムシリーズの仇役、0083のデラーズとガトー、Gの東方不敗、Wらのトレーズが大義と理想を掲げて散っていった、ガンダムシリーズ屈指の名仇役だったことが原因なのではなかろうか、と思う。

 フロスト兄弟は、「私怨を糧にのし上がる」という1stのシャアの軌跡をなぞったキャラクターで、その背景も父の仇などの所謂「美しい」理由ではない。復讐の理由は「自分達が認められなかったから」という至極ありきたりな理由である。そのため、「単なる自分勝手な奴等」という印象を視聴者に与えたのかもしれない。

 だが、現実世界にフィードバックしてみれば、「認められない」=「自己実現の未消化」から犯罪に走る奴は幾らでもいるし、そういう連中がまさにこの時期話題になっていたオ●ム真理教事件などを引き起こしたのである。そう考えてみれば、兄弟の戦う理由は至極真っ当というか、ごく当たり前に有り得る理由なのであり、結果こそ大げさになったが、実は誰しもがフロスト兄弟に成り得るのである。

 シャアの「復讐」は、美し過ぎるが故に同情しても共感することはない。親を殺されて仇打ちをする、などという事態は現実にはもうほとんど起こり得ない。が、兄弟の「復讐」は、平凡であるが故に共感できてしまう。「どうして俺が落とされる?」「どうして俺の案が通らない?」「どうして俺の想う通りにならない?」そんな気持ちを一欠片も持ったことがない人は、いないはずである。フロスト兄弟は、時代に即した現実的な私怨という、これまでのガンダムに存在しなかった動機を持たされたという点で、やはり「アナザー」故の挑戦的な配役だったのではなかろうか。

 一方で、何度も言っているようにガンダムXは「すれ違いと和解」の物語であり、対話を通してより良い未来が作られる、という実例をカリスや、カトックや、エニルの例を通して我々は観てきたわけで、その対立軸はやはり「対話を拒絶する者」でなければならず、かといってブラッドマンやザイデル、その他のこれまで登場してきた悪党バルチャーのようなノータリン故の対話の拒否では弱過ぎ、それを上回る憎悪の理由として、「力を認められなかったから」という平凡故の狂気という動機はアリだったと思うのである。まして、GXはNTをめぐる物語でもあるわけで、ガロード達がNTを人として保護することに対して、NTを象徴として憎悪する兄弟の配役もまたぴったりだったと思う。

 うーむ、イマイチ言いたいことがまとまってないので、兄弟のことはまた改めて書くことにする。

 今回もいっぱいやられちゃうバリエント。それなりに良いMSのハズなんですがねえ。すっかりやられ役。初お披露目のレオパルDを含め、今回は出撃シーンからちょっとスピード感があっていつもより殺陣が魅力的だったな。

 ニコラのティファ拉致→ロケット発射の展開は急転直下って感じだったが、手が届かずにうるうるしちゃうガロードが健気で切ない……。

 そしてここにきてブラッドマンの口から「宇宙革命軍未だ健在」という言葉が出て、新たな勢力の存在が発覚。

 見返してみると、この話は色々なお話が怒涛の勢いで同時進行しつつ、様々な情報がバンバン明かされていて、詰め込みっぷりが凄まじい。放送短縮の影響凄いなあ。これまでだったら2~3話使ってやるような内容だった。

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